偽勇者扱いされて冤罪をかぶせられた俺は、ただひたすらに復讐を続ける

大沢 雅紀

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王の処刑

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俺は地下通路をゆっくりと進む。
ときおり、曲がり角から待ち伏せしていた若い騎士たちが襲い掛かってくるが、簡単に切り殺してどんどん国王たちとの距離を詰めていった。
「魔王覚悟!新しい勇者の為に、ここは通さん」
「正義はいつか勝つ!俺たちが人間の礎になるんだ!」
奴等がそんなことを言いながら切りかかってくるが、俺は哀れみすら覚えていた。
(哀れな奴らだな。この期に及んで正義やら勇者やらのお題目の為に命を捨てられるとは)
きっと奴らは、自分の死が無意味であるとは考えたくないのだろう。
だからここで死ぬことは人類の為になると思い込んで、自分自身すら騙しているのだ。
決死の覚悟で切りかかってくる騎士たちを容赦なく殺して進んでいくと、きらびやかな鎧をまとった騎士団長が現れた。
「魔王ライト……だな。私は王国騎士団長フラッシュ。君と正々堂々の勝負がしたい」
はいはい。さっさと殺して先へ進むか。
俺がレーザーソードを構えると、奴はゆっくりと剣を抜いて魔力を込める。すると、その剣がまばゆく輝き始めた。
「その剣……光の魔法剣か?」
「そうだ。私はリュミエール王子の師であると同時に、王家の血も引いている」
剣を構えたまま、奴は話し続ける。
「……私は、君に同情していたのだよ」
「同情だと?」
「ああ。勇者ライディンの血を引いて光魔法を使えるのに、真の勇者として認められず、家族まで殺された君は、私の境遇と重なる」
奴は自らの境遇を話し始める。それによると、奴は先代国王が娼館の女に産ませた私生児で、王子どころか王族とすら認めてもらえなかったそうだ。
「私は幼少時、王家の血を汚す者として母もろとも殺される所だったが、この光魔法が発現したことにより、騎士団に入れられた。幼い頃は母の復讐として、王家を滅ぼすと心に決めていたものだ」
奴は淡々と、王家の暗部について話す。
「そんなお前が、なぜ今になって王の為に戦おうとする?」
「私は何十年もこの国を見続けていたんだ。傲慢な王や貴族が存在することで、確かにほんの一部の無力な民は母のような理不尽な目にあう。しかし……」
奴の目に陶酔の色が浮かぶ。
「騎士として各地の村を視察した時、私は気づいたのだ。王や貴族がいるからこそ、一定の秩序が保たれ、多くの無辜の民は平穏に暮らしているのだとな」
黙々と働き、わずかな金を稼ぎ、家族と平和な生活を彼らが送れるのも、国家というものが存在し、秩序(ルール)を強制的に守らされているから。
{わかるか?私は君と違って我慢して、大人になったのだ。国の大多数を占める彼らの平穏な生活に比べれば、王や貴族の傲慢の生贄にされて理不尽な目に合う一部の者たちの嘆きなど、意にするにあたらない。だから私はどんなに王や貴族を軽蔑していても、彼らを守るために君と戦う」
そういって剣を構える。
なんだ。黙って聞いてやったが、所詮は上に立つものの勝手な自己正当化にすぎないじゃないか。
興味を失った俺は、さっさと始末することにした。
「『光線銃(レイガン)』」
「なっ!」
俺の光魔法に胸を貫かれた騎士団長は、もんどりうって倒れた。
「ひ、卑怯だぞ。勇者らしく正々堂々と戦え」
「あいにく、俺は勇者じゃないんでね」
俺は冷たく見下ろすと、奴の幼稚な正当化を否定してやった。
「長々と話してたけど、結局は理不尽を与える側の自己弁護にすぎないな。そんな偉そうなことを言うお前自身が、一度でも虐げられる立場に立ったことがあるのか?」
「わ、私は母を殺されて……」
何か言いかける騎士団長の顔を、俺は踏んづけてやった。
「どうせお前も、母親を娼婦だと見下し、自分は勇者の血を引く高貴なものであることを誇りに思っていたんだろう。そうでない奴が、王家に忠誠心を持ち、騎士団長にまで出世するはずがない」
「……うっ」
俺の言葉に、騎士団長は何も言えなくなる。
「そんな寝言は、理不尽を受け続ける最底辺の貧民に生まれ変わってから言うんだな。僕たちが虐げられているのを我慢しているから、みんなは幸せなんだと」
俺は一気に騎士団長を踏みつぶす。俺の足の下で、奴はつぶれたカエルのようになって死んでいった。



