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第1章 信じること、信じたくないこと
3話 衣食住
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「着いたぞ」
イマイさんの後ろをついて行き、しばらく歩いたと思ったら声を掛けられた。
目の前にある建物は、元の世界にでも見かけるものだった。神聖なる教会だ。
「…入るぞ」
一般人も気軽に入れるタイプの教会らしい。結婚式場とかではなく、ほんとうに礼拝のためのものなんだろう。…結婚式場としても使われるとは思うけど。
入ると、正面にはとても美しい人がいた。金髪に緑色の目。サラサラとした柔らかそうな髪と慈愛に満ちた目が柔和そうなイメージを与える。
しかし、その唯一無二な美貌には、お願いをされたら断れないような魅力もある。美しすぎて怖い、なんていう感情が生まれてしまうとは。とてもミステリアスな人だ。
……男性なのだろうか、女性っぽくもあるが、体つきは意外とがっちりしている。彼が神父さんなのだろう。
そんな神父さん(?)はこちらに慈悲深い笑顔を向けている。隣には、シスターさんがいた。彼女も神父さん(?)に負けず劣らずの美貌だ。教会により一層神聖な雰囲気を漂わせる。
「ごきげんよう、ミスターイマイ。そちらの女性は?」
「異国人だそうだ」
「おや、異国の方でしたか。てっきりミスターイマイの婚約者かと思いました」
「馬鹿な事言うな。こんなガキ興味無い」
「ガキって……」
この神父さん(?)はイマイさんの知り合いなのかな?とっても親しげ……というか、ガキ扱いは聞き捨てならない。つい首を突っ込んだ。傍から見たら絶対イマイさんの方が子供扱いされるでしょ。
「ミスターイマイ。こんな素敵なお嬢さんになんてことをおっしゃるんですか。神の御加護がなくなりますよ」
「そんなもんいらん」
神父さんであろう人はとっても優しかった。見た目の通り。それに対してのイマイさんよ。さては女の扱いに慣れてないな。
「そうそう。で、しばらくこいつの面倒を見てくれないか?森で野垂れ死にかけてたんだけど、俺に頼れる相手なんてそんなにいないし。こういう可哀想なやつを救うような偽善活動とかするんだろ、ここは」
訂正したいことは山ほどあるけど、いちいち首を突っ込むのも助けてもらう側でさすがにできないから大人しく聞いとく。……にしてとひどい。
「もちろんです。彼女もわからない土地に突然連れてこられて困っていることでしょう。しばらくの間は衣食住を提供しましょう。」
「_!!ありがとうございます!」
神父さんに微笑まれてついドキッとしてしまう。にしても、良かった。衣食住を手に入れれるとわかった途端、自分がとても安心したのがよく分かった。ありがとう、イマイさん。
「ですがミスターイマイ、偽善活動ではなく慈善活動の間違いではありませんか?」
「いいや。知らない相手にそこまでしてやるとか、慈善じゃなくて偽善だろ。教会なんて偽善者の集まりだろ」
……イマイさん、やっぱり感謝の言葉を取り消していいですか。
私は無事、衣食住を手に入れたはずだけど……不満がある人がいた。
「マリア様、ですが女性ですよ…」
シスターさんがそう神父さんに言う。どういうことだろうか。女だと駄目なのかな。
「ジョンに面倒を見てもらえばいいだろ」
そんな中、イマイさんが(おそらく)助け舟を出してくれる。
「ミスタージョンにですか。彼の了承を得れれば良いのですが……」
「俺が直接いえば聞くだろ」
「あなたが直々に……。ずいぶんそちらの方の肩を持つのですね」
神父さんはとても意味ありげにイマイさんに微笑む。彼に意地悪そうな、そんな顔を向けられたら女性は即座に恋に落ちるだろうな、と私は思った。相手は男だから大丈夫だけど。
「別に。少し気になることがあってな」
顔を伏せてそう言うイマイさんに、少しだけ不信感を覚えた。どういうことだろうか。私に?それとも他に?どっちにしてもあまりいい感じはしない。
「そうですか。……彼なら今は奥で少し休んでますよ」
「だろうな」
そう言うとイマイさんはずんずんを奥へと進んでいくので、私もすぐに後に続く。するとふと、神父さんと目が合った。
「私はマリアです。この教会の神父です。これからよろしくお願いします」
