27 / 72
第一章:あの日、再び
すれ違い
しおりを挟む「あと少し…、何か、”きっかけ”があれば…。」
…これは、誰の声?
何を言っているのかは分からないけど…
…頭に響く、この声を…私は、知っているような…。
「んっ…。ここは…?」
頭が、妙にボーッとする。
気だるい身体をゆっくりと起こし、ゆっくりと頭を振る。
(ここは…どこ?)
浮上する意識の中、視界の先にある、真っ白な軍服に気が付いた。
背中側から見ても分かる、見慣れたその隊服と、優しい銀髪…。
「ブレ…イズ、隊長…?」
いまだ覚醒しきっていない頭でも、その人が、昔から私達の平和を守ってくれている、
ホワイトノーブルの隊長…尊敬してやまない、ブレイズ隊長だと、すぐに理解できた。
「ブレイズ隊長…どうしたん、ですか…?」
まだ冴えない頭をおさえつつ、
今度はすこし大きめの声で、ブレイズ隊長へ声をかけた。
「…っ!ヒマリちゃん、気がついたんだね。」
良かった、と言い、私の元へ駆け寄ってくれる。いつもの、優しい微笑みで。
なんだかよく分からない状況だけど…その、ブレイス隊長の微笑みに、一気に安心するのが分かった。その時…
ーーードォン!!ーーー
近くで、ものすごい音がした。
あれは…
…あの、黒い塊は…何?
「…ヒマリ…ヒマリ…!ハナレ、ロ…!!!」
黒い塊だと思ったモノは、何かを呟いている。
いや…黒い塊じゃ、ない。
黒いモヤの中…よく見ると…誰かが、立っている。
「誰…?」
よく見ると、それは…
「…ヨ、ウ…?」
見間違える…はずがない。
【黒の誕生】で、お母さんを亡くして。
この山に移ってきて7年。ずっと一緒に育った、それは…間違いなく、幼馴染のヨウだった。
でも…
「目が…赤い…?」
それに…辺りを、真っ黒なモヤが包み込んでいる。
包んでいる、というより…あれは、まるで……漆黒を、”身にまとっている”、ような…。
「黒の…悪魔…?」自然と、そう呟いていた。
「ヨウ君…意識が…!
そうか…ヒマリちゃんのことは、”分かる”んだね…。」
ブレイズ隊長が、そうつぶやく。
「やっぱり…あれ、は…ヨウなんですか?!」
信じられなくて、私はブレイズ隊長に詰め寄った。
「…残念ながら、そう、みたいだ。ここら一体、私が駆けつけたときには、もう…。」
ブレイズ隊長は、申し訳無さそうに、私を見つめる。
落ち着いて…今まで気にする余裕が無かった、自分の周りを、よく確認する。
私達のいる森の中は…私たちのいる付近をのぞいて、もはや、森とは…言えない位の惨状だった。
木々は焼け焦げ、地面はえぐられ。
誰かが…何かが…戦闘が…、起きた、ような。
そして、”それ”は…。
ゆっくりと、私に、認識された…。
「うっ…。」
真っ黒に焦げた…人、が。
真っ黒な地面に、真っ黒に…焼け焦げた人が、横たわっている。
目をそらしかけた一瞬…
どこか見慣れたその姿に、視線が…止まる。
あの、横たわった人…あれ、は……
「お、おと…さん…?」………声が、上手く、出せなかった。
「ひ……。」
立っていられなくなり、ガクンと、その場にへたり込む。
…と、当時に「…っや、いやぁぁぁあ!!!!」
……出なかった声が、絶叫として。私の口から、溢れ出た。
「…ヒマリ…!!!ヒマリ…!!ヒマリ…!!ヒマリ…!!!」
私の絶叫と同時に、
赤い目の…漆黒を、身にまとったままの、ヨウも叫ぶ。
そして…
…ヨウの叫びに、呼応するように。その周りに、………雷が、降り注いだ。
ーーーバリバリバリッ!!!!ーーー
「危ないッ!」
ブレイズ隊長が、へたり込む私を抱きかかえて、ヨウから更に距離をとった。
「ここは…彼は、危険です。ひとまず、逃げましょう。」
私は、呆然としたまま。
立ち上がることもできず、肩を抱きかかえたままの、ブレイズ隊長を見つめて、問いかける。
「あの雷…。ヨウが…やったんですか?」
お父さんの、焼けた身体を思い出す。
ようやく理解が追いついて、涙が…溢れてくる。
「ヨウが…お父さんをっ、あんなっ風に?!」
泣きながら、叫びながら。
絶叫のような問いを、ブレイズ隊長にぶつけた。
「…君は、”禁色”と呼ばれる、珍しいカラーズの持ち主なんです。
黒の悪魔は、そのチカラの解放に…君のような、”禁色”のチカラを、必要と…するらしい。
ここまで、ホワイトノーブルは、突き止めていたのですが…。」
ブレイズ隊長は、私から目をそらして。地面を見つめて、ぽつりぽつりと話す。
「本当に…お父さんのこと、すまない。」
そう言って、ブレイズ隊長は、深呼吸をし…。
何かを、決意したような表情で。
地面から顔を上げ、まっすぐに私を見て…話を、続けた。
「私が、駆けつけたときには、もう…。
きっと君を、ヨウ君…いや、”黒の悪魔”から、守ろうとしたんでしょう。
今夜、ヨウ君と…2人きりになったり、狙われたりは…していませんでしたか?」
「狙われて…。」
今朝の、ヨウとの会話を思い出す。
『5時半に、いつものでっかい切り株のとこ、来てくれないか。』
…そうだ…約束の、大きな切り株…。
ヨウに、突然誘われて。私は、この場所に…たった1人で、座っていた。
約束を守って、1人、切り株に座って…ヨウを待って…。
そして…。
そうだ、あの時、背後から…誰かが、近付いてくる気配を感じて…。
…そこで、意識を、失ったのだった。
「…誕生日会の前に、どうしても、って。あれは…。」
みんなが来ると、何か都合が悪かったの?
そして、今朝の会話を…後ろで、偶然聞いていたお父さんは…。
ヨウの…”黒の悪魔”の…狙いに気付いて、私を…守ってくれた?だから…
自分の中で、今日、1日の出来事に、辻褄が…合った、気がした。
お父さんが、あんなに真っ黒で…ボロボロで、倒れているのも…全部、全部、全部、全部…
「…ヨウの、せいっ!!!」
自分の中に溢れてくる、激しい怒り…目の前が…”濃い、赤みがかった黄色”に…染まっていくのを…感じた。
0
お気に入りに追加
22
あなたにおすすめの小説
貴族家三男の成り上がりライフ 生まれてすぐに人外認定された少年は異世界を満喫する
美原風香
ファンタジー
「残念ながらあなたはお亡くなりになりました」
御山聖夜はトラックに轢かれそうになった少女を助け、代わりに死んでしまう。しかし、聖夜の心の内の一言を聴いた女神から気に入られ、多くの能力を貰って異世界へ転生した。
ーけれども、彼は知らなかった。数多の神から愛された彼は生まれた時点で人外の能力を持っていたことを。表では貴族として、裏では神々の使徒として、異世界のヒエラルキーを駆け上っていく!これは生まれてすぐに人外認定された少年の最強に無双していく、そんなお話。
✳︎不定期更新です。
21/12/17 1巻発売!
22/05/25 2巻発売!
コミカライズ決定!
20/11/19 HOTランキング1位
ありがとうございます!

のほほん異世界暮らし
みなと劉
ファンタジー
異世界に転生するなんて、夢の中の話だと思っていた。
それが、目を覚ましたら見知らぬ森の中、しかも手元にはなぜかしっかりとした地図と、ちょっとした冒険に必要な道具が揃っていたのだ。

異端の紅赤マギ
みどりのたぬき
ファンタジー
【なろう83000PV超え】
---------------------------------------------
その日、瀧田暖はいつもの様にコンビニへ夕食の調達に出掛けた。
いつもの街並みは、何故か真上から視線を感じて見上げた天上で暖を見る巨大な『眼』と視線を交わした瞬間激変した。
それまで見ていたいた街並みは巨大な『眼』を見た瞬間、全くの別物へと変貌を遂げていた。
「ここは異世界だ!!」
退屈な日常から解き放たれ、悠々自適の冒険者生活を期待した暖に襲いかかる絶望。
「冒険者なんて職業は存在しない!?」
「俺には魔力が無い!?」
これは自身の『能力』を使えばイージーモードなのに何故か超絶ヘルモードへと突き進む一人の人ならざる者の物語・・・
---------------------------------------------------------------------------
「初投稿作品」で色々と至らない点、文章も稚拙だったりするかもしれませんが、一生懸命書いていきます。
また、時間があれば表現等見直しを行っていきたいと思っています。※特に1章辺りは大幅に表現等変更予定です、時間があれば・・・
★次章執筆大幅に遅れています。
★なんやかんやありまして...

2回目チート人生、まじですか
ゆめ
ファンタジー
☆☆☆☆☆
ある普通の田舎に住んでいる一之瀬 蒼涼はある日異世界に勇者として召喚された!!!しかもクラスで!
わっは!!!テンプレ!!!!
じゃない!!!!なんで〝また!?〟
実は蒼涼は前世にも1回勇者として全く同じ世界へと召喚されていたのだ。
その時はしっかり魔王退治?
しましたよ!!
でもね
辛かった!!チートあったけどいろんな意味で辛かった!大変だったんだぞ!!
ということで2回目のチート人生。
勇者じゃなく自由に生きます?

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います
霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。
得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。
しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。
傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。
基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。
が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。

調子に乗りすぎて処刑されてしまった悪役貴族のやり直し自制生活 〜ただし自制できるとは言っていない〜
EAT
ファンタジー
「どうしてこうなった?」
優れた血統、高貴な家柄、天賦の才能────生まれときから勝ち組の人生により調子に乗りまくっていた侯爵家嫡男クレイム・ブラッドレイは殺された。
傍から見ればそれは当然の報いであり、殺されて当然な悪逆非道の限りを彼は尽くしてきた。しかし、彼はなぜ自分が殺されなければならないのか理解できなかった。そして、死ぬ間際にてその答えにたどり着く。簡単な話だ………信頼し、友と思っていた人間に騙されていたのである。
そうして誰もにも助けてもらえずに彼は一生を終えた。意識が薄れゆく最中でクレイムは思う。「願うことならば今度の人生は平穏に過ごしたい」と「決して調子に乗らず、謙虚に慎ましく穏やかな自制生活を送ろう」と。
次に目が覚めればまた新しい人生が始まると思っていたクレイムであったが、目覚めてみればそれは10年前の少年時代であった。
最初はどういうことか理解が追いつかなかったが、また同じ未来を繰り返すのかと絶望さえしたが、同時にそれはクレイムにとって悪い話ではなかった。「同じ轍は踏まない。今度は全てを投げ出して平穏なスローライフを送るんだ!」と目標を定め、もう一度人生をやり直すことを決意する。
しかし、運命がそれを許さない。
一度目の人生では考えられないほどの苦難と試練が真人間へと更生したクレイムに次々と降りかかる。果たしてクレイムは本当にのんびり平穏なスローライフを遅れるのだろうか?
※他サイトにも掲載中

備蓄スキルで異世界転移もナンノソノ
ちかず
ファンタジー
久しぶりの早帰りの金曜日の夜(但し、矢作基準)ラッキーの連続に浮かれた矢作の行った先は。
見た事のない空き地に1人。異世界だと気づかない矢作のした事は?
異世界アニメも見た事のない矢作が、自分のスキルに気づく日はいつ来るのだろうか。スキル【備蓄】で異世界に騒動を起こすもちょっぴりズレた矢作はそれに気づかずマイペースに頑張るお話。
鈍感な主人公が降り注ぐ困難もナンノソノとクリアしながら仲間を増やして居場所を作るまで。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる