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故郷章
44:ドッキリはお好き?
しおりを挟む皆様、ご機嫌如何でしょうか。ララクラ子爵家が嫡女、マリーナと申します。覚えていらっしゃらない方向けに説明すると、ビクトリア様が我が家が治めている都市、ララクラの冒険者ギルドにいらっしゃった際、剣を教えていただいた者になります。風魔法を使っていた少女、と言えば思い出される方もいらっしゃるのではないでしょうか。
そんな私が今何をしているのかというと……。
「………ちかれたぁ。」
「クソ親父それ気持ち悪いですわ……、死ぬほど気持ち解りますけど……。」
唯一の肉親である父と一緒に死んでおります。いえ、正確に言うと生きてはいるのですが、死んだ方がマシというか。口から魂の様なものが抜け出して真っ白になっているというか。ヘンリエッタ様のお屋敷の使用人の方がお部屋にいらっしゃるので、普段ならどれだけ緊張していても貴族らしい振る舞いに努めるのですが……。
もう貴族の矜持とかそういう物が全身から抜けて、壁を背に床に座り込んでしまっています。
まぁ、それも致し方ないのです。何せこんなことがあったのですから。
◇◆◇◆◇
事の始まりは一週間前のこと。冒険者組合で出会った青髪の女性の行方を探しつつ、がむしゃらに剣を振るいながら修正してくださった点を体に覚えさせていたところ、何人かの役人と共にわが父であるララクラ子爵に文が届きました。
使者の整い過ぎた格好と、父との間で行われた格式ばったやり取り。その身分は伏せておられましたが、どう考えても皇帝陛下直属の方々で、その文の装丁から予測できるのは、陛下からのお手紙。
陛下から直接お手紙というだけでもう大騒ぎしてしまいそうな案件なのですが、使者の方々が纏う雰囲気というか、こちらのことを愚かなものを見るような目で眺めるその様子に何か悪い知らせであることが感じられます。父の一人娘で、次期子爵としてその場に居合わせていた私は『再婚せず血を残そうとしないことについてのお怒りか』と呑気に考えていたのですが、内容はもっと悪いモノでした。
そこに書かれていたのは、思わず目を疑いたくなる内容。
ララクラ子爵に臣従していた男爵たち5名の内3名が死亡、彼らの支配領域であった村々の消滅、これを行ったのが隣に領土を構える急進派の子爵であること、そして何よりこの一連の出来事が"すでに解決してしまっている"こと。
父の体から、一瞬にして生気が消えていきます。その時の私の顔も、見れたものではなかったでしょう。
ソレはいわば、貴族としての死亡宣告以外の何物でもありませんでした。
私たち帝国貴族は力の証明によってその地位を陛下に認めて頂いています。私たちが持つ"力"、それを使うことで陛下から譲り受けた土地を守護し、その土地を育む民を守護し、自領や自国に迫りくる敵を排除し続けなければいけません。
これがまだ他家、財力や生産力などの単純な武力によって爵位を任じられた家であればまだ取り返すことができました。しかしながら我が家が持つのは単純な"力"のみ。帝国建国時から陛下の盾となり、剣となることでその信を得てきた家です。帝都で何か政争が起これば真っ先に駆け付け、この命尽きる瞬間まで陛下を守り続ける。外部からの侵略を受けたその時はこの魔力尽きるまで敵を殺し続ける。そんな家が我々でした。
事実。我が家はこれまで定められた役目に則り、この体に宿る風をもって陛下を、皇室をお守りし続けてきました。その歴史こそが私たちの誇りであり、今後も続けていかなければならない定め。
それ、なのに……。
蓋を開けてみれば陛下の剣や盾となるはずの私たちは錆び付いており、愚かにも他国どころか自国の同胞に裏切られ共に帝国を守ると誓った同胞たちを失った。その上自身の尻拭いすらできず、同胞たちが無念にもその骸をさらしていたころ、私たちは自領でぬくぬくと過ごしていた。いてしまった。
