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第四章 皇都グラウデリアへ

#27 予想通りだったけど予想外

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 教会に着いてそのまま中に入ると、やっぱりというか、当然というか、厳かな雰囲気が漂っていて別世界に迷い込んだような感じだった…って、異世界に来たのに別世界って例えも変な感じだけど、とにかくこう、神聖で静謐で荘厳な世界って感じの所へ来た、と。

 正面の祭壇には中央に女神像が、左右に三体ずつ女神像より少し小さ目の神像が並んでた。
 確か…ファルに教えてもらったのは、この世界、ミクシディアを創ったとされる神様達、中央の女神像が創造神エクリィータで、左右が眷属の六柱神だったか。

 その像に向かって礼拝している人が数人居て、近くには神官らしき人が居た。
 流石に教会内で子供を抱っこしてるのはどうかと思ったから入る前に二人は降ろして、代わりに手を繋いでる。

 早速俺達も礼拝する為に祭壇付近まで行って、そこに居る神官に話し掛けてみた。

「すみません、礼拝したいのですが」

「一般の方ですかな」

「えっと、どうなんでしょう…。漂流者なのですが」

「漂流者の方でしたか。では神の加護を授かっておられるのでしょう」

 あー、弘史と知美ちゃんはそうかもしれないけど、俺は授かってないな…確実に。
 そんなものステータスに無かったし。

「どうぞ心ゆくまで礼拝なさってください。漂流者であれば神もまた喜ぶことでしょう」

「はい、ありがとうございます。では礼拝させてもらいます」

 神官と少し話してる間、先に礼拝していた人達が去っていってたから、そのまま神像前に全員進んだ。
 礼拝の形式とか分からないからマールの真似をするしかないな。
 マールを見ると両膝を付いて膝立ちの姿勢になってたから、俺もそれに倣って膝立ちする。
 全員ほぼ横一列になって膝立ちして、その後手を組んで一斉に目を閉じて祈った…別に号令とか合図とかしたわけでもないのに、全員綺麗に揃ってたと思う…多分。

 祈りを捧げてからほんの少し経って、何となく違和感…静かだったのは静かだったんだけど、もっと静かに…何も聞こえない、自分の呼吸音や心音すら聞こえない、そんな静けさになったような気がして、ふと何気なく目を開けてみると、そこは…教会の中ではなく、真っ白な空間だった。

 ただ、目の前にあった女神像と同じ位置に、誰かが居るのだけは分かった…よく見ると神話の女神っぽい衣装で二枚の大きな翼を付けてる。
 顔はちょっと幼目で、美女っていうより美少女っていった方がしっくりくる…ひぃみたいな薄桃色の髪を肩あたりまで伸ばしたパッと見天使に見えなくもない誰か。

 もしかしなくても、これは会えちゃったってことか…?


「ようこそいら「あ、そういうのいいですから」」 


『『『『『『……え?』』』』』』


「………え?」


 ん?んんんっ??


「ナオちゃん~っ!創造神様にぃ向かってぇ~それはぁないんじゃぁないぃ~っ!」

「ナオト、お前神様に喧嘩売るとか、アタイよりイっちゃってるだろーがっ」

「ナオ…何言うとんのや……」

「ナオトさんっ、命知らずにも程がありますよっ!」

「何やってるのよー、ナオトったら…」

「……マス、ター………」

「あーそうそう、こんな感じだったわ、転生した時」

「そそ、そうですね…。わ、私もこ、こんな感じ、でした……」

「ではここが神の住まう処ということか…?」

「アンタ達も創造神様の前なんだから失礼じゃないのっ」

「うわー、まっしろだねーっ」

「そ、そうですね…。でも、きれいです……」

「あの方が…神さまですの?」




 ……………あれぇ?全員来てるし。

 え?何で?こういうのって普通転生とかに関係ある異世界人だけじゃないのっ?


「皆様、静粛に願います。エクリィータ様が泣きそうです」

「………せっかく、神様っぽく、決めようと…思ってた、のに………ふみゅ…」


 えっ、あ!これ俺のせいっ!?
 いや、だってアコとやり取りするような神様だから、多分ポンコツなんだろうなーって思って!

