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虚しい勝利
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ヘリックとエロスの戦いは続いていく。
(なんでこいつこんなにボロボロになっているんだ?最初に一撃以降、充分に手加減しているはずなんだが)
ヘリックは疑問に思う。最初の一撃以降、充分に手加減しているはずだが、軽く棍棒で小突いただけでエロスは大げさにふっとんだり、まとっている着ぐるみがボロボロになって痛々しい姿になっていった。
それにつれて、女子たちの悲鳴が高まっていく。
「きゃぁぁぁぁぁぁ!ひどい!」
「もうやめて!あなたは勇敢にたたかったわ!」
そんな声が上がるたびに、エロスはますます嬉しそうな顔になって立ち上がるのだった。
「くっ。ごほっゴホッ!……僕は負けられないんだ。貴族としての誇りを示すために!」
芝居かがったしぐさでせき込むたびに、女子からの応援の声がかけられる。
「がんばれ!」
「正義は必ず勝つ!悪のヘリックなんかに負けるな!」
そんな声があがり、闘技場は異様な盛り上がりをせていた。
「ね、ねえ。なんか変じゃない?この雰囲気は」
「ええ。元はと言えば彼らが勝手に勝負を挑んできたのに、いつの間にかヘリックの方が悪者になってます」
アテナイとエウロスも、会場を漂うアウェイ感に居心地が悪くなる。
「これじゃ、ヘリックが勝っても、ただの弱いものいじめになっちゃうよ。なんとかしないと!」
焦って会場を見渡したアテナイは、闘技場に注がれる第三者の魔力を感じ取ることができた。
「エウロス!この魔力は?」
「ええ、私も感じました。水の幻影魔法です」
魔力の元をたどっていくと、一人の男子生徒に行きつく。めそのメガネをかけた青い髪の生徒は、ひそかに杖を掲げて呪文を唱えていた。
「××××」
その生徒、セイレーン・マーキュリーが魔法を使うたびに、エロスは痛々しい姿になって生徒たちの同情を誘っていく。
「ヘリック、あいつを見て!」
アテナイの言葉で、ヘリックも気が付いた。
(もしかして、勝つことが目的じゃないのか?奴らは俺に弱者をいたぶる悪人のイメージをかぶせるのが目的で)
はっとなって棍棒をこいた瞬間、エロスはニヤッと笑って倒れる。
「くっ……悔しい。僕ではどうやってもかなわないのか。うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
そうつぶやくと、闘技場の上でうつぶせになって泣きわめき始めた。
「……かわいそう。あんなに頑張ったのに……」
「わかるぞ。悔しいよな。あんな平民なんかにいいようにいたぶられて」
女子生徒はその様子を見てもらい泣きし、同情する。
そんな雰囲気をみて、アポロ王太子はエロスに近づいて肩をたたいて慰める。
「もういい。君は頑張った」
「アポロ王子……俺は貴族の誇りをしめすことができたでしょうか?」
涙にぬれた目で、エロスは王子を見上げる。
「ああ。君は精一杯戦った。この場にいる者の中で、誰一人君をバカにするものはいないだろう」
アポロがそう宣言すると同時に、生徒たちの中からエスメラルダが立ち上がって、エロスを優しく抱きしめた。
「そうよ。あなたは勇敢に戦った。友達として誇りにおもうわ」
「エスメラルダさん……」
感動的に抱き合う二人に対して、生徒たちからは盛大な拍手が沸き起こった。
「そうだ!お前は頑張ったぞ!」
「あなたは負けてないわ!」
まるで勝者であるかのように賞賛を浴びるエロス。ヘリックはこの三文芝居に付き合う気になれず、ただ白けた気分で立ち尽くしていた。
「それでは、この勝負はこれで終了とする」
アポロは勝手に終了宣言をして、エロスたちを連れて去って行ってしまう。
「……いったい何だったんだ?」
