なんでも報告してくる婚約者様

雀40

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06 これからのふたり

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 後日、シャスバ侯爵家からエングラウン宛に報告が届いた。
 アナンツャ公爵令嬢は、学校の聴取の後で公爵家に戻り、すぐに嫁ぎ先の国へ留学という名目で出立したらしい。遠い国に婚約者がいるという噂は、どうやらそれなりに正しかったようだ。
 
 エングラウンにまとわりついていた件は、彼女の恋心の暴走ゆえだった――ということになっている。
 
 実際のところは、遠い国へ嫁ぎたくなかった彼女が、国内で相応な嫁ぎ先を自分でみつけようとした……との供述があったらしい。そこで彼女のお眼鏡にかなったのが、エングラウン。その婚約者が、クリエールというパッとしない地味な伯爵家の娘だったことも、決め手のひとつだった。
 対立派閥の嫡男を捕まえて鞍替えさせることができれば、遠方へ嫁ぐことを防げると容易に考えたアナンツャ公爵令嬢は、意気込み挑んだ。ちなみに、七年前の騒動の中心人物である“守ってあげたい系男爵令嬢”の一部の噂を、参考にしたらしい。

 そうして励んだものの、結果は惨敗。
 しかも、その過程でエングラウンを本気で好きになってしまったという、おまけ付き。
 
 結果だけ見れば、クリエールはアナンツャ公爵令嬢に一方的に侮られ、貶されただけである。それでも振り返ってみれば、どこか哀れみを覚えてしまう。
 クリエールとて貴族として生まれた女である以上、いつ彼女と同じ状況になるかわからないからだ。
 何かがあれば、明日にでもエングラウンとの縁が切れてもおかしくないことを、クリエールは忘れないようにしたい。

「……そうだ、君に関する不埒な噂を流そうとしていた輩がいたので対処した。もし他にも妙な噂を耳にしたのなら、すぐ私に言ってくれ」

 話の流れで、エングラウンから何となしに不穏な報告をされた。いったい“対処”とは何をしたのだろうかと、クリエールは若干おののく。踏み込んで聞けば、どんな噂だったか、どんな対処をしたかの報告をしてくれるだろうが、クリエールは口をつぐむことにした。

 基本的になんでも報告してくるエングラウンが濁したということは、それはきっとクリエールが知らなくてもいいことだ。
 クリエールは感謝だけを伝え、その頼もしい恋人に身を寄せる。

「……もう少し強く押し付けてくれると、嬉しいんだが」
「その報告は余計なの」

 あの中庭の騒動から――それとも他に何らかのきっかけがあったのかもしれないが――エングラウンからクリエールにもたらされる報告事項が、増えた。
 
 果たしてエングラウンが好きなのは、クリエール本人なのか、その胸なのか。
 クリエールの悩みは、まだ尽きない。
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