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番外編ーーそのころのベルナール2ーー

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 艶のある長い髪、目鼻のくっきりしたハッとするような整った顔立ち。女性らしいボディラインにしなやかな手足。そして生まれ持った華やかな雰囲気。そんな、良くも悪くも人目を惹く見た目や些か気の強い言動から何かと誤解を受けやすいアナスタシアだが、存外、優しい女性なのだ。
 長椅子に仰向けに横たわったアナスタシアは、腕を伸ばしてベルナールを引き寄せる。
 ふわり、と、甘い花の香りがした。すん、と、ベルナールは鼻を鳴らした。
「アナスタシア、果物とは違う良い匂いだ。お風呂に入ったのかな?」
「は、はい……先ほど」
「朝風呂とはいいご身分だね」
「あら、夕べ、わたくしが気絶するまで放してくださらなかったのはどこのどなたさまだったかしら?」
「ふーん、ということは、ここに、さっきまで俺が放ったものが残っていたんだね?」
「あっ!」
 つぷり、と指が秘裂に差し込まれた。アナスタシアのそこは難なくベルナールを受け入れる。ベルナールに抱き寄せられるだけで、アナスタシアの体は自然と受け入れ準備を整えるらしい。
 淫らな体だとベルナールは笑うが、無垢だった自分をそのように淫らに調教したのはどこの誰だとアナスタシアはいつも思う。
 しかしわざと中を激しく掻きまわされて、アナスタシアの体はあっという間に燃え上がる。
「ん、普段以上の感度だね。トロトロだよ」
 それは、人に知られてはいけない、見られてはいけない、そういう背徳感がアナスタシアを必要以上に煽るからだ。
「綺麗に洗えているか、確認してあげよう」
 空いた手で腰から太ももをするりと撫でたかと思うと、両脚を大きく開かされた。
「や、なんて、こと……」
「何度も何度も俺のを咥えているとは思えないほど、綺麗だ……」
 変態国王、と、アナスタシアがつぶやくが、
「これで喜んでいるきみも同類だと思うよ」
 と返しながら太ももの間に顔を寄せる。そのあまりの恥ずかしさにアナスタシアが震える。
「それとも君は、俺に抱かれて嬉しくないのかな?」
「そんな!」
「そうだよねぇ……こんな、だもんねぇ……」
 言われるまでもなく、アナスタシアの蜜壺は、とろとろに蕩けている。
 ベルナールが、くちゅり、とわざと音をさせながら花びらを開いて指先でくちゅくちゅと擽る。むず痒いような刺激がアナスタシアの下腹部を走り回る。溢れる蜜は、つつっと流れ落ちるほどだ。
「……前戯なしで突っ込んでも大丈夫なくらい濡れてるんだけど、どうしようか?」
「ど、どうって……そんな……」
「指にしようか、それとも舐めようか」
 どうしようかね、と、ベルナールが楽し気に問いかける。わざと体から手を離され、アナスタシアは宙に放り出された心地である。
「あ、え、えっと……陛下の……意のままに……」
 言いながらアナスタシアが頬を染めた。
「君はどうして欲しいの?」
「わたくしは……陛下に……抱かれるだけで幸せですから……」
「本当かなぁ? 俺に取り入るための上辺だけの言葉じゃないの? 女は怖いし心にもないことを言うからね」
 キッとアナスタシアがベルナールを睨んだ。
「陛下」
「ん?」
「女の言葉の真偽もわからないようでは、玉座などすぐに奪われてしまいますわ。無様なことになる前に、お父上さまに返上なさったらよろしいの。いえ、有能と評判のローテローゼさまに御譲りなさい。それが民のためです」
「え、言うねぇ……」
「無能な王はいりません。民にとって害でしかありません」
「確かにね、そりゃそうだ」
「賢王になってくださいましね」
 苦笑しながら、乳首にいきなり歯を立てると、饒舌だったアナスタシアの唇から嬌声が飛び出した。
「あん! ひどいっ……」
 今度は労わる様に舌先でぐるっとなぞる。
「いい反応だねぇ。俺はその反応が好きだよ」
 これまでに何度もアナスタシアを抱いているが、娼婦のように乱れるかと思えば、処女のような反応をする。
「あ、あ、やめ……」
「敏感だねぇ……夕べの炎が体の中で燻ってたのかな? 淫らな王妃だね」
 いやいや、と、アナスタシアが首を横に振る。
「ああ、そうか。夕べは目隠しして手首を布で縛って、散々焦らしたから、そのお詫びとして速やかに!」
 素早くパンツを脱ぎ捨てたベルナールが、アナスタシアの両足を抱えたかと思うと一気に貫いた。
「あああ……!」
 奥まで届く衝撃にアナスタシアの背が撓った。ひくん、ひくん、と痙攣する。
「どうだ、気持ちいいだろう?」
「あう、は、はい……」
 今日のベルナールの腰遣いは激しく荒っぽい。アナスタシアの体はがくがくと揺さぶられる。が、それすらアナスタシアにとっては快感に変換されるらしい。
 肌がぶつかる音と、水音、二人の呼吸が室内に響く。
「さ、いくよ……アナスタシア、俺の子を産め」

