73 / 106
:外道は許しません―2:
しおりを挟む
小さな約束だが、ローテローゼを元気づけるには十分だった。
「さあ、頑張りましょう……! この先、何が起こるかわからないけれど」
「はい。いつもお側におります」
身代わり国王であると公表するタイミングを逃してしまったので、ローテローゼは男装のままである。しかしすっかり男装も板について、凛々しさすら漂う。
「えっと、今回の訴状は……。この二通はどちらも島国かしら? あらまあ、東の大国をも怒らせたのね、あの皇子は。これは修羅場かしらね……」
大国は、被害者本人の他に数名の付添人をつけて皇子に直談判する国も少なくない。
大国の使者団に迫られると、さすがにヴァーン皇子も大人しく罪を認めた。
が――。
相手が小国だと見て取ると、途端に態度が豹変する。誰が加害者で誰が被害者なのかわからなくなる。さすが外道、と、ローテローゼが変な感心をしたほどである。
「さて、本日の裁判を始めます」
立会人の一人である宰相の言葉が終わらないうちに、臨時裁判所と化している部屋の扉が勢いよく開いた。
「いよう。呼び出しに応じてやったぞ」
尊大な態度の男が入室し、椅子に座っていた姫をぎろりと見て、顎に手をかけ顔を近づけた。
「ふん、お前か」
ぱしっと姫がその手をはたき落とす。
「この男――! わたくしを、傷物にしたのはこの男。間違いありませんわっ……」
黒髪に黒い瞳の小国の姫君が、深紅のドレスを握りしめながら叫んだ。
このウーリ姫の場合、己を辱めた相手の名前を記憶していなかったため、ヴァーン皇子が確かに犯人であると、確信が欲しかったらしい。訴状を握りしめてヴァーン皇子のもとへ乗り込んできたのだ。
「この声……この顔……間違い無いわ」
「ふん?」
「外道……地獄へ堕ちなさい」
「何を言ってるんだか……俺はお前を快楽で天国に導いてやった恩人だ。どうせ落ちるなら、地獄はごめんだが快楽に堕ちるのは大歓迎だ。ウーリと言ったか、お前もまた俺と楽しみたいだろう?」
ウーリ姫のドレスの襟元から手を突っ込んだのは、さすがにノワゼット王国側が静止する。
わなわなと震えるウーリ姫の傍で、彼女のメイドもまた、青ざめていた。なんとそのメイドも、ヴァーン皇子の毒牙にかかっていたことが判明した。
「なんて男なの! 許さない!」
ウーリ姫はついに叫びながらスカートの下に隠し持っていたナイフを振り回し、ヴァーン皇子も応戦する始末だ。それをマティスが取り押さえ、姫君主従とヴァーン皇子をとりあえず部屋に帰してから、ローテローゼたちは皇子に再度事情聴取をするために、皇子の部屋へ取って返した。
しかしその途中で宰相は副官に呼ばれて離脱し、マティスは騎士団の団員に呼ばれ、ローテローゼは一人になってしまった。
「皇子」
「来たか。――お、一人か。いいぜ。どうだ、俺の女になる気になったか?」
言いながら、咄嗟に逃げ出したローテローゼを肩に担ぎあげ、乱暴にソファーに投げ飛ばした。
「きゃあ!」
それでも逃げようともがくうちに、皇子の腰にあるナイフにローテローゼの指が触れた。それを思い切って抜く。
「何度もあなたに穢されるわけにはいかない!」
「勇ましくなったなぁ……。俺を刺すか?」
「我が身を守るためなら……なんだってやるわ」
ぶん、ぶん、