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ネットカフェ召喚
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次の日
シャロンたちは。城壁門の側にある騎士団がテントを張っている場所に「女神の願い石」を設置した。
周囲にはゴブリンやオークの姿かたちをした冒険者たちがいて、シャロンたちに冷たい目を向けている。
「あいつら、城壁の外で何やっているんだ?」
「滅びたエルフ国の騎士団らしいぜ。貧乏だから城に入って宿を取る金もないんだろうよ」
そんな声が聞こえてきて、シャロンは屈辱に震える。
「今に見ろ。女神様に頼んで、ボクたちの国を再建してもらうんだからな」
プンスカと怒るシャロンを放っておいて、騎士たちは女神にコンタクトを取る儀式を始めた。
「いいですか?アイ様は「ヒューマン」という種族を守るための神ですが、姿かたちが似ている我々にもきっと手をさしのべてくれるはずです」
トリスタンは期待を持って、黒い板の下についているスイッチを押した。
「「ヒューマン」って?」
「伝説によれば、太古この世界は『ヒューマン」という種族によって、高度な文明が築かれていたそうです。しかし、空から赤い流星が降った夜、この星は大部分が土砂に埋もれてしまい、ヒューマンたちの文明は滅んでしまったのです」
「……そのせいで、こんな世界になったのか」
シャロンが暗い顔で聞く。
「はい。ヒューマンたちはダンジョンに隠れることで、その暗黒時代を乗り切りました。それから数百年後、ヒューマンの文明を引き継ぐものとして、我々エルフ族が創られ地上に送られたのですが……」
トリスタンの声が物悲しく響く。シャロンの顔もどんどん暗くなっていった。
「最初はうまくいっていたのです。我々エルフは共に創られた亜人族の支配者層として国を作り、平和に暮らしていました。しかし、10年前のある日突然『魔神族』が現れ、彼らが生み出したモンスターがエルフ王国を滅ぼしました」
「私の父様もその時にしんじゃったんだよね……」
シャロンはトリスタンの言葉にうなずく。
「私たちエルフ族は最もヒューマン族に近い種族として、その血を守り通してきました。私たちはエルフ族の貴族として、王国を再建しないといけないのです」
「うん」
シャロンは頷く。
「私たちにはある伝説がありました。もし我がエルフ王国が滅ぼされたときは、『女神の願い石」をささげよ。きっと女神は願いをかなえてくれるだろう』と」
「『女神の願い石』を手に入れるため、長い旅を続けるうちに、俺たちエルフ族は散り散りになっちまった」
ガラハットが悔しそうに呟く。
「仕方ないよ。僕たちは住む住居もないホームレスだもん。たとえ奴隷として扱われたとしても、雨露をしのげる場所と食べ物がもしかったんだよ。だからみんなすすんで他の国の奴隷になっちゃった」
シャロンは悲しげに目を伏せる。
「……ねえ、本当にぼくたちが住める国を作れるの?」
シャロンが疑いの目でトリスタンをにらむと、彼女はあわてて本を取り出した。
「だ、大丈夫です。長年王国に伝えられています」
「……うさんくさいなぁ。女神様は本当にお願いを聞いてくれるのかな?そもそも、どうやったら王国って再建できるんだろう?」
シャロンはそうふくれっ面するも、周りの騎士たちになだめられた。
「まあまあ、とりあえずやってみましょうよ」
「でも、もしかして変な王様とかが来たりして、『王国を再建したほしければ、ワシの妻になれ」とか言われちゃったりして」
シャロンはそうブツブツと不満を漏らすが、ガラハットに笑われた。
「まあ、そうなっても最悪ヒューマンの顔をしていればいいじゃないですか。あたいたちエルフの間でも、男は人間の血がどんどん薄くなって他種族の顔をしている奴が増えたからなぁ。まあ、あたいは強くてたくましい男なら、それでいいんだけど」
ガラハットにそういわれて、シャロンも気をとりなおす。
「そうだね。このさい贅沢はいえないか。よし。いくよ!」
シャロンは覚悟を決めて、女神の願い石をじっと見つめた。
