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劇場版モノクローム 顕現の玉具part.2

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宗一郎は葛幸卿に大打撃を与えながら、顕現の玉具の行方を必死に探していた。「玉具をどこにやった?」彼の冷たい眼差しが、敵を睨みつける。しかし、葛幸卿は焦りを感じながらも、その表情には得意げな嫌な笑みが浮かんでいた。彼は一切答えることなく、さらなる挑発を続けた。

宗一郎は葛幸卿を今すぐにでも殺すことができた。しかし、玉具を取り戻すためには、彼を殺すわけにはいかないと判断した。彼の頭の中では、玉具がどこに隠されているのか、葛幸卿の動向がどう影響するのかを考えながら、攻撃を続けるしかなかった。

その瞬間、蔵前が異変に気づいた。「宗一郎、情報にあった蝶達の死体が消えている!」彼の言葉は、仲間たちの緊張を引き立てた。宗一郎は急に違和感を覚え、葛幸卿の様子を伺った。

葛幸卿の嫌な笑みが、次第に喜びの笑みに変わっていくのを見て、不安を覚えた宗一郎が、葛幸卿を左右に真二つに切ると、先程まで葛幸卿だったものは、小さな蝶達へと変わり地面へ落ちていった。
「これは…まずいぞ。」彼は呟いた。その言葉は既に現場の緊張感を高める。

「本体は別の場所にいて、きっと玉具を使ったのだろう。」葛幸卿が展開していた策略を理解した瞬間、宗一郎の心に絶望が広がった。彼らの前には、これまで見てきた葛幸卿の姿がただの分身だったという事実が浮かび上がった。

一瞬の静寂が流れ、その後すぐに戦場には緊張が走った。仲間たちはそれぞれの傷を手当てし、力を取り戻しながら次の動きに備えた。ラプ本部から薬を持ち帰った二人が合流し、戦いに参加する姿を見た宗一郎は改めて仲間との絆を感じた。

「ここからが本番の戦いだ。」宗一郎が気を引き締める。蔵前と柊の姿がその後ろに控えていた。戦闘経験が漂う彼らは、その目に宿る意志の強さからも明らかだった。

「俺たちが全力で果てしない闇に立ち向かう。もう一度力を合わせて、彼を捕えなければならない。」その言葉は、仲間たちの心に強く響き、新たな決意へと変わった。

「俺たちの玉具で顕現した敵は、俺たちで倒す。」宗一郎の声が響く。互いに頷き合い、仲間たちは再び戦いの準備を整えた。葛幸卿が隠していた真実を暴くため、そして仲間のために、彼らは一致団結して立ち向かう決意を固めた。

次の瞬間、彼らはそれぞれの武器をしっかりと握り、攻撃に出た。前進しながら、宗一郎は仲間と共に新しい希望と力を見出した。彼らの心には再び燃え上がる炎が宿り、「絶対に倒す」という決意が、戦場に響き渡っていた。戦いがいよいよ佳境を迎え、運命の歯車が動き始める。
周囲の森を必死に探し回る仲間たちだったが、なかなか敵を見つけられずにいた。その時、突如として、多大な邪気が周囲を包み込み、まるで息苦しさを覚えるほど重くのしかかってきた。誰もが息を呑み、恐怖に包まれる。

「なんだ、これは…?」宗一郎が思わずつぶやくと、その言葉が森の静寂を破った直後、葛幸卿の高笑いが耳に飛び込んできた。

「バカな火車使い共、たった今、再生の概念が顕現した。」葛幸卿の声には、勝ち誇った響きが満ちていた。「最強の実概念、レナトゥスの誕生だ!」

その言葉と共に、目の前に現れたのは、ドロドロとしたヘドロのような姿をした生物だった。レナトゥスは、まるで泥の塊のような形をしており、触れた攻撃は確実に再生して元に戻ってくる恐怖を秘めていた。

「力を手に入れることには犠牲が伴う。レナトゥスの誕生に対する犠牲は、貴様自身の死だ!」宗一郎は憎しみを帯びた目つきで葛幸卿を見据え、剣を構えた。その瞬間、彼の心には再び仲間を守らなくてはならないという強い想いが宿った。戦う意思があふれ出し、自身の力を信じる力へと変わった。

「私たちが引き下がるわけにはいかない。」蔵前も、自らの武器をしっかりと握りしめ、戦意を表明した。「このままでは済ませない!」

柊もまた、剣を構え、その冷静な眼差しをレナトゥスに向けた。「この卑劣な攻撃に屈するつもりはない。ころす。」

レナトゥスが無邪気なようにゆっくりと動き始める。周囲には、仲間たちの心の奥に宿る強い意志が伝わり、再生するヘドロの生物に対抗する力強い絆が育まれていた。

「我々は日々の修行で小さな代償を支払って強くなってきた。貴様は暗黙のルールを破ったんだ。今ここで殺す。」宗一郎が叫び、仲間たちが一斉に攻撃を開始した。

レナトゥスの攻撃は重く、反撃としてのヘドロのパルスが仲間たちを攻撃する。しかし、絶望に沈むまいと、それぞれの想いを胸に飛び込み、剣を振るい続ける。彼らの中の力は、己の命と仲間を信じる心から生まれた。

