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第二章 冒険者稼業の始まり
#04 始まりの一幕・決闘
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「チーフ、ちょっといいですか?」
「……ふぅ。リズ、朝からあなたが来たってことは、また面倒事なんでしょう」
「あ、あはは……さ、流石はチーフ、ワタシのコトよく分かってますねぇ。あ、でもワタシだけのせいじゃないですからねっ」
「それも分かってるわよ。それで、用件はなにかしら?」
「あ、えっとですねぇ…闘技場の使用許可を頂けないかと……」
「何、こんな朝から決闘でもするのかしら?」
「じ、実は…その通りでして……あはは…」
「……まさか漂流者同士とか言わないでしょうね?」
「…そのまさかです……」
「………はぁ…………全く、何で漂流者っていうのはこう問題を起こすのが好きなのかしら……。分かったわ、使用を許可します。ただし、私立ち会いのもとで」
「えっ!?チーフが……」
「そうよ、何か問題でも?」
「い、いえっ!何もないですっ。じゃあ、あの、当事者達を闘技場へ案内してきます」
「えぇ、よろしく。先に闘技場で待ってるわ」
「はいっ、その、よろしくお願いしますっ」
‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐
怒りで興奮して手が付けられないヒロシを、さらに姫達が逆撫でするようなことをしてる…具体的にはもっとイチャイチャを見せつけるような感じで更に密着してきたり、甘い言葉吐いてきたり…もうさ、悪乗りしすぎだろっアーネもマールもっ!
あー、でもそんだけ普段からヒロシに嫌な思いさせられてたってことか…?ここぞとばかりにって感じがしないでもないんだけど…それでもやり過ぎじゃねぇの!これ、絶対ついでに俺の反応も見て楽しんでるだろっ、おい!
あ、シータは、まぁ、うん、ホント恥ずかしそうだから…もう止めちゃってもいいんだぞ?な?
もうそろそろヒロシの怒りが限界ギリギリってところでリズが戻ってきた…クリス女史と話がついたか?
「はいはいそこまでよっ。闘技場の使用許可取れたから続きはそっちでっ!」
「よぉぉし、テメェ……ぜってーブチのめしてやっからな…逃げんじゃねーぞぉ!」
「ここまで来て逃げるなんてしませんよ…っていうか出来るわけ無いでしょう、もう」
「チッ!そーやって澄ましてられんのも今の内だぜっ、俺も漂流者だってこと忘れてねぇよなぁー!ケッ!」
俺様のチートを喰らいやがれってか、まぁ、どんなチートだか分からんけど自信はあるってことか…だよな、そうじゃなかったらこんな朝っぱらからナンパなんてしてないだろうなぁ……。
でもとりあえずこれが終われば騒ぎも収まってやっとクエストが受けられるんだろうから、とっとと行くか。
「忘れてませんから。じゃあ行きますか…リズ、俺闘技場の場所知らないから教えてくれるか?」
「えっ、あぁ、ワタシでいいのねっ!うんうん、案内す「待てよ、ハニーはアタイが案内するっての」る……」
そっか、姫達も当然知ってるのか、いや、でもリズが使用許可取ってきたんだからリズでいいだろ……なんでそこで張り合うんだアーネ、意味分からないんだが。
「アーネちゃん?ナオトはワ・タ・シをご指名なのよ?これも受付嬢のお仕事なんだからねー、邪魔しないでくれる?」
「はぁ?闘技場なんてすぐそこなんだから、誰が案内したって同じだろ。だからアタイが案内してやるって言ってんだよ、ただの受付嬢は黙っててくれるか?」
俺からちょっと離れてリズに喰いかかっていったぞ…ホントなんでそこまでするんだよ、あんまり余計なことしてると…。
「あれぇ?アーネちゃんってば、ナオトに頼ってもらえなくて悔しいのかなぁ?そうだよねぇ、愛しのハニーだもんねぇ」
「っ!?そ、そんなんじゃねーってのっ、アタイの方が近くにいるんだから手間かからねーだろって話だよっ!」
「あら、そうなんだぁ、じゃあやっぱりハーレムってのは冗談ってことね?」
「う、あ、いや、それは……」
ほら、案の定ここに来てボロ出すとか、何やってるんだよアーネ…まぁ、リズの方が一枚上手だってのもあるんだろうけど、な。
まぁ、これでバレちまったんだから、もう続ける必要もないだろ、助かった……決して残念だとは思わな…ウソです、俺も男だから普通にちょっと残念とか思いましたごめんなさいっ!
「あ、はいはいっ!それじゃナオトさんは専属受付嬢であるわたしが責任を持って案内しますっ、行きましょう、ナオトさんっ!」
「ちょっ、ラナ、アナタねぇ!ここぞとばかりに美味しいところだけ持っていくんじゃないわよっ!ワタシに泣きついてきたのはアナタでしょ!?」
いや、もうホント、何なんこれ…。
早く誰でもいいから案内してくれませんかね…?と、思ってたら左腕がくいっと引っ張られた…ん?シータどうした?あー、もうバレたんだから無理して続けなくていいんだからな?
