絶海学園

浜 タカシ

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第一章 国立太平洋学園の潜伏者

第三話 出会い

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~2100年4月8日 23:00 NPOC統括学園長室~
「皆さん。こんな時間にお呼び立てして申し訳ない。だが事が事だけに一刻を争うことになる。既にご存知と思うが本日19:30頃各層環状線で全車両の自動運転安全装置が作動する事件が、またほぼ同時刻にC-payで決算できないという報告が多数寄せられた。」

かなり深刻な内容だ男の口から語られた。男の名は西郷俊、NPOC統括学園長であるこの男は今回の一件の事の深刻さを誰よりも理解していた。

「これについてシステム管理部のほうから報告いたします。自動運転装置、C-payなどNPOC内での生活に欠かせないシステムの突然停止が発生したため先ほどシステム管理課の方で自動走行装置関連システム、学園内通貨システム、NPOC自動防衛システム、生徒個人情報管理システムなどありとあらゆるシステムの総チェックを行ったところ…」
「ど…どうした。行ってどうしたんだ?」
「それが…」
「そうか…。東君、君がそこまで言葉を濁らすんだ…きっといい内容ではないんだろうな。大丈夫だ、ここにいる皆それくらい分かっていると思う、私も分かるようにね。君の口から語られるのはきっとかなりショッキングな内容なんだろう。でもここで我々が現実から目をそらすわけにはいかないだろう。だから大丈夫だ、さぁ報告してくれたまえ」
「西郷統括学園長…申し訳ございません、そしてありがとうございます。先ほど総チェックを行ったところ、サイバー攻撃と思われる不正アクセスを確認しました」

統括学園長室がざわついた。やはりそうか…。NPOC30年の歴史でサイバー攻撃を受けたことなど一度もなかった。これはシステム管理課としては目をつむりたい失態であろう。でも東は処分覚悟で本当の事を話してくれた。私は彼の勇気に何かしらの報いを与えたいと思った。

「そうか。それで対策は」
「はい。セキュリティーシステムをバージョンβに移行し、サイバー攻撃元の特定を急いでいます」

システム管理部長、東 時雄は終始険しい表情で報告を終えた。

「皆さん。今の報告を聞いての通り、NPOC始まって以来の事態だ。それ故前例がない、きっとどう対処していいか分からないだろう。私も分からない。だからこそ各部署が密に連携を図っていく必要がある。これ以上被害が拡大しないこと、NPOCに住む人々が混乱に陥らない事、この二点に細心の注意を払い対応に当たってもらいたい」

西郷は明朝、日本本島に今回の事態を報告しに行くことを決めた。

ーーーーー

~4月9日 6:00 US1 学生寮~
ピンポーン ピンポーン ピピピピピピピピンポーン
こんな朝早くから誰だ?時計を見ながら貴文は布団を後にした。

「はいはい。どちら様ですか?」

インターホンの画面越しに制服に身を包んだ人影が見えた?んっ…女子の制服か?ということは優芽…でもあいつあんなに色々大きかったか…?

「おはようございます。一ノ瀬 明衣てす。学校案内をしていただく約束てしたのて」

ん?一ノ瀬明衣…一ノ瀬明衣…はっ!あの超絶怒涛の美少女か…ん?なんで一ノ瀬がこんな朝早くから俺の部屋のインターホンを連打するんだ?
寝起きで冴えない頭をフル回転させて昨日の、入学式の後のことを思い出した。

ーーーーー

~4月8日 14:00 NPOC高等部職員室~
入学式早々職員室への呼び出しを食らった。俺何かしたか?まったく身に覚えがない。
まさかあれか、入学式でうるさくしたからお叱りを受けるのか…いや、だったら俺じゃなくて優芽を怒ってほしんですけど!
だが嫌なことはすぐに来てしまうものあっという間に職員室の扉(=別名Hell`s door)が見えてきた。神様仏様、我にお恵みをぉー!

コンコン「し…失礼します。一年二組の山本ですが担任の宮本先生はいらっしゃいますか…」
「おっ、来たか。貴文入っていいぞ」

先生が返事がハイすぎて怖い。いや宮本先生はいつもこうか…。
俺の担任である宮本先生は体育担当である。ザ・熱血教師で生徒からの評判もいい。俺も中等部のころから幾度となくお世話になってきた。