「皆、共に行こう!」宗一郎の声が戦場の空を駆け抜け、仲間たちの意志を再び一つに結ぶ。彼らの力が結集し、全ての攻撃がレナトゥスに向けられ、その夜空に新たな希望の兆しが浮かび上がる。

戦いは始まったばかりだった。これから彼らが戦う相手は、彼らの絆への挑戦でもあったのだ。絶対に負けるわけにはいかない。彼らは狂気と恐怖に立ち向かう覚悟を決め、戦場に勇敢に立とうとしていた。
宗一郎は、レナトゥスのドロドロとした体に向かって剣を振るい、引き受ける覚悟を決めた。「俺がこいつを引き受ける。みんなは葛幸卿を追い詰めろ!」仲間たちの意志を胸に、彼はレナトゥスに突進した。

その間に、柊は葛幸卿の動きを察知し、彼に向かって進んでいった。葛幸卿は一瞬の隙を見せたが、すぐに反応し、策を練る。その隙に柊は、彼の懐に飛び込み、青い炎を纏った剣を振り下ろした。

一方で、蔵前はその戦闘の激しさを間近で見つめ、飛んでくる斬撃から仲間たちを守るために動いていた。「ここは私が受け止める!」彼の声が響き、破滅的な攻撃から仲間たちを必死に庇った。怪我をしている者たちに手当てをしながら、少しでも戦場から離れられるように配慮していた。

この状態で、3人は連携を取り、順調に敵を追い詰めていると感じた。しかし、その時、彼らの目の前に生き残りの蝶が現れ、背後からやってきた影が近づいていることを警告した。

「仲間が来る!気をつけて!」その言葉を皮切りに、葛幸卿の仲間が姿を現した。

彼の仲間は、上級のナキビトであり、かつて葛幸卿が瀕死のところを救ってから共に強く育てられ、親子のような関係になっていた。彼の名はサヴェッジ。かつての伝説の剣士、秤夜幸太と一線を交え、秤夜を10年以上公に出ることができないほど追い込んだ、強力な武術の天才だった。

「これは厄介だ…」宗一郎は肌寒い思いをしながら、その名を心に刻んだ。瞬時の判断で、彼はレナトゥスを柊に任せ、サヴェッジへ切りかかる決意を固めた。「俺たちの目の前に立ちはだかる奴は、早く倒さなきゃならない!」

サヴェッジの強さは半端ではなく、宗一郎の攻撃はその硬い体によって簡単に跳ね返されてしまった。「このままじゃいけない!」攻撃を受けながらも、宗一郎は後ろに飛び退き、再び攻撃の体勢を整えた。

その頃、柊は葛幸卿を追い詰めるため、全力で戦っていた。「死ぬなよ宗一郎。」彼は青い炎を自由に操り、炎型の攻撃を次々と放つことで葛幸卿を圧倒しようと試みた。

「おのれ…!」葛幸卿は不敵な笑みを浮かべながらも、攻撃が容赦なく襲い掛かる様子に焦りを感じた。しかし、彼もまた、サヴェッジの力を借りることで事態を打開しようと考え、レナトゥスに目を向けた。

戦いの中、宗一郎はサヴェッジに押し負けながらも、必死に切り抜けていく。動きが早く、反撃する機会を伺いながら少しずつ距離を取り、次の攻撃に備える。

「決して諦めない!」その言葉が、仲間たちの心に火を灯し、逆転のチャンスを狙うため一層の努力を促していく。あふれ出るエネルギーが、彼らの絆と共に大きな力となり、彼らを再びまとめあげる。

三人の友情と信頼が試される戦いの場面で、新たな戦いが待ち受けていた。救世の時は刻々と迫り、彼らは決意を新たにし、真剣勝負の世界へと突入していった。サヴェッジとの戦闘が始まり、仲間のため、そして全てを賭けた戦いが展開される。
明達はおろか、慈岳や蔵前といった最強クラスの剣士でさえも、目で追うのが精一杯の異次元の戦いが展開されていた。宗一郎とサヴェッジの戦闘はそのスピードと力強さが群を抜いており、まるで時間が止まったかのような圧倒的な迫力が周囲を支配していた。

サヴェッジに追い詰められながらも、宗一郎は持ち前の冷静さを保ち、青い炎と炎型を駆使してなんとか時間を稼ぐ姿は、まさに頼れる男の背中そのものであった。「俺は、仲間のために戦う!」心の中で自身を奮い立たせ、サヴェッジとの距離を詰めていく。

「炎型・大炎・華災演舞!」宗一郎は叫び、炎の刃を放った。サヴェッジはそれを受け止めたが、重い一撃が彼の身体に確実に響いていた。

しかし、サヴェッジはまるで打撃を受けたことなどないかのように、冷静かつ強力に反撃に転じた。「実力解放レベル1」と呟くと、彼の全身に白いオーラが纏われ、大幅な強化が施された。

これに対抗するべく、宗一郎もまた白炎を剣に纏わせ、「炎型・大炎・白連撃!」と叫び、力強く刃を振り下ろした。炎と白オーラがぶつかり合い、轟音を響かせながら壮絶な衝撃が走る。両者の技が大きなエネルギーを生み出し、その衝撃で地面が割れ、周囲の木々が倒れてしまうほどの力が発生した。

