12 / 67
第一章 国立太平洋学園の潜伏者
第十話 小さな春(後編)
しおりを挟む
目が覚めると私は知らないベットの上にいた。体が少し冷えている。横を見ると、保健室の先生が仕事をしていた。先生はチラッとこっちを見ると、私が目覚めたことに気づき、
「あっ、よかった。西郷さんわかる?ここは保健室よ。池に落ちて溺れてたところを高等部の子たちが助けくれたの」
と満面の笑みで話してくれた。どうして私は池に落ちたんだろう。確か私はカエルを捕まえようとしてて、滑って池に落ちて、それからどうなったのだろう。思い出せない。
「ちょっと待っててね。あなたの担任の先生を呼んでくるから」
そう言って保健室の先生は慌てた様子で保健室から出て行った。もう少し寝ておこうと思い私は再び目を閉じた。
~2092年NPOC小等部職員室~
「新井先生、新井先生、あっ、新井先生ここにいらしたんですね」
「新川先生いつも言ってるでしょ。女性としてもっと気品にふるまいなさいって。だからあなたはいつまで経っても結婚できないのよ」
「それは新井先生も一緒ですよ?じゃなくて西郷さん!西郷さんが目を覚ましましたよ」
新川は新井の手を取ってピョンピョン跳ねながら言った。
「ホントですか?こうしてはいられません。新川先生、飛び跳ねるのは後回しです。保健室に行きますよ」
新井は新川の手を振りほどいて足早に職員室を後にした。
「もぅー待ってくださいよ新井先生―!」
俺は泣き疲れて職員室のソファーで寝てしまっていた。でもあんなテンションの人が騒いでいたらどんなに熟睡している人も起きてしまうだろう。俺も例外ではなく起きてしまった。でも先生たちはどこに行ったんだろう。あれだけ騒ぐことだ。きっといいことに違いない。
「まさか、優芽が見つかった?」
俺はソファーを飛び出し保健室に向かった。
~NPOC小等部保健室~
ガラガラという音とともに扉が勢いよく開いた。
「西郷さん大丈夫?先生のことわかる?」
「新井先生…」
私が先生の名前を呼ぶと先生の目は涙でいっぱいになった。
「よかった、よかった、あなたが無事で本当に良かった…」
泣きながら先生は言った。いつも怒ってばっかりで怖いイメージしかない先生が泣いているので私はびっくりしてしまった。
ガラガラ。次は人一際大きな音で扉が開いた。
「あなたは確か新井先生のクラスの子よね?」
保健室の先生が言った。
「優芽、優芽大丈夫か?」
そこにいたのは貴君だった。私の中で何かが壊れるような感じがした。
「ウェェェェーーーン。だかぎゅん、だがぎゅん、わだじ、わだじ、こわぎゃっだよー」
私は貴君の顔を見るなり安心して泣いてしまった。
「優芽泣くなよ。泣かないでくれよ。ごめんな、助けてやれなくて」
貴君の目にも薄っすら涙が浮かんでいる。でも貴君は泣きたい気持ちをぐっと我慢した様子でこう続けた
「優芽、俺守るから。何があってもお前のことだけは守るから。だから優芽は俺のことを信じてほしい。二度と優芽を見捨てたりしないから」
嬉しかった。貴君が心の底から言ってくれているのがわかったから。
「うん!わかった。絶対に優芽を守ってね。優芽も貴君のこと信じるから」
私は今できる精いっぱいの笑顔で答えた。
ーーーーーーーーー
ーーーーーーーーー
ーーーーーーーーー
俺はあの日誓ったんだ。命に代えても優芽だけは守ると。
私はあの日決めたんだ。貴君に一生ついていくんだって。
「あっ、よかった。西郷さんわかる?ここは保健室よ。池に落ちて溺れてたところを高等部の子たちが助けくれたの」
と満面の笑みで話してくれた。どうして私は池に落ちたんだろう。確か私はカエルを捕まえようとしてて、滑って池に落ちて、それからどうなったのだろう。思い出せない。
「ちょっと待っててね。あなたの担任の先生を呼んでくるから」
そう言って保健室の先生は慌てた様子で保健室から出て行った。もう少し寝ておこうと思い私は再び目を閉じた。
~2092年NPOC小等部職員室~
「新井先生、新井先生、あっ、新井先生ここにいらしたんですね」
「新川先生いつも言ってるでしょ。女性としてもっと気品にふるまいなさいって。だからあなたはいつまで経っても結婚できないのよ」
「それは新井先生も一緒ですよ?じゃなくて西郷さん!西郷さんが目を覚ましましたよ」
新川は新井の手を取ってピョンピョン跳ねながら言った。
「ホントですか?こうしてはいられません。新川先生、飛び跳ねるのは後回しです。保健室に行きますよ」
新井は新川の手を振りほどいて足早に職員室を後にした。
「もぅー待ってくださいよ新井先生―!」
俺は泣き疲れて職員室のソファーで寝てしまっていた。でもあんなテンションの人が騒いでいたらどんなに熟睡している人も起きてしまうだろう。俺も例外ではなく起きてしまった。でも先生たちはどこに行ったんだろう。あれだけ騒ぐことだ。きっといいことに違いない。
「まさか、優芽が見つかった?」
俺はソファーを飛び出し保健室に向かった。
~NPOC小等部保健室~
ガラガラという音とともに扉が勢いよく開いた。
「西郷さん大丈夫?先生のことわかる?」
「新井先生…」
私が先生の名前を呼ぶと先生の目は涙でいっぱいになった。
「よかった、よかった、あなたが無事で本当に良かった…」
