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序章:黒の悪魔
伝承ー黒の悪魔と旅人と
しおりを挟むあるところに、先を急ぐ旅人がおりました。
故郷にいる恋人が病にかかり、今にも息を引き取りそうなのです。
彼は旅を中断し、急いで故郷へと引き返します。
旅人は先を急ぐあまり…近道に、と”黒の悪魔”が巣食う、夜の森へと足を踏み入れます。
旅人に気付いた黒の悪魔は言いました。
「どうしてこんな夜更けに、私の森を通るんだ?」
旅人は答えます。
「故郷の恋人に会いたくて急いでいる。彼女は今にも息を引き取りそうなんだ。」
黒の悪魔は言いました。
「恋人に、そんなに急いで会いたいのか?」
旅人は答えます。
「会いたい。今すぐに。」
黒の悪魔は言いました。
「会わせてやろう。……今すぐに。」
黒の悪魔の紅い目が輝くと、辺りは真っ黒なモヤに覆われーー
ーーー世界の半分は、まっ更な土地になりました。
黒の悪魔は言いました。
「今すぐに会えただろう。ーーこの広い空で。」
【伝承 黒の悪魔と旅人と】
ーーー黒の悪魔は、”伝承”だったのだ。
そう…あの日、までは。ーーー
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