「たぶん、ヘリックに勝てないとみて、評判を落とすやり方に切り替えたのよ」
「これが貴族のやり方ですか……汚いですね、すっかりヘリックさんに弱い者いじめをする悪人のイメージがついてしまいました。これからの学園生活がおもいやられます」
ヘリックたち三人は、そういってため息をつくのだった。
入学時の決闘騒ぎ以降、ヘリックには悪いイメージがつきまとい、生徒たちからはほとんど無視されていた。
「あれがエロス様をいじめたヘリックよ」
「元馬小屋の下男らしく、乱暴者よね」
女子たちからはそうヒソヒソと噂され、誰も近寄ってこない。
「困ったな。こんなことじゃ誰が魔王になるのか見極めようにも、情報が集まってこないぞ」
困ったヘリックは、従者であるアテナイとエウロスに相談するが、彼女たちも難しい顔をしていた。
「私たちも、女子グループから浮いているんだよね」
「ヘリックの従者であるということで避けられているみたいです」
彼女たちもクラスに溶け込めず、悩んだ顔をしていた。
そんな時、一人の女子生徒たちが近寄ってくる。
「ヘリック君、エロス君に謝ってちょうだい」
そう言ってきたのは、白い髪をした小柄な少女だった。
「えっと……君は?」
「マーティン・ホビット。ホビット伯爵家の長女で、エロス君の許嫁だよ」
その少女は、プンスカと怒りながらヘリックに迫ってきた。
とりあえず部屋に招き入れて、話を聞く。
「君がやったことは、どう考えてもひどすぎるよ。か弱いエロス君をあんなに痛めつけて」
「……勝負を挑んできたのはあいつらだろう。俺は正々堂々と戦っただけだ」
「だからって……少しくらい手加減してくれてもいいじゃない。君とエロス君だと、体格が違い過ぎるでしょ」
そういって責めてくるマーティンに、ヘリックは話にならないと肩をすくめた。
その時アテナイとエウロスが口を挟む。
「ヘリックはちゃんと手加減していたよ。あいつがボロボロになったのは、幻影魔法で見せられた嘘の姿だよ」
「そうです。マーキュリーさんが水魔法を使うのを、私たちは確かに感じ取りました」
二人からそういわれても、マーティンは納得しなかった。
「うるさい!とにかく、エロス君に謝って仲直りしろ!」
駄々っ子のように謝れ謝れと繰り返すばかりで、ヘリックの言い分に身を貸そうとしなかった。
うんざりしたヘリックは、ため息をついて頷く。
「わかったわかった。とにかく誤ればいいんだな」
「そうだよ。そうすれば、エリック君も僕に感謝してくれて、また一緒に遊んでくれるようになるよ」
マーテインは、期待した目でそうつぶやくのだった。
エロスの部屋
「エスメラルダ……痛いよぉ」
「よしよし。エロス君頑張ってね。あんな野蛮人と勇敢に戦って。かっこよかったよ」
エスメラルダは、ベッドに座ってエロスを膝枕して慰めていた。
「ほら。あーん」
口元にお菓子を持っていくが、エロスはイヤイヤと首を振る。
「そんなのより、もっとおいしいものがほちぃなぁ」
「ふふ。もしかしてママのおっぱいがほしいの?」
エスメラルダは妖しく笑うと、見せつけるように胸元をひらく。
「うん。ほちいほちい」
「しかたなぃなあ。ほら、ちゅっちゅしましょうねぇ~」
エスメラルダが胸元を大きく開いたとき、いきなり部屋のドアがバーンと開いた、
「エロス君!ヘリックをつれてきたよ……え?」
二人を一目見ると同時に、入ってきたマーティンが固まる。
「な、なんだよ!勝手に入ってくるなよ」
赤ちゃんプレイを見られたエロスは、真っ赤な顔をして起き上がった。
「き、君たち、何しているんだよぁ」
「何しているって、決まっているでしょ。私のおっぱいでエロス君を癒してあげてるのよ」
エスメラルダは見せつけるように、胸をとりだしてエロスの顔を間に挟んだ。
「ほーら。ぱふぱふぱふ」
「ぱふぱふぱふ……」
胸に挟まれたエロスは、嬉しそうにうっとりしている。