「管理マザーホスト・アイにアクセス」
トリスタンがそう呪文を唱えた時、黒い板の表面に女神が映った。
「はーい。AIのアイちゃんだよ。何の用?……って、人間じゃなくてエルフたちかぁ」
アイと名乗った女神は、つまらなさそうにシャロンたちを見る。
「アイ様。お願いです。我らの国を再建させたまえ」
「えっと……いきなり国を作るってのは無理なんだけど、君たちでがんばってよ」
いきなり拒否されて、シャロンたちは動揺した。
「そ、そんな!」
「……もっと具体的に頼んでくれないと。できるだけのことはしてあげるけど、国を再建したいなんて抽象的すぎるよ。そんなの私ができるわけないじゃん。自分たちの手ですべきことでしょ?」
そういわれて、トリスタンは必死に頼み込んだ。
「で、では、みんなが安心して住める場所を作ってください。我々は流浪の民。根拠地が必要なのです」
「ボクたちみんなが寝泊りできて、面白い娯楽にあふれていて、おかしやジュースなんかもあったりする城がほしい」
「こほん。姫」
トリスタンに注意されて欲望がダダ漏れだったことに気がつくシャロン。
「はぁ……わかったよ。君たちの希望に該当する施設はアレだね。
転移衛星にアクセス。過去の世界から、「ネットカフェ」を転移」
女神が呪文を唱えた瞬間、ズズンという衝撃が地面を通じて伝わってきた。
「うわぁぁぁ!なんだこれ!」
「なんでいきなり建物が?」
外から人々の騒ぐ声が聞こえてくる。
ついでに「自宅警備」のスキルを持っている管理人も召喚しておくから。彼に全部任せなよ。またね」
一方的に言って、女神は消えていった。
「いってみよう!」
テントをでたシャロンたちが外に出てみると、城壁門の外に三階立ての四角い城が現れていた。
「やったぞ!」
シャロンと騎士団は歓喜の声をあげるのだった。
コモルはいきなり衝撃を感じて、目が覚める。
「なんだ!地震か!」
そう思って飛び起きると、店内の照明はすべて消えていた。
「ヤバス!逃げないと!」
そう思ってあわててブースを出るが、受付の店員や客の姿が消えていた。
「おいおい、何が起こったんだよ……」
あわてながらもしっかりとロッカーからかばんを取り出して、店を飛び出す。
一歩出たところで、その場に硬直してしまった。
「○△∵×」
店の周りは、鎧を着た数人の美少女たちに包囲されている。
彼女らはわけのわからないことを話し合っていた。
「○○※?」
彼らの最前列には、金髪ツインテールの美少女が、騎士の格好をした美少女に守られるように固まっていた。
美少女はこっちを見たまま、あんぐりと口をあけている。彼女の耳は鋭く尖っていた。。
「えっ!」
もう一回見直すと、周囲に集まっている人たちの顔があきらかに人間のものではない。
緑色の肌をして大きな目と牙をもつ、ゴブリンと呼ばれるモンスターにそっくりだった。
「ば、化け物!」
恐怖に震えたコモルは、逃げようと外に飛び出す。
「■▲▽▲!」
赤髪の美女が、美少女たちに何か叫ぶ。すると彼女らはいっせいに杖や武器を向けてきた。
「う、うわぁ!」
パニックになりながらも、自分の原付にまたがる。不機嫌なうなり声を上げてエンジンがかかった。
それを見て、鎧を着た青髪騎士が前に立ちふさがる。着ている鎧は、よく見ると胸が膨らんでおり、女ものだとわかった。
彼女が土に剣を突き刺して何か呟くと、周りの地面から水が吹き上がり、コモルを包もうとした。
「くそっ」
コモルは慌ててその場から逃げると、乗っていた自分のバイクにまたがり急発進させる。
「×××」
それを見た赤髪の美女が迫ってくる。彼女は恐ろしい顔をして、剣を振りかざして呪文を唱えた。
すると、炎でできた鞭がコモルを拘束しようとする。
「やばい。」
そう思って、バイクを別の方向に向けて走り出した。
「!?××××」
「しるかバーカ。逃げるが勝ちだ。おらおら、跳ね飛ばすぞ!」
コモルは奇声をあげながら取り囲む美少女騎士に突っ込む。
美少女たちはうなり声を上げて威嚇してくる原付バイクに恐れをなし、道をあけた。
「と、とりあえず、変な奴らから逃げないと。おらおら、どけどけ!」
