異世界に来た俺の話

四季織

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29 村に帰って

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「おおー! 帰ったか!」
「お帰りなさい! 待ってたのよ!」
「大変だったわね、体は問題ないの? シン」

 約3ヶ月ぶりくらいに村に戻ってみると、いつの間にか俺達は英雄扱いされていた。
 俺達というより、オルが、だ。

 神殿が起こした拉致監禁騒動のあと、俺達が王都でのんびりしてる間に、イオさんが村長宛に俺の救出劇について手紙を送っていたんだ。

 それを村長が吹聴して回っていたらしい。

 やっぱりオニ族にとって、「身内への害」は一番の逆鱗ポイントだった。
 だから、神殿を襲撃して俺を救出した行為は、オニ族にとってもっとも誉れな行為になるんだそうだ。


「宴会にしたいが、まず、村長や村役達が話を聞きたがって待ってる。土産を渡してこい!」

 カラウ伯父さんに促されて、土産だけを手に外に放り出された。
 旅の疲れを癒やす時間も、再開を懐かしむ余裕もない。

「シン、疲れた? 俺が連れてく?」

 呆然としてたら、子ども抱っこで運ばれそうになったので、慌てて村長宅へ向かう。

 村長宅では、すでに村長と村役達が宴会の準備をして待っていた。
 門をくぐって帰ってきたあたりで、門番さんが大騒ぎして迎えてくれたんだ。
 やたら興奮してると思ったから、多分、村長達に知らせが行ったんだな。

 村長の家で酒を振る舞われながら、口下手なオルに変わって俺がオル達の活躍を話して聞かせる。
 といっても、俺が語れるのは、オル達が神殿に来たところからなんだけど。

 でも、オル達が神殿にやってきて薙ぎ倒しながら突入するところと、広間の大扉を吹き飛ばして咆哮を上げて立っていた描写は、大いに喜ばれて何度も何度も語る羽目になった。

 もう、ただの酔っぱらいのお爺ちゃん達だよ。

 もちろん、村長の甥であるイオさんのことはものすごく褒めておいた。実際お世話になったし。

「でも、敵を殲滅出来なかった」

 オルが残念がると、村長達はオルの背中を代わる代わる叩いた。

「なに、今度は仕留めればいい!」
「儂らが縊り方を教えてやろう!」

 ぶ、物騒なこと言わないでください!

 帰る頃、俺は酔ってしまって、結局オルに子ども抱っこで連れ帰ってもらうことになった。
 帰り道、次々に話しかけられて、オルが褒められるのを俺は夢うつつに聞いていた。

 良かったなぁ、オル。
 きっと、オルは何も気にしてないんだろうけど。

 もうこれで、オルが体格で傷つくことがありませんように、と俺は願っていた。

 後日、村長がオルと俺の像を作ろうって言ってきたので、それは丁重にお断りさせていただいた。


「ホントに山に戻るのか?」
「こちらの方が便利でしょうに」

 お母さんもいることだから、と、伯父さん達は村で暮らすように言ってくれた。

 だけど、俺達はあの山の家に帰った。
 オルにとっては、あの山の家が思い出の地で住処だから。


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