異世界に来た俺の話

四季織

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番外編 山奥の家で風呂を作る2

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 ひと月後、カラウ伯父さんと幼馴染み達がまた山を登ってきてくれた。
 今日は残りの工程をする。

「久々に面白い仕事だよ」

 技師は、俺の要領を得ない話で色々装置を考えてきてくれた。
 適当な人かと疑ってて申し訳なかったな。

 カラウ伯父さんと技師が水の方をやっている間に、オルが幼馴染み達と準備しておいた丸太を組んでいく。


 そう、この村には大工がいない。男達が中心になって建てるんだ。
 建築基準法とか耐震技術とかどうなってるのと思ったけど、地震がないからいいのか。

 もしかしたら、全部平屋なのも、自分達で建てるからなのかも。
 彼らの体に合った強度の2階建てを作るには、技術がいりそうだからな。

 
「おー、昼飯かぁ」
「腹減ったなぁ」

 伯父さんと一緒に来ていたお母さんとお昼の準備をする。
 随分久しぶりだ。

 お母さんは村から調味料をいくつか持ってきてくれた。

 外の焚き火に鍋をくべ、昨日オルが獲ってきてくれた新鮮な魔猪も焼く。
 岩塩みたいのがあったから、早速、肉を焼くときに使わせてもらった。

 大量に作ったはずだったのに、あっという間にゴリラ達の胃袋に消えていた。
 やっぱり、塩で焼いた新鮮な肉は美味い。


 日が暮れるまでには、お風呂が出来上がっていた。
 掘った穴に石を並べ、洗い場もあっていい感じに仕上がってる。
 試しに装置を使ってお湯を張ってみたら、湯気も上がって本当に露天風呂に見える。
 
 すごいな、技師さん。
 と思ったら。

「何言ってんの、この装置、渡り人が考案したんでしょ。温泉装置」

 と言われた。

 ああ、過去に来た日本人かなあ。
 お風呂がなくて恋しかったんだろうなぁ。


「早速、入ってみるか!」
「みんなで入るには狭いな! 順番だな!」

 確かに、「汗かいたろうから入ってもらおう」とお母さんと話してたけど。
 ゴリラ達はあっという間に裸になって、露天風呂の周りをウロウロしだした。

 やめて!
 ホントのゴリラに見えるから、やめて!


 夜も外で宴会をして、ゴリラ達は麓へ帰っていった。
 相当飲んだはずなのに、みんな危なげない足取りで、あっという間に姿が見えなくなった。
 さすがだ。

「お母さんくらい、残ってもらっても良かったのに」
「ベッド壊れた。寝るとこない」
「あー、そうだった」

 
 実は昼間。
 家の中へ食材を運んでくれてた幼馴染み達が、お母さん用に作ったベッドに目を止めたんだ。

「へぇー、木を組んだ土台に干し草を敷いてるのか」
「干し草じゃなくてもいいんですけど、柔らかい布団がなかったから」
「なんだ! 荷物置き場じゃなかったのか!」

 オニ族の家にベッドはない。

 答えはすぐに分かった。


「寝てみてもいいか?」

 代表して、カラウ伯父さんが腰を下ろした途端、ベッドは凄い音を立てて壊れた。

「あー。すまんな」

 オルが手を貸して伯父さんを起こす。
 病気で痩せてたお母さんならともかく、オニ族の男には強度が足りなかったみたいだ。
 もしかしたら、健康になってきた今のお母さんでもいずれ壊れたかも。
 あのとき、オルにはきちんと用途を伝えなかったもんなぁ。


「発想は悪くないよ。やり方次第じゃ、板間に布団を引いて寝るより快適なんじゃないかな」

 そうなんだよね。
 畳じゃないし布団も厚手じゃないから、朝たまに体が痛いときがあるんだ。
 そう言ったら、オルがすごい勢いでこっちを振り向いて、顔を覗き込んできた。

 言わなくて悪かったって。
 無言の圧力やめて。


「今度、俺達でも平気な『べっど』考えてみるよ」
「それは仕事外じゃ」
「そういうの好きだから」

 申し訳ないな。

「強度がないから、ロフトとか2階がないんですね」
「ろふと? なんだ?」

 中2階というか。
 寝るためは難しくても、備蓄置き場にも使えるし。

 村の家もかなり広いから、みんな収納には困ってなさそうだったけど。
 割と、そこに積んどく置いとく状態なんだよね。

「面白いこというな、嫁さん」

 技師さんの顔が輝いていた。
 

 今度、試作したものを村で見せてもらうことになった。
 多分、ベッドぐらいならすぐ作りそうだな、技師さんなら。


 その夜、俺はオルに抱っこされて寝る羽目になってしまった。
 体が痛いって言ったせいだ。

 でも、そのままで我慢できるはずもなく。
 疲れてたはずなのに、ヤッてしまって更に疲れた。
 まぁ、オルがご満悦ですっきりしてたから、いいか。


 出来れば、俺としては仕切りがほしい。お母さんが帰ってきたときのために。
 まだしばらく家の改築は続きそうだ。

 
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