美少女たちが驚いているうちに、原付は包囲を脱出して門の中に逃げ込む。
そこは、まるで漫画に出てくるようなファンタジーの世界だった。
周囲の建物は中世ヨーロッパ風で、道行く人はゴブリンなのに普通に服を着て生活している。
「ど、どこだよここは!さっきまで日本にいたはず……え?」
バイクの前方に巨大な壁が見えてくる。それは中世風の城の壁だった。
「いったい何がおこったんだ!」
呆然としていると、後ろから声がする。
振り向くと、角が生えた馬に乗った少女たちが追いかけてきていた。
「まずい。これ絶対俺のこと捕まえるつもりだ」
「○○○○!!!!」
白い髪をした少女が杖を振ると、突風がついて彼女たちの体を浮き上がらせる。
コモリはさらにスピードを上げ、バイクで町を走るが、追っ手は信じがたいスピードで追いついてきた。
「△△△△!」
白髪の美少女が杖をふるうと、突風が吹いてバイクのバランスを崩す。コモルは必死に体制を立て直すことで、なんとか転倒を免れることができた。
「マジかよ……ほんまもんのファンタジーじゃねえか。まてよ。チート能力は?魔王を倒せとか無茶ぶりしてくる神様は?もしや眠っていて、テンプレイベントがスルーされたとか?」
そんな風に思っていると、目の前に黒髪で黒いローブをまとった女の子が現れる。
彼女は両手を広げると、通せんぼをしてきた。
「危ない」
思わずコモルはブレーキを踏み、一瞬動きを止める。
次の瞬間、バイクは少女の杖から出た黒い霧につっこんてしまう。すると強烈な冷気が襲ってきて、一瞬でバイクを凍りつかせた。
「あ、終わった」
コモルはあっさりとあきらめて、手を上げて降参の意思を示し、友好的な笑みを浮かべる。
「オーケイ。俺は友達だ。みんな、仲良くしようぜ」
次の瞬間、彼女たちはコモルを押し倒した。
「い、痛くしないで。俺はまだ童貞なの……」
涙目で懇願していると、金髪の美少女がやってきた。
「こ、こうなったら、こいつを人質に……」
コモルはいきなり起き上がり、金髪少女に抱きついて拘束しようとする。
すると金髪少女は悲鳴を上げて逃げてしまい、殺気立った他の者たちに縛り上げられてしまった。
「おい!弁護士をよんでくれ!黙秘権を行使する!」
そうわめく声は無視され、問答無用で引っ立てられていくのだった。
テントの中
「いつまで放置しているんだ。メシはまだか!」
ずっと縛られたまま放置され、コモルはわめいている。本音では怖くてたまらなかったが、騒いでないと不安に押しつぶされそうだった。
その時、テントが開いて、何人かの美少女が入ってくる。
金髪ツインテールの美少女、赤髪と青髪の美女と、メガネをかけた白髪の美少女だった。
彼らは何事か話し合うと、金髪がコモルの前にたつ。15歳くらいのかわいらしい少女だった。
彼女はコモルの目の前にくると、ジーっと彼の目を見つめてくる。
「お嬢ちゃんは誰だ?もしかして、これがテンプレってやつか?」
期待でドキドキしているが、彼女たちは困惑しているように顔を見合わせる。
しかし、コモルはそんなのどうでもいいとばかりに、金髪少女と見つめていた。
(この子が俺のご主人様になるのか。まあちょっと幼いけど、かわいいな。何年かしたらストライクゾーンに入るから、ゆっくり育てるか。とりあえず、唾つけて)
そんなことを思ってニヤニヤしているコモルに、金髪の少女は心配そうな顔をしてやってきた。
「凸凹凸凹凸凹……」
何かつぶやきながら、紫色の液体が入った瓶を渡してくる。
「これを飲めって?いやだなぁ」
そうは言うが、周りを騎士の格好をした少女たちに取り囲まれている彼に選択肢はない
「わかったよ。えいっ!」
覚悟を決めて飲み干すと、甘い味が口いっぱいに広がった。
金髪少女は飲んだのを確認するかのように、顔を近づけてくる。
その綺麗な顔を見ていると、邪な思いがわきあがってきた。
(おっ。契約の儀式か。いいぜ。ばっちこーい)
そんなことを思いつつ唇を突き出して待っていたが、金髪の少女は首をかしげるだけで一向に近づいてこなかった。
(じれったいな。よし!)