「威舞破武(いぶはぶ)・腹突破(ふくとつは)」サヴェッジは力強く踏み込み、恐るべき一撃を放つ。その攻撃はまるで破風のように宗一郎を襲い、宗一郎はしっかりと構えを取った。「受けてみろ」彼も負けじと反撃し、白炎を纏った剣でサヴェッジの攻撃を迎え撃つ。

両者の技が空中でぶつかり合い、しばらく力の押し合いが続いた。宗一郎の身体も悲鳴をあげていたが、意志だけは揺るがなかった。彼は仲間のため、そして自らの信念のために戦っていた。

周目囲を驚愕させるほどの力の拮抗が続き、ついにそのエネルギーは消滅に至った。ふたりは背後に大きな爆風を起こしつつ、同時に後方に跳び退く。しかし、両者は怯むことなく再び立ち上がり、即座に戦い続けた。

宗一郎の視界にはサヴェッジの冷徹な眼差しが映る。彼には怯みがなく、むしろその眼にはさらなる殺意が宿っている。サヴェッジは緩急をつけた独特の動きで、宗一郎に向かって突進してくる。「これが、実力の差だ!」と彼は叫び、同時に再び攻撃を繰り出す。

しかし、宗一郎も同様に、仲間の存在を思い浮かべながら踏み込んだ。彼は相手のスピードに合わせ、攻撃をかわし、直感で反撃を狙う。「お前の強さがどうであれ、俺は負けない!」その瞬間、彼は心の美しさと絆の力を信じ、剣を振るい続けた。

異次元の戦いは続き、仲間たちの鼓動が高鳴っていた。宗一郎は決して諦めず、全力で立ち向かうことを決めた。サヴェッジもまた、彼の強さを認め、さらなる高みへと向かう準備を整えていた。しかし、互いの意志はまだ分かり合えていない。双方の力が秘められたまま、果てしない戦いが続いていく。
サヴェッジと宗一郎の戦いが続く一方で、柊は絶望を目の当たりにしていた。葛幸卿がレナトゥスを吸収し、最強の力を手に入れた瞬間、その場の空気が変わった。巨大な図体となった葛幸卿は、彼自身の悪意と融合した力を持ち、全てを飲み込むような圧倒的な存在感を放っていた。

「負けるわけにはいかない」柊は自分を奮い立たせ、真剣な表情で葛幸卿に立ち向かう。彼は「炎型・大炎・延豪剣」と叫び、炎の刃を葛幸卿にぶつけた。確かにダメージは入ったが、葛幸卿はその異次元の再生力で瞬時に傷を癒し、まるで痛みを感じていないかのように振る舞った。

柊は本能のままに剣を振るった。自らの力を信じ、押されながらも戦える実力を示し、彼の技は次第に進化していった。

しかし、葛幸卿は吸収したレナトゥスに順応するにつれて、ますます強化されていった。柊は次第に形成される劣勢を感じ取り、その思考は焦りに変わり始める。「このままではまずい」彼ろは心の中で必死に次の策を練った。

その時、彼は決心した。ついに、青炎を超える炎を呼ぶことにしたのだ。柊は全身に力を込め、内なる火を求めていく。明はその様子を見て、柊がまさか白炎を使えないのかと不安に駆られていたところだったために、安堵のため息をついた。

しかし、その時、柊が纏わせた青炎の上の炎は、薄暗い黒の炎であった。それは明たちが見たことも聞いたこともない、黒色の炎であった。「なんだ、この炎は…?」明はその光景に驚愕し、心がざわつく。柊の身に纏われた黒炎は、不気味なオーラを放ち、周囲に圧を与えた。

恐れを知らぬ執念で、彼は黒炎の剣を握りしめ、葛幸卿に挑む。柊は強力な一撃を放った。黒炎が舞い上がり、もしその力が受け止められたら、葛幸卿にも相応のダメージを与えられると確信していた。

明はその戦いに目を奪われ、思わず息を呑む。柊は、自らの力を解放し続けることで、葛幸卿に対抗しようと必死に叫んでいた。

柊の黒炎の剣が、葛幸卿に直撃した瞬間、空間が震え、周囲には亀裂が生じる。その炎は、黒く燃え上がり、まるで悪魔のような痺れを周囲に放ちながら、戦場全体を照らし出した。

しかし、葛幸卿はその攻撃をも全く物ともせず、再生能力で傷を癒し、よりいっそうの攻撃へと向かってくる。柊はその圧倒的な力に押しつぶされそうになりながらも、その身に宿した黒炎を信じ、戦い続けた。

強烈なオーラを発し、仲間たちを背後に制止させるほどの迫力で葛幸卿に挑む柊。果たして、この黒炎が彼を勝利へ導くことができるのか、戦闘はますます激化し、仲間たちの思いを背負った戦いは続く。
「お前の力、なかなかだが…」葛幸卿の声は低く、挑発的だった。「それでも、俺には到底及ばない!」

柊はその言葉に答えるように、再び黒炎を纏った剣を突き出した。「俺が負けるはずない」

彼は黒炎の力を最大限に引き出し、これまでにない速度で追撃に転じる。しかし、葛幸卿はその攻撃を容易にかわし、逆に強烈な一撃を放ってきた。大きな拳が照準をつけた柊に迫る。「やれやれ、そんな力じゃ俺には通用しない!」

