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01 どうしてこうなった
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僕の名前は、リュシオン・カインマート。
宰相カインマート侯爵の次男で、第二王子の婚約者だ。
同じ年の僕と殿下は、今、王立学園に通っている。最終学年で、この秋に卒業を迎える予定だ。
第二王子は男好きで節操がない。
いつも可愛い取り巻き達を侍らせていて、「見目麗しくない」僕を嫌って、近寄らせることもない。
でも、全然、構わない。
だって、僕も殿下のこと、なんとも思ってないんだから。
今日も、殿下が、取り巻きの子相手に尻丸出しで盛っている。
中庭なのに、よくやるな。
まあ、春先はこういうの増えるから、仕方ないよね。
通り過ぎようとして、急に、不意に、記憶が降ってきた。
その衝撃で、僕はつい膝をついてしまった。
ここは……。
ここは、僕が前世で読んだBL漫画の世界だ。
僕は、その世界に転生してしまったんだ。
何故か、第二王子の尻を見ながら、それを思い出していた。
□□□□
そのBL漫画は、前世の僕の妹が持っていた漫画だった。
借りた本にでも紛れていたんだと思う。
「過激なエロ」という煽り文句に興味をそそられ、読んだ結果、僕はがっつり抜けてしまった。
前世の妹や両親、自分の名前すらおぼろげなのに、その漫画だけは覚えているって、どうかと思う。
確か、主人公は王立学園一年の男爵令息で、彼が複数の相手と愛欲に溺れる青春ラブロマンスだった。
相手役の一人が、あの顔だけは良い節操なしの第二王子で、苛める役の悪役令息役が、僕、リュシオン・カインマートだ。
ああ、だから、僕が婚約者なんだ。
納得した。
親が決めた相手だとしても、第二王子にも僕にも、上に立派な兄上がいるから、陛下になるわけでも、侯爵になるわけでもないし。
解消しても問題ないはずだし、殿下も僕を嫌ってて、なんで婚約解消を言い出さないんだろうって、ずっと思ってたんだよね。
だけど。
これで、婚約解消できるって、単純に喜べる話じゃなくなってきた。
漫画通りにいけば、僕は卒業記念パーティで、主人公を苛めた罪で、第二王子から断罪され、婚約破棄を言い渡されたのち、南の収容所へ送られて過酷な強制労働を送る一生となる。
待って。そんなに酷い罰を受けること?
貴族的な言い方をすれば、僕は侯爵家で正式な婚約者、向こうは男爵家で愛人。
婚約者がいる男に手を出したあっちが悪いはずだよね?
それに、作中での僕の苛めって、真冬に裸にして水を被せて放置したとか、取り巻きを使って殴る蹴るの挙句、強姦させたとか……。
結構やってたわ、えぐいな、漫画の中の僕。
もっとも。
自分の裸で温めてあげてた第二王子がムラムラして睡眠姦したり、護衛騎士と通路で立ちバックしたり、教師が怪我を舐めて興奮する変態エッチとか、王道の強姦後のお清めエッチとか。
漫画の僕って、結構、主人公たちに貢献してたんじゃないだろうか。
婚約破棄はありがたいが、南の収容所での一生はごめんだ。
こうなったら、断罪されるのだけは避けなければならない。
僕は虐めをしない。
主人公と攻略対象者達には接触しない。
目立たない。
これだけのスローガンを掲げておく。
そうすれば、悲惨な将来を変えられるはずだ。
そう思っていた時がありました。
「リュシオン・カインマート。お前は俺の大事な恋人に、お前の取り巻き連中を使って口にするのもおぞましい卑劣な行為を行った。お前との婚約は、この場を以て破棄する! お前には厳罰な処置が課せられるだろう! 連れていけ!」
壇上で、主人公を抱き寄せて僕を処断する第二王子。
寄り添って、うっとりと第二王子を見上げる主人公。
どうして、こうなった?
宰相カインマート侯爵の次男で、第二王子の婚約者だ。
同じ年の僕と殿下は、今、王立学園に通っている。最終学年で、この秋に卒業を迎える予定だ。
第二王子は男好きで節操がない。
いつも可愛い取り巻き達を侍らせていて、「見目麗しくない」僕を嫌って、近寄らせることもない。
でも、全然、構わない。
だって、僕も殿下のこと、なんとも思ってないんだから。
今日も、殿下が、取り巻きの子相手に尻丸出しで盛っている。
中庭なのに、よくやるな。
まあ、春先はこういうの増えるから、仕方ないよね。
通り過ぎようとして、急に、不意に、記憶が降ってきた。
その衝撃で、僕はつい膝をついてしまった。
ここは……。
ここは、僕が前世で読んだBL漫画の世界だ。
僕は、その世界に転生してしまったんだ。
何故か、第二王子の尻を見ながら、それを思い出していた。
□□□□
そのBL漫画は、前世の僕の妹が持っていた漫画だった。
借りた本にでも紛れていたんだと思う。
「過激なエロ」という煽り文句に興味をそそられ、読んだ結果、僕はがっつり抜けてしまった。
前世の妹や両親、自分の名前すらおぼろげなのに、その漫画だけは覚えているって、どうかと思う。
確か、主人公は王立学園一年の男爵令息で、彼が複数の相手と愛欲に溺れる青春ラブロマンスだった。
相手役の一人が、あの顔だけは良い節操なしの第二王子で、苛める役の悪役令息役が、僕、リュシオン・カインマートだ。
ああ、だから、僕が婚約者なんだ。
納得した。
親が決めた相手だとしても、第二王子にも僕にも、上に立派な兄上がいるから、陛下になるわけでも、侯爵になるわけでもないし。
解消しても問題ないはずだし、殿下も僕を嫌ってて、なんで婚約解消を言い出さないんだろうって、ずっと思ってたんだよね。
だけど。
これで、婚約解消できるって、単純に喜べる話じゃなくなってきた。
漫画通りにいけば、僕は卒業記念パーティで、主人公を苛めた罪で、第二王子から断罪され、婚約破棄を言い渡されたのち、南の収容所へ送られて過酷な強制労働を送る一生となる。
待って。そんなに酷い罰を受けること?
貴族的な言い方をすれば、僕は侯爵家で正式な婚約者、向こうは男爵家で愛人。
婚約者がいる男に手を出したあっちが悪いはずだよね?
それに、作中での僕の苛めって、真冬に裸にして水を被せて放置したとか、取り巻きを使って殴る蹴るの挙句、強姦させたとか……。
結構やってたわ、えぐいな、漫画の中の僕。
もっとも。
自分の裸で温めてあげてた第二王子がムラムラして睡眠姦したり、護衛騎士と通路で立ちバックしたり、教師が怪我を舐めて興奮する変態エッチとか、王道の強姦後のお清めエッチとか。
漫画の僕って、結構、主人公たちに貢献してたんじゃないだろうか。
婚約破棄はありがたいが、南の収容所での一生はごめんだ。
こうなったら、断罪されるのだけは避けなければならない。
僕は虐めをしない。
主人公と攻略対象者達には接触しない。
目立たない。
これだけのスローガンを掲げておく。
そうすれば、悲惨な将来を変えられるはずだ。
そう思っていた時がありました。
「リュシオン・カインマート。お前は俺の大事な恋人に、お前の取り巻き連中を使って口にするのもおぞましい卑劣な行為を行った。お前との婚約は、この場を以て破棄する! お前には厳罰な処置が課せられるだろう! 連れていけ!」
壇上で、主人公を抱き寄せて僕を処断する第二王子。
寄り添って、うっとりと第二王子を見上げる主人公。
どうして、こうなった?
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