おわりだ。私たちは気が付かなかったとはいえ、与えられた領土を荒らしてしまい、その力の証明すらできなかった。これまで陛下から頂いていた信頼に背き、先祖たちの誇りを穢した。
「このアセルジ子爵の乱はアプーリア公爵……、ヘンリエッタ様の私兵が対処なされました。一週間後に行われる御前会議では、ララクラ子爵殿が公爵閣下の私兵軍団と子爵殿騎士団の混合軍を指揮し、乱を収めたという体で進行します。この件については一部の者しか伝えられていないため、露見せぬようにと。」
「か、かしこまりました。……あ、あの。陛下はなん、と。」
「何も。では、しっかりとお伝えいたしましたので。詳細はこちらに記していますので当日までにしっかりと読み込んでおいてください。」
震えながらそう問う父に、使者の方は冷たくそう言った。陛下から何もない、ということは、もう私たちに価値はないと見限られたからに他ならない。毎年というわけではないが、私たちはその与えられた役割のこともあり、何度かその御尊顔を拝見したことがあり、お声掛けを頂いたこともある。決して強い交友があったわけではないが、気さくな性格でいらっしゃる陛下は私たちに何度も温かいお言葉を掛けてくれた。
父がその場に座り込み、私も全身から力が抜けてしまう。
それからのことはよく覚えていない。
貴族としての力を証明できなかったということは、最低でも爵位の没収。最悪は命で償うという結果になるだろう。……せめて最後まで貴族として、統治者として恥じないようにと思った父は人が変わったように仕事に打ち込んだ。次のこの地を任せられる者に迷惑を掛けぬように引継ぎの準備を行い、せめてもの償いとして私財を全て投げ打ち守れなかった村々の復興に使った。
私も、一族の者として恥じぬように父の手の届かぬところを手伝い、できる限りのことをした。
そして、御前会議当日。
これまでであれば爵位を持たぬ小娘など、陛下や元老院の方々も出席する御前会議に参加できるはずもないが、今回は乱を収めた一人として出席を認められた。そこで初めて見たものは、この国が抱える問題。陛下の元で長期的な繁栄を続けようとする保守派と、各貴族の力をさらに高め皇帝ではなく貴族が政を司ろうとする急進派の二つ。そしてどちらにも属さない傍観者たち。
話には聞いていたが、自身の様な経験の薄い小娘でも対立が見えてしまうほどとは思っていなかった。そして我が家がその政争の真っただ中にいるということも。
父は、与えられた役目を全うした。
爵位の低さという問題と、これまで中央の政治に関わらずただ皇室の守護者たらんとしてきた私たちも、分類するならば保守派。保守派の人間として急進派が引き起こした乱を収め、彼らが企んでいた行いを暴き、その首謀者と関わった貴族たちを晒上げた。私たちが一週間前に受け取った台本の通りに。
最後までララクラ家の者として。その想いを胸に演じ続けた父は無事最後までやり切った。すべてが終わった後に彼の身を包み込んだのは何も知らぬ傍観者たちの賞賛の声と、素知らぬ顔で功績を称える急進派の者たち。そして暖かな言葉を投げかけながら全く笑っていない保守派の方々。
皆が優秀な臣下であった男爵たちの死を悼み、父が行ったことになっている功績を称えた。父はその言葉に応え、実働部隊の一人として活躍したことになっている私も拙いながらに言葉を紡ぎ、返した。
最後まで陛下が冷たい目で私たちを眺めていらっしゃることに、恐怖しながら。
全てが終わった後、せめて陛下に謝罪したいという私たちの声は遮られ、そのままアプーリア公爵家、ヘンリエッタ様の屋敷まで連れてこられた。これすなわち陛下が私たちの様な役立たずの顔など見たくないという意思表示であり、先代の皇帝陛下から信頼厚いヘンリエッタ様に裁定を任せられたということに他ならない。
陛下に謝罪すらできなかったこと、私たちが役目を果たせなかったことが原因と言えども、その事実は私たちの心に無視できないダメージを与えた。自身が全く何の関与もしていない功績を称えられ、同じく陛下を守る貴族の方々から虫を見るような目で称えられるという地獄を過ごした私たちにとってその衝撃はとんでもなく大きすぎて、完全に精神が破壊されてしまってもおかしくはない。