その瞬間、柊は思わず足を踏み出す。葛幸卿の攻撃を避けきれず、重い打撃が彼の側面を襲った。その衝撃に体勢が崩れたものの、柊はすぐに立ち上がり、再び盾となるように剣を構える。彼の心臓が高鳴る音を感じながら、それを奮い立たせた。

「炎型・大炎・白連撃」柊は連続して技を繰り出し、炎の刃が次々と葛幸卿に向かって行く。火花が散り、目を引く闘技場の光景が広がった。

しかし、葛幸卿は冷静にそれらすべての攻撃を捌き、その全身を使って柊を圧倒しようとしていた。「こんな攻撃が効くと思っているのか?」彼は高笑いをしながら、力強い拳を振り下ろす。柊はぎりぎりのタイミングでそれを避けるが、その攻撃の余波に身体が持っていかれた。

「もっと強い力を見せてみろよ!」葛幸卿は挑発しながら、まるで遊びのように攻撃を繰り返す。

柊は押され気味になり、心の中で葛幸卿の強さを実感していた。「この差をなんとかしなければ、、、」葛幸卿の吸収したレナトゥスの力は、彼を異次元の存在へと昇華させていた。

しかし、柊はあきらめずに意志を燃やし続ける。彼は内なる黒炎の力をさらに引き出そうと、心の奥底で渦巻く感情に身を委ねた。「今度こそ本気で殺りにいく」

柊は再び黒炎を纏い、今度は一気に攻撃を切り替えた。「炎型・大炎・黒鳴流」声を張り上げ、彼の剣先から黒い炎が満ちあふれる。闇を照らすかのように、黒炎が渦を巻きながら葛幸卿に向かって疾走する。

激しい炎の奔流が葛幸卿を襲い、彼の巨大な肉体を飲み込もうとする。しかし、彼はまだ平然としている。「そんなものが俺を倒せると思ったのか?」

葛幸卿は黒炎に向かって両手を掲げ、異次元の再生力を最大限に引き出す。すると、彼の背後からは少しの闇が生まれ、闇の力量が彼に宿る。その結果、彼は前方に突進し、柊の黒炎を打ち消そうとする。

「黒炎が俺を飲み込むことはない!」葛幸卿は全力で柊に向かって突進する。圧倒的な力のぶつかり合い!二つの炎がぶつかり合い、衝撃が周囲に響き渡る。

果たして、この戦いの行く末はいったいどうなるのか。両者の力が互いに交錯する中、運命の瞬間が静かに迫ってきていた。柊は、葛幸卿との闘争を通して自身の真の力を発見しようとしていたが、その道のりは孤独で過酷なものであることは間違いなかった。
柊は目の前に立ちはだかる葛幸卿の圧倒的な力に押され続け、心の奥底で焦りがうずまいていた。どれだけ黒炎の力を引き出しても、眼前の敵はまるで揺るがない巨大な壁のように感じられた。しかし、彼は心の中で戦い続けるしかなく、気合を入れて再び黒炎を纏いなおした。

「まだ終わらんぞ、柊!」葛幸卿は高笑いをしながら、再び攻撃を仕掛ける。その肉体からは恐ろしい力が湧き出ており、もう一度撃ち込んでくるかと思われた瞬間、彼の表情が変わった。

突如として、葛幸卿の足元が揺らぎ、彼の体勢が崩れ始めた。柊はその様子を驚愕で見つめた。「どうなっている…?」

「ち、ちくしょう!」葛幸卿は両手で頭を掻いた。彼の黒いオーラが弱まり、全体的に力が抜けたように見えた。何かが彼の中で崩れ落ちているのだ。

柊はその瞬間を逃さなかった。「また行くぞ」彼は再び剣を構え、心の中から勇気を引き出していく。

「炎型・大炎・黒鳴流」柊は叫びながら、全力で黒炎の剣を振り下ろした。周囲の空気が揺れ、黒炎が一筋の閃光となって葛幸卿に迫る。

それでも、葛幸卿はそれを避けようとしたが動きが鈍り、力が入らない。柊の炎が彼を襲う瞬間、彼の顔には恐怖が浮かんだ。「こ、この力は…!」

黒炎が葛幸卿に直撃し、衝撃が全体を揺らした。柊はその瞬間、自らの力が通じた感覚を味わった。心の中で歓喜の声が上がっていた。「やったか、、、」

しかし、まだまだ油断はできない。葛幸卿は動揺しながらも、彼の再生能力が働いているのを感じ取った。「まだ…負けるわけにはいかない!」

だが奇妙なことが起こった。葛幸卿の体は明らかに遅れていた。彼の反応は鈍く、黒炎の威力も薄れ始めていた。柊はその隙を見逃さず、次の一撃を繰り出す。「炎型・大炎・黒靂閃攻」

柊は自らのすべてを託し、全力で剣を振りかざした。そしてその瞬間、黒炎から放たれた圧倒的な熱量が、葛幸卿の体に再び直撃した。

「グハッ!」葛幸卿が声を上げ、ついにその体が膝をついた。まるで力を失ったかのように、周囲の空気が彼の周りに静まりかえった。柊は思わず、驚愕と興奮の入り混じった表情で彼を見つめた。
「おれを舐めるなよ」

