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20 聖女は誰か?
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目が覚めたとき、辺りは暗くて一瞬どこか分からなかった。
ベッドサイドに置かれた小さなランプが、唯一の明かりだ。
安宿でも、もちろん村の家でも山奥の家でもなく、随分、豪華な部屋にいることが分かった。
ベッドもふかふかで寝心地がいい。
カーテンを開けて確かめてみると、窓や扉に鍵がかかっていた。鍵がなくても嵌め込み式で開かなかったと思う。
外は暗くて、ぽつぽつと遠くに明かりが見える程度だ。
王都に詳しいわけじゃないが、王都という感じはしなかった。
どのくらい時間が経ったんだろう。
渡り人の集いを終えて、イオさんの店にオルを引き取りに行く途中で、俺は黒ずくめの男達に拉致された。
多分、薬か何か嗅がされたんだ。
気を失う前に馬車に詰め込まれたように思う。そのあとは全く覚えていない。
市役所で、ユーシスさんから渡り人に関する注意を聞いたじゃないか。
近年では渡り人も珍しくなくなったけど、コレクターもいるから誘拐には気をつけるようにって。
豪華な部屋で、拘束もされず寝かされているだけだから、殺害や奴隷目的で拉致された線は薄い気がする。
けど、俺に営利誘拐とは考えにくい。
そのコレクターに攫われたって考えるのが妥当な気がした。
十分気をつけるべきだった。
街の外でも中でも、武器を持たずに行動するな、夜間は一人歩きするな、とカラウ伯父さんに教わったじゃないか。
ここは平和な日本じゃない。
俺がいつでもどこでも問題なく行動出来ていたのは、いつも側にゴリラ並みに屈強なオルがいたからなんだ。
「オル、どうしてるだろう」
考えに耽っていたら、扉をノックする音が聞こえた。
俺の返事を待たず、鍵がガチャリと開いて扉が開かれる。
そこにいたのは、きらびやかな白のローブを着た老人と男が二人。
その内一人は、白の甲冑を着た騎士だった。
真ん中に立つ老人はスパンコールみたいのがついたローブを着ている。
大御所演歌歌手のステージ衣装でも、ここまでじゃないよな?
長い髭を蓄えた大御所歌手が口を開いた。
「お目覚めですかな? 召喚者殿」
「俺、召喚者じゃないですよ」
胡散臭い笑みを張り付けた大御所は、鷹揚に首を振った。
「あの召喚の儀式には穴がありましてな。本来お呼びしたのは、勇者と聖女だったのです」
「はぁ」
「貴方様が聖女だと言うことですよ」
「は?!」
はぁぁぁあ?!
おおおおお俺、聖女?!
「せ、聖女って女でしょ?!」
「はは。我らにとっては些末なことですな。聖なる力を宿しておられる方はすべからく聖女です」
聖なる力。
まさか。
オルの超巨大ぺニスをすんなり収めたのって、やっぱり聖女の能力?!
ベッドサイドに置かれた小さなランプが、唯一の明かりだ。
安宿でも、もちろん村の家でも山奥の家でもなく、随分、豪華な部屋にいることが分かった。
ベッドもふかふかで寝心地がいい。
カーテンを開けて確かめてみると、窓や扉に鍵がかかっていた。鍵がなくても嵌め込み式で開かなかったと思う。
外は暗くて、ぽつぽつと遠くに明かりが見える程度だ。
王都に詳しいわけじゃないが、王都という感じはしなかった。
どのくらい時間が経ったんだろう。
渡り人の集いを終えて、イオさんの店にオルを引き取りに行く途中で、俺は黒ずくめの男達に拉致された。
多分、薬か何か嗅がされたんだ。
気を失う前に馬車に詰め込まれたように思う。そのあとは全く覚えていない。
市役所で、ユーシスさんから渡り人に関する注意を聞いたじゃないか。
近年では渡り人も珍しくなくなったけど、コレクターもいるから誘拐には気をつけるようにって。
豪華な部屋で、拘束もされず寝かされているだけだから、殺害や奴隷目的で拉致された線は薄い気がする。
けど、俺に営利誘拐とは考えにくい。
そのコレクターに攫われたって考えるのが妥当な気がした。
十分気をつけるべきだった。
街の外でも中でも、武器を持たずに行動するな、夜間は一人歩きするな、とカラウ伯父さんに教わったじゃないか。
ここは平和な日本じゃない。
俺がいつでもどこでも問題なく行動出来ていたのは、いつも側にゴリラ並みに屈強なオルがいたからなんだ。
「オル、どうしてるだろう」
考えに耽っていたら、扉をノックする音が聞こえた。
俺の返事を待たず、鍵がガチャリと開いて扉が開かれる。
そこにいたのは、きらびやかな白のローブを着た老人と男が二人。
その内一人は、白の甲冑を着た騎士だった。
真ん中に立つ老人はスパンコールみたいのがついたローブを着ている。
大御所演歌歌手のステージ衣装でも、ここまでじゃないよな?
長い髭を蓄えた大御所歌手が口を開いた。
「お目覚めですかな? 召喚者殿」
「俺、召喚者じゃないですよ」
胡散臭い笑みを張り付けた大御所は、鷹揚に首を振った。
「あの召喚の儀式には穴がありましてな。本来お呼びしたのは、勇者と聖女だったのです」
「はぁ」
「貴方様が聖女だと言うことですよ」
「は?!」
はぁぁぁあ?!
おおおおお俺、聖女?!
「せ、聖女って女でしょ?!」
「はは。我らにとっては些末なことですな。聖なる力を宿しておられる方はすべからく聖女です」
聖なる力。
まさか。
オルの超巨大ぺニスをすんなり収めたのって、やっぱり聖女の能力?!
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