 っていうか一人増えてるし。
 某電気街でビラ配ってそうなメイド服着た黒髪ツインテールでリオと同じような無表情系能面お嬢さん…。

 さっきの話し方からしてコイツ、アコだよな。
 スキルのくせに何で実体化してるんだよ…。


「えっと、すみません…。そこの人とやり取りするような神様だから、もっとこう、親しみやすいのかなぁーと思って…」

「……もう、分かった。私も慣れない事はするもんじゃないってことよね」

 あ、拗ねた…けど、やっぱり思った通りポンコツっぽいぞ。
 俺をこの世界に放り込んだくらいだしな、予想通りっちゃ予想通りか。

「あのぉ~…創造神様ぁ…。何故ぇ私達ぃまでぇ~?」

「えっ?それはみんな一緒にお祈りしてたからよっ?あとみんな楽しそうだったから私も混ぜてもらおうと思って、ねっ!」

 ……ポンコツ確定じゃねーか。
 何だその理由…ホント暇だったんだな、ちゃんと神様としての仕事してるのか怪しくなってきたぞ…。

「では改めまして。こちらにおわす御方が創造神エクリィータ様です。私は何故かエクリィータ様の補佐として呼ばれました、そちらのマスターよりアコの呼称を授けられたスキルです」

「えっと…エクリィ、とか呼んでも…いいのよっ」

「じゃあ、エクリィ、ちょっと聞きたいことあるんだけど」

「ちょっ!?ナオっ!?」

「ほ、本当にぃ~呼ぶとかぁ~っ!?」

 いやぁ、もう俺の中でポンコツ確定してるからいいかなーって。
 何ていうか敬う要素がどこにも見当たらないっていう。
 見た目も年下っぽいから余計ね。

「なっ、何かしらっ?何でも聞いてっ!」

「神さまーかわいいねーっ。エクお姉ちゃんかな!」

「ちょっとヒナリィっ!?神さまにお、お姉ちゃんなんて…っ!?」

「おっ、お姉ちゃんっ!?あぁ…何ていう響き……私、女神やっててよかったぁ………」

「エクリィータ様、いろいろと台無しです」

 うん、俺もそう思う。
 もう、様とか付けるのも意味無いわ。
 こんな処じゃなかったら、普通のお嬢さんと何も変わらないな。

「ティシャ、エクリィも嬉しそうだから呼んであげな」

「えっ!?その…いいのでしょう、か…?」

「うん、きっと大喜びするぞ」

「えっと、それでは…。エクリィ、お姉さま……」

「はうぅっ!?お、お姉さま…っ!な、なんて破壊力なの…っ!?」

 加速するポンコツっぷり…この世界大丈夫なのか?って心配になってきた…。
 他の六柱神は何やってるんだよ、これでいいとか思ってるわけじゃないよな?


「……なぁ、これアタイらも普通にしていいってことか?」

「えっと…どうなのかな…?」

「なんかもう女神様っぽくないから、いいような気もするねー…」

「創造神様のぉ…イメージがぁ~……」


 考えるまでも無く普通に接してあげた方が泣いて喜ぶと思う。
 混ぜてほしいとかいって皆呼び寄せちゃうくらいだから。
 ここはもう俺がそう認識させてあげましょう、皆に。


「で、エクリィ。俺をこの世界に寄越した理由は何?」

「え?理由?無いけど」

「…は?」

「んー、まぁしいて言うなら…ちょぉーっと手が滑ったというか、ズレたというか……」

「……おい、ちゃんと分かるように説明してくれ」

「えっとぉ…ね。転生者を拾い上げる時に本当は貴方の隣の魂をすくい上げようとしてたんだけど…タイミング良くヴィラに話し掛けられちゃって。ちょっと目を離したら貴方の魂掴んじゃってたんだよねー…テヘッ」


 テヘッて…ホントに手が滑っただけかよ。
 そりゃイレギュラーなわけだ…だって間違いなんだもんな。
 まぁでもこうして転生出来たことには感謝しかないんですが…こんなに沢山の綺麗な華に囲まれてるわけですし。


