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28 王都との別れ
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イオさんに村に帰ることを告げに行った。
イオさんには言葉に尽くせないほどお世話になったから、一番に伝えに行きたかったんだ。
「そうか、寂しくなるな」
イオさんは「また来いよ」って俺達の頭を交互に撫でてくれた。
イオさんの目に涙が浮かぶのを見て、俺もツンと鼻が熱くなった。
「帰る前に、同郷のみんなでメシでも食おう」
「そうですね! お礼もしたいし」
オルを見上げると、頷いていた。
「お礼、何がいいですかね」
「いらねぇと思うがなぁ。故郷の味に飢えてるから、名物でも作ってやれば喜ぶよ」
すみません。
俺、ルオヴィッツ村の名物知らないんで。
木の実の団子汁しか作れないんで、他のにしてください。
それから、もう一度北小路くんとも会った。
もちろん、今度は双方の伴侶同伴で、だ。
「せっかく仲良くなれたのに。周りには日本の渡り人もいないし、新海さん、話しやすくていい方だったから」
北小路くんは、寂しいです、って別れを惜しんでくれた。いい子だ。
「手紙書くよ。電話も村長のところに1台しかないそうだし、この世界にはスマホはないから」
「そうか、そうですね」
「え?」
「スマホ作ればいいんですよ。俺、頑張ってみようかな」
電話のような魔道具は大型で高価だから、一家に1台とはいかない。
携帯できる電話機と聞いて、ユーシス殿下も興味深そうにしていた。
魔道具技師と開発してみますって、彼ならホントに作りそうだ。
「ちなみにさ、気になってることあって、いい?」
「はい、なんでしょう?」
「北小路くんの婚姻の紋見せて貰ってもいい? 俺のも見せるから」
一度もその話にならなかったから、聞かれたくないのかと思っていた。
言わないってことは同じ雌かもしれないから、ずっと気になってたんだ。
「紋? なんですか、それ?」
んん? 予想外の反応が返ってきたぞ。
俺が説明しても、彼は首を傾げている。
「えっと、日本で言ったら、結婚指輪みたいなやつなんだけど」
「ああ! 腕輪のことですか」
彼はやっと納得して「これです」と、はにかんだ笑顔で服の袖を捲った。
左腕には綺麗な青の石が嵌められた細い金の腕輪が輝いていた。
ユーシス殿下を見ると、頼んでもないのに同じく左腕のシャツのボタンを外して見せてきた。黒の石が嵌まった黒の腕輪だ。
魔水晶石を加工して、裏には互いの名前を彫り、祝福の加護も付いているそうだ。
ほうっておくと目の前でいちゃつきそうだったので、さっさとしまってもらう。
これは、あれだろ?
互いの髪と瞳の色を身にまとうって素敵なやつだろ?
どうして、うちとこんなにちがうの?
ユーシス殿下はにやにやと笑っていて、オルはきょとんと首を傾げている。
「オニ族の風習ですよ」
どこまで独自文化なんだよ!
「新開さんの紋ってやつですか? 俺、見てみたいです」
「お、おれの? ホントにみる?」
くっそ、自分から墓穴を掘ってしまった。
しぶしぶ捲った俺の腕に、最初、歓声を上げかけた北小路くんが、
「……なんか、淫も……すいません」
言いかけて、口を噤んだ。
淫紋じゃないから!
というか、爽やかイケメンから淫紋なんて聞きたくなかった!
まあ。
色々あったし大変だったけど、王都旅行も楽しかったよな。
な? オル。
見上げたら、照れたように頬を染めてキスしてきた。
だから、キス待ち顔じゃないって!
イオさんには言葉に尽くせないほどお世話になったから、一番に伝えに行きたかったんだ。
「そうか、寂しくなるな」
イオさんは「また来いよ」って俺達の頭を交互に撫でてくれた。
イオさんの目に涙が浮かぶのを見て、俺もツンと鼻が熱くなった。
「帰る前に、同郷のみんなでメシでも食おう」
「そうですね! お礼もしたいし」
オルを見上げると、頷いていた。
「お礼、何がいいですかね」
「いらねぇと思うがなぁ。故郷の味に飢えてるから、名物でも作ってやれば喜ぶよ」
すみません。
俺、ルオヴィッツ村の名物知らないんで。
木の実の団子汁しか作れないんで、他のにしてください。
それから、もう一度北小路くんとも会った。
もちろん、今度は双方の伴侶同伴で、だ。
「せっかく仲良くなれたのに。周りには日本の渡り人もいないし、新海さん、話しやすくていい方だったから」
北小路くんは、寂しいです、って別れを惜しんでくれた。いい子だ。
「手紙書くよ。電話も村長のところに1台しかないそうだし、この世界にはスマホはないから」
「そうか、そうですね」
「え?」
「スマホ作ればいいんですよ。俺、頑張ってみようかな」
電話のような魔道具は大型で高価だから、一家に1台とはいかない。
携帯できる電話機と聞いて、ユーシス殿下も興味深そうにしていた。
魔道具技師と開発してみますって、彼ならホントに作りそうだ。
「ちなみにさ、気になってることあって、いい?」
「はい、なんでしょう?」
「北小路くんの婚姻の紋見せて貰ってもいい? 俺のも見せるから」
一度もその話にならなかったから、聞かれたくないのかと思っていた。
言わないってことは同じ雌かもしれないから、ずっと気になってたんだ。
「紋? なんですか、それ?」
んん? 予想外の反応が返ってきたぞ。
俺が説明しても、彼は首を傾げている。
「えっと、日本で言ったら、結婚指輪みたいなやつなんだけど」
「ああ! 腕輪のことですか」
彼はやっと納得して「これです」と、はにかんだ笑顔で服の袖を捲った。
左腕には綺麗な青の石が嵌められた細い金の腕輪が輝いていた。
ユーシス殿下を見ると、頼んでもないのに同じく左腕のシャツのボタンを外して見せてきた。黒の石が嵌まった黒の腕輪だ。
魔水晶石を加工して、裏には互いの名前を彫り、祝福の加護も付いているそうだ。
ほうっておくと目の前でいちゃつきそうだったので、さっさとしまってもらう。
これは、あれだろ?
互いの髪と瞳の色を身にまとうって素敵なやつだろ?
どうして、うちとこんなにちがうの?
ユーシス殿下はにやにやと笑っていて、オルはきょとんと首を傾げている。
「オニ族の風習ですよ」
どこまで独自文化なんだよ!
「新開さんの紋ってやつですか? 俺、見てみたいです」
「お、おれの? ホントにみる?」
くっそ、自分から墓穴を掘ってしまった。
しぶしぶ捲った俺の腕に、最初、歓声を上げかけた北小路くんが、
「……なんか、淫も……すいません」
言いかけて、口を噤んだ。
淫紋じゃないから!
というか、爽やかイケメンから淫紋なんて聞きたくなかった!
まあ。
色々あったし大変だったけど、王都旅行も楽しかったよな。
な? オル。
見上げたら、照れたように頬を染めてキスしてきた。
だから、キス待ち顔じゃないって!
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