王道学園のモブ

四季織

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第1話 王道学園に転生した

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「あ、小坂、委員長が探してたよ?」
「また? プリントの提出忘れたんだろ」
「意外に抜けてるからね」

 昼休みに入ってすぐ。
 購買から帰って来た俺は、寮が同室の加賀谷と、同じクラスの小笠原、一ノ瀬に声を掛けられた。
 出席順で縦一列に並ぶ、仲の良い4人だ。

 失礼だな! 確かに、抜けてるとはよく言われるけど!
 最近は、加賀谷から「メモを取ったら?」と、アプリを教えてもらったから忘れてないはずだ。
 服をパンパンと叩き、鞄を漁る。

 あれ?

「……スマホ、部屋だ」

 ほらね、って加賀谷が苦笑いしていた。


 俺のクラスは1-Cだ。
 外部からの入学生の内、成績がぱっとしない、家柄がさほどでもない奴らのクラスだ。
 だからか、超お金持ちのお坊ちゃん学校って設定でも、このクラスは気取ってなくて仲がいい。

 白鳳学園は、成績、家柄、寄付の多さなどの順に、SからCまでクラス分けされている。
 攻略対象者達は、当然Sクラスに集中して、棟も寮も違うから会うこともない。

 折角、BL学園に転生したから、色々なイベントに遭遇したかったってのもあるけど。
 無理そうだな。雲の上の存在って感じだから。


「なんで、のんびり飯食ってんだよ!」

 俺達が飯を食ってると、学級委員長が教室に駆け込んできた。

「小坂、今日、旗当番だろ? 廊下で先生に会って、呼んで来いって俺がいわれたんだからな」
「あ」

 電話掛けたのに出ないし、とぷりぷり詰め寄る委員長を、加賀谷が宥めてくれた。
 入学したばかりなのに、すでに加賀谷は、俺のお母さんと呼ばれている。
 ごめん、加賀谷、ついでに委員長。


 この学園では、いずれかの部活か、委員会に入ることが義務付けられているんだ。
 お楽しみBLイベントのためだと思うけど、モブにとったら、ただただ面倒くさい。

 なんでか俺は、交通安全委員っていう、わけ分からない委員会に当たっていた。
 車の往来も殆どなく、近くには電車も走ってない。寮もスーパーも診療所も敷地内にあるのに、何に気をつけろっていうんだろう。
 
 今日は、交通安全週間とかで、校舎柵に交通安全の標語の旗を立てるはずだった。
 行ってみたら、メインの校門前は終わっていて、先生と交通委員長に怒られた。


 なので、今。
 俺は一人で、校舎裏の人気がない柵に旗を立てている。
 仕方がないんだ、俺は昼飯食べ終わったけど、委員のみんなは昼飯もこれからだから。

 一人、「手伝うよ」って言ってくれたヤツがいたけど、昼飯抜くと死にそうなひょろひょろだったので、丁重に遠慮した。


 道路というより、私道みたいに狭い道は、すぐ側が鬱蒼とした藪になっていて怖い。熊でも出そう。
 立入禁止でもあるし、生徒もあまり寄り付かない。


 あれ? ここ、旗立てる意味なくない?
 旗って、生徒への注意喚起のためだよね?

 俺が恐る恐る旗を立てていると、ガサッと一際大きな音がして、ぬぅっと黒い物が現れた。

「ギャーッ、熊!」
「え? 熊?」

 旗を剣道の竹刀みたいに振り下ろすと、目の前の人は、また「え?」と声を上げた。


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