……まぁここでようやく冒頭に帰ってくるわけです、はい。
本来であればヘンリエッタ様のお屋敷にお呼ばれされるなど、私の様な田舎貴族の娘からすればまさに天にも昇る様な心持ちになる出来事だ。それぐらい彼女のネームバリューは大きい。
先代陛下の幼馴染として子供時代を過ごし、本来は国母になられるはずが先帝が違う方に恋をなされたことから潔く身を引いた方。先帝がご結婚なされてから家の繋がりを重視し同じ保守派の公爵家と結婚し、子宝に恵まれる。さらに先帝にお子が生まれた際、今の陛下が生まれた際は陛下の教育役として民を導く教えを説くなど、その一連の物語は吟遊詩人がどの酒場でも歌う鉄板だ。
そしてその身に宿る魔力も強力で、アプーリア家が代々修めている大規模殲滅魔法の威力は正に魔法を学ぶものにとっての憧れであり、力の象徴だった。その上魔法だけではなく身体強化を扱った近接戦闘もできると聞く。まさに貴族令嬢の憧れと言ってもいい存在だった。
普段の自身ならば舞い上がって喜んだのだろうが……、今回は件が件である。喜ぼうにも感情が沸いてこない。
人目を気にせず、最後まで貴族として振舞うために少しでも気力を回復させようとしていた時……
「リンベッタ・ベントゥス・ララクラ様、マリーナ・ベントゥス・ララクラ様。主人が謁見の間にてお待ちです。」
私たちの名前が、呼ばれた。
◇◆◇◆◇
「……マリーナ。」
「解っています! ……ララクラ家の娘として、最後まで。」
自身も疲れを隠せていないのに、父は私に何か声を掛けようとした。だがそれを遮り自身の覚悟を口にする。普段は色々と気に入らない父ではあるが、有事の際に頼りになる人間であること、家族を思う心はしっかりと持っているということを私は知っている。精神的な疲労と緊張に押しつぶされそうになりながらも、まだこの肉体は動く。
気を引き締めた私の顔を見て、父も覚悟を決めたようだ。先ほどの御前会議で見せたララクラ家の人間として相応しい覇気を纏い始める。
「すでに主人がお待ちです。」
「……案内、感謝する。」
両開きの大きなドアの前まで先導された私たち。その装飾や両側に使用人の方が立っているあたり、いかにもという感じがする。父とお互いに最低限度の身だしなみを確認した後、ドアの傍に立っていたメイドの方に父が目線を送る。
「リンベッタ・ベントゥス・ララクラ様、マリーナ・ベントゥス・ララクラ様。入室なされます。」
ゆっくりと、ドアが開けられる。
ほんの少し、そう。指すら入らないほどの隙間が開いた瞬間、私は後悔した。
何でもっと、強い覚悟をしなかったのか。
全身が火に包まれたのかと錯覚するほどの魔力、そして生きることを諦めてしまうほど高密度な闘気、その二つが私たち二人を襲った。その場で座り込んでしまわなかったこと、声を上げなかったことは奇跡と言ってもいいだろう。
何秒、経ってしまったのだろうか。永遠かと思える時間の中でいち早く動き出したのは私の前に立つ父だった。何度か戦場に出ていたこと、そしてこの部屋にいた方々が殺意を含まぬ気を及ばせていたのが理由なのだろうか。当時の自身には理解が及ばなかったが、動き出した父のおかげで意識が現実へと戻って来、弾かれたように動き出したことは覚えている。
全身を震わせながら足を前に進ませ、父が跪いた少し後ろで私も同じようにする。地面への接点が増えたおかげか、ようやく部屋の様子を確認できるようになった私は、顔を伏せながらも部屋の全体を見渡した。
私たちの正面にいるのは、公爵家の人間にしては質素で、でも全く品位を落とさないドレスを身に纏っているヘンリエッタ様。私から見て彼女の左側にいるのが、人間とは思えないほどの巨体で真っ黒な鎧に身を包んだ騎士。そして右側にいるのが、この息をするだけで倒れそうになってしまう重圧の中で何もないかのように佇む従者を従えた、白騎士。
