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(08) 今度休みなんで。③
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「あ」
玄関のチャイムが鳴って出てみれば意外な顔を見つけてケイトが驚いた。
「ジョルジオ君」
「………こんばんは」
「…今晩は」
入る?と声を掛けたら垂れていた耳が目を疑う速さでぴこん!と元に戻った。風な幻覚を見た。
見たのでケイトはジョルジオを招き入れた。
仕方無い。
晴れた夜なのに雨に濡れて、しょぼくれた犬みたいな表情をした友人を、思えば小さな事で突き放せる程愚かでないつもりである。一つの事に対しての思考や感想が違うのは当たり前の事だし、これを擦り合わせていって、例え平行線のままでも互いが納得出来ればそれでいい訳で。許し合って行ければいいので、反発して許せなければ離れればいいのだ。変な柵がなければ付き合いを延長しなくても別に構わない。そんな感じで友人は少ない。
……スタンスのケイトだったが。
「どうぞ」
いつもの様にスリッパを勧める。
ケイトはプライベートスペースに土足を許していない。外の汚れを持ち込むのが嫌だからだ。この感覚は家族には分からないらしく、変わり者扱いされている。だって嫌なものは嫌なのだ。
玄関には一応、少々高かったが買った靴を綺麗にする電化製品を置いてあるが、やはり履き替えをしている。土禁だ。
最初、ジョルジオにも驚かれたが『ああ、そうなんですね、成る程、分かりました』とすぐにこちらの要望を受け入れてくれた。あれから自分も同じくしていると言う。『部屋の掃除が少し楽になった気がします』と言っていたが、キチンと掃除してなければ掛かる手間は前と変わりないかも知れない。この国だけでなく隣国各国、大陸の国々から要請されれば赴く勇者のサポートとして、または自らが魔獣や魔族の討伐の為に家を留守にする事が多いジョルジオの部屋には大して変わりないような気がする。
玄関から台所を通り居室兼寝室までの短い距離を移動中もジョルジオは高い背を縮こまらせていた。お返しをしなければ、と気を遣ったのにと気を悪くして怒っているはずの人が何故怯えた様になっているのかケイトには不思議だった。
「座って。お茶淹れるよ」
「ケイトさん!あの!」
「疲れているよね?落ち着いて。話はちゃんと聞くよ」
はいと、すごすごとジョルジオが退く。
勧められた椅子に座ったジョルジオの前に来客用マグカップを置く。自分の分もテーブルの上に置いてケイトは椅子に腰掛けた。
一人用のテーブル。食事もパソコンを開くのも、これまでの人生で滅多にない来客をもてなすのも、ここで全部賄う小さめな長方形のスペース。ここに越してきて初めての来客がジョルジオだった。
向かい合って座ってみたものの、互いに口を開かない。無情にも熱く淹れたお茶が冷める程には時間が流れてしまっていた。
ケイトが待ちの体勢である対して。ジョルジオもまた待ちの体勢であった。
音のない一室で両者の耳には外の喧騒が聴こえるだけだった。
――――――何故、映画鑑賞一つでこんなに重い空気になってるのだろう。
ケイトの疑問である。
チラッと、ジョルジオを見ればジョルジオの顔色は良くない。多分、良くない。何かの拍子にぷちっと切れそうな緊張感が漂っている。
だから。気を遣わなくていいって言ってるのに。
冷めてしまったお茶を勿体ないから自分の分は飲み干すと立ち上がり、ケイトはジョルジオのマグカップを取り上げた。
「!ケイトさん!?」
「冷めてるから淹れ直すよ」
「帰れって言ってるんじゃないんですか!?」
「言ってないよ」
「待って、待って下さい、お茶はいいんで待って下さい」
早口でそう言うとジョルジオはケイトからマグカップを強引に奪い、ごびっと一気に茶を飲み干した。ケイトが呆気に取られる。
「……あ、じゃあ、おかわりを…」
「ケイトさんは俺が迷惑ですか?」
「………………………はい?」
唐突な発言にケイトは理解が追い付かない。呆気に取られた表情のままに、次は違う場面に面食らう。
「え。あの、映画の事なら、そんな」
「確かにしょっちゅうお邪魔したんで、お礼がしたいと思った事は事実です」
「だからそれはいいって」
「でも、お礼がしたかったの前に」
前に?
「俺があなたと一緒に行きたかったんです」
「有難う、嬉しいよ」
取り敢えず礼は言っておこう。社交辞令だから、こうでもこうでも言わないと相手が納得してくれないかもだもんね。という事にして。
「なら」
「気を遣ってくれて嬉しいよ。でも本当にそんなのいいからさ」
「気を遣ってるんじゃ有りません、いえ、遣ってますけど、そういうんじゃなくて」
ケイトは黙った。差し当たってジョルジオの主張を聞く事にした。
というのは建前で、何だかジョルジオが止められない気がしたから様子見するつもりにした。
「俺はあなたが好きなんです」
「?有難う」
「…………」
「…………」
あれ?
な反応のジョルジオに対し、
それが?
な反応のケイト。
まさか!?と即断で思い当たりジョルジオが目を見開いた。
「あ、あ、あの~ケイトさん、好きだって言うのは……」
しとろもどろなジョルジオにぱちくり目を瞬いた。
「?」
あくまで不思議顔をしているケイトにジョルジオが悟る。
これは!犬猫動物大好き!って言ってるのと同等か大きく見積もっても『あなたの事は友人として好きです』って言ってると思っている!
