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第2章 不幸な子、幸運の子
12話 シャルロッテ家
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ジョンさんと他愛のない話をしながら歩いていたら、圧倒的に豪華な建物が建っているのが見えた。
洋風なデザインでありながらどこかシンプルでいてしかも地味ではない、お城のような建物だった。お姫様や王子様が住んでいそう。
ここが目的地のシャルロッテ家というところらしい。
「すごいですね……素敵な建物」
「ここの主は石油王だから。こういう建物、憧れるよね」
ジョンさんに完全に同意。小さい頃にこういう建物に憧れていたことを思い出す。
龍也が王子様で私がお姫様で、なんて妄想は日常茶飯事だったし。よく龍也にそういうおままごとに付き合ってもらってたな。懐かしい。
もちろん大きくなるにつれてそんなことは無理だと悟ってお城で暮らしたいなんて思わなくなったけど。
けど、いざ目の当たりにすると改めて住みたいと思ってしまう。
というか石油王って存在するんだね。
「ごきげんよう、ジョン様。こちらに起こしになるなんて珍しいですね。そちらの方は初めて拝見しますが……」
そんなことを考えてうっとりしていたら一人の女性に声を掛けられた。私と同い年くらいの黒髪美人さん。
だけど表情はあまり変わらなくてクールビューティーな雰囲気。メイド服を来ているからこのお城のような建物のメイドさんなのかな。
にしても、メイド服なんて生で見るのは初めてかも。可愛い。ついまじまじ見ちゃう。
「ちょっとね。この子は教会で面倒を見ることになったアイちゃん」
「そうなのですね……あの、そんなに見つめられると恥ずかしいです」
メイドさんがこちらを見ながらうっすら頬を赤らめているのを見てハッとする。
可愛いからつい見すぎちゃった、反省。
「じろじろ見ちゃってすみません。可愛らしくてつい……姫川アイです。よろしくお願いします」
「お気にならないで下さい。私はクララです。よろしくお願い致します、姫川様」
クララさんはさっきまで頬を赤らめていたのが嘘かのように、私が目を離してすぐに元のクールビューティーさんに戻ってしまった。
さっきの顔をもう少し堪能しておけば良かったと後悔した。もちろんまた同じことをしようとは思わないけど。そんなことより……。
「アイでいいですよ」
「では、アイ様で」
「……はい」
少し距離を取られてるようで寂しいけど、まあいいか。姫川様よりは全然マシ。
「クララちゃん、それでアイちゃんをサシャさんに紹介したいんだけどいいかな?」
「かしこまりました。それではサシャ様のところまで案内致します」
クララさんが案内してくれるから私とジョンさんはクララさんの後を着いていく。
さっきまで見ていたお城の中に入っていくことに対する緊張感からか手と足が同時に出そうになる。
けど、いざ一歩入ってしまえばそんなことを考えている余裕はなく、沢山の調度品に見入ってしまう。
見たこともないような物から、見るからに高そうな壺、大理石の床と壁、目に映る物全てが高そうで(実際高いだろうけど)見ていて楽しい。
好奇心が緊張に勝つ瞬間である。
「アイちゃん、僕が初めてシャルロッテ家に来た時と同じ反応してる」
こちらを見て楽しそうに笑うジョンさん。
やっぱり皆同じ反応しちゃうよね、と少しだけほっとする。貧乏くさいと思われたかと思ったから。けど、落ち着きがないとか思われたんだろうな……うぅ。
「そういえばね、今から会うのはサシャ=シャルロッテって人なんだけど、定期的に教会にお金やら物資やらを寄付してくれてお世話になってる人だから宜しくして欲しいかな」
「そんなに立派な方なんですか!!」
しかもここのお屋敷に飾ってある調度品も、ほぼ全部父親の代からあった物で、サシャさんが買った物はあまりない、とジョンさんに教えてもらった。
個人的に、お金持ちの人はほとんど自分の好きな物にお金を使ってるような人が多いと思ってた。
ましてや教会に寄付なんて、あまり見返りのないようなことをするとは思ってなかったからまだ見ぬサシャさんはとても素敵な人だと確信した。
「そんな素敵なご紹介に預かり大変光栄だけど、好きでやってることなんだからそんな風に恩義を感じなくてもいいのに」
「さ、サシャ様!!こんな所で何をしてるんですか!!」
横からひょいと人が現れてビックリする。
クララさんにサシャ様と呼ばれたその人は、褐色の肌に金色の目と金色の三つ編みに結んだ髪がよく映える美青年だった。
目の下の涙ぼくろが色っぽさを演出している彼が手にしてるのは……パイナップル?