……あの時、私に剣を教えてくれた人だ。
「ほ、ほんじ」
「前置きはいいわ、時間がもったいないもの。久しいわねリンベッタ。」
「はッ!」
何かを話そうとした父を遮り、ヘンリエッタ様が父へと声を掛ける。自身のすべてを理解されている様な通った声。一瞬にしてペースを握り、父を支配下に置くような声。私たちの様な田舎貴族では持ちえない、生まれながらにして人を"使う"者が持つ覇気。
「その子が貴方の娘ね、顔を上げなさい。」
ゆっくりと、顔を上げる。決して顔が恐怖に染まらぬよう、集中しながら。私の方を見て少し微笑まれるヘンリエッタ様の目は全く笑っておらず、氷のような瞳でこちらを見透かしてくる。黒騎士の方は兜でその顔が見えないがその向きから明らかにこちらを向いている。そしてあの青髪の彼女は、冒険者組合で私に見せた顔とは比べ物にならない顔。全くこちらに興味がないような、そんな冷たい瞳を向けていた。
「名前は?」
「マ、マリーナ・ベントゥス・ララクラと申しますッ!」
「そう……、いい名ね。」
両親から頂いた名を褒めてくださったが、その瞳が持つ冷たさは一切変わらない。私のことに興味が無くなったのか、ヘンリエッタ様が父の方へと視線をずらし、纏う雰囲気がより一層重いものへと変化する。
「さて、改めまして名乗りぐらいはしてあげましょうか。ヘンリエッタ・マニスカラ・クストス・アプーリア、よ。気軽にヘンリとでも呼べばいいわ。それでリンベッタ、何故私が貴方を呼びつけたのかは理解してるかしら?」
「ま、まことに申し訳あり」
ごん
父が謝罪を述べようとした瞬間、白騎士の彼女が前に掲げていた剣で床を叩きつける。その瞬間父に降り注ぐのは、地面にめり込んでしまっていると錯覚するほどの闘気。父に向けられたはずなのに、私すら気絶してしまいそうなほどの熱量が私たちを襲う。
「閣下の問に答えよ、子爵殿。」
「も、申し訳ありませぬ。……理解して、おります。」
「あら、ならいいわ。わざわざ説明せずに済むもの。」
ころころと無駄が減ったことを喜びながら、彼女は笑う。
「あぁ、そうだ。言い忘れてたわね。隣にいる白い子、この子があの痴れ者の企みを止めてくれたのよ? たまたま休暇の旅行中に盗賊たちの基地を見つけて、一人で全部潰しちゃったんですって。すごいわよねぇ。ほらリンベッタ、お礼ぐらい言えば?」
「こ、この度は我が臣下たちの仇を討ってくださり、ありがとうございます。最大限の、感謝を。」
「……その礼を受け取ろう、子爵殿。」
まったく興味がなさそうに、事務的にそう答える彼女。ヘンリエッタ様はその様子を見ながら何が面白いのか全く理解できないが、楽しそうに笑っていらっしゃる。まるで本来見れないはずのものを見れて、それを楽しんでいるかのように。
「いいわねぇ。ちゃんとお礼を言える子は嫌いじゃないわ、ねぇビクトリア?」
「その通りかと。」
「ふふ……。さ、あまり時間はないのだし早速本題に入りましょうか。」
ほんの少しだけ魔力を弱めた彼女は、そう続ける。
「陛下は強く失望なされているわ、長年皇室の剣となり盾となってきたララクラが自領を脅かす魔の手を払うどころか、気づけなかったことに。貴方がぬくぬくお家で過ごしていた間、何人の部下が死んだのかしら?」
「……我が友であった3名の男爵と、その家族。彼らを主として慕っていた騎士たちが皆、凶刃に倒れました。」
「よねぇ? 確かに貴方は個人としてはちょっと強いのかもしれないけれど……、その力を活かせなければ貴族ではない。冒険者でもあなたと同じくらいできる人はいるもの。貴族の力は、肝心な時に振るえるから貴族。私の解釈は間違っているかしら?」
「いえ、間違っておりません。」
父と、ヘンリエッタ様の問答が続く。子爵である父と、公爵であるヘンリエッタ様の会話に自身が入り込むことはできない。私に許されていることは、ただ裁きを待つことであり、せめて貴族としての誇りを示し続けることだけ。