騎士団長を殺した俺は、地下通路をさらに進んでいく。
すると先のほうで、メイドや姫、貴族たちが必死になって国王を応援しているのが見えた。
「陛下!頑張ってください。あと少しです」
「わかっておる!集中させろ!」
国王は必死になって光の結界に光魔法を当てて破ろうとしている。
馬鹿だな。光に光を当てても意味ないのに。
俺は気づかれないように近づくと、奴らの背中にレーザーソードを一気に振り下ろした。
「ギャアアアアア」
背中から真っ二つにされたメイドたちの絶叫が地下通路に響き渡る。
驚いて振り向いた貴族たちが見たものは、騎士たちの血で真っ赤に染まった魔王の姿だった。
「ま、魔王ライト……」
大臣や公爵などの肩書を持つ大貴族たちが、俺を見て腰を抜かす。
彼らはこの期に及んでも、みっともなく命乞いをしてきた。
「た、頼む……我々は王に騙されていたんだ」
「私たちは貴方を勇者……いいや新たな王として忠誠を誓います。だから、命ばかりは助けてください」
土下座して頼みこむ貴族たちを無視して、俺は淡々と剣を振るう。
貴族たちを皆殺しにした後は、とうとう王とその一族のみが残された。
「た、助けてくれ……」
国王は唇まで真っ青になって、ブルブルと震えている。
その周りで姫たちは、恐怖のあまり気を失っていた。
「お前たちはここでは殺さない。処刑にふさわしい場所まで連れて行ってやろう」
俺は『気絶』の電気信号を込めたレーザーソードを奴らにふるう。王族たちはあっさりと意識を失い、地下通路の床に倒れ込むのだった。
俺は奴らを「勇者の道具袋」に入れ、地下通路を脱出する。
そして闘技場に戻り、処刑の準備を終えた。


「うっ……ここは……」
俺が作った磔台の上で、国王が目覚める。
周囲には奴の妃や姫たちが、同じように十字架にかけられていた。
「お願い!助けて!」
「なんでもするから!私たちが悪かったわ!」
きらびやかなドレスを着た妃や姫たちが、磔にされて泣きわめている。
その下では、大量の薪が積まれていた。
「貴様……わが妻や娘たちに何をするつもりだ……」
意識を取り戻した国王が問いかけるので、俺は答えてやった。
「この光景、思い出さないか?お前の命令で、俺の家族が火あぶりにされた時を再現してみた」
それを聞いた国王が、ブルブルと震えだす。
「まさか……やめてくれ。それだけはしてはならぬ。復讐するなら、予にするがよい。妻や姫たちだけは助けてくれ」
「……俺もそう願ったよ。だけど、お前は薄笑いを浮かべて見物するだけで、その願いを受け入れなかった」
俺は国王の家族がかけられている十字架の下の薪に、『光線銃(レイガン)』を当てて火をつける。
「や、やめろーーーー!」
「特等席でじっくりと家族が焼かれるのを見ているがいい」
勢いよく薪が燃え上がり、妃や姫が着ている煌びやかなドレスに火が燃え移る。
奴らはあっという間に炎に包まれていった。



妻や娘が消し炭になったのを見て、国王は涙を流す。
「さあ、これで王国はお前一人になったな。どんな気分だ」
俺がそう煽ってやるが、奴は聞いていなかった。
「なぜだ……なぜこんなことになったのだ……予は正しかったはずだ……王として王家の権威と国の安定を守るために、涙を呑んでライトを冤罪に落としたはずだ……それがなぜこんなことになったのだ」
いつまでも自問しているので、俺はさっさと奴を処刑することにした。
十字架にかけられた奴の右足の小指にむけ、範囲を絞ったレーザー砲を打つ。
「熱い!痛い!」
小指が焼き千切れる激痛を感じて、国王が正気に戻る。
俺は奴の傷を確認してみる。奴の右足の小指は、鋭利な刃物で切られたかのように綺麗に失われており、傷口からは血も出ていなかった。
「俺の『レーザー』は物を焼いてもほとんど煙が出ない。そして出血も傷口が焼かれてふさがってしまう。この意味がわかるか?」
俺の言葉に、国王は恐怖に震える。
そもそも火刑は残虐な刑ではあるが、実はほとんどの場合罪人は焼かれたことが原因で死ぬのではなく、煙によって窒息死する。火は自らの罪を清めるという意味もあるのである
しかし、煙を立てずにじわじわと焼き殺されるのでは話が違ってくる。罪人の苦痛は想像を絶するものになるだろう。
「まずは右足からだ」
俺の手から出た細いオレンジ色の光が、国王の右足の指を順番に焼いていく。
右足が終わったら左足、それが終わったら手の指と、体の先端から一寸刻みで焼かれる苦痛に国王は苦しみもがいた。
「も、もうやめてくれ……殺してくれ……」
四肢を失った時点で、国王は泣いて俺に懇願する。
「まだまだだ。自分が俺にしたことを、じっくり後悔して死んでいけ。次は目だ」
結局、国王が死ぬことができたのは、胴体の半ばまで焼き尽くされた後のことで、そのころには目も耳も口もすべて失っていた。
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