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処刑

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俺はレイバンの顔が絶望に染まるのを見て、愉悦を感じていた。
(あの傲慢で乱暴なレイバンが、恐怖のあまり震えているぜ)
冒険の旅の間、奴にさんざん虐待された記憶が蘇る。
「てめえ、ちんたら歩いてるんじゃねえ!」
「何が勇者の血を引く者だ。ただの照明係の癖に!」
「俺たちの邪魔になるくらいなら、モンスターに食われちまえ」
そんな暴言と共に、毎日のように殴られていた。
だが、まだまだだ。レイバンにはもっと自分の無力さを感じてもらおう。
そう思った俺は、レイバンをスルーしてミナに近寄っていった。
「な、なにをするつもりだ!」
レイバンが憎しみをこめた目でにらみつけてくる。
「俺は自分の経験から学んだんだ。自分が傷付けられることよりも、嘲りの言葉をなげかけられることよりも苦しむことをな。それは大切な人を目の前で殺されることだ」
そう言いながら、ミナの額に手を当てる。
「待て!何をするつもりだ」
「決まっているだろう。こいつはお前にとって大切な幼馴染らしいからな。お前の目の前で、焼き殺してやる」
俺の言葉に、レイバンは声を限りに叫んだ。
「やめろ!ミナは関係ない。殺すなら俺にしろ」
「もちろんお前も殺してやるよ。こいつの後にな」
わざとらしく手のひらに雷を集めながら、ゆっくりとその手をミナに近づける。
「やめろ!やめてくれ!くそ、なぜ体が動かないんだ。頼む!動いてくれ!俺の力はこんなものじゃないはずだ!今動かなければ、ミナが殺されてしまうんだ」
必死に自分の中の未知の力が覚醒するのを願っているみたいだが、世の中そう上手くいかないんだよ。
一度高重力に捉えられたレイバンは、どんなに風魔法を振り絞っても動くことはできなかった。
「それじゃ、これで終わりだ」
倒れているミナの体に手を当てると同時に、電流が体中を駆け巡った。
「きゃああああああ!」
あまりの激痛のあまり、意識を取り戻したミナが絶叫する。やがて眼がはじけ飛び、全身から焦げ臭い臭いが立ち上った。
「……レイバン……助けて……」
最後にか細い声で助けを求めると、ミナの心臓は鼓動を止めた。