「そ、そんな。うわぁぁぁぁぁぁぁん!」
それを見たマーティンは、泣きながら走り去ってしまった。
(なんでこいつこんなにボロボロになっているんだ?最初に一撃以降、充分に手加減しているはずなんだが)
ヘリックは疑問に思う。最初の一撃以降、充分に手加減しているはずだが、軽く棍棒で小突いただけでエロスは大げさにふっとんだり、まとっている着ぐるみがボロボロになって痛々しい姿になっていった。
それにつれて、女子たちの悲鳴が高まっていく。
「きゃぁぁぁぁぁぁ!ひどい!」
「もうやめて!あなたは勇敢にたたかったわ!」
そんな声が上がるたびに、エロスはますます嬉しそうな顔になって立ち上がるのだった。
「くっ。ごほっゴホッ!……僕は負けられないんだ。貴族としての誇りを示すために!」
芝居かがったしぐさでせき込むたびに、女子からの応援の声がかけられる。
「がんばれ!」
「正義は必ず勝つ!悪のヘリックなんかに負けるな!」
そんな声があがり、闘技場は異様な盛り上がりをせていた。
「ね、ねえ。なんか変じゃない?この雰囲気は」
「ええ。元はと言えば彼らが勝手に勝負を挑んできたのに、いつの間にかヘリックの方が悪者になってます」
アテナイとエウロスも、会場を漂うアウェイ感に居心地が悪くなる。
「これじゃ、ヘリックが勝っても、ただの弱いものいじめになっちゃうよ。なんとかしないと!」
焦って会場を見渡したアテナイは、闘技場に注がれる第三者の魔力を感じ取ることができた。
「エウロス!この魔力は?」
「ええ、私も感じました。水の幻影魔法です」
魔力の元をたどっていくと、一人の男子生徒に行きつく。めそのメガネをかけた青い髪の生徒は、ひそかに杖を掲げて呪文を唱えていた。
「××××」
その生徒、セイレーン・マーキュリーが魔法を使うたびに、エロスは痛々しい姿になって生徒たちの同情を誘っていく。
「ヘリック、あいつを見て!」
アテナイの言葉で、ヘリックも気が付いた。
(もしかして、勝つことが目的じゃないのか?奴らは俺に弱者をいたぶる悪人のイメージをかぶせるのが目的で)
はっとなって棍棒をこいた瞬間、エロスはニヤッと笑って倒れる。
「くっ……悔しい。僕ではどうやってもかなわないのか。うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
そうつぶやくと、闘技場の上でうつぶせになって泣きわめき始めた。
「……かわいそう。あんなに頑張ったのに……」
「わかるぞ。悔しいよな。あんな平民なんかにいいようにいたぶられて」
女子生徒はその様子を見てもらい泣きし、同情する。
そんな雰囲気をみて、アポロ王太子はエロスに近づいて肩をたたいて慰める。
「もういい。君は頑張った」
「アポロ王子……俺は貴族の誇りをしめすことができたでしょうか?」
涙にぬれた目で、エロスは王子を見上げる。
「ああ。君は精一杯戦った。この場にいる者の中で、誰一人君をバカにするものはいないだろう」
アポロがそう宣言すると同時に、生徒たちの中からエスメラルダが立ち上がって、エロスを優しく抱きしめた。
「そうよ。あなたは勇敢に戦った。友達として誇りにおもうわ」
「エスメラルダさん……」
感動的に抱き合う二人に対して、生徒たちからは盛大な拍手が沸き起こった。
「そうだ!お前は頑張ったぞ!」
「あなたは負けてないわ!」
まるで勝者であるかのように賞賛を浴びるエロス。ヘリックはこの三文芝居に付き合う気になれず、ただ白けた気分で立ち尽くしていた。
「それでは、この勝負はこれで終了とする」
アポロは勝手に終了宣言をして、エロスたちを連れて去って行ってしまう。
「……いったい何だったんだ?」
「たぶん、ヘリックに勝てないとみて、評判を落とすやり方に切り替えたのよ」
「これが貴族のやり方ですか……汚いですね、すっかりヘリックさんに弱い者いじめをする悪人のイメージがついてしまいました。これからの学園生活がおもいやられます」