コモルは自ら顔を前に出し、金髪少女の口にそっと自分の口を近づける。
口と口が合わさった瞬間、テントにバチーンという音か響き渡り、コモルは吹っ飛んでいった。
シャロンたちは。城壁門の側にある騎士団がテントを張っている場所に「女神の願い石」を設置した。
周囲にはゴブリンやオークの姿かたちをした冒険者たちがいて、シャロンたちに冷たい目を向けている。
「あいつら、城壁の外で何やっているんだ?」
「滅びたエルフ国の騎士団らしいぜ。貧乏だから城に入って宿を取る金もないんだろうよ」
そんな声が聞こえてきて、シャロンは屈辱に震える。
「今に見ろ。女神様に頼んで、ボクたちの国を再建してもらうんだからな」
プンスカと怒るシャロンを放っておいて、騎士たちは女神にコンタクトを取る儀式を始めた。
「いいですか?アイ様は「ヒューマン」という種族を守るための神ですが、姿かたちが似ている我々にもきっと手をさしのべてくれるはずです」
トリスタンは期待を持って、黒い板の下についているスイッチを押した。
「「ヒューマン」って?」
「伝説によれば、太古この世界は『ヒューマン」という種族によって、高度な文明が築かれていたそうです。しかし、空から赤い流星が降った夜、この星は大部分が土砂に埋もれてしまい、ヒューマンたちの文明は滅んでしまったのです」
「……そのせいで、こんな世界になったのか」
シャロンが暗い顔で聞く。
「はい。ヒューマンたちはダンジョンに隠れることで、その暗黒時代を乗り切りました。それから数百年後、ヒューマンの文明を引き継ぐものとして、我々エルフ族が創られ地上に送られたのですが……」
トリスタンの声が物悲しく響く。シャロンの顔もどんどん暗くなっていった。
「最初はうまくいっていたのです。我々エルフは共に創られた亜人族の支配者層として国を作り、平和に暮らしていました。しかし、10年前のある日突然『魔神族』が現れ、彼らが生み出したモンスターがエルフ王国を滅ぼしました」
「私の父様もその時にしんじゃったんだよね……」
シャロンはトリスタンの言葉にうなずく。
「私たちエルフ族は最もヒューマン族に近い種族として、その血を守り通してきました。私たちはエルフ族の貴族として、王国を再建しないといけないのです」
「うん」
シャロンは頷く。
「私たちにはある伝説がありました。もし我がエルフ王国が滅ぼされたときは、『女神の願い石」をささげよ。きっと女神は願いをかなえてくれるだろう』と」
「『女神の願い石』を手に入れるため、長い旅を続けるうちに、俺たちエルフ族は散り散りになっちまった」
ガラハットが悔しそうに呟く。
「仕方ないよ。僕たちは住む住居もないホームレスだもん。たとえ奴隷として扱われたとしても、雨露をしのげる場所と食べ物がもしかったんだよ。だからみんなすすんで他の国の奴隷になっちゃった」
シャロンは悲しげに目を伏せる。
「……ねえ、本当にぼくたちが住める国を作れるの?」
シャロンが疑いの目でトリスタンをにらむと、彼女はあわてて本を取り出した。
「だ、大丈夫です。長年王国に伝えられています」
「……うさんくさいなぁ。女神様は本当にお願いを聞いてくれるのかな?そもそも、どうやったら王国って再建できるんだろう?」
シャロンはそうふくれっ面するも、周りの騎士たちになだめられた。
「まあまあ、とりあえずやってみましょうよ」
「でも、もしかして変な王様とかが来たりして、『王国を再建したほしければ、ワシの妻になれ」とか言われちゃったりして」
シャロンはそうブツブツと不満を漏らすが、ガラハットに笑われた。
「まあ、そうなっても最悪ヒューマンの顔をしていればいいじゃないですか。あたいたちエルフの間でも、男は人間の血がどんどん薄くなって他種族の顔をしている奴が増えたからなぁ。まあ、あたいは強くてたくましい男なら、それでいいんだけど」
ガラハットにそういわれて、シャロンも気をとりなおす。
「そうだね。このさい贅沢はいえないか。よし。いくよ!」
シャロンは覚悟を決めて、女神の願い石をじっと見つめた。
「管理マザーホスト・アイにアクセス」
トリスタンがそう呪文を唱えた時、黒い板の表面に女神が映った。
「はーい。AIのアイちゃんだよ。何の用?……って、人間じゃなくてエルフたちかぁ」
アイと名乗った女神は、つまらなさそうにシャロンたちを見る。
「アイ様。お願いです。我らの国を再建させたまえ」