俺の目の前で、レイバンは涙を流してうなだれている。
「おーい。どうした。泣くのはやめろ。強くて勇敢な戦士様に、涙は似合わないぜ」
うなだれているレイバンの髪の毛をつかんで上を向かせると、憎しみのこもった目で見上げられた。
「なぜだ!なぜミナを殺した!」
「お前が苦しむからだ」
俺はその訳を簡潔に応えてやった。
「貴様!ミナは優しい少女だった。いつも俺たち冒険者のことを心配してくれていて、少しでも傷付かないように心を配ってくれて……俺にとっては、姉のような大切な人だったんだ」
「だからどうした」
レイバンの恨み言が心地いい。
「お前は、最低のクズだ。復讐するなら俺だけにしろ。関係ない人まで巻き込むな。その程度の誇りすらもたないのか!」
「その通りだ。俺は最低のクズだよ。関係ない俺の家族を巻き込んで殺したお前たちと同様にな」
レイバンを思うさま殴りつけながら答える。
「クズ同士、道義上の優劣を競っても仕方あるまい」
「くそっ!お前は人間じゃない!この悪魔!魔王め!」
何を今更そんなわかりきったことをいっているんだ?
「もういい。殺せ。ミナがいない世界で生きている意味もない。俺もさっさと殺せ」
「ああ。殺してやるよ。じっくり時間をかけてな」
俺はそういうと、奴にかけていた重力魔法を反転させ、宙に浮かせた。
「俺をどうする気だ」
「別に。『串刺し戦士』にふさわしい末路を迎えさせてやろうと思ってね」
そう邪悪に笑うと、土魔法で周囲に支柱を立てる。それにロープをかけて、レイバンを立たせた状態で両手両足を拘束して釣り上げた。
「何をするつもりだ」
わめくレイバンを無視して、奴の槍をその尻の下に立てる。
「ぐっ」
槍の穂先がレイバンの尻の穴に突き刺さりそうになり、奴は必死に風魔法を使って体を浮かせた。
「異世界の歴史に「串刺し公」という君主がいたらしい。そいつが考案した、敵をもっとも長く苦しめ死に至らせる処刑方法だ」
歴代魔王の記憶の中から、奴にもっともふさわしい処刑法を選んでレイバンに施す。
「く、くそっ!」
レイバンは必死に自分の体を浮かせようとするが、すぐに魔力が尽きて体が沈み始めた。
「ほらほら頑張れ。少しでも気を抜くと、槍の穂先がホールインしてしまうぞ」
「き、貴様!」
奴が叫んだ瞬間、魔力が切れ、鋭くとがった槍が肛門に突き刺さった。
「アーーーーッ!痛い!」
死に物狂いでもがくが、暴れれば暴れるほど槍の穂先が食い込んでいく。
とうとう直腸を突き破り、勢いよく尻から血が噴き出した。
「この処刑のミソは、すぐには死ねないことだ。槍はお前の体重により、ゆっくりゆっくり進んでいく。そして体内を縦に貫き、最後は口から槍が飛び出るだろう」
「た、助けてくれ!痛い!苦しい!そんな死に方は嫌だ」
とうとうレイバンは、俺に対して命乞いをしてきた。しかし、俺はそれをあっさり拒否する。
「知るか。今まで串刺しにしてきた多くのモンスターとエルフたちの苦しみを味わいながら、ゆっくり死んでいけ」
それを聞いたレイバンは、とうとう神に祈り始めた。
「神様。助けてください。どうかこの邪悪な魔王を打ち倒してください!」
そんな奴を、俺は冷たく笑う。
「神なんていないんだよ。俺も家族が焼き殺された時、お前と同じように神に祈った。だが、神は現れなかった」
レイバンもすぐにそのことを思い知るだろう。あの時の俺のように。
「お前もこのまま、苦しみながら死んでいけ」
そのまま俺は奴が死んでいくのを見物する。もちろん最後まで神も勇者も助けに来なかった。

「やっと死んだか。なかなかしぶとかったな」
俺はレイバンの魂を吸収しながらつぶやく。レイバンは腐っても頑強な戦士らしく、なかなか死なずに結局四日間も見物してしまった。
「そろそろインディーズに帰るか。エルフたちが街の人間を皆殺しにした頃だろうからな」
空をとんでインディーズに戻る。上空からみた街の様子は、あちこち死体が転がっていてひどいものだった。
街の人間の恨みのこもった魂が俺の体に入ってくる。
「これで冒険者たちへの復讐は終わった。次はどうしようかな」
残る復讐対象は、魔法学園の賢者コーリン、教会の教皇と聖女マリア、そして王都にいる勇者光司と国王一味だった。
「勇者と国王は最後の楽しみとして取っておくとして、魔法学園と教会のどちらを攻めるか……」
考え込んでいると、街に俺の眷属となったエルフ騎士団がいないことに気づいた。
「ははは、やってやったぞ!」
「ギルドの金も全部奪ってやった。これで故郷に帰れるぞ」
街に残っているのは、奴隷から解放されたエルフたちのみ。彼らは解放されたことをお互い抱き合って喜んでいた。
俺はそいつらの前に降り立つ。
「あ、あなたは魔王様!」
「私たちを救ってくださって、ありがとうございます」
土下座するエルフたちに、聞いてみる。
「あのララ―シャとかいう王女と、騎士団はどうした?」
「は、はい。使用人として連れていかれたエルフたちを助けに行くといって、学園都市に向かいました」
まずいな。早くいかないと、先にコーリンたちが殺されてしまうかもしれない。
「わかった。お前たちは好きにしろ」
そう言いおいて、俺は魔法学園に向かうのだった。
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