ヘリックたち三人は、そういってため息をつくのだった。
入学時の決闘騒ぎ以降、ヘリックには悪いイメージがつきまとい、生徒たちからはほとんど無視されていた。
「あれがエロス様をいじめたヘリックよ」
「元馬小屋の下男らしく、乱暴者よね」
女子たちからはそうヒソヒソと噂され、誰も近寄ってこない。
「困ったな。こんなことじゃ誰が魔王になるのか見極めようにも、情報が集まってこないぞ」
困ったヘリックは、従者であるアテナイとエウロスに相談するが、彼女たちも難しい顔をしていた。
「私たちも、女子グループから浮いているんだよね」
「ヘリックの従者であるということで避けられているみたいです」
彼女たちもクラスに溶け込めず、悩んだ顔をしていた。
そんな時、一人の女子生徒たちが近寄ってくる。
「ヘリック君、エロス君に謝ってちょうだい」
そう言ってきたのは、白い髪をした小柄な少女だった。
「えっと……君は?」
「マーティン・ホビット。ホビット伯爵家の長女で、エロス君の許嫁だよ」
その少女は、プンスカと怒りながらヘリックに迫ってきた。
とりあえず部屋に招き入れて、話を聞く。
「君がやったことは、どう考えてもひどすぎるよ。か弱いエロス君をあんなに痛めつけて」
「……勝負を挑んできたのはあいつらだろう。俺は正々堂々と戦っただけだ」
「だからって……少しくらい手加減してくれてもいいじゃない。君とエロス君だと、体格が違い過ぎるでしょ」
そういって責めてくるマーティンに、ヘリックは話にならないと肩をすくめた。
その時アテナイとエウロスが口を挟む。
「ヘリックはちゃんと手加減していたよ。あいつがボロボロになったのは、幻影魔法で見せられた嘘の姿だよ」
「そうです。マーキュリーさんが水魔法を使うのを、私たちは確かに感じ取りました」
二人からそういわれても、マーティンは納得しなかった。
「うるさい!とにかく、エロス君に謝って仲直りしろ!」
駄々っ子のように謝れ謝れと繰り返すばかりで、ヘリックの言い分に身を貸そうとしなかった。
うんざりしたヘリックは、ため息をついて頷く。
「わかったわかった。とにかく誤ればいいんだな」
「そうだよ。そうすれば、エリック君も僕に感謝してくれて、また一緒に遊んでくれるようになるよ」
マーテインは、期待した目でそうつぶやくのだった。
エロスの部屋
「エスメラルダ……痛いよぉ」
「よしよし。エロス君頑張ってね。あんな野蛮人と勇敢に戦って。かっこよかったよ」
エスメラルダは、ベッドに座ってエロスを膝枕して慰めていた。
「ほら。あーん」
口元にお菓子を持っていくが、エロスはイヤイヤと首を振る。
「そんなのより、もっとおいしいものがほちぃなぁ」
「ふふ。もしかしてママのおっぱいがほしいの?」
エスメラルダは妖しく笑うと、見せつけるように胸元をひらく。
「うん。ほちいほちい」
「しかたなぃなあ。ほら、ちゅっちゅしましょうねぇ~」
エスメラルダが胸元を大きく開いたとき、いきなり部屋のドアがバーンと開いた、
「エロス君!ヘリックをつれてきたよ……え?」
二人を一目見ると同時に、入ってきたマーティンが固まる。
「な、なんだよ!勝手に入ってくるなよ」
赤ちゃんプレイを見られたエロスは、真っ赤な顔をして起き上がった。
「き、君たち、何しているんだよぁ」
「何しているって、決まっているでしょ。私のおっぱいでエロス君を癒してあげてるのよ」
エスメラルダは見せつけるように、胸をとりだしてエロスの顔を間に挟んだ。
「ほーら。ぱふぱふぱふ」
「ぱふぱふぱふ……」
胸に挟まれたエロスは、嬉しそうにうっとりしている。
「そ、そんな。うわぁぁぁぁぁぁぁん!」
それを見たマーティンは、泣きながら走り去ってしまった。
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