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第2章 不幸な子、幸運の子

11話 昨日ぶりの再会

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 「とりあえずはイマイのところかな。1番近いし」
 そう言うジョンさんの声を合図に私達は歩き出す。
まずはイマイさんのところから行くらしい。昨日はお礼をしそびれたし、早く会えるのは嬉しい。


 幸いにも今日は天気が良く、暖かい日差しが私達を照らしている。
森の中の教会だから鳥はさえずり、リスなどは辺りをチョロチョロと動き回っていて見ていて愛らしい。空気も澄んでいて美味しいし、改めてここはいいところだと実感する。


 「アイちゃんはイマイとはどうやって知り合ったの?」
「私がこの世界に来てウロウロしてて疲れちゃって、その辺で寝ようとしたら声を掛けられたんです」
 ただ歩いてるだけでは森の中だし周りの様子がそんなに変わらなくて暇だからと話しながら歩く。


と言っても、昨日のことを聞かれるとひたすらに恥ずかしい。冷静に考えると本当にはしたなくて浅はかだったと思う。


「なるほどね。その行動力、素敵だね」
そんな私の事を肯定してくれるジョンさん。その一言で恥ずかしかった事も忘れて心が温かくなる。そして、純粋に褒められて照れてしまう。
……ジョンさんは天然タラシだなぁ。
「無鉄砲なだけですよ」
そう、可愛くないことを言って顔を逸らす。素直に喜べない。


 「でも、イマイに見つけてもらえて良かったね。教会やら何やらがあるとは言ってもここは森の中だし。危険なんだよ」
「気をつけます……」
それでもやっぱり注意はされました。
ここを歩いている間にもガサガサと大きな音がしたし、ジョンさんに熊がいると教えてもらったからね。怒られるのも無理はないけど。


「それならよろしい」
そう笑顔で言うと、ジョンさんは私にクッキーを差し出してきた。曰く、ちゃんと反省したご褒美らしい。
……これは子供扱いされてるな。なんか恥ずかしい。今度からは落ち着きのない行動は慎まなきゃ。






 しばらく歩いていたら、相変わらずの緑の中に見知った顔を見つけた。緑の中に浮かぶ黒色。
風に揺られてそよそよと動く髪を特に気にする事はなく、こちらを見つめて立っているのはイマイさん。その視線に非難の色が含まれていることを隠すつもりは全くないらしい。


 「何で来た。奇襲か?」
「もちろんイマイに会いに来たに決まってるじゃん。アイちゃんの案内も含めてね」
 イマイさんとジョンさんが話している。
昨日も思ったけど、2人を見ていると仲良しだということがよく伝わってくる。お互いに容赦ない。


 「イマイさんにお礼を言いに来ました。昨日はありがとうございました」
「別に、お礼を言われるようなことしてないけど」
私がお礼を言うとイマイさんは照れたようにそっぽを向く。
俗に言うツンデレってやつなのかな。とても可愛いと思います、もっとやれ。


「イマイも素直になればいいのに」
「余計なお世話だ!!俺は元から素直だ!!」
「ムキになるなよ」
そんなイマイさんにも慣れてるかのようにからかうジョンさん。2人は親友なのかも。
そう言ったところで否定されそうだから言わないけど。
2人を見ていると年上なのにどこか微笑ましくてつい頬が緩んでしまう。


「何、笑ってるんだよ」
「え、いやこれは……」
イマイさんに指摘されてハッとする。すぐに緩んだ頬を元に戻す。
イマイさんになるわけではないけど、これは素直に言えない。言ったところで冷やかしてるようにしか思えない。つい言い淀む。


「まあまあ。楽しいんでしょ?イマイと話してて楽しいって思えてもらえてるんだからいいじゃん」
そんな私にジョンさんが助け舟を出してくれる。ジョンさんに同意するように頷く。
するとイマイさんさ何かをもごもご言いながらあからさまに頬を赤らめる。
か、可愛い……。ついじっとイマイさんを見つめてしまう。


「も、もう用はないんだろ!!早く帰れ!!」
そんな私の視線を感じ取ったイマイさんに押されて、私達はすぐにイマイさんのところを後にした。


 そして、次の場所へと移動してる最中に結局イマイさんの住んでる所を紹介してもらってないな、と気づいた。
だからといって戻っても教えてもらえなさそうだから諦めよう。
私はジョンさんの後を急いで追った。
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