一瞬の静寂の後、柊は一歩前に踏み出し、決定的な攻撃を仕掛ける。葛幸卿は名残惜しそうに体を起こすが、そこにはもはや再生の力はない。それはまるで消えゆく夕日を見つめるようだった。

「終わりだ」柊はその力を解き放ち、再び炎を纏わせた剣を高く掲げる。そして、全身全霊を込めた最後の一撃を振り下ろした。
「炎型・大炎・黒紫威侵」

黒炎が葛幸卿を包み込み、彼のすべてを飲み込む。膨大な力が吹き荒れる中で、柊は葛幸卿に勝利したことを実感しつつあった。

やがて、明るい光が戦場を覆い尽くし、葛幸卿はその中で消え去った。周囲の空気が静まり、戦いは終焉を迎えた。

「生きている限りはどんな生物でも平等に死に絶える。実概念とはいえ、顕現したばかりのいわば赤ん坊を吸収し、自らの中に閉じ込めることは、殺すのとそうかわりない。死んでしまえばどんなに強くとも力は全て消え去る。残念だったな葛幸卿。」
彼は静かに呟き、戦いの終わりを胸に刻んだ。

その戦いの一部始終を見ていた明たちは、勝利の歓喜と共に、宗一郎へと関心が移りつつあった。最強のナキビト相手に生きているのだろうかと、、、
戦場には静寂が広がり、勝利を収めた柊は疲れた身体を引きずるようにしてその場を見渡した。しかし、その勝利の余韻に浸る暇もなく、彼の視界の奥に潜む影があった。葛幸卿の敗北を受けたサヴェッジの姿が、ジリジリと燃え盛る戦場に妖怪のように浮かんでいた。

悲しげな表情を浮かべたサヴェッジは、一瞬の安らぎを覚えたが、その瞬間には葛幸卿の運命を背負い、自らの手で宗一郎を打倒しようと猛狼のように突進してきた。彼の目は暗澹とした光を宿し、執念が道を切り開いていく。

「宗一郎、終わりだ!」サヴェッジの声が響くと、宗一郎は激しい緊張感に包まれた。必死に対抗しようとする彼だったが、サヴェッジの猛攻はまるで津波のように押し寄せ、反撃の隙を一向に与えない。

「く、くそっ!」宗一郎は顔をしかめ、全力で立ち向かおうとする。しかし、彼の技はサヴェッジには通じず、逆にそのたびに彼は痛みを味わうことになった。大きな一撃が脇腹を襲い、痛みが全身を駆け抜ける。瞬時に膝が崩れ落ちるようだったが、宗一郎はまだ立ち上がり続ける。

「お前一人では、俺を倒せない!」と自身に言い聞かせ、彼は気力を振り絞って反撃を試みた。疲弊した身体から発せられる攻撃はどこかぎこちなく、サヴェッジの活きの良さに全く歯が立たなかった。

サヴェッジは、宗一郎の必死の抵抗を見て、胸の内にまだ葛藤を抱えているようだった。「貴様の苦しみは、私の想いだ……」彼の声には激しい悲しみが混じっており、彼の手には葛幸卿の運命が重くのしかかっていた。

その一撃が再び宗一郎を捉え、凄まじい衝撃が背中から彼を貫く。「グァッ!」宗一郎は苦悶の声を上げた。ボロボロになりながらも、必死で立ち上がって耐えるが、彼の身体は徐々に悲鳴を上げていた。

「まだ、負けられない……」宗一郎はか細い声で呟く一方で、仲間が駆けつけることを強く願っていた。仲間たちの姿が見えないまま、剣に宿った炎は赤に戻っていたとしても、彼は瞳の奥に希望を宿し続けていた。

しかし、それも一瞬の夢であるかのように感じられた。サヴェッジはその隙を逃さず、さらに一段階の攻撃を加えてくる。「逃げられると思うな!」 彼は全力で突進し、宗一郎の防御が崩れ落ちる。

「うっ、うわあああ!」一撃が喉元を撫で、痛む身体は限界に近づいていた。力を振り絞ろうとするも、無情にも全ての力が抜けていく。

そのとき、ただ一つの希望が遠くから駆けつけ、仲間たちの姿が見えた。柊や蔵前が全力で駆けつけ、宗一郎を救おうとしていた。しかし、その進行は遅く、サヴェッジは宗一郎に迫る。

「お前はここで終わりだ!」サヴェッジは獰猛な表情を浮かべ、止めの一撃を放とうとする。

「最強のナキビトには歯も立たないのか、、、」宗一郎の心の叫びが重く響く中、彼は生き延びるための最後の一手を模索していた。仲間が駆けつけるまでのほんの僅かな時間、一瞬の動きが彼の運命を左右するのだった。
宗一郎は、死の淵で意識が薄れゆく中、過去の思い出に浸っていた。その瞬間、彼の心の中には長い長い走馬灯が映し出され、幼少期の懐かしい光景が浮かび上がる。

小さな頃、次郎と過ごした日々が蘇った。互いに仲が悪く、いつも小競り合いを繰り返していたが、それでも彼は唯一の家族だった。今ではただ一人だけの存在となってしまった次郎。愛想は悪く、人と会話するのを嫌い、友達も一人もいない。そんな次郎を、宗一郎は心から愛していた。

