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原作開始前:故郷編
14:そうだね、王族だね
しおりを挟む前回までの曇らせ凌辱負けヒロインは!
私ティアラちゃん! この大陸において私しか信者のいない神様を信奉する女の子(5歳)! 住んでた村で迫害される可能性が出てきたので一人で脱出! ちょうどそこら辺をうろついてたチュートリアル俗物がいたのでぶち殺して馬とか武器とか奪ったよ! でも何の用意もせずに飛び出しちゃったもんだから色々大変!
装備もないし食料もない、路銀もない(少しはある)のないないづくし! いや一応加護として頂いたアイテムボックスこと“空間”のおかげで頑張ればなんとかなりそうなんだけど、どっちみち目的地に着いた後もお金がいるので色々売らなくちゃいけない!
ということで白羽の矢が立ったのは俗物から奪ったお馬さん! 神さまのおかげで綺麗な白馬さんにイメチェンした彼を売り払おうと思います~! 色綺麗だし、あの俗物も一応貴族? ぽかったので結構いい馬だと思います! 高値で売れるんじゃないかぁ~、と思ってたんだけど問題発覚。
5歳が持ってきたお馬さんを大人は買うのか、ってお話。
最初は槍でおどそっかなぁ~、って思ってたんだけど神様から却下食らいまして……。
色々うにゃうにゃしていた結果、神様ことアユティナ様からお嬢様風な綺麗なお洋服を頂いて、ニセ権力パワーでごり押ししようってお話になりました! まぁそれまでは良かったんですけど……。
「やり過ぎじゃねぇっすか?」
「そう? 似合ってるけど。」
一旦馬を連れてダッシュで町の外へ。
アユティナ様がせっかくだから召喚しろと仰るので、地面に召喚陣を描きアユティナ様ご自身をお呼び出しする。相変わらずの手のひらサイズでの顕現だ。私が使徒になったことで、私自身が例の森にあったご立派棒ならぬ石像と同じ力を発揮できるようなのだが……。うん、めっちゃしんどいです。
「そりゃまぁ元々あの像が肩代わりしてたのを生身でやるわけだから、仕方ないよね。」
「……今回はMP全消費で済みましたけど、完全顕現だとどれぐらい持ってかれるんです?」
「あ~、今のティアラちゃんなら肉体がはじけ飛ぶ?」
内側からばちゅん、って感じだね。まぁ絶対にやらないから安心してよ。と笑うアユティナ様。
多分真っ青になっているであろう私の顔。そりゃあなた様はやらないでしょうけど、できてしまうって事実が怖いんすよ……。いやまぁ本来他にも色々捧げものとか必要なところを、サイズ変更することでMP消費に収めてもらってるわけなので、滅茶苦茶ありがたいんですけど……。
因みに現在私は、アユティナ様に着せ替え人形にされている。
『私の信者が初めておめかしするんだよ!? 私に任せて! いややらせろ!』とのことでわざわざ顕現していただいている。木々によって視界が遮られた森の中で、一応の護衛として【山の主の衣】に付属しているスキル、“ソウルウルフ”を起動。最後に地面に銅板を敷いて始まるおめかしタイム。
やっぱ神なので瞬時に生成したのか、それとも元から持っていたのかはわからないが……瞬時に積み上げられる服やアクセサリーの山。かなり乱雑な置き方がされているがどれもシワ一つない。あ~、加護かかってる奴~。
「よ~し! メイクもできた! いやはや、3000年近くできた暇の間に、ファッションとか色々手を出したけど、それがこんな形で役に立つとは思わなかった! うん、満足!」
「それは信者として神のお役に立てるのは滅茶光栄なんですけど……、派手じゃありません?」
そう言いながら、神に着せていただいた服を軽くつまむ。
服飾には全く詳しくないのでなんと言ったらいいのかはわからないが、このフリルがたくさんついたゴシックの様なドレス。私の白い髪色に合わせた白ゴス? といえそうなもの。なんか頭にもよくわからん丸っこいの付けてもらってるし、アクセサリー類も前世含めて見たことの無いレベルで品質が高い。ただそこにあるだけで光を放ってるとかそういうレベル。なにこれ。
「ちょっとお肌も荒れてたから処置しといたよ? これからはちゃんとするように。ほい、鏡。」
「あ、はい。って、これが私? キレイ……。ってお約束してる場合じゃねぇっすよ!」
明らかにやり過ぎというか、アユティナ様の趣味入ってるでしょう! まぁ確かにゲーム内で見たお貴族様たちの格好もこんなもんですけど! 私の注文通りに仕上げてくれましたけど! 全部品質がやばすぎてこの世界の文明レベルからかけ離れちゃってます! あと今着てる奴、靴の先っぽから頭の端まで全部加護付きじゃねぇっすか! 恐れ多いっす!!!