この人がサシャさんなんだろうけど……。
洋風なデザインでありながらどこかシンプルでいてしかも地味ではない、お城のような建物だった。お姫様や王子様が住んでいそう。
ここが目的地のシャルロッテ家というところらしい。
「すごいですね……素敵な建物」
「ここの主は石油王だから。こういう建物、憧れるよね」
ジョンさんに完全に同意。小さい頃にこういう建物に憧れていたことを思い出す。
龍也が王子様で私がお姫様で、なんて妄想は日常茶飯事だったし。よく龍也にそういうおままごとに付き合ってもらってたな。懐かしい。
もちろん大きくなるにつれてそんなことは無理だと悟ってお城で暮らしたいなんて思わなくなったけど。
けど、いざ目の当たりにすると改めて住みたいと思ってしまう。
というか石油王って存在するんだね。
「ごきげんよう、ジョン様。こちらに起こしになるなんて珍しいですね。そちらの方は初めて拝見しますが……」
そんなことを考えてうっとりしていたら一人の女性に声を掛けられた。私と同い年くらいの黒髪美人さん。
だけど表情はあまり変わらなくてクールビューティーな雰囲気。メイド服を来ているからこのお城のような建物のメイドさんなのかな。
にしても、メイド服なんて生で見るのは初めてかも。可愛い。ついまじまじ見ちゃう。
「ちょっとね。この子は教会で面倒を見ることになったアイちゃん」
「そうなのですね……あの、そんなに見つめられると恥ずかしいです」
メイドさんがこちらを見ながらうっすら頬を赤らめているのを見てハッとする。
可愛いからつい見すぎちゃった、反省。
「じろじろ見ちゃってすみません。可愛らしくてつい……姫川アイです。よろしくお願いします」
「お気にならないで下さい。私はクララです。よろしくお願い致します、姫川様」
クララさんはさっきまで頬を赤らめていたのが嘘かのように、私が目を離してすぐに元のクールビューティーさんに戻ってしまった。
さっきの顔をもう少し堪能しておけば良かったと後悔した。もちろんまた同じことをしようとは思わないけど。そんなことより……。
「アイでいいですよ」
「では、アイ様で」
「……はい」
少し距離を取られてるようで寂しいけど、まあいいか。姫川様よりは全然マシ。
「クララちゃん、それでアイちゃんをサシャさんに紹介したいんだけどいいかな?」
「かしこまりました。それではサシャ様のところまで案内致します」
クララさんが案内してくれるから私とジョンさんはクララさんの後を着いていく。
さっきまで見ていたお城の中に入っていくことに対する緊張感からか手と足が同時に出そうになる。
けど、いざ一歩入ってしまえばそんなことを考えている余裕はなく、沢山の調度品に見入ってしまう。
見たこともないような物から、見るからに高そうな壺、大理石の床と壁、目に映る物全てが高そうで(実際高いだろうけど)見ていて楽しい。
好奇心が緊張に勝つ瞬間である。
「アイちゃん、僕が初めてシャルロッテ家に来た時と同じ反応してる」
こちらを見て楽しそうに笑うジョンさん。
やっぱり皆同じ反応しちゃうよね、と少しだけほっとする。貧乏くさいと思われたかと思ったから。けど、落ち着きがないとか思われたんだろうな……うぅ。
「そういえばね、今から会うのはサシャ=シャルロッテって人なんだけど、定期的に教会にお金やら物資やらを寄付してくれてお世話になってる人だから宜しくして欲しいかな」
「そんなに立派な方なんですか!!」
しかもここのお屋敷に飾ってある調度品も、ほぼ全部父親の代からあった物で、サシャさんが買った物はあまりない、とジョンさんに教えてもらった。
個人的に、お金持ちの人はほとんど自分の好きな物にお金を使ってるような人が多いと思ってた。
ましてや教会に寄付なんて、あまり見返りのないようなことをするとは思ってなかったからまだ見ぬサシャさんはとても素敵な人だと確信した。
「そんな素敵なご紹介に預かり大変光栄だけど、好きでやってることなんだからそんな風に恩義を感じなくてもいいのに」
「さ、サシャ様!!こんな所で何をしてるんですか!!」
横からひょいと人が現れてビックリする。
クララさんにサシャ様と呼ばれたその人は、褐色の肌に金色の目と金色の三つ編みに結んだ髪がよく映える美青年だった。
目の下の涙ぼくろが色っぽさを演出している彼が手にしてるのは……パイナップル?
この人がサシャさんなんだろうけど……。
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