なぜなら、昔の次郎は今とは正反対の社交的で楽しそうに笑っていたからだ。友達と遊び、明るく前向きな性格は、彼女や周囲の人々を明るく照らしていた。二人でヴァイスの森を探索し、生き延びるために互いを鼓舞し合った日々は、宗一郎にとって大切な思い出だった。

しかし、その日々は長く続かなかった。森での冒険の中で仲間を失い、次郎は心の闇に呑み込まれてしまった。彼の性格は次第に暗く、捻じ曲がったものへと変わり、かつての社交的な姿はどこにも見当たらなくなった。宗一郎はその様子を目の当たりにし、言葉にもできない悲しみを抱えていた。

「無力だった、俺は…」死の淵で、宗一郎は敵への怒りを思い出していた。次郎がこんな風になってしまったのは、自分の無力さが原因だ。彼の心を救えなかった後悔が胸を締め付け、沸き上がる怒りが彼の中で燃え盛っていく。

その怒りと絶望を原動力に、彼は再び力を取り戻そうとしていた。死ぬ寸前、多大な力を得る直前、背筋にかつてのヴァイスの森での誓いがよみがえる。「絶対に諦めない、次郎を守るために! 俺はまだ、戦える!」

「うぉぉぉぉお!」宗一郎は叫び声を上げ、目の前に迫るサヴェッジの拳を弾き返した。情熱と怒りが彼の心にみなぎり、手にした剣は赤黒い紅の炎に包まれていた。まるで獄炎の力兆が一瞬で彼に与えられたかのような感覚だった。燃え盛る炎は彼の意志を強固にし、怒りが力となって宿っている。

サヴェッジは一瞬驚きの表情を浮かべたが、すぐに自らの冷静さを取り戻し、ニヤリと笑った。「面白くなってきたな、宗一郎」

その瞬間、柊と蔵前が駆けつける音がした。二人はすぐさま宗一郎の傍に現れ、彼を支えに走ろうとした。しかし、サヴェッジの笑みはさらに広がった。「ここからが楽しい戦いだ」と呟くと、闘志が一層燃え上がる。

宗一郎は、仲間がそして次郎が彼を守ってくれている、その想いを胸に、新たな力に満ち溢れ、サヴェッジに立ち向かう決意を固めた。この瞬間こそが、運命の分岐点となるのだ。彼は心から喜びを感じ、何か新たな力が目覚めだしているのを確信した。
サヴェッジの圧倒的な力が宗一郎を押し込んでいく。サヴェッジはまるで一匹の獣のように獰猛で、その攻撃は臨界点を超えた迫力を持っていた。拳が振り下ろされ、宗一郎は全身で受け止めようとしたが、剣を握る手が力を失いかけていた。

「く、こんなところで、終われるわけにはいかない!」宗一郎は耐え続けようと必死で呻いた。彼の心の奥底で、幼い頃の次郎との思い出が蘇る。「だめだ、俺が諦めてはいけない。次郎のためにも!」

サヴェッジは楽しげな笑みを浮かべながら、圧倒的な力で宗一郎を床に押し倒そうとしていた。しかし、その時、彼の意志の強さが突然の閃光となり、宗一郎の身体に灯をともした。

「負けない、俺は!」まさにその瞬間、彼の剣から獄炎の力兆が一層燃え上がり、自身をかき立てる。サヴェッジの拳が迫るが、それでも宗一郎は心の中の炎を信じて立ち上がる。仲間のため、次郎のため、彼の心に秘めた想いが、決して折れることはなかった。

その背後から柊と蔵前が、彼を支え続けていた。二人は宗一郎の強さを感じ取り、彼の決意に応えようとするように、手を差し伸べた。「宗一郎やるぞ」「お前を信じているぞ!」

その言葉はまるで宗一郎を強化するための魔法のようだった。柊の冷静さと蔵前の力強さが混じり合い、彼自身が孤独ではないことを再認識させる。「一人じゃない、俺は一人じゃない!」

宗一郎はサヴェッジの攻撃に耐え、彼にいいつけを置く。どんなに強烈な一撃が来ようとも、壮絶な力が彼を打つ中、一つ一つ声を上げながら、最小限の力で反撃のチャンスを窺った。

「耐えるんだ!」「がんばれ、宗一郎!」柊と蔵前の声がその瞬間、彼の心を満たす。「絶対に、仲間を守る!」

やがて、サヴェッジの技の隙間が生まれた。宗一郎はその瞬間を逃さず、突進するように剣を振り下ろした。「お前の攻撃には負けない!」赤黒い炎が剣に宿り、サヴェッジへと向かう。彼の力が今度こそ、サヴェッジの意表を突く。

サヴェッジは驚いた表情のまま攻撃を受け止めようとしたが、その力は予想外だった。炎の力が彼を貫通し、疾風のようにサヴェッジを突き放した。「うっ!」サヴェッジは一瞬のうちにダメージを受けたように、身体が弾け飛ぶ。

「今だ宗一郎、こいつを追い詰めるんだ」柊の叫びが彼に力を与える。踏み込むように、宗一郎は連続攻撃を繰り出す。蔵前もそのタイミングで参戦し、サヴェッジの動きを封じ込めた。