 激しくアナスタシアを抱いたベルナールは、ご機嫌で床に座ってフルーツを齧っている。アナスタシアの方は長椅子に横になったまま、ベルナールを見つめている。
「陛下、いい加減にお国に戻りましょう」
「嫌だね。まだ戻らない」
 そうですか、と、アナスタシアがため息をついた。
「陛下はここにいらっしゃるのに国はきちんと動いていますね。玉座に陛下がいらっしゃらなくても問題ない証拠ですわ」
「ふむ?」
 アナスタシアは、形の良い唇を持ち上げた。
「そうよ、戴冠式直前に駆け落ちを敢行する無責任で無能な王はさっさと隠居すればよろしいの。その方が民の為ですわ」
 さんざんな言い様であるが、不思議と腹は立たない。
「宰相あたりが仮の王としてうまいことやっているんだろう」
「いいえ、戴冠式は無事に行われたそうですわよ。新王陛下は国内外からの信頼を着実に得たようです。国王陛下はここにいらっしゃるのに。どなたが冠を被ったのかしらね」
「……は? 俺がいないのに戴冠式が行われた、だと!?」
 ベルナールは、国事行為は出来る限り延期になるだろう、と、思っていたのだ。
「ええ、陛下の目論見は少しずつ崩れているのです。何をお考えなのかは、わたくしには朧気ながらにしかわかりませんが……一度、帰国いたしませんか?」
 うう、と、唸ったベルナールは、腕組みをしてじっと宙を睨みつけた。
「……やっぱりローテローゼが頑張ったのかな?」
「まさか! 瓜二つでいらっしゃるけれど、ローテローゼさまは女性ですわ!」
「男装でもした、とか?」
 まさかなぁ、と二人は顔を見合わせ、王都がある方向をじっと見つめた。
「……いえ、でもローテローゼさまなら、困難を乗り越えてしまわれるでしょうね」
 彼女自身、有能で努力家なのである。兄を支えることしか考えてないため能力を発揮することがないのがもったいないほどである。
「それに……我が国の知恵袋の宰相と、マティスがついているな……」
 こてん、と、アナスタシアが首を傾げた。
「マティス? 騎士の彼が何のお役に立ちますか?」
「アナスタシア、マティスはローテローゼに惚れている。惚れた女のために、あいつは粉骨砕身働くさ」
「ローテローゼさまが、マティスごときを相手になさるかしら?」
「さて、なぁ……。あいつは、自信に向けられた好色な目を全く理解していない」
 アナスタシアも、そこは同意だ。

ーーベルナールは自国の城を、自国の民を思った。
 この我儘の代償は、小さくはないだろう。負担を強いた償いをしなくてはならない。
「……すまないな……」
 ポツンと、険しい顔でつぶやいたベルナールの体にアナスタシアがそっと腕を回した。
「陛下、どこまでもお供いたしますわ……」
 うん、と、ベルナールが小さく頷いた。

番外編ーーそのころのベルナールーー•了
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