見事スルーされて愕然とする。
ジョルジオはどう立て直すか、一生懸命に考えた。
玄関のチャイムが鳴って出てみれば意外な顔を見つけてケイトが驚いた。
「ジョルジオ君」
「………こんばんは」
「…今晩は」
入る?と声を掛けたら垂れていた耳が目を疑う速さでぴこん!と元に戻った。風な幻覚を見た。
見たのでケイトはジョルジオを招き入れた。
仕方無い。
晴れた夜なのに雨に濡れて、しょぼくれた犬みたいな表情をした友人を、思えば小さな事で突き放せる程愚かでないつもりである。一つの事に対しての思考や感想が違うのは当たり前の事だし、これを擦り合わせていって、例え平行線のままでも互いが納得出来ればそれでいい訳で。許し合って行ければいいので、反発して許せなければ離れればいいのだ。変な柵がなければ付き合いを延長しなくても別に構わない。そんな感じで友人は少ない。
……スタンスのケイトだったが。
「どうぞ」
いつもの様にスリッパを勧める。
ケイトはプライベートスペースに土足を許していない。外の汚れを持ち込むのが嫌だからだ。この感覚は家族には分からないらしく、変わり者扱いされている。だって嫌なものは嫌なのだ。
玄関には一応、少々高かったが買った靴を綺麗にする電化製品を置いてあるが、やはり履き替えをしている。土禁だ。
最初、ジョルジオにも驚かれたが『ああ、そうなんですね、成る程、分かりました』とすぐにこちらの要望を受け入れてくれた。あれから自分も同じくしていると言う。『部屋の掃除が少し楽になった気がします』と言っていたが、キチンと掃除してなければ掛かる手間は前と変わりないかも知れない。この国だけでなく隣国各国、大陸の国々から要請されれば赴く勇者のサポートとして、または自らが魔獣や魔族の討伐の為に家を留守にする事が多いジョルジオの部屋には大して変わりないような気がする。
玄関から台所を通り居室兼寝室までの短い距離を移動中もジョルジオは高い背を縮こまらせていた。お返しをしなければ、と気を遣ったのにと気を悪くして怒っているはずの人が何故怯えた様になっているのかケイトには不思議だった。
「座って。お茶淹れるよ」
「ケイトさん!あの!」
「疲れているよね?落ち着いて。話はちゃんと聞くよ」
はいと、すごすごとジョルジオが退く。
勧められた椅子に座ったジョルジオの前に来客用マグカップを置く。自分の分もテーブルの上に置いてケイトは椅子に腰掛けた。
一人用のテーブル。食事もパソコンを開くのも、これまでの人生で滅多にない来客をもてなすのも、ここで全部賄う小さめな長方形のスペース。ここに越してきて初めての来客がジョルジオだった。
向かい合って座ってみたものの、互いに口を開かない。無情にも熱く淹れたお茶が冷める程には時間が流れてしまっていた。
ケイトが待ちの体勢である対して。ジョルジオもまた待ちの体勢であった。
音のない一室で両者の耳には外の喧騒が聴こえるだけだった。
――――――何故、映画鑑賞一つでこんなに重い空気になってるのだろう。
ケイトの疑問である。
チラッと、ジョルジオを見ればジョルジオの顔色は良くない。多分、良くない。何かの拍子にぷちっと切れそうな緊張感が漂っている。
だから。気を遣わなくていいって言ってるのに。
冷めてしまったお茶を勿体ないから自分の分は飲み干すと立ち上がり、ケイトはジョルジオのマグカップを取り上げた。
「!ケイトさん!?」
「冷めてるから淹れ直すよ」
「帰れって言ってるんじゃないんですか!?」
「言ってないよ」
「待って、待って下さい、お茶はいいんで待って下さい」
早口でそう言うとジョルジオはケイトからマグカップを強引に奪い、ごびっと一気に茶を飲み干した。ケイトが呆気に取られる。
「……あ、じゃあ、おかわりを…」
「ケイトさんは俺が迷惑ですか?」
「………………………はい?」
唐突な発言にケイトは理解が追い付かない。呆気に取られた表情のままに、次は違う場面に面食らう。
「え。あの、映画の事なら、そんな」
「確かにしょっちゅうお邪魔したんで、お礼がしたいと思った事は事実です」
「だからそれはいいって」
「でも、お礼がしたかったの前に」
前に?
「俺があなたと一緒に行きたかったんです」
「有難う、嬉しいよ」
取り敢えず礼は言っておこう。社交辞令だから、こうでもこうでも言わないと相手が納得してくれないかもだもんね。という事にして。
「なら」
「気を遣ってくれて嬉しいよ。でも本当にそんなのいいからさ」
「気を遣ってるんじゃ有りません、いえ、遣ってますけど、そういうんじゃなくて」
ケイトは黙った。差し当たってジョルジオの主張を聞く事にした。
というのは建前で、何だかジョルジオが止められない気がしたから様子見するつもりにした。
「俺はあなたが好きなんです」
「?有難う」
「…………」
「…………」
あれ?
な反応のジョルジオに対し、
それが?
な反応のケイト。
まさか!?と即断で思い当たりジョルジオが目を見開いた。
「あ、あ、あの~ケイトさん、好きだって言うのは……」
しとろもどろなジョルジオにぱちくり目を瞬いた。
「?」
あくまで不思議顔をしているケイトにジョルジオが悟る。
これは!犬猫動物大好き!って言ってるのと同等か大きく見積もっても『あなたの事は友人として好きです』って言ってると思っている!
見事スルーされて愕然とする。
ジョルジオはどう立て直すか、一生懸命に考えた。
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