「えっと……いきなり国を作るってのは無理なんだけど、君たちでがんばってよ」
いきなり拒否されて、シャロンたちは動揺した。
「そ、そんな!」
「……もっと具体的に頼んでくれないと。できるだけのことはしてあげるけど、国を再建したいなんて抽象的すぎるよ。そんなの私ができるわけないじゃん。自分たちの手ですべきことでしょ?」
そういわれて、トリスタンは必死に頼み込んだ。
「で、では、みんなが安心して住める場所を作ってください。我々は流浪の民。根拠地が必要なのです」
「ボクたちみんなが寝泊りできて、面白い娯楽にあふれていて、おかしやジュースなんかもあったりする城がほしい」
「こほん。姫」
トリスタンに注意されて欲望がダダ漏れだったことに気がつくシャロン。
「はぁ……わかったよ。君たちの希望に該当する施設はアレだね。
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「うわぁぁぁ!なんだこれ!」
「なんでいきなり建物が?」
外から人々の騒ぐ声が聞こえてくる。
ついでに「自宅警備」のスキルを持っている管理人も召喚しておくから。彼に全部任せなよ。またね」
一方的に言って、女神は消えていった。
「いってみよう!」
テントをでたシャロンたちが外に出てみると、城壁門の外に三階立ての四角い城が現れていた。
「やったぞ!」
シャロンと騎士団は歓喜の声をあげるのだった。
コモルはいきなり衝撃を感じて、目が覚める。
「なんだ!地震か!」
そう思って飛び起きると、店内の照明はすべて消えていた。
「ヤバス!逃げないと!」
そう思ってあわててブースを出るが、受付の店員や客の姿が消えていた。
「おいおい、何が起こったんだよ……」
あわてながらもしっかりとロッカーからかばんを取り出して、店を飛び出す。
一歩出たところで、その場に硬直してしまった。
「○△∵×」
店の周りは、鎧を着た数人の美少女たちに包囲されている。
彼女らはわけのわからないことを話し合っていた。
「○○※?」
彼らの最前列には、金髪ツインテールの美少女が、騎士の格好をした美少女に守られるように固まっていた。
美少女はこっちを見たまま、あんぐりと口をあけている。彼女の耳は鋭く尖っていた。。
「えっ!」
もう一回見直すと、周囲に集まっている人たちの顔があきらかに人間のものではない。
緑色の肌をして大きな目と牙をもつ、ゴブリンと呼ばれるモンスターにそっくりだった。
「ば、化け物!」
恐怖に震えたコモルは、逃げようと外に飛び出す。
「■▲▽▲!」
赤髪の美女が、美少女たちに何か叫ぶ。すると彼女らはいっせいに杖や武器を向けてきた。
「う、うわぁ!」
パニックになりながらも、自分の原付にまたがる。不機嫌なうなり声を上げてエンジンがかかった。
それを見て、鎧を着た青髪騎士が前に立ちふさがる。着ている鎧は、よく見ると胸が膨らんでおり、女ものだとわかった。
彼女が土に剣を突き刺して何か呟くと、周りの地面から水が吹き上がり、コモルを包もうとした。
「くそっ」
コモルは慌ててその場から逃げると、乗っていた自分のバイクにまたがり急発進させる。
「×××」
それを見た赤髪の美女が迫ってくる。彼女は恐ろしい顔をして、剣を振りかざして呪文を唱えた。
すると、炎でできた鞭がコモルを拘束しようとする。
「やばい。」
そう思って、バイクを別の方向に向けて走り出した。
「!?××××」
「しるかバーカ。逃げるが勝ちだ。おらおら、跳ね飛ばすぞ!」
コモルは奇声をあげながら取り囲む美少女騎士に突っ込む。
美少女たちはうなり声を上げて威嚇してくる原付バイクに恐れをなし、道をあけた。
「と、とりあえず、変な奴らから逃げないと。おらおら、どけどけ!」
美少女たちが驚いているうちに、原付は包囲を脱出して門の中に逃げ込む。
そこは、まるで漫画に出てくるようなファンタジーの世界だった。
周囲の建物は中世ヨーロッパ風で、道行く人はゴブリンなのに普通に服を着て生活している。
「ど、どこだよここは!さっきまで日本にいたはず……え?」
バイクの前方に巨大な壁が見えてくる。それは中世風の城の壁だった。
「いったい何がおこったんだ!」
呆然としていると、後ろから声がする。
振り向くと、角が生えた馬に乗った少女たちが追いかけてきていた。
「まずい。これ絶対俺のこと捕まえるつもりだ」
「○○○○!!!!」
