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地に臥す龍。
滴る水滴。
プウカさん無敵。


「妖精だと侮ったらいけないな。予想を超越しててビビった」


「ギフトで豪雨を降らせてステータスに補正付けてスキルで雷を落とし続けるとか雷帝みたいだったね」


ギフト『神縫』において『雨妖精・プウカ』の憑依に成功した場合、プレイヤー自身がプウカとして判定され、ステータス・設定の一部【ギフト『雷迎』・物理耐性50%・魔法耐性50%・降雨時全ステータス150%上昇・スキル『避雷針』】を恩恵として得られる。
このとき、プレイヤーのすべてはプウカによってコントロールされる。


「次からはプウカさんと呼ぶことにしよう。仲良くなればまた来てくれるかもしれない」


「そういうのは関係ないよ。フィールドに発生している現象に関係している仕様が憑くって条件だし」


俺の思ってたことと違うらしい。
なぜ本人よりもギフトのことに詳しいのだろうか。


「条件とかあったのか。楽しかったから雨が降ってたらまた来るってプウカさんも言ってたんだがな」


「妖精に意識があるなんて初めて知ったよ。いや、神にも意識があるって知ったのは君が言ってたからだけど」


仕様に明確な意識があるということは知られていないらしいし、俺にも仕様というのがよくわからない。
仕様と意思疎通が取れるのは俺くらいなのでイコにもわからないことが多く、実際は異なる情報もあるそうだ。


「妖精が憑いたのは数えるほどしかなかったし、みんな無口というか希薄だったから話せたのは今日が初めてだな」


「仕様の重要度で意識が変わるのかな そこのところはわからないけど、雨が降ったらプウカが来るかもね」


やはりわからないことも多いようだ。
とりあえず称号に依存してギフト発動はやめてほしい。


「称号『龍殺し』を得たんだけど」


「称号はソロかパーティで得られるモノだからね。今までは村人だったから何をしようとも得られなかっただけだよ」


ジョブが村人だと功績が村全体として取られるので称号を得ることは無かったが、村長として倒したので個人として認識されて取得できたらしい。


「マジか。村長すげえな」


「村長が凄いというか、なんというか」


村長の偉大さに敬意を払いながら称号を『ヒノの後継者』から『龍殺し』に変えてみる。
恩恵の程は……。


「イコ!! 凄いぞ、この称号!! 『ヒノの後継者』とあまり変わらないが効果範囲が俺自身になってるから森から出てもにギフトを使えるに違いない!!」


「それは良かったね。というか『龍殺し』と補正があまり変わらないってホント?」


何を疑っているのか知らないが本当なのだ。
『ヒノの後継者』は陣地として登録されている村や周辺の森でしか補正が発揮しないが『龍殺し』は俺自身に常時発揮するという素敵な称号である。


「本当だ。それにしてもこんなことなら称号を探しておけば良かった」


「『ヒノの後継者』を詳しく調べたほうがいいかも……。ああ、称号は常時発動型なんて珍しいから君が探したとしても見つからなかったと思うよ」


称号自体、見つけるのは難しいうえに発動条件もあるらしい。
例えば皿洗い系統の称号があったとしたら俺は皿洗いし続けないとギフトの効力が発揮しないとか。


「それだと『龍殺し』は龍を相手にしないとダメなんじゃねえの」


「滅多に起きないことなら常時発動型の称号を得られるものさ」


村長がクワを片手に精霊を憑依させて龍を殺す。
なんという奇跡。


「偶然って怖いな」


「廻り合わせかもしれないよ」


世界の仕様は必要なときに必然的に廻るそうだ。
運命の歯車が噛み合うために。


「それは仕組まれてるってことなのか」


「いいや、引き寄せているのさ」


夢を現実にするために。
足りないモノを補うように。


「俺が必要とされてるってことなのか」


「どうだろうね。わかるのは……」







―― 君の世界が変わるってことさ ――







そう呟いたイコはいつも通りにこにこしながら。
俺の隣で空から雨とともに人が降ってきているのを眺めていた。


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