絶海学園

浜 タカシ

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第一章 国立太平洋学園の潜伏者

第七話 状況

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~2100年4月9日 11:00 NPOC司令部廊下~
東に連れられNPOCの司令部に足を踏み入れた俺と優芽。廊下は複雑に入り組んでいて方向感覚が狂ってしまった。

「もう少しで対策本部だよ」

東が振り返り俺たちに言った。

「東さん、対策本部って何するんですか?」

確かに優芽の言うとおりだ。今回の事件はサーバー攻撃によるITテロのはずだ。こういう類の事件は専門家に任せておくのが一番だろうに、どうして俺たちがメンバーに選ばれたのだろうか。

「まぁ全部ひっくるめて対策本部で話すよ。さぁここが非常事態対策本部だよ」

案内された部屋にはスーツや作業着を着た人がたくさんいた。東は一番前の席に腰かけた。

「えぇーそれでは皆さん。対策会議を始めたいと思います。議長は統括学園長から命を受けまして私、システム管理部 東が務めますどうぞよろしく。早速ですが皆さんこれからの連携強化のために軽く自己紹介をお願いできますか? 」

急に会議が始まって俺と優芽は若干ついていけていないが、唐突に自己紹介の時間が始まった。まず30代くらいの女が自己紹介を始めた。

「総務課総務部、西 京子です。どうぞお見知りおきを」
「警備課防衛システム部 、岡田 昇だ。よろしく」
「JR学園線中央コントロールセンターの藤井 巽です」
「NPOCIA空港長の仁志 哲也です。どうぞよろしく」

ここまでの自己紹介を聞いていた優芽が小さな声で俺に話しかけてきた。

「ねぇ、貴君。みんなすごい人ばっかりだよ。私たちちょっと場違いじゃない?」
「優芽もそう思うか…」

なぜ俺たちはこの対策本部の呼ばれたのだろうか…

「山本君、山本君、次自己紹介お願いしますよ」
東の呼びかけで俺は我に返った。いつの間にか順番が回ってきていた。俺は

「NPOC高等部1年2組、山本 貴文です。よろしくお願いします」

と簡単に自己紹介した。続けて優芽が

「同じく西郷 優芽です。よろしくお願いします」

と自己紹介を終えたところで東が口を開いた。

「皆さんご承知の通り現在NPOC内全システムがダウンしている状況です。」
「そうだ、だから今防衛システムも機能していない。これじゃまるで『してください』って言ってるようなもんだろう」

明らかにイライラしているのがわかる。でもこの男の言う通り今のNPOCは革命国からしてみたら格好のターゲットだろう。

「また、C-payも機能していないため、住民の生活に大きな支障が出ています」
「空港は航空管制システムが使用できないので、すべての離発着便が欠航になっています」
いろいろな部署から被害状況が報告された。聞けば聞くほど今回のサイバー攻撃がどれほど大規模なものだったのかがわかる。
「それで今後の対応なのですが、一時的に予備システムに切り替えることもできます。予備システムでは一部の制限はありますが日常生活に支障がないレベルでの運営は可能です。ただ一つ問題がありまして…」

ここまで言って東が言葉を詰まらした。

「何なんだ問題って?」

早くしろと言わんばかりに岡田が言った。東は覚悟を決めたようにまっすぐと向き直し、こう言い始めた

「実は今回のサイバー攻撃は外部からではなく、内部からなされたものであったことが判明しました」

東は淡々とでも一言一言に重みを持たせてこう言った。

「ちょっ、てめぇ自分で何言ってるのかわかっていてんだろうな」

対策本部のメンバーからは余裕の表情が消え、会議室は静寂に包まれた。

「皆さんの気持ちはご察しします。私も最初は気持ちの整理に時間がかかりましたから。このことからお判りいただけるように、もし予備システムに移行したとしてもすぐに今回と同じことになるでしょう。ですから私たちがまずすべきことはシステムの復旧よりも犯人の特定をすることです。」

なるほど。確かにその通りだ。でも何か引っかかる。どうしてNPOC内部の人間がサイバー攻撃をする必要があったのだろうか。

「そしてつい先ほど、サイバー攻撃は生徒用の腕時計型端末から行われた可能性が高いということがわかりました」

つまり生徒の中に犯人がいる…。でも生徒といってもこの学園には20万人が在学している。この中から犯人を見つけ出すのは無理に近いだろう。でも幼、小、中等部の子供たちはこんなことまずできないだろう。子供を除外しても容疑者は9万人もいる。

「そこで、君たち二人の出番なんですよ」

東が俺と優芽を見て言った。

「つまり、私たちが生徒の中から犯人を見つけろってことですか?」

優芽が戸惑いながらも東に聞いた。

「その通り。二人で協力して犯人を一刻も早く探し出してください」

~4月9日 11:15 NPOC上空~
「追い見ろよボブ、あれがNPOCだぜ」
「噂には聞いてたがでけぇーな」

NPOC上空には20機の米軍所属戦闘機が飛行していた。NPOC統括学園長 西郷の要請により彼らは無防備なNPOCの防衛に当たることとなったのだ。

「でも革命国の奴ら本当にくるのか」
「いやきっと俺たちにビビッて逃げてくさ」

はっはっはっはっはと軍人たちが談笑しているその時だった、一機のパイロットの顔が真っ青になった

「おっ、おい。くっそー。こちらAA13。敵の戦闘機にロックオンされた。」
「ジョンすぐに退避飛行をしろ。はやく!」

パイロットたちは口々に仲間をミサイルの恐怖から救おうと指示を出した。しかし一向に退避飛行に入る様子はない。

「ジョン、死にたいのか?早くしろ!」
「やってるさ、やってるけれど操縦が利かないんだ。まるで誰かに乗っ取られたように勝手に動くんだよ」
その時ミサイルが発射されたことを知らせるアラームが鳴った。

「くっそー死にたくない死にたくない死にたくない。」

ドゴォーン。爆音とともに黒煙が立ちこめた。パイロットは間一髪のところで脱出に成功できたらしい。

「いったいなんなんだ…」

パイロットたちの顔にさっきまでの余裕はもうなくなっていた。

~4月9日 11:15 NPOC SS層~
私はアメリカが嫌いだ。だから撃ち落とす。練習は積んできた。ミサイル発射ボタンに手をかける。上空で大きな爆発音がした。かなり手応えがあった。しかしパイロットは脱出してしまったようだ。

「チッ、外したか」

私はアメリカを叩き潰す。連合国を叩き潰す。


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「日本も叩き潰してやる」
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