白い髪をした少女が杖を振ると、突風がついて彼女たちの体を浮き上がらせる。
コモリはさらにスピードを上げ、バイクで町を走るが、追っ手は信じがたいスピードで追いついてきた。
「△△△△!」
白髪の美少女が杖をふるうと、突風が吹いてバイクのバランスを崩す。コモルは必死に体制を立て直すことで、なんとか転倒を免れることができた。
「マジかよ……ほんまもんのファンタジーじゃねえか。まてよ。チート能力は?魔王を倒せとか無茶ぶりしてくる神様は?もしや眠っていて、テンプレイベントがスルーされたとか?」
そんな風に思っていると、目の前に黒髪で黒いローブをまとった女の子が現れる。
彼女は両手を広げると、通せんぼをしてきた。
「危ない」
思わずコモルはブレーキを踏み、一瞬動きを止める。
次の瞬間、バイクは少女の杖から出た黒い霧につっこんてしまう。すると強烈な冷気が襲ってきて、一瞬でバイクを凍りつかせた。
「あ、終わった」
コモルはあっさりとあきらめて、手を上げて降参の意思を示し、友好的な笑みを浮かべる。
「オーケイ。俺は友達だ。みんな、仲良くしようぜ」
次の瞬間、彼女たちはコモルを押し倒した。
「い、痛くしないで。俺はまだ童貞なの……」
涙目で懇願していると、金髪の美少女がやってきた。
「こ、こうなったら、こいつを人質に……」
コモルはいきなり起き上がり、金髪少女に抱きついて拘束しようとする。
すると金髪少女は悲鳴を上げて逃げてしまい、殺気立った他の者たちに縛り上げられてしまった。
「おい!弁護士をよんでくれ!黙秘権を行使する!」
そうわめく声は無視され、問答無用で引っ立てられていくのだった。
テントの中
「いつまで放置しているんだ。メシはまだか!」
ずっと縛られたまま放置され、コモルはわめいている。本音では怖くてたまらなかったが、騒いでないと不安に押しつぶされそうだった。
その時、テントが開いて、何人かの美少女が入ってくる。
金髪ツインテールの美少女、赤髪と青髪の美女と、メガネをかけた白髪の美少女だった。
彼らは何事か話し合うと、金髪がコモルの前にたつ。15歳くらいのかわいらしい少女だった。
彼女はコモルの目の前にくると、ジーっと彼の目を見つめてくる。
「お嬢ちゃんは誰だ?もしかして、これがテンプレってやつか?」
期待でドキドキしているが、彼女たちは困惑しているように顔を見合わせる。
しかし、コモルはそんなのどうでもいいとばかりに、金髪少女と見つめていた。
(この子が俺のご主人様になるのか。まあちょっと幼いけど、かわいいな。何年かしたらストライクゾーンに入るから、ゆっくり育てるか。とりあえず、唾つけて)
そんなことを思ってニヤニヤしているコモルに、金髪の少女は心配そうな顔をしてやってきた。
「凸凹凸凹凸凹……」
何かつぶやきながら、紫色の液体が入った瓶を渡してくる。
「これを飲めって?いやだなぁ」
そうは言うが、周りを騎士の格好をした少女たちに取り囲まれている彼に選択肢はない
「わかったよ。えいっ!」
覚悟を決めて飲み干すと、甘い味が口いっぱいに広がった。
金髪少女は飲んだのを確認するかのように、顔を近づけてくる。
その綺麗な顔を見ていると、邪な思いがわきあがってきた。
(おっ。契約の儀式か。いいぜ。ばっちこーい)
そんなことを思いつつ唇を突き出して待っていたが、金髪の少女は首をかしげるだけで一向に近づいてこなかった。
(じれったいな。よし!)
コモルは自ら顔を前に出し、金髪少女の口にそっと自分の口を近づける。
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そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。
最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。
そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。
※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※
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修正案
ネットカフェ召喚
もしかったんだよ→欲しかったんだよ
「なろう」に最近実装された誤字修正報告機能みたいなのがあるといいですよね。