そう微笑む神父のマリアさんの横で、ずっとシスターさんが私を睨んできた。
イマイさんの後ろをついて行き、しばらく歩いたと思ったら声を掛けられた。
目の前にある建物は、元の世界にでも見かけるものだった。神聖なる教会だ。
「…入るぞ」
一般人も気軽に入れるタイプの教会らしい。結婚式場とかではなく、ほんとうに礼拝のためのものなんだろう。…結婚式場としても使われるとは思うけど。
入ると、正面にはとても美しい人がいた。金髪に緑色の目。サラサラとした柔らかそうな髪と慈愛に満ちた目が柔和そうなイメージを与える。
しかし、その唯一無二な美貌には、お願いをされたら断れないような魅力もある。美しすぎて怖い、なんていう感情が生まれてしまうとは。とてもミステリアスな人だ。
……男性なのだろうか、女性っぽくもあるが、体つきは意外とがっちりしている。彼が神父さんなのだろう。
そんな神父さん(?)はこちらに慈悲深い笑顔を向けている。隣には、シスターさんがいた。彼女も神父さん(?)に負けず劣らずの美貌だ。教会により一層神聖な雰囲気を漂わせる。
「ごきげんよう、ミスターイマイ。そちらの女性は?」
「異国人だそうだ」
「おや、異国の方でしたか。てっきりミスターイマイの婚約者かと思いました」
「馬鹿な事言うな。こんなガキ興味無い」
「ガキって……」
この神父さん(?)はイマイさんの知り合いなのかな?とっても親しげ……というか、ガキ扱いは聞き捨てならない。つい首を突っ込んだ。傍から見たら絶対イマイさんの方が子供扱いされるでしょ。
「ミスターイマイ。こんな素敵なお嬢さんになんてことをおっしゃるんですか。神の御加護がなくなりますよ」
「そんなもんいらん」
神父さんであろう人はとっても優しかった。見た目の通り。それに対してのイマイさんよ。さては女の扱いに慣れてないな。
「そうそう。で、しばらくこいつの面倒を見てくれないか?森で野垂れ死にかけてたんだけど、俺に頼れる相手なんてそんなにいないし。こういう可哀想なやつを救うような偽善活動とかするんだろ、ここは」
訂正したいことは山ほどあるけど、いちいち首を突っ込むのも助けてもらう側でさすがにできないから大人しく聞いとく。……にしてとひどい。
「もちろんです。彼女もわからない土地に突然連れてこられて困っていることでしょう。しばらくの間は衣食住を提供しましょう。」
「_!!ありがとうございます!」
神父さんに微笑まれてついドキッとしてしまう。にしても、良かった。衣食住を手に入れれるとわかった途端、自分がとても安心したのがよく分かった。ありがとう、イマイさん。
「ですがミスターイマイ、偽善活動ではなく慈善活動の間違いではありませんか?」
「いいや。知らない相手にそこまでしてやるとか、慈善じゃなくて偽善だろ。教会なんて偽善者の集まりだろ」
……イマイさん、やっぱり感謝の言葉を取り消していいですか。
私は無事、衣食住を手に入れたはずだけど……不満がある人がいた。
「マリア様、ですが女性ですよ…」
シスターさんがそう神父さんに言う。どういうことだろうか。女だと駄目なのかな。
「ジョンに面倒を見てもらえばいいだろ」
そんな中、イマイさんが(おそらく)助け舟を出してくれる。
「ミスタージョンにですか。彼の了承を得れれば良いのですが……」
「俺が直接いえば聞くだろ」
「あなたが直々に……。ずいぶんそちらの方の肩を持つのですね」
神父さんはとても意味ありげにイマイさんに微笑む。彼に意地悪そうな、そんな顔を向けられたら女性は即座に恋に落ちるだろうな、と私は思った。相手は男だから大丈夫だけど。
「別に。少し気になることがあってな」
顔を伏せてそう言うイマイさんに、少しだけ不信感を覚えた。どういうことだろうか。私に?それとも他に?どっちにしてもあまりいい感じはしない。
「そうですか。……彼なら今は奥で少し休んでますよ」
「だろうな」
そう言うとイマイさんはずんずんを奥へと進んでいくので、私もすぐに後に続く。するとふと、神父さんと目が合った。
「私はマリアです。この教会の神父です。これからよろしくお願いします」
そう微笑む神父のマリアさんの横で、ずっとシスターさんが私を睨んできた。
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