「ん?貴文元気ないがどうかしたか?せっかく高校生になったんだ、もっとシャキッとせいシャキッと」
「い…いや…あのーそのー…す…すみませんでした!で…でも俺の言い分も聞いてくださいよ先生。あれは優芽がちょっかいだしてきてそれで仕方なく…」
「ん?どうした急に謝りだして。別に俺、怒ってないぞ?」
「へっ?」
「あはははは!なんだその間抜け面は、まぁなにかやましいことがあったんだろうが、入学式の日に免じて見逃してやる。ありがたく思えよ?」
「は…はい…?」
「まぁそんなに聞いてほしいなら後でじっくり聞いてやるとして、本題に入っていいか?実はなお前に二つお願いしたいことがあるんだよ」
「お願い?」
「あぁ、大切なお願いだ。まずはうちのクラスの学級委員やってくれ」
「また学級委員ですか?勘弁してくださいよ」
「まぁまぁそう言わずに。中等部で3年間学級委員を務めあげてきたお前だからこそお願いしてるんだよ。大丈夫だ、今回のクラスメイトも個性派ぞろいだぞ」
「い…いや、毎年押し付けられてきただけなんですけどね…。はぁ…先が思いやられる」
「まぁまぁそう心配するなって。大丈夫だ、今までのあのクラスをまとめ上げてきたお前だ。きっとできる、と思うぞ」
「む…無責任な…」
「あははは!まぁ困った事があれば俺になんでも言ってくれ。いつでもどこでもどこからでも駆けつけるからな」
「た…頼りにしてます…で、二つ目ってなんですか?」
「そうだったそうだった、たぶんそろそろ来ると思うんだが」
「と言うと?」
「まぁ来てからのお楽しみだ」

コンコン「失礼します。一年二組の一ノ瀬てす。宮本先生…」

「おっ、ちょうどいいところに来たな一ノ瀬入っていいぞ」
「は…はい、失礼します」

あっ…さっきの入学式で転入してきたあの超絶美少女の確か、名前は一ノ瀬明衣だったか?でもどうしてここに…

「貴文、さっきの入学式で紹介があった転入生の一ノ瀬だ」
「一ノ瀬 明衣てす。よろしくおねがいします」
「山本 貴文です。よろしく」

ひゃぁーあ、やっぱり近くで見るとより一層美しさが増す…すばらしい…

「おーい貴文、なに一ノ瀬に見とれてるんだ、あまり鼻の下伸ばしてると嫁さんにチクるぞ」
「うっ…って俺に嫁なんていませんよ!」
「どうだか…
「でなんだが山本。お前には明日の始業前に一ノ瀬に学生寮から高等部までの行き方と、高等部の校舎の案内をしてほしんだ。」
別に俺じゃなくてもクラスの女子にでも頼めばいいのに…なぜよりによって俺なんだ?
「山本、お前どうせ『なんで俺が』とか思ってるだろ。これが学級委員の初仕事だと思って案内してやってくれ」
「山本君お願いてきませんか?」
ここまで言われて案内しないほど俺もクズ男ではない。
「わかりました。じゃあ一ノ瀬さんだっけ?明日の六時俺の部屋のインターホン鳴らしてくれ」
「わかりました!」

~4月9日 6:10 US1 噴水公園~
というわけで昨日のやり取りを思い出した俺は急いで支度して一ノ瀬と駅に向かって歩き出した。


「山本君、朝早くから私のためにすみません。」

申し訳なさそうに一ノ瀬が言った。

「別にいいよ。約束忘れて寝てた俺も悪いし。あと呼び方、貴文でいいよ」
山本と名字で呼ばれるのが少ないからさっきから背中がむずがゆくて仕方なかった。
「じゃあ、貴文君。私のことも明衣って呼んてください」
「わかった。じゃあ、明衣。高等部までの行き方はなんとなくわかるか?」
「はい。昨日の夜地図を見てなんとなくは覚えました」

さすが政府推薦。優秀だ。

「じゃあ話は早いな、おっ、あれがこの層の駅だ」

見えてきたUS1駅を指さしながら俺は言った。

~4月9日 6:30 各層環状線US1駅~
「明衣、昨日腕時計もらったか?」

俺は自分の腕時計を見せながら明衣に聞いた。

「はい!これてすね」
「そうそれ。これを機械にかざすと支払いができるんだ。」

俺はこう言いながら改札機に腕を近づけた。ピッ、ピッ、あれ?

「貴文君どうしたんてすか?」

明衣が不思議そうに聞いてきた。

「いや、それが反応しないんだ」
「それは大変てす!駅員さんを呼びましょう」

明衣がそういった瞬間だった。バン。駅中の電気がすべて消えた。

「えっ?」

明衣が困惑している。

「構内のお客様にお知らせします。ただいま原因の究明をしておりますのでしばらくお持ちください。ご迷惑をおかけしております」

駅員が張った大きな声で客に呼び掛けていた。もうすぐ通学ラッシュの時間だ。それまでに復旧するだろうか?

「困りました。これては学校にいけません」
「そうだな…」

ウゥゥゥゥゥゥーーーン。けたたましい音でサイレンが鳴り響いた。
「非常事態。非常事態。NPOC内の全生徒・教職員に伝達します。こちらはシステム管理部です。ただいまサイバー攻撃によりNPOCの全システムがダウンしました。繰り返します全システムがダウンしました」
                     
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