泣きながら先生は言った。いつも怒ってばっかりで怖いイメージしかない先生が泣いているので私はびっくりしてしまった。
ガラガラ。次は人一際大きな音で扉が開いた。
「あなたは確か新井先生のクラスの子よね?」
保健室の先生が言った。
「優芽、優芽大丈夫か?」
そこにいたのは貴君だった。私の中で何かが壊れるような感じがした。
「ウェェェェーーーン。だかぎゅん、だがぎゅん、わだじ、わだじ、こわぎゃっだよー」
私は貴君の顔を見るなり安心して泣いてしまった。
「優芽泣くなよ。泣かないでくれよ。ごめんな、助けてやれなくて」
貴君の目にも薄っすら涙が浮かんでいる。でも貴君は泣きたい気持ちをぐっと我慢した様子でこう続けた
「優芽、俺守るから。何があってもお前のことだけは守るから。だから優芽は俺のことを信じてほしい。二度と優芽を見捨てたりしないから」
嬉しかった。貴君が心の底から言ってくれているのがわかったから。
「うん!わかった。絶対に優芽を守ってね。優芽も貴君のこと信じるから」
私は今できる精いっぱいの笑顔で答えた。
ーーーーーーーーー
ーーーーーーーーー
ーーーーーーーーー
俺はあの日誓ったんだ。命に代えても優芽だけは守ると。
私はあの日決めたんだ。貴君に一生ついていくんだって。
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説

大学寮の偽夫婦~住居のために偽装結婚はじめました~
石田空
現代文学
かつては最年少大賞受賞、コミカライズ、アニメ化まで決めた人気作家「だった」黒林亮太は、デビュー作が終了してからというもの、次の企画が全く通らず、デビュー作の印税だけでカツカツの生活のままどうにか食いつないでいた。
さらに区画整理に巻き込まれて、このままだと職なし住所なしにまで転がっていってしまう危機のさなかで偶然見つけた、大学寮の管理人の仕事。三食住居付きの夢のような仕事だが、条件は「夫婦住み込み」の文字。
困り果てていたところで、面接に行きたい白羽素子もまた、リストラに住居なしの危機に陥って困り果てていた。
利害が一致したふたりは、結婚して大学寮の管理人としてリスタートをはじめるのだった。
しかし初めての男女同棲に、個性的な寮生たちに、舞い込んでくるトラブル。
この状況で亮太は新作を書くことができるのか。そして素子との偽装結婚の行方は。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
如月さんは なびかない。~クラスで一番の美少女に、何故か告白された件~
八木崎(やぎさき)
恋愛
「ねぇ……私と、付き合って」
ある日、クラスで一番可愛い女子生徒である如月心奏に唐突に告白をされ、彼女と付き合う事になった同じクラスの平凡な高校生男子、立花蓮。
蓮は初めて出来た彼女の存在に浮かれる―――なんて事は無く、心奏から思いも寄らない頼み事をされて、それを受ける事になるのであった。
これは不器用で未熟な2人が成長をしていく物語である。彼ら彼女らの歩む物語を是非ともご覧ください。
一緒にいたい、でも近づきたくない―――臆病で内向的な少年と、偏屈で変わり者な少女との恋愛模様を描く、そんな青春物語です。
Tokyo Flowers
シマセイ
現代文学
東京で働く25歳のユイは、忙しい毎日の中で、ふと立ち止まり、日常に 隠された美しさに気づき始める。それは、道端に咲く花、カフェの香り、夕焼けの色… 何気ない日常の中に、心を満たす美しさが溢れていることに気づき、彼女の心境に変化が訪れる。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
これも何かの縁(短編連作)
ハヤシ
現代文学
児童養護施設育ちの若夫婦を中心に、日本文化や風習を話題にしながら四季を巡っていく短編連作集。基本コメディ、たまにシリアス。前半はほのぼのハートフルな話が続きますが、所々『人間の悪意』が混ざってます。
テーマは生き方――差別と偏見、家族、夫婦、子育て、恋愛・婚活、イジメ、ぼっち、オタク、コンプレックス、コミュ障――それぞれのキャラが自ら抱えるコンプレックス・呪いからの解放が物語の軸となります。でも、きれいごとはなし。
プロローグ的番外編5編、本編第一部24編、第二部28編の構成で、第二部よりキャラたちの縁が関連し合い、どんどんつながっていきます。
微熱の午後 l’aprés-midi(ラプレミディ)
犬束
現代文学
夢見心地にさせるきらびやかな世界、優しくリードしてくれる年上の男性。最初から別れの定められた、遊びの恋のはずだった…。
夏の終わり。大学生になってはじめての長期休暇の後半をもてあます葉《よう》のもとに知らせが届く。
“大祖父の残した洋館に、映画の撮影クルーがやって来た”
好奇心に駆られて訪れたそこで、葉は十歳年上の脚本家、田坂佳思《けいし》から、ここに軟禁されているあいだ、恋人になって幸福な気分で過ごさないか、と提案される。
《第11回BL小説大賞にエントリーしています。》☜ 10月15日にキャンセルしました。
読んでいただけるだけでも、エールを送って下さるなら尚のこと、お腹をさらして喜びます🐕🐾
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる