黒の悪魔が死ぬまで。

曖 みいあ

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第一章:あの日、再び

放棄したのは

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「もちろん、ヨウも一緒に。
ここで死ぬくらいなら…ホワイトノーブルに、協力するよ。」

アオ兄は、明るく大きな声で宣言する。

「ア、アオ兄っ!」

突然の流れに驚き。
勝手に自分の名前も出されて、さらに困惑する。

「なんでっ…。」

平気で…何の罪もない人も殺せる。
そんな組織に…さっきまで、怒っていたはずなのに。アオ兄は、本気で…?

「ヨウ…。シゲ叔父さんのことはもちろん許せない。
だけどな…
…ブレイズ隊長の言うことも、本当は分かるんだ。
大きな目的…”正義”のために、仕方のないこともあるんだって、こと。」

俺に背を向けているせいで、アオ兄の表情は分からない。

本当に、本心で…言っている?一体、どんな顔で…。



「”禁色”を知っているアオバ君なら、
私の”正義”も、分かってくれる気がしていました。」

ブレイズ隊長が、優しく微笑む。

「もちろん、ヨウ君も一緒に。歓迎しますよ。」

ブレイズ隊長の表情は、アオ兄と違って俺からもよく見える。
今まで見てきた、憧れの笑顔…

…でも、これも。本当に、本心…なんだろうか?
禁色って…人を殺してまで手に入れたい、そんなに大事なことなのか?



「それでは、早くここから立ち去りましょう。
今にも、誕生日会の招待客が、来てしまいそうです。」

そう言って、ブレイズ隊長は、そばに倒れているヒマリへ向き直る。
俺たちに、背中を向けた…まさに、その時。


ーーー「…!」
 アオ兄はまた、無言で右腕を勢いよく振り上げる。



ーーー「…残念です。」
 ブレイズ隊長も、アオ兄と同時に…左腕を勢いよく振り上げる。


ーーー「あぁっ!」
 同時に起こった、2人の流れるような…同じ動きが。俺の位置からは…よく見えて…。




ーーザシュッ。

「ぐッ。」

一瞬、スローモーションのように重なった、2人の動き。

その一瞬の後。



まばたきをした一瞬で、景色がーーー赤く染まる。

「ひっ…。」

目の前には、大量の赤。

大量の…血。

これは、俺の血ーーーじゃ、ない…?




「…ッ!ッア、アオ兄!!!」

赤く染まる景色の中心で、見慣れた背中が…足元から、ゆっくりと地面に崩れ落ちていく。


「アオ兄ッ!」

倒れ込んだアオ兄の上半身を、抱きかかえるように膝に乗せる。

口からも、全身からも…大量の血が、流れ出している。

「アオ兄っ。アオ兄っ!」

俺はただ、必死に名前を叫ぶ。
アオ兄は目を閉じて、ピクリとも動かなかった。
身体中…細くて長い、真っ白の氷柱が突き刺さっている。

「アオ兄…っ。」

何とか目を開けてほしくて、抱きかかえる手に力を込めた。

「ひッ…。」

力を込めて、アオ兄の身体を押した時、

生暖かい…初めての感覚が。
アオ兄の背中から、とめどなく流れ出るソレは…

…俺の手と、アオ兄に突き刺さる氷柱を真っ赤に染め上げていく。



「アオ、兄ッ。しっかり、してっ!」

ただ、声をかけることしか出来ない俺の、やっとの呼びかけが通じたのか

「ゲホッ。ハァ…。くっ…。」

やっと、アオ兄から反応が返ってきた。


「くっ…。ヨウは、怪我…な…いか?」

血だらけの顔で、アオ兄は微笑む。
…こんな時にも、俺の心配だなんて…

「うんっ、うんっ、おれっは、大丈夫、だよっ。」

俺は、アオ兄の反応に安心したのか、
緊張の糸が切れて…いつの間にか、声を出して、泣いていた。

「…うえっ。ひっく…。」

自分では、もう止めることができないほど…大量の涙が。俺の、情けない顔を、伝っていった。



「だい、じょうぶだから…。泣くなって。」

アオ兄が、無理に笑っているのが分かった。
その事実に気付いて…さらに視界が、涙でにじむ。
アオ兄の顔が、涙で…どんどん見えなくなっていく。

まるで…アオ兄が、目の前から消えていくみたいで。俺は…

「どこにも、いかないでっ!」

泣きながら叫び、流れる血も気にせず、その身体を思いっきり抱きしめた。



「痛いよね?ごめん…でも、俺…っ!」

どこにもいかないでほしくて。
アオ兄は、ここに居るんだって思いたくて。
…力の加減もできずに、泣きながら、ただすがりついていた。




ーーー【黒の再来】まで、あと6分ーーー
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