「でも私が作った時点でそれはもう神器だし、何かしらの加護が付いちゃうのはしかたなくない?」
「そりゃそうですけど!!!」
全部終わったらお返ししますからね!!! 状態保存の加護以外にも色々かかってるでしょコレ! なんかさっきから体の調子が良すぎますし! 絶対ステータス向上系の加護ついてる! 『え~、あげるのに~。』じゃないですからね! そもそも色々もらい過ぎなんです! これ以上もらったら何返せばいいか解らんくなっちゃうでしょうが!
「私的には晩御飯のおかず一口捧げてくれたら、もうそれでいいんだけど……。」
「なんですかその『ちょっとだけ味見させて~』ってノリは! 神様への貢ぎ物ですよ!? 『突撃信者の晩御飯』じゃないんですよ!」
「でも良い物捧げようと無理して、前みたいにぼろ雑巾になって帰ってくるの私見たくないよ?」
ぐ、ぐぅ。正論。例の狼以外にも色々やらかしてますし……。
と、とにかく! ちゃんとお返ししますから受け取ってくださいね! レンタル代とお馬さんの色変え代金はちゃんとお返ししますから! それに追加してこれまでのお礼もちゃんと捧げますからね! 覚悟の準備をしておいてください! ダンジョンに着いたら即座に行動に移して色々捧げます! いいですね!
「そう? とりあえず無理はしないように。じゃあそろそろ時間切れだからバイバイ~。」
「……本当にありがとうございました、我が神に最大限の感謝を。」
何でもない、いつも通りの日々。
今日も生きるための糧を得るために、多くの者たちが行きかう町の大通り。普段であれば小さい町ながらも活気にあふれ、人々の話し声が絶えない場所であるはずなのだが……、今この時は誰もがただ見惚れていた。
誰一人声を上げず、ただその存在に見惚れるだけ。人によっては口を開けたまま呆然としてしまうもの。自分の目に何か異常があるのではと擦ってしまうもの。感極まり気絶してしまう者。皆が息を呑み、その存在に心奪われていく。
美しい白馬に跨り、同様に真っ白で汚れ一つ存在しないドレスに身を包んだ少女が、そこに。
大きく開かれ、すべてを見通してしまいそうな青い瞳。その色に合わされた細かなアクセサリーたち。まるで神が仕立て上げたかのような存在が目の前にいて、動いている。明らかに貴族、いやただの貴族を超えて何かもっととてつもないもの。こんな辺鄙な町では一生見なかったような存在が、そこにいた。
ということで、はい。お着替えしてお馬さんに乗り、町に移動してるわけですが……。
(くっそ注目されてますやんかァ!)