「今回の件、急進派の者たち。特に陛下の力を落とそうとしていた者たちが暗躍していたから私がテコ入れをしたけど……。本来ならそのまま取り潰しになるような事件よ? それが御前会議では愚かな企みを阻止した英雄サマだもの、全く面白いわよね。……リンベッタ、貴方は事の重大さ、名家の一つとして数えられる貴方の家が自身の代で潰れそうになっていたこと、本当に理解しているの?」
「はい、強く理解しております。……同時に、悔やんでも悔やみきれぬほどに、後悔しております。」
「……ならいいわ! おしまい!」
その瞬間、私たちを包んでいたすべてが嘘のように掻き消える。ヘンリエッタ様が纏っていた魔力も、二人の騎士が放っていた闘気も、全て最初から何もなかったように。そして先ほどまでの雰囲気が嘘だったかのように朗らかな笑みを浮かべ、優しそうな眼をしているヘンリエッタ様がそれを助長する。
「ごめんなさいねぇ? 特にマリーナちゃん、怖かったでしょう? 特にこの黒い子、体も大きいし怖いでしょう? でも中身はとっても優しい好青年だから我慢してあげてよね。それにビクトリアも。」
「ビクトリアちゃんだよ~! 元気~?」
「ほら、こんなに愉快な人なのよ! ……それ今度私の部屋でやってくださる?」
あまりもの落差で脳が完全にバグる、父も父でマジで何が起きてるのか理解しきれていない。というか黒騎士様は闘気を抑えて姿勢を崩しただけだけど、ビクトリアと呼ばれた白騎士の彼女の方はマジで人が変わったかのように思えてしまう。さっきの厳格で人に全く興味がないかのような人間はどこに消えてしまったのか、人懐っこい笑顔を浮かべてきゃぴきゃぴしていらっしゃる。……あ、やばい。心臓が! 高低差で! 高低差で死ぬ! なにあれ、ナニアレ!
「いやごめんなさいね? 反省してるかしてないのか解らないからドッキリしかけちゃった。でもよかったわ~、ほんとに反省してなかったらお掃除の手間が増えちゃうもの。血の汚れは落ちにくいからねぇ。」
その言葉を聞いた瞬間、混乱していた精神が一瞬にして叩き直される。この方は、私たちは何もできなかった事実を悔やみ、反省することが出来ていなければこの場で処理なされるつもりだった。そう口にしたからだ。今見せている人のよさそうな顔、そして先ほど見せた冷たい氷の様な顔。どちらも、ヘンリエッタ様を構成する部分の一つ。
それを理解させられた私たちは、崩れてしまった姿勢を正す。
「今回の件、陛下も私も重く受け止めていることは確かよ。ララクラが自領の出来事を完全に把握できてなかったことと、その臣下が命を散らしてしまったこと、そして急進派が貴方たちなら崩せると判断し、襲ったこともね? 今回はビクトリアがたまたま潰してくれたから主導権をこちらが握ることができたけど……、このままだとまた繰り返してしまう。」
「陛下が求めていらっしゃるのは、ララクラの早急な立て直しと、強化。そして伯爵位への陞爵よ。」
「……伯爵位、ですか。」
ヘンリエッタ様の言葉に、父が疑問を返す。父の声もさっきまでの必死な声と比べると少し落ち着きを取り戻してきている。
「そ、まぁ簡単に言うと急進派がやろうとしたことをこっちがそのままやり返してやる、ってこと。ララクラを伯爵位にして、元老院議員まで押し上げる。そうすることで急進派の力を削ぎながら、保守派。この場合は皇帝派かしら? そのパワーアップってところね。」
「し、しかしもし今回の件。発表した内容通り進めたとしても元老院どころか伯爵位すらも……。」
「えぇ、その通り。貴方が侵攻を許してしまっている以上その汚点は雪げない、相手の計画を阻止した功績を拡大解釈してトントンってところね。だから……」
「マリーナちゃん、貴方の出番よ?」
「わ、私。でしょうか?」
「そ! 強くなってバンバン功績稼いで、ララクラ家を自他ともに認める真の名家にしちゃいましょ!」
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