「行きましょう…だ、旦那様……ウチが連れて行くよって………」
そう言って俺の腕を引いて闘技場の方に連れて行こうとするシータ…あ、うん、ありがとう、君の努力は無駄にはしないよ…。
「じゃあ、お願いしようかな。頼むよシータ」
「っ!は、はい…こ、こっちやで、旦那様……」
「シーちゃん~?私もぉいるのぉ~忘れないでねぇ~?ふふっ」
あ、反対の腕に絡みついてたマールも当然そのまま引いてこられた…っていうか、二人ともホントもういいんだってバレたんだからさっ、普通に連れてってくれよっ。
「「「あぁーっ!?」」」
アーネとリズ、ラナさんがそっちで声上げてるのを置いてきぼりにして歩き出してる俺達、そういやヒロシ達は…って、あれ、いつの間にかいなくなってるぞ?あ、アイツ場所知ってたのか!?それに付いていけば良かっただけじゃねぇか!あーもー抜けてるな俺、いや、この状況のせいだ、俺のせいじゃないってことにしてくれっ。
ん?待てよ…ってことはあれか?まだバレてない…この状況有効ってことか?それって良かったのか悪かったのか……まぁ、勘違いさせとくならまだこのままでもいいか、決して俺がこの状態を維持したいからってわけじゃない、ということにしておいて欲しい、説得力マイナスだけど。
受付カウンターの左側、ギルド酒場奥の方に大き目の扉があって、そこから闘技場へ行くらしい。
シータとマールに挟まれてそのまま扉を通って通路を進んで行ったら円形の広い場所に出た、どうやら屋外闘技場みたいだ、屋根が無く空が普通に見える。
ここが闘技場か…と思って見回してたら、既に来ていたヒロシと、どうやら立ち会ってくれるらしいクリス女史が闘技場中央に立っていた…やっぱり待たせちゃったかな?
「シータ、マール、ここまででいいよ、ありがとな。ちょっと行ってくるよ」
「うん~分かったぁ~、頑張ってねぇ、ダーリン~♪」
「応援しとるね…だ、旦那様……」
はい、もう最後までそれ貫き通すのね、分かりました。
やっと解放された腕が寂しさを訴えてきたがそこはそれ、奇跡が起きただけだと納得させて闘技場中央へ。
歩きながらまた見回してみたら、いつの間にやらギャラリーが増えてる…いや、こんなの見てる暇あるならクエスト行かないのか?みんな…。
あと、ラナさんとリズ以外の受付嬢がいるっぽく見えるんだけど、お仕事大丈夫なんですかね?よもや受付カウンターガラガラってわけじゃないよな…?
姫達も大人しく見て…いや、約一名、やっちまえーっ!とか叫んでるのがいるけど、まぁ、置いといて、ヒロシのハーレム、じゃない、パーティーメンバーも姫達の近くで見てるみたいだ。
「おい、何チンタラしてたんだよっ!とっとと来いってんだっ」
「……ふぅ、朝のこの忙しい時に余計な仕事を増やさないで欲しいのだけれど」
中央にいる二人の所に着いた途端この台詞…え、なに、俺が全面的に悪いの?うそーん…。
「あ、はい、すみません……」
かなり腑に落ちないけど、反論してもどうにもならないだろうしな…もういいから早く、とにかく早く終わらせようっ。
「では、私、クリスリティシスがこの決闘を立ち会います。ルールは特にありません、お互い自己責任でお願いします。はい、始めっ」
え、あっ、もう!?すげぇ投げやり感なんですけどっ!とか思ってたらヒロシが後方にバックステップで下がって右手で背中に背負ってた剣を抜いてた…クリス女史も言い捨ててすぐ壁際にスタスタ歩いていったし…。
「おらぁっ!ボケっとしてんじゃねぇぞっ!これでも喰らいやがれっ……!」
ヒロシが抜いた剣を持っていない左手の平を俺に向けて叫んだら、手の平に光が集まる感じで光ってバチバチスパークしてるみたいになった…いや、魔法か何かなのは分かったけど…え、待って何で剣抜いたし。
「雷光……!」
あ、技名とか言っちゃうタイプね、うん、雷属性系の魔法だね、ハイ。
その手の平から撃ち出されるんだろうなぁ、なんてぼーっと眺めてたら…
「間欠閃っ!!」
って、手の平を地面に叩き付けてた。
ゲイザーって…下からかよっ!って思った瞬間、ヒロシから俺の方に光速で雷が地面を這って来て、俺の足元に辿り着いた途端、上空に向かって数本の雷が地面から撃ち出された。
ズガガガガガガッッ!!
俺は轟音と共に現れたそれを足元からモロに喰らって、雷が落ち着いた頃合い…周りはまだ帯電してバチバチ光ってて、多少焦げた煙みたいなものと土埃とが一緒に舞ってる、そんな中で俺は膝を着いて………地面に前のめりで、倒れ込んだ。
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