王道学園のモブ

四季織

文字の大きさ
上 下
13 / 28

第12話 体育祭

しおりを挟む
 パチャン。

 歩いていると、上から水が降ってきた。俺達より、かなり手前に、だ。
 昨日は通り過ぎたあとに降ってきた。


「3回目?」
「いつもちょっと惜しいんだよね」

 でも、素早いのか、屋上に人影は見当たらない。


「むしろ、犯人気になってきた」
「あ、僕も」
「小坂を殺る気あんのかな」


 殺るって!
 お前ら、味方じゃないの?


 お昼には、先輩が湿布とかテーピングを見てくれる。
 さすが、運動部。処置も慣れていて、もちろん俺より手際がいい。

「もう痛みはないか?」 
「そろそろ動かした方がいいですよね」

 そうだな、と先輩が言う。
 
 不謹慎かもしれないけど、先輩が俺の足を触ると、恥ずかしくてくすぐったくて仕方がない。

 つい、んって声が出て、先輩が手を止めていた。
 すみません。


「早く治ってもらわないと、無理させられないしな」
「え?」

 先輩が呟いてたけど、俺には意味が分からなかった。



□□□□



 6月。体育祭当日。
 目の前を、主人公と副会長が楽しそうに、二人三脚で駆け抜けていく。
 ぶっちぎりの1位だ。

「アレ、謝ってきた?」
「いや」
「怪我させたと思ってないよね」
「Cクラスの俺達のことなんか、眼中になさそう」


 チーム分けは、1年から3年までのクラス対抗で、Sクラスは赤組、俺達Cクラスは黄組だ。

 正直、クラス対抗って力の差がありすぎるんだけど。
 でも、主人公と攻略対象者が同じチームじゃないと不都合だから、仕方がない。


 得点ボードを見ながら、同じクラスの小笠原が言う。

「Sクラスの赤組と、Bクラスの青組の一騎打ちだな」
「Aクラスの白組がその次で、うちはもう消化試合って感じ?」
「Bクラスはスポ薦メインだし。こういうときこそ活躍しなきゃ」

 青のハチマキをした幼馴染みのゴリラが、雄叫びあげて走り去っていった。


 キャーッ。
 歓声の先に目をやると、体育祭の応援団が出てきた。

 先輩だ!

 俺も心の中で黄色い声を上げた。

 だって、先輩が。
 斎木先輩が、黒の長ランに赤のたすきがけした姿で立っているんだ。

 これ、スチール絵で見たヤツ。
 生で見ると、その何千倍もカッコいい。もう、カッコいいしかない。
 俺の語彙力戻ってきて!

「カッコいい……」
「乙女か」


 はぁ。眼福だった。
 加賀谷と一ノ瀬はCクラスの応援団だったけど、見てなかった、ごめん。



 午前の部が終わって。

「なぁ! みんなで飯食おうぜ!」

 主人公が、会長と会計の腕をホールドして叫んでいた。
 向かいの副会長と双子庶務が、「食べましょう」と誘ってるから、会長と会計は断ってるんだろう。

 あれ? 先輩は早々に姿を消している。


しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

クラスのボッチくんな僕が風邪をひいたら急激なモテ期が到来した件について。

とうふ
BL
題名そのままです。 クラスでボッチ陰キャな僕が風邪をひいた。友達もいないから、誰も心配してくれない。静かな部屋で落ち込んでいたが...モテ期の到来!?いつも無視してたクラスの人が、先生が、先輩が、部屋に押しかけてきた!あの、僕風邪なんですけど。

彼の至宝

まめ
BL
十五歳の誕生日を迎えた主人公が、突如として思い出した前世の記憶を、本当にこれって前世なの、どうなのとあれこれ悩みながら、自分の中で色々と折り合いをつけ、それぞれの幸せを見つける話。

学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語

紅林
BL
『桜田門学院高等学校』 日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である

匂いがいい俺の日常

とうふ
BL
高校1年になった俺の悩みは 匂いがいいこと。 今日も兄弟、同級生、先生etcに匂いを嗅がれて引っ付かれてしまう。やめろ。嗅ぐな。離れろ。

【完結】だから俺は主人公じゃない!

美兎
BL
ある日通り魔に殺された岬りおが、次に目を覚ましたら別の世界の人間になっていた。 しかもそれは腐男子な自分が好きなキャラクターがいるゲームの世界!? でも自分は名前も聞いた事もないモブキャラ。 そんなモブな自分に話しかけてきてくれた相手とは……。 主人公がいるはずなのに、攻略対象がことごとく自分に言い寄ってきて大混乱! だから、…俺は主人公じゃないんだってば!

転生令息は冒険者を目指す!?

葛城 惶
BL
ある時、日本に大規模災害が発生した。  救助活動中に取り残された少女を助けた自衛官、天海隆司は直後に土砂の崩落に巻き込まれ、意識を失う。  再び目を開けた時、彼は全く知らない世界に転生していた。  異世界で美貌の貴族令息に転生した脳筋の元自衛官は憧れの冒険者になれるのか?!  とってもお馬鹿なコメディです(;^_^A

悪役令嬢と同じ名前だけど、僕は男です。

みあき
BL
名前はティータイムがテーマ。主人公と婚約者の王子がいちゃいちゃする話。 男女共に子どもを産める世界です。容姿についての描写は敢えてしていません。 メインカプが男性同士のためBLジャンルに設定していますが、周辺は異性のカプも多いです。 奇数話が主人公視点、偶数話が婚約者の王子視点です。 pixivでは既に最終回まで投稿しています。

風紀委員長様は王道転校生がお嫌い

八(八月八)
BL
※11/12 10話後半を加筆しました。  11/21 登場人物まとめを追加しました。 【第7回BL小説大賞エントリー中】 山奥にある全寮制の名門男子校鶯実学園。 この学園では、各委員会の委員長副委員長と、生徒会執行部が『役付』と呼ばれる特権を持っていた。 東海林幹春は、そんな鶯実学園の風紀委員長。 風紀委員長の名に恥じぬ様、真面目実直に、髪は七三、黒縁メガネも掛けて職務に当たっていた。 しかしある日、突如として彼の生活を脅かす転入生が現われる。 ボサボサ頭に大きなメガネ、ブカブカの制服に身を包んだ転校生は、元はシングルマザーの田舎育ち。母の再婚により理事長の親戚となり、この学園に編入してきたものの、学園の特殊な環境に慣れず、あくまでも庶民感覚で突き進もうとする。 おまけにその転校生に、生徒会執行部の面々はメロメロに!? そんな転校生がとにかく気に入らない幹春。 何を隠そう、彼こそが、中学まで、転校生を凌ぐ超極貧ド田舎生活をしてきていたから! ※11/12に10話加筆しています。

処理中です...