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第1章・黒狼と黒牙

目的を果たすために

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黒狼side


俺達が出会ってから5年が経ち、俺達は高校1年になっていた。
あれから色々あったが、今、俺達はお互いが何よりも大事な親友同士になっていた。


「黒狼君と黒牙君だよっ!」
「かっこいい…」
「彼女になりたーい!」


「……うざ。」

「まぁまぁ、落ち着いてよ黒狼ー」

高校に入ってから、2人はそのルックスのせいか、女子からの人気が高かった。…ファンクラブまで出来るほどに。男子には羨ましがられ妬まれていたかといえばそうでも無かった。2人とも運動全般得意だった為、男子からは尊敬の的だった。
また、黒狼は学年1位、黒牙は2位の成績を持つ秀才っぷりに教師からの信頼も厚かった。

「……ったく。お前は何だってそんなに嬉しそうなんだ。」

「モテてるんだよ?そりゃ嬉しいじゃんかー!黒狼も実は嬉しいでしょ??」

浮かれきった黒牙の様子に少しイラッときたが、顔には出さない。ただ無表情で、

「黙れ黒牙。嬉しい訳ねぇだろ。ただただ面倒だ。」

「はいはい、分かってますよー。」

黒牙の不貞腐れた様子にまたイラッとした。


-その日の昼休み-


「黒狼ー!屋上で弁当食べよー!」

「あぁ。」


~屋上~


「ふぅー!お腹いっぱーい!」

「ご馳走様でした。」

弁当を食べ終わった俺達はしばらく屋上にいることにした。少しの沈黙。黒牙が口を開いた。

「ねぇ、そろそろ実行しようか。」

「……確かに、そろそろやるか。」

俺たちの共通の目的。蒼波と焔の和解のための作戦。そろそろ実行するべきだろう。

「もう十分、人生楽しんだしね。」

「そうだな。特に悔いはない。」

俺達の作戦は、喧嘩が始まる直前、双方の組長直談判。それでも無理なら切腹して警察沙汰にし、組ごと潰して抗争を終わらせる、というものだ。
第三者から見れば、こんなにバカバカしい事のためにこの現代、わざわざ切腹なんかする必要があるのかと疑問に思われるだろう。

「抗争をやめさせる。あの女の家系が仕組んで始まった抗争なんてただの恥晒しだ。」

「全くだよねぇ。
    ………全部、終わらせよう。」

2人の眼差しは真剣そのものだった。
そう、組長になってからでも遅くはない。そう思っていた時期もあったが、抗争の原因を知った今、先々代がたった1人の悪女に惑わされ始まった長い抗争の歴史に持った組の組長になるなんて御免だ。

人生を棒に振るなと言われそうだが、正直なところ死んだ方がマシだ。

2人は自分達の目標のため、覚悟を決めた。














覚悟を決めてから1ヶ月。
組同士の本格的な喧嘩が始まろうとしていた。


-蒼波組-

「黒狼。この喧嘩で成果あげろよ。
   てめぇら。焔を食っちまえ。」

「「「「おおおぉぉぉおぉーー!!!」」」」

もうすぐだ。


-焔組-

「おい!黒牙!お前も来いよ!楽しい楽しい狩りの時間だ!」

「「「「おおおぉぉぉぉおぉーー」」」」

終わらせよう。



-境界線上にあった廃工場にて-


蒼波と焔が睨み合っている。形式として(誰が決めたか知らないが)双方の組長が先頭に出て咆哮をあげた時がケンカのスタートらしい。それにしても咆哮ってなんだよ。

俺達は、親父達が出る前に2組の進行方向である廃工場の中央に進み出た。
この行動にその場にいた全員が驚く。

そして声を張り上げた。

「「蒼波と焔を和解させてください。」」


「守りたいものは同じだろ!利害は一致だ。和解して協力した方がいいだろう?」

「それに親父たちは実は知ってるんだろ?この抗争が始まった原因を。こんな抗争、続けてたらただただ恥ずかしいと思うんだけど?」

その発言にバツが悪そうな表情を浮かべた双方の組長。しかしその表情は一瞬にして消えた。

「何言ってる。お前、それでも俺の…蒼波の次期組長か。…さっさと戻れ。いい加減組員達が痺れを切らす。」

「お前もだ、黒牙。なぜ焔組の次期組長がそんな事言う。お前らがそんなことしたって、この抗争は終わらないぞ。」

終わらないんじゃない、終わらせられないんだ。
組員はどちらも馬鹿の集まり。喧嘩しか脳がない奴らばかりだ。抗争でもないとガス抜きをさせられない。

ガス抜きをしなければ爆発する。つまりは反発が起きて組の存続が危なくなるわけだ。確かに、組長の立場上、組を守らなくてはいけない。だから原因を知っても今更抗争をやめさせることは出来ないんだろう。

「ごめんね、親父たちが守ろうとしてる自分達の組を俺達が潰す」

「俺達が、お前らの頭を冷やしてやるよ。」

そう言って2人は、同時に懐から小刀を取り出し腹に突き立て、内臓を切り裂くように横にスライドさせる。痛みは感じなかった。あのひとのせいで慣れていたから。でも黒牙は辛かったかもしれない。親友に苦しい思いをさせてまで果たさなければいけなかったのかと、考えもした。だが、お互い覚悟を決めてやったことだ。後悔はない。

自分の父親と組員たちの顔が驚愕の色に染まったのを見たのが最後、そのまま俺達の意識はくらい闇の淵へと沈んでいった。


◆◇◆◇◆◇
少しグロテスクな感じになってしまったように思います。不快に感じた方、大変申し訳ありませんでした。
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