「要するに、エクリィがミスった結果俺はここにいる、と」

「いや、でもほら、その代わりいろいろとサービスしてあげたから、それでいいでしょ?」

「アコもそのサービスの内の一つです」

「お前もサービスなのかよ…ってまぁ、助かってはいるけど。んじゃ、特にこの世界で何かしろってことは無いのね」

「うん、無いよ。そういうのはちゃんとやるし」

 俺の時はちゃんとしてなかったってことかそれはっ、いい加減過ぎるだろ…。
 けど、とりあえず自由にしてていいってことか…それならそれで好きにさせてもらいますかね。
 気が楽になったわ。

「んじゃ、俺と知美はどーなんだよ?」

「貴方達も特に無いね。ウィサラとウェーバがすくい上げたんだから。何か目的があってすくい上げる時は私じゃないとダメだし」

「そっか、ならいいや。あんま余計な事背負いたくなかったしよ」

「ということは、勇者とかはエクリィが呼んだってことか」

「うん、そういうことね」

 何かしら目的のある転生は一応創造神たるエクリィがやらなきゃならないってわけか。
 そういうとこをミスらないならまぁいいか…何か危なっかしいけど。
 その内大失態犯しそうだ。


「魔統皇が復活したって聞いたんだけど、また勇者呼んだりしたのか?」

「そうね、もう呼んだよ。今は…うん、まだマーリレンスに居るね。獣人達の国かな」

「それって…ウチらの国やないの?」

「マーリレンスで獣人の国っていや、アタイらのビルトスマーニア獣連邦しか無ぇよな」

「……そこ、に………ケンゴ、と…コウ、キが……?………」

 あー、それも聞いとかないとな。
 リオが気にしてるとこだし。

「エクリィ、今回呼んだ勇者って前回と同じ奴なのか?」

「んーそれは…ナイショ」

「何でだよっ」

「そーゆーのは自分達で確かめればいいでしょ?何でもかんでも教えたらつまらないじゃない?」

「…知りたかったら会いに行けってことか」

「そーゆーこと。勇者達に会ってどうするかも貴方達次第だしね。特にそこのリオちゃんがどうするのか、今から楽しみでしょうがないよっ」


『『『………』』』


「エクリィータ様、もうフォローのしようがありません」


 …それな、アコの言う通りもうバレバレですがな。
 自分でナイショとか言っといて自分でバラすとか、もうね…。
 そんで今から楽しみとか、これからも俺達のこと追っかける気満々ってことじゃ。
 それでいいのか女神様…。

 けどこれで姫達の郷帰りは確定かな。
 ま、リオの為なんだけど俺も行ってみたいとは思ってたし。
 ただ、姫達の事どうやって説明するか今の内に考えておかないとなぁ…そこだけはちょっとどうなるか想像つかないし怖いとこでもある。

「というわけで、これからもみんなで私を楽しませてちょうだいねっ」

「…なぁ、エクリィ。神様ってそんなに暇なのか?」

「暇ってわけじゃないけど、それなりに息抜きは必要なのよ。何か問題ある?」

「問題っていうか…何で俺達で暇潰しみたいなことしてるのかって」

「それは…まぁ、ミスっちゃった責任があるからいろいろとフォローしなきゃダメかなぁって思ってたんだけど…」

 一応責任は感じてるらしい。
 ま、今のところそんなフォローしてもらうような事態は起こってないんだけど。
 だからもう俺達のこと見る必要無いって。

「だけど?」

「見てたら面白くなってきちゃって。それにこの状態がどこまで延びるのか気になっちゃって」

「この状態…?」

「うん、貴方のそれ、どこまで増えるのかなぁーって」

 増える…って、称号のことかっ!?
 待てっ、これ以上増やすつもりは無いんだって!

「増えねーよ!もう十分幸せですからっ!」

「え?気付いてないの?」

「は?何が」

「ここにいる全員に称号付いてるってこと」



『『は……はぁぁあっ!?』』
『『『『え………えぇ~っ!?』』』』



「ちょっ、全員ってまさか……」


 恐る恐るひぃとティシャの方を向いてしまった…キョトンとした二人のあどけない顔が見えて、バッチリ視線が交じり合う。


「?どーしたの?ナーくん」

「?ナオトお兄さま?」


 流石にお嬢様方には理解出来て無いらしい…がっ、どうしよう…ねぇ、俺どうしたらいいのっ!?
 ウソだと言ってよエクリィっ!!


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