しかし、サヴェッジはすぐに立ち直り、再び挑戦として立ち上がる。「お前たち、本当にいいチームだな!さあ、もっと楽しませてくれ!」その笑みは狂気じみていたが、同時に彼の意志の強さを示していた。

圧倒的な強者との戦いで、三人は互いに信じ合い続け、どんな痛みにも耐え抜く覚悟を持っていた。それこそが、彼らが共に立ち向かう理由だった。敵を前にしても、彼らの心には決して揺るがない絆があった。

「仲間と共に、この地を守るために!」宗一郎は心の中で誓い、戦いの幕が降りようとしていた。どちらに転ぶかもわからない運命が、彼らを待っている。それでも、彼は仲間と共に戦うことで未来を切り開くのだ。
戦場は重苦しい緊張感に包まれていた。獄炎の力を兆とはいえわずかでも使用したことで、宗一郎の身体には強烈な反動が襲いかかっていた。すでに力尽き、彼は膝をつき、剣を地面につけて立ち上がることすらできなくなっていた。全身が焼けるように痛み、意識が薄れていく。心の奥で次郎への思いを叫んでも、もはやその力は届かない。

彼を守るため、柊と蔵前は必死で戦い続けていた。しかし、サヴェッジの力には太刀打ちできず、次々と繰り出される攻撃に圧倒されながらも、必死に宗一郎を背に守り続ける。

「宗一郎、がんばれ!お前は絶対に立ち上がるんだ!」蔵前が叫び、その声は危機感に満ちあふれていたが、サヴェッジの影が近づくたびに恐怖が広がる。柊も険しい表情で立ち向かうが、時間が経つにつれて疲労が彼らの身体を蝕んでいく。

その時、サヴェッジはいきなり機嫌が悪くなったように呟いた。「宗一郎は戦闘不能か。なら楽しみがなくなったなー」と、その言葉が響くと同時に、彼は一瞬で負傷したみんなの元へ駆け寄った。

「威舞破武・頭頸麟(とうけいりん)!」彼の声は、一気に空気を変えた。ボンッという音と共に、慈岳の頭を吹き飛ばし、場の空気が凍り付いた。皆の視線は凍りつき、サヴェッジの恐ろしい強さを再認識せざるを得なかった。悲しみと怒りが広がり、その瞬間、仲間たちは絶望を感じ取った。

「ふふふ、これで再び貴様らが俺に戦いを挑む理由ができた。復讐は愚かだが強くなる近道だからなー」サヴェッジは高らかに笑いながら神々しいまでの狂気を漂わせていた。その響きは、仲間たちの心に激しい怒りを呼び起こす。

「お前を、絶対に許さない」蔵前が叫んだが、その言葉は空を切った。サヴェッジは悠然とし、またもや瞬時に姿を消してしまう。彼の凄まじいスピードに呆然とし、再び立ち向かう余力を失った。

仲間たちは、疲れ果て、身を寄せ合うようにして立っている。ボロボロになりながらも、彼らは互いに支え合い、残された希望の光を見つめていた。慈岳を失った悲しみを胸に秘めながら。

「ラプは守り切った。俺たちの勝ちだ。」と柊が静かに言った。彼の声に、友情と絆が再確認され、仲間たちはその思いを胸に誓った。たとえこの瞬間の戦いは終息を迎えたとしても、新たな戦いが待ってくることは分かっていた。

サヴェッジの力に屈せず、彼らの戦いはここで幕を下ろさない。数多の試練が待ち構えているが、絆を深めた彼らは、必ずや再び立ち上がる。そして、失われた命のために、もっと強くなって戻ってくるのだ。

この戦いの後、彼らの心には新たな決意が燃え上がり、燃え尽きることはない。それが彼らの悪夢のような運命を変える力となることを信じていた。



ラプに戻った仲間たちは、戦いの傷を癒すために長い時間を費やした。彼らの中で最も重傷だったのは宗一郎だった。生きていることが奇跡なくらいに骨が折れ、内臓にもいくつかの損傷が見られた。意識が戻ると、彼は自身の体が痛むことに気づきながらも、仲間たちの声が少しずつ耳に届くようになっていた。

皆は無事に生き残ったことに感謝し、戦いで失った慈岳に心からの追悼を捧げた。明は誰よりも泣いていた。彼は一緒に過ごした時間の中で、慈岳の優しさと強さを目の当たりにしていたため、その思い出が胸を締め付け、涙が止まらなかった。

悲しみのムードが漂う中、仲間たちの心に暗い影が忍び寄っていた。それは「闇の教徒」に関する深刻な問題だった。闇の教徒は、人々の恐れから生まれる実概念を進行する者たちであり、その幹部たちはいつも黒炎の力を使用していた。黒炎は闇に堕ちた悪の象徴であり、今まで正義の黒炎使いは一人も存在しなかった。

そのため、仲間の心の中に、柊が闇の教徒であるという疑念が浮かんでいた。もしこれが真実であれば、仲間の裏切りや、それを超える最悪の事態が待ち受けているかもしれない。恐ろしい実概念が誕生する可能性もある。いや、すでに誕生している可能性もある。この現実を受け入れたくはなかったが、無視することもできなかった。