まぁそりゃそうである。なんでもない村娘が白馬に乗ってると『ほへ、珍しい馬やなぁ。高く売れそうやねぇ。』で終わりそうなものだが、神から直々に頂いた服、上位の貴族でも持ってるかどうか怪しいレベルの服を身にまとった女児が、護衛も付けずたった一人馬に乗って歩いてきてるのだ。
服も目立つし馬も目立つ。あと私の髪色とベストマーッチしちゃってるせいで相乗効果も出てるっぽい。
(あ~、最初はいいアイデアだと思ってたんですけどね。途中の移動のこと、全く考えてなかった。)
しかもここにきて私の価値観が邪魔をしてきた。
今の私はこの世界をゲームで見ていた現代人の精神が、この世界の少女として数年過ごした様な状態だ。一応村での常識とかは頭の中に入っているのだが、根本的な価値観とかはまだ現代人寄り。現代じゃ『えらいきれいなお洋服で。どこで売ってんの?』レベルで済むが、この世界じゃ『異常』その一言である。綺麗すぎて注目を浴びてしまっている。
ヤバいこと、文明レベルとかけ離れていることは理解していたが、それが人々にどんな影響を与えるのか、どんな風に見られてしまうのか。そのあたりを全く考えていなかったのである。
(……うん! もうしらね! ティアラちゃん今から『やんごとなき御家のご息女』になっちゃう~! 名前もそれっぽいのに変えちゃお。えっと、ゲームには出てこない名前でそれっぽいの……。かの女帝から文字って“エカチェリーナ”にしよっと。)
ほぼヤケになって胸を張り、全身に魔力を巡らせながら堂々とお馬さんに乗りながら厩舎の方へと向かう。人さらいの人間たちからすれば私なんか絶好のカモだ。そんなやばいのに目を付けられないように、魔力を回して威圧感アップ大作戦ね!
(え? さらに『やんごとなき』度が上がってるって? んなもんもう知らね!)
普段着でやってきたときに、門番さんから色々聞いたんだけど……。近くにある牧場が都市内部に厩舎を構えていてそこで馬の販売やレンタルをしているらしい。買取もそこでやってくれるそうだ。
っと、そうこうしてる間に目的地が見えてきた。
騒ぎを聞きつけた厩舎の人とかが出て来たと思えば、こっちを見て完全に固まってる。まぁ顔とかもガチガチにメイクしてもらってるからなぁ。村娘を超えたスーパー村娘になっていることでしょう。そも、元々『ティアラ』自体顔がいいし。
じゃ、ちょっと話しかけるとしますか。もしも~し、そこの青年! ティアラ様……、じゃなかった。“エカチェリーナ”様が質問しますよ!
「もし。」
「…………え、ぼぼぼ僕ですか!」
「えぇ、馬宿というのはここで?」
かなり震えながら言葉を返してくれる。えぇ、えぇ。そうですよ。ここに用があってきましたとも、悪いですけどここの責任者を呼んでくださる? この子の買取をお願いしたいの。ちなみに私、急いでいるから。早くしてくださるかしら?
「ひゃ、ひゃい! 今すぐ呼んできましゅ!」
「あぁ、後。ずっと乗り続けて疲れてしまったわ、案内してくださる?」
軽く微笑みながらそう“指示”を出す、すると私が話しかけた奴以外も弾かれたように動き出しわざわざ馬から乗り降りするための台まで持ってきてくれた。
……なんでしょう、口調とか仕草とかアニメやゲームで見た『身分が高い人』の真似をしてるんですけど、それにしても色々おかしくない? 私演技とか全然無理なタイプっすよ? 前世一般人だったし。……あ、解った。コレ服に付いた加護が作用してるな?
(こっち来る前に全部聞いときゃよかった。アユティナ様に聞けばすぐ教えてくれるだろうけど、なんどもこちらの都合で呼び出すの申し訳ないし……。もうこのまま行こうか。)
それに加護を知ったら知ったで、アユティナ様への申し訳なさとか、周囲の人たちに迷惑かけたとかで色々変に考えこんじゃうだろうし……。
そんな思考を回しながら、馬宿の奥に案内してもらう。多分応接室の代わりに使っているのであろう職場の一部を、垂れ幕で囲った場所。急いで中を掃除した男衆たちとすれ違う様に中に入り腰かける。
えぇ、ここまでの案内ありがとう。飲み物? 何が入っているか解らないので結構。あぁ、いえあなた方のことを信用してない訳ではないのよ? ただ私の気分を害してしまうようなものしかないでしょう?
調度品を指さしながらどこからそんな言葉が出てくるのかと突っ込まれそうなことを口にする。なんでしょ、私って追い込まれたり変なことに巻き込まれた時に限って口が回るんですかね? 息を吐くように変な言葉出てくるんですけど。怖い。
「お貴族様ってあの領……、ッ! お待たせして申し訳ありませんッ! 当馬宿で長をやらせて頂いてる者ですッ!」
そんな風にすっごいペコペコしてくる職員さんをあしらっていると、呼んできた職員と何かを話しながら恰幅のよい中年の男性が垂れ幕を手であげながら入ってくる。が、こちらの姿を見た瞬間に即座にその場にひれ伏せた。
「(え、何? こわ。)……そんなところで何をしているのかしら?」
「お、お待たせしてしまったことと、ウチの若い者がご迷惑をお掛けしたことを謝罪しております!!!」
「この服を見て?」
「はッ! いいえ! お召しになられているものも大変すばらしいものですが、何よりその身に宿す御威光で、いと高き方と推察いたしました!」
……うん! やっぱこれ絶対服になんかかかってるよね! あの過保護神様め! ありがたいけど限度があるでしょうに! でもいつもありがとうございます!!!
何その“身に宿す御威光”って! 村娘がそんなの持つわけがないでしょうが! というかこの人確実に私のこと王族かなにかと勘違いしてるよね!? いと高きってそういうことじゃんか! 限度! 限度を知ってください神よ! じゃないと旧約聖書みたいに息子捧げますよ! まだ息子いないどころか5歳だけど!!!
「そう、もう少し控えめにすればよかったわね。いいわ、人が這いつくばるのを見て面白がるほど、私は悪趣味じゃないもの。対面に座ることを許すわ。それと、言わなくても理解“できる”だろうけど、ここであったことはすべて忘れなさい。」
「ありがたき幸せ! 全員に周知させます!」
「あとうるさいのも嫌いよ、私は。」
あ~、口が勝手に動くんじゃァ。何よ『悪趣味じゃないもの』って? どこの悪役令嬢かっての。逃げだしてぇ! 早くお馬さん売って路銀稼いでこの町から逃げ出して全部忘れてぇ! 多分顔は取り繕えてはいると思うけどもう冷や汗というか、居心地の悪さが半端ねぇ!
「そ、それで何のご用でしょうか……。」
「私が乗ってきた馬、買い取ってくださる? あぁ別に色は付けなくていいわ、たまたま寄っただけだもの。」
◇◆◇◆◇
「店長、あの方。何だったんでしょう……。」
「解らん。だが確実に厄介事なのは確かだ、全員に今日のことは忘れるように厳命しとけ。」
そう言いながら先ほどまで座っていた椅子により体重をかける。
ずっと座ってはいたのだが、相手が相手だったのでずっと背筋は張りっぱなし。あぁ、ダメだこりゃ今日はもう仕事にならん。急に来るなよ……、いや事前に連絡された方がよっぽどひどくなりそうだ。朝から大慌てで色々用意して、そこからあの大物がやってくるわけだ。確実に全員使い物にならなくなる。
未だに全身に残る、『圧倒的な格の差』。
貴族とかそういうレベルじゃねぇ、もうそもそも生物としての格が違うとか、そういうレベルだ。俺は魔力やら魔法やらはてんで解らねぇが、町唯一の馬宿。ここの領主もウチから馬を買うっていう都合上“魔法使い”ってやつらがどんな奴らか、貴族って奴らがどんな奴らかはある程度知っている。
常人では一瞬で消し炭にされてしまうような相手も、権力でこっちのすべてを持って行く相手も、知っていた。
だがアレは……。
「マジで何だアレ。」
明らかに俺たち一般市民が一生お目に掛かれないようなお召し物。そっちにも確かに目が行ったが、ソレよりもあの存在が持つオーラというか、覇気自体に目が行った。いや目を奪われたという方が正しいか。
なんかこう背中からずっとオーラが出ているというか、後光が出ているというべきか……。まぁそんな感じだ。多分ありゃ無意識でやってるんだろう、生まれつきずっとあのオーラを纏ってる。ありゃ駄目だな、確実に呑まれる。いやすでに呑まれていたのか、俺は?
「……王族、だろうなぁ。」
そんな馬鹿げたオーラをもってそうな存在と言えば王族か偉い神官様とかそこら辺だ。
華美なものを嫌う教会の奴らにはあの豪華なお召し物は合わないだろうし、そもあのオーラは絶対生まれつきのもんだろう。となると王族。生まれながらにして王と成る者が持つ覇気、いやもうそうだとしか考えられない。
「最近王宮が色々騒がしいって聞くし、それ関連だろうなぁ。」
馬宿や牧場関連の仕事に就くと、普段では関わらないような遠方の情報ってのも入ってくる。馬の繁殖やら卸しとかで色々な? 血が濃くならないように遠方から牡馬を買ったり、品評会とかに出席したりしてると自然と集まってくる。
その中で最近よく聞くのは、我らが陛下の様子がおかしくなっているのでは? という噂だ。なんでも最近、病死なされたという第一王子は、実は王によって殺されたのではないか、っていう話。
それを考えると王の御子息や御息女が王宮から避難して、ってのはありえない話ではない。
「それで足を付けないように馬を処分する、って感じか?」
まだ能力とかはよく見てないから解らないが、白馬ってのはかなり目立つ。そりゃ生まれた瞬間に貴族や王家に献上してもおかしくない毛色だからな。数が少ないってこともあって、貴族のお嬢様方には非常に気に入られている。そんな目立つもんを疎開先に連れていくのは見つけてくれって言ってるようなもんだし、さっさと金に換えてしまおうって話だろう。
「でもなぁ……、王族と解ってる相手のもの。売れるわけねぇよなぁ……。」
何故護衛を連れていなかったのかなどの疑問は残るが、あのオーラにお召し物に白馬。そして昨今の情勢を鑑みるに確実に王族、性別と年齢からみて多分“第二王女のイザベル様”とかそこら辺だろう。そんな相手の所有物を一応買い取ったというわけになるのだが……。
王族から買い取った、正確には下賜されたものを気軽に売れるか? という話だ。
ちょっと話してみた感じ多分ヤバいタイプ、気に入らない者の首を気軽に刎ねてくるタイプではない。人を人ではなく物として扱うような貴族とはちがい、一応一個人として見てくれるお方だった。言葉には少々棘があったが、お貴族様にしちゃ可愛いもん。年齢に見合わない理性も感じられたし、ありゃ大成するだろ。
故に多分俺らがあの白馬をどっかに売りつけてもおとがめはないんだろうが……、その周りがどうなるか解らん。いや確実に問題にされる。王族から頂いたものを勝手に売り払う? 一族郎党どころかここの従業員とその家族もろとも晒し首にされてもおかしくない悪行だ。
「……うん、おかえりになるまで飼育しよ。」
取れる手段は本当にそれだけ、売るわけにもいかんし放置するわけにもいかん。
となるとあの方がもう一度ここにいらっしゃるか、王宮からお呼びがかかるまで保管しておくに限る。あるのかどうかすら解らんが、それでもことが発端してみんな生首よりはだいぶマシだ。一般的な白馬の買取価格と馬一頭の飼育代で命が助かるのならいくらでも出すとも。
「あとこれはかなりグレーゾーンだが……。」
一応このマイナスをプラスに転じさせる方法もある。早い話、繁殖だ。
白馬の元に必ず白馬が生まれるっていう確証はないが、確率はぐんと上がる。子供世代に出なくても孫に出る可能性もある。運がいいことにあの白馬は牡で、しかも去勢されてない。雌だと腹の状態からすぐに看破されてしまうだろうが牡であればそれもない。
下賜された馬で何やってんのお前! と言われることもあるかもしれんが……、まぁ何とかなるだろ。
「誤魔化し利くし、最悪ウチの領主の指示ってことにしとけば大丈夫。アイツ屑だし。……そういえば最近どっか遠出したまま帰って来てないけどどこに行ったんかね?」
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