黒の悪魔が死ぬまで。

曖 みいあ

文字の大きさ
上 下
38 / 72
第二章:新しい世界

面倒見の良い人

しおりを挟む


「…ったく!

なぁ~にが、”自信が服を着て歩いてる”、だ!

そんなやつ…ほんとにいたら、”イタイやつ”だろ…!」



ついさっき、ハナ隊長とサクヤ隊長に、言われたこと。


ノヴァン隊長は…



2人と別れて、俺と2人だけになった今でも。

まだ…気にしているようだった。




「まあ…。自信があるのは、良いことだと思いますよ。」



「お前それ…フォローになってないからな?

…つーかむしろ、肯定してんだろっ!」



そう言って、目の前に立っていたノヴァン隊長は…




…俺の視界から、消えて。




ーーぐいっ!!


「うわぁ!!!」


気付いたら…



…視界いっぱいに、青空が、広がっていた。





「ワハハ!俺の勝ちぃ~!!!」


その青空に、嬉しそうなノヴァン隊長の顔が。
上から覗き込むように、入ってくる。


俺は、一瞬のうちに…投げ飛ばされて。
芝生の上に、仰向けに…転がされていた。





やっぱり…


「…大人げない。」


俺は、そう…つぶやかずには、いられなかった。


なんで
こんなことになっているのかというと…





さっきまでいた、あの…薄暗い部屋は、やっぱり地下室で。


俺の…”入隊宣言”も、終わり。
そこから出た、隊長3人と、俺。

これから…どうするのかと、思っていたら…



「よっし!朝の運動がてら、早速…

…修行するぞ、ヨウ!」



そう、元気よく告げたノヴァン隊長に連れられて。


地下室を出た足で…そのまま建物の外、すぐ目の前にある、
公園のような…芝生の広がる場所に来ていた。




「俺を倒すつもりで…自信持って、向かってこいっ!!!


…あ!自信と言えば…!さっきのあいつらさぁ~!!!…」



…とまあ、こんな感じで。

組手の最中に、話しかけられ…。





冒頭のやり取りを経て…

…一瞬で、芝生に投げ飛ばされた、俺。






「大人げなく…ないっ!

戦いとは、常に厳しいものなのだよ。」



ハハハと、機嫌よく笑っているノヴァン隊長を、起き上がりながら…改めて見る。




(瞳の色…変わって、ないな。)



つまり…

チカラは、使っていない。




それなのに…



(…動きを、目で…追えなかった。)



チカラとは関係なく…身のこなしの問題なのか?

いや…それとも…瞳の色が変わらずに、チカラを…?





そんなことを、考えていると


「ヨウの実力は、今のでだいたい分かったな!」




「…へっ?今ので!?」



「おう、十分!

…まだまだ、弱っちいな!」


また、嬉しそうに笑っている。そして…




「お前は…


…この俺、”タケト・ノヴァン”が率いる、

特別な人間しか入れない…”特色隊”の、一員になるんだ。


もっともっと、強くなってもらわないと、俺が困んだよ~!


ま!これから毎日、たっっぷりしごいてやるからな!覚悟、しとけよ?」




俺は、さらっと…大事なことを、言われた気がした。



「タケト・ノヴァン隊長の…特色、隊?」




「おお、そうだぜ!

知ってると思うが…カラーズは、大きく分けて…”暖色”か、”寒色”か、だ。

厳密には中性色…なんてのもあるけど。
ま、だいたいのカラーズは近い色で…暖色か寒色かに、分類される。


ただ…



…そんな、一般的な2択に、分けられない色。


そんな特別なカラーズを持つものだけが…俺の、”特色隊”に、入れるのだっ!!」



ビシッと、俺を指差して。

ノヴァン隊長が、キメ顔のまま、続ける。



「ちなみに…


…50人くらいいるブラックアビスで、


特色隊は…俺と、お前だけだ!どうだ、光栄だろっ?」




ノヴァン隊長と…


「…俺だけっ!?」



嬉しそうなノヴァン隊長とは対称的に…


俺は、びっくりしたまま。その場に…固まってしまった。




「なんだよ、そのリアクション!もっと嬉しそうにしろよ~。」




実はさっき…




…地下室を、出た時に。

前を歩いていた俺と、ノヴァン隊長の…すぐ、後ろ。


ハナ隊長とサクヤ隊長の会話。
偶然耳に入ってきた、その会話を思い出す…



『これで、新しく入隊する子、4人…ってわけね。』

『えぇ。ヨウ君以外の3人のうち…

発現者の2人は、僕と…ハナさんの部隊に1人ずつ、ですね。』

『そうね~。どの班に、配属してもらおうかな~。』

『僕は…、ひとまず、僕の班に入ってもらおうかな。』

『うちに来る子は…面倒見が良くて、優しい子の多い班に、しようかな。』


…なんて話が。

外に出るまで…盗み聞こえてきていた。





要するに…


”部隊”の中で、さらに細かく…少人数の班に、分かれているらしく。




だから…俺も…



「面倒見の良い…優しい先輩と…同じ班って…。」


(…思って…たのに!)


つい、正直に思ったことが。
最初の部分が…口に、出てしまっていた。




俺の、心の叫びを聞いた、ノヴァン隊長は…


「はぁ?