宗一郎はその考えが胸に重くのしかかり、すぐに柊の取り調べを行うことを決意した。「俺がやらなければ、誰がやるんだ…」その決断は、仲間の信頼を裏切る行為に他ならなかったが、彼はこの疑念を解決するためには自らの手を汚す覚悟が必要だと強く感じていた。

意識が戻った宗一郎は、他の仲間に柊を呼ぶように指示した。仲間たちは、彼の様子から何か大事なことがあると察し、すぐに柊を呼び寄せた。やがて柊が部屋に入ると、宗一郎は彼に鋭い視線を向けた。

「柊、お前に聞きたいことがある。」宗一郎の声は、通常とは違う威圧感を含んでいた。柊は知っていたかの如く、覚悟の決まった表情で、いつものような生気を感じないあっさりした声で宗一郎を見つめて答えた。
「なにを聞きたいかはわかっている。」

「やはりわかっているな、お前の黒炎の力についてだ。お前は本当に闇の教徒になっているのか?」その言葉が燃え尽きそうになっていた部屋の空気を一瞬で凍り付かせた。

他の仲間たちもその瞬間、息を呑んだ。彼らの心の中にあった疑念が、言葉にされてしまったからだ。柊はその真っ黒な目をとじて、表情を変えることなくそっと言葉を放った。
「ちがう。」

「だが、みんなはお前の力を恐れている」と宗一郎は冷静に続けた。「このままいれば、皆の信頼が崩れてしまう。俺はお前を信じたいが、証明してもらわなければならない。」

仲間たちの視線が柊に集中した。柊の表情は終始変わることなく、みなの不安を煽るが如く、ただ暗い表情で宗一郎を見つめた。その目は宗一郎への信頼が込められていた。
「俺は葛幸卿を殺した。」
「お前らを裏切ることはない。わかっているだろ?宗一郎。お前は俺が1番古くからの友だ。」

その瞬間、宗一郎の胸が揺れた。信じたい気持ちと、疑念との狭間で揺れ動く。彼らの絆が試されていると同時に、これからの戦いがどれだけ厳しいものになるかを痛感した。

「ならば、証明してもらうために、俺たちと共に戦え。もし本当に力を持っているなら、それを俺たちのために使用してくれ」と宗一郎は決意を持って宣言した。

柊はその言葉を受け、そっと唇を動かした。
「弱い奴は俺が守る。お前もだ宗一郎、おれはお前より強い。」

みんなは柊を信じるべきか信じないべきか、葛藤していた。
明はゆれるみんなの考えの中で、なにもわからずうらぎっていたのであれば、殺すまでと冷たい感情を明らかとしていた。
柊は宗一郎の信頼を受け入れ、再びラプに留まることになった。彼は引き続き幹部としての役目を全うし、仲間たちとの絆を深めることに全力を注いでいた。

一方、慈岳を失った悲しみを抱える明は、新たな幹部としての重責を担うことになった。彼は慈岳の意志を引き継ぎ、心強い存在となるべく努力を続け、仲間を支えることに専念した。明の優しさと強さは、以前の仲間たちの心に希望をもたらした。

修復されたラプ本部とその周囲に設置された監視カメラは、まるで城郭の壁のようにすべてを包み込むように守られていた。幹部たちは常に周囲の状況を把握し、不審な動きがあればすぐに警報が鳴り響くシステムを整えていた。葛幸卿の襲撃以降、森に入ってくるナキビトの数が増加していたため、彼らの存在を危険視する必要があった。それに伴い、幹部たちはナキビトが入ってくる度に迅速に討伐に向かい、村人たちを保護するために団結して戦った。

柊や明をはじめとした幹部たちの献身的な努力の結果、ラプは新たな道を切り拓いていった。街に積極的に訪れ、多くの人々を保護し、彼らをラプに誘導する活動を行った。彼らはその活動を通じて、ナキビトの脅威だけでなく、外の世界で孤立し、苦しんでいる人々に温かい手を差し伸べる姿勢を掲げた。

そうして、葛幸卿との戦いから一年が経つころには、ラプの人数は13人から100人以上にまで増えていた。新たに加わった仲間たちはそれぞれの個性を持ち寄り、共に助け合いながら新しい家族のような絆を築いていった。彼らは共に笑い、共に泣き、何よりも互いに支え合う存在として成長を続けていた。

新たな幹部たちがリーダーシップを発揮し、めまぐるしく変わる状況の中でも一つになって力を合わせることで、ラプはますます強固な組織へと変貌を遂げていた。外からの脅威に対抗しつつ、内部でも団結を図り、日々進化していく姿勢は、もはや単なる避難所ではなく、希望の象徴となっていた。

しかし、その安心感の裏には、ナキビトという不気味な影が常に付きまとうことを仲間たちは知っていた。彼らがラプを守る存在であると共に、困難を乗り越えるためには更なる戦いが待ち受けていることを覚悟しなければならなかった。

新たな仲間が増え、共に未来を歩むことができる希望を抱く中、柊も明も、これからの戦いがどのような形になるのかを理解し、きっと互いに助け合っていけるに違いないと信じていた。
ラプの進化は止まらず、

彼らの物語は今後も続いていくのだった。
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