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16 犯人はオランウータン?
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「そうそう。聞いた話だけどね」
また、聞いた話シリーズだ。
もうこの時間、俺のフェラいる?
「ひとり暮らしの若い娘が殺された。きちんと戸締まりされていて、鍵も部屋の中にあった。なのに、中には娘の死体しかなかったそうだよ」
おぉ? ミステリーの醍醐味の密室殺人だな。って、被害者に不謹慎か。
でも、密室殺人と密室トリックって山ほど作品あるからなぁ。
俺自身推理できるわけじゃないし、読んだ本を思い出してるだけだからうろ覚えだってある。
娘は自殺じゃないよ? と、リロイ様は付け足した。
前に、海外のミステリーの女王で大御所の超有名な作品をヒントにしたときのことを言ってるんだ。
アレ、犯人が自分を死んだふうに見せかけて殺人を犯し、自殺したってやつだったから。
「死体は物凄い有り様だったんだ。壁に叩きつけられて。まるで魔物に襲われたときのようだったんだよ」
んん?
「その娘の部屋はアパートの2階で、下の階の住人達が犯人と思わしき声を聞いてるんだ」
「じゃあ、すぐに特定できるんじゃ?」
「それがね、男の声は聞き取れたらしいけど、もう一人は男か女か何語を話してるか分からなかったそうだよ」
「犯人……渡り人か外国人とか思ってます?」
渡り人は、何故か最初この世界の言葉が話せないから。
「渡り人の線はないだろうね、渡り人は私達より小さくて非力な者が殆どだから」
にっこりと俺に笑いかける。
ホントに渡り人ってバレてそう。
「聞き取れた男の方はなんて言ってたの?」
「『やめろ』ってもう一人を諌めてたみたいだね」
あー。これ。
なんかあったな、こういう作品。
海外ミステリーの古典で、なんとか街の殺人だ。
犯人がオランウータンだったんだよね。
確か、抜け出したオランウータンが母子の部屋に侵入して、意図せずその怪力で殺しちゃったってやつ。
「犯人、魔物じゃない?」
「まさか、魔物が街にいるなんて」
「こっそり魔物を飼ってる人とかいないかなぁ」
人とは思えない力で殺されてた娘。やめろと諌める男。
聞いたことがない国の言葉っていうのは、オランウータンの鳴き声を知らなかったから。
「魔物の毛とかなかった? 窓とか部屋とかに」
リロイ様が考え込む様子から、何かに思いついたようだ。
頭撫でられちゃった。
リロイ様を見送って玄関までお供すると、そこにはオーナーの姿もあった。
どうやら、他のお客様のお見送りだったらしい。
相変わらず派手な着流しを着て、今日は少し長い髪を後ろで縛っている。
そのうなじと後れ毛にちょっとドキッとした。
「お見送りありがとう、ぽめ太」
いけない。俺のお客様なのに、リロイ様から注意を反らしてしまった。
「またのお越しをお待ちして……」
慌てて言った俺の言葉は、リロイ様の口の中に吸い込まれていた。
リロイ様にキスされた。それもディープの方の。
時間中もディープキスなんてされたことないのに。
口を離したリロイ様をぼうっと見上げてしまった。キス上手すぎ。
「気持ちよかった? 可愛いね、ぽめ太は」
リロイ様がにこやかに扉を開けて出ていく。
「あ、ありがとうございました」
カランと扉が閉まって、下げていた頭を上げ……られなかった。
「いぃ、痛っ、いたた!」
俺の頭をオーナーの大きな手が掴んでいる。ギシギシと音がしそう。
頭の上からオーナーの低い声が降ってきた。
「他のお客様の前でなにやってんだ」
「俺のせい?!」
「お客様をうまくあしらうのも努めだろうが」
騒ぎを聞きつけて奥から出てきたハザナさんが、やっちまったなって顔で俺を見ていた。
どうしろっていうの! 助けてぇ!
また、聞いた話シリーズだ。
もうこの時間、俺のフェラいる?
「ひとり暮らしの若い娘が殺された。きちんと戸締まりされていて、鍵も部屋の中にあった。なのに、中には娘の死体しかなかったそうだよ」
おぉ? ミステリーの醍醐味の密室殺人だな。って、被害者に不謹慎か。
でも、密室殺人と密室トリックって山ほど作品あるからなぁ。
俺自身推理できるわけじゃないし、読んだ本を思い出してるだけだからうろ覚えだってある。
娘は自殺じゃないよ? と、リロイ様は付け足した。
前に、海外のミステリーの女王で大御所の超有名な作品をヒントにしたときのことを言ってるんだ。
アレ、犯人が自分を死んだふうに見せかけて殺人を犯し、自殺したってやつだったから。
「死体は物凄い有り様だったんだ。壁に叩きつけられて。まるで魔物に襲われたときのようだったんだよ」
んん?
「その娘の部屋はアパートの2階で、下の階の住人達が犯人と思わしき声を聞いてるんだ」
「じゃあ、すぐに特定できるんじゃ?」
「それがね、男の声は聞き取れたらしいけど、もう一人は男か女か何語を話してるか分からなかったそうだよ」
「犯人……渡り人か外国人とか思ってます?」
渡り人は、何故か最初この世界の言葉が話せないから。
「渡り人の線はないだろうね、渡り人は私達より小さくて非力な者が殆どだから」
にっこりと俺に笑いかける。
ホントに渡り人ってバレてそう。
「聞き取れた男の方はなんて言ってたの?」
「『やめろ』ってもう一人を諌めてたみたいだね」
あー。これ。
なんかあったな、こういう作品。
海外ミステリーの古典で、なんとか街の殺人だ。
犯人がオランウータンだったんだよね。
確か、抜け出したオランウータンが母子の部屋に侵入して、意図せずその怪力で殺しちゃったってやつ。
「犯人、魔物じゃない?」
「まさか、魔物が街にいるなんて」
「こっそり魔物を飼ってる人とかいないかなぁ」
人とは思えない力で殺されてた娘。やめろと諌める男。
聞いたことがない国の言葉っていうのは、オランウータンの鳴き声を知らなかったから。
「魔物の毛とかなかった? 窓とか部屋とかに」
リロイ様が考え込む様子から、何かに思いついたようだ。
頭撫でられちゃった。
リロイ様を見送って玄関までお供すると、そこにはオーナーの姿もあった。
どうやら、他のお客様のお見送りだったらしい。
相変わらず派手な着流しを着て、今日は少し長い髪を後ろで縛っている。
そのうなじと後れ毛にちょっとドキッとした。
「お見送りありがとう、ぽめ太」
いけない。俺のお客様なのに、リロイ様から注意を反らしてしまった。
「またのお越しをお待ちして……」
慌てて言った俺の言葉は、リロイ様の口の中に吸い込まれていた。
リロイ様にキスされた。それもディープの方の。
時間中もディープキスなんてされたことないのに。
口を離したリロイ様をぼうっと見上げてしまった。キス上手すぎ。
「気持ちよかった? 可愛いね、ぽめ太は」
リロイ様がにこやかに扉を開けて出ていく。
「あ、ありがとうございました」
カランと扉が閉まって、下げていた頭を上げ……られなかった。
「いぃ、痛っ、いたた!」
俺の頭をオーナーの大きな手が掴んでいる。ギシギシと音がしそう。
頭の上からオーナーの低い声が降ってきた。
「他のお客様の前でなにやってんだ」
「俺のせい?!」
「お客様をうまくあしらうのも努めだろうが」
騒ぎを聞きつけて奥から出てきたハザナさんが、やっちまったなって顔で俺を見ていた。
どうしろっていうの! 助けてぇ!
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