面倒見の良い…優しい先輩と…同じ班?



それって…



…俺のこと?ほんとのことだけど、照れるわぁ~。」




…盛大に、勘違い…してくれた。





(やっぱり…”自信が服を着て歩いてる”な…。)


今回は、その自信に助けられた…と思いつつ。


この、優秀だけど…どこか子どもっぽい隊長と…




(2人きりで…大丈夫、かな?)



少しだけ、不安を覚えながらも…



「あの…”特色隊”ってことは…

俺のカラーズが…”特色”って、ことですか?


っていうか、今の俺のカラーズって…”深紅”?”深緑”?…”黒”?」


ずっと、引っかかっていたことを、質問した。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

異世界にクラス転移したら全員ハズレスキルを持たされた

アタラクシア
ファンタジー
 人生で数度もない貴重なイベントである修学旅行。この風鈴高校に通う二年二組の生徒たちも、長い間待ち望んでいた修学旅行に胸を躍らせていた。  はしゃぐバスの中――突然周りが黒く染まり、生徒たちは下へ下へと落下してしまう。  目が覚め、見えた景色は――現実の法則が意味をなさない、まさに『異世界』であった。  クラス全員ハズレスキル!?前代未聞の異世界転移に少年少女らは立ち向かう。 ――根源に至る『四騎士』 ――世界征服を企む『ナイトメア』 ――新世界を作ろうとする『ネビュラ教』  異世界の様々な情勢に振り回されながらも奔走する。目指すは「クラスメイト全員の合流」と「元世界への帰還」。  はたして彼らは全員合流し、元の世界へと帰れるのか。  長くも奇妙な修学旅行が今始まる――。

貴族家三男の成り上がりライフ 生まれてすぐに人外認定された少年は異世界を満喫する

美原風香
ファンタジー
「残念ながらあなたはお亡くなりになりました」 御山聖夜はトラックに轢かれそうになった少女を助け、代わりに死んでしまう。しかし、聖夜の心の内の一言を聴いた女神から気に入られ、多くの能力を貰って異世界へ転生した。 ーけれども、彼は知らなかった。数多の神から愛された彼は生まれた時点で人外の能力を持っていたことを。表では貴族として、裏では神々の使徒として、異世界のヒエラルキーを駆け上っていく!これは生まれてすぐに人外認定された少年の最強に無双していく、そんなお話。 ✳︎不定期更新です。 21/12/17 1巻発売! 22/05/25 2巻発売! コミカライズ決定! 20/11/19 HOTランキング1位 ありがとうございます!

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!

よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です! 僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。 つねやま  じゅんぺいと読む。 何処にでもいる普通のサラリーマン。 仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・ 突然気分が悪くなり、倒れそうになる。 周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。 何が起こったか分からないまま、気を失う。 気が付けば電車ではなく、どこかの建物。 周りにも人が倒れている。 僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。 気が付けば誰かがしゃべってる。 どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。 そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。 想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。 どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。 一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・ ですが、ここで問題が。 スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・ より良いスキルは早い者勝ち。 我も我もと群がる人々。 そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。 僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。 気が付けば2人だけになっていて・・・・ スキルも2つしか残っていない。 一つは鑑定。 もう一つは家事全般。 両方とも微妙だ・・・・ 彼女の名は才村 友郁 さいむら ゆか。 23歳。 今年社会人になりたて。 取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

Re:Monster(リモンスター)――怪物転生鬼――

金斬 児狐
ファンタジー
 ある日、優秀だけど肝心な所が抜けている主人公は同僚と飲みに行った。酔っぱらった同僚を仕方無く家に運び、自分は飲みたらない酒を買い求めに行ったその帰り道、街灯の下に静かに佇む妹的存在兼ストーカーな少女と出逢い、そして、満月の夜に主人公は殺される事となった。どうしようもないバッド・エンドだ。  しかしこの話はそこから始まりを告げる。殺された主人公がなんと、ゴブリンに転生してしまったのだ。普通ならパニックになる所だろうがしかし切り替えが非常に早い主人公はそれでも生きていく事を決意。そして何故か持ち越してしまった能力と知識を駆使し、弱肉強食な世界で力強く生きていくのであった。  しかし彼はまだ知らない。全てはとある存在によって監視されているという事を……。  ◆ ◆ ◆  今回は召喚から転生モノに挑戦。普通とはちょっと違った物語を目指します。主人公の能力は基本チート性能ですが、前作程では無いと思われます。  あと日記帳風? で気楽に書かせてもらうので、説明不足な所も多々あるでしょうが納得して下さい。  不定期更新、更新遅進です。  話数は少ないですが、その割には文量が多いので暇なら読んでやって下さい。    ※ダイジェ禁止に伴いなろうでは本編を削除し、外伝を掲載しています。

辺境領主は大貴族に成り上がる! チート知識でのびのび領地経営します

潮ノ海月
ファンタジー
旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる! トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。 領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。 アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。 だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう 完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。 果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!? これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います

霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。 得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。 しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。 傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。 基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。 が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です! 小説家になろうでも10位獲得しました! そして、カクヨムでもランクイン中です! ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。 いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。 欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・ ●●●●●●●●●●●●●●● 小説家になろうで執筆中の作品です。 アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。 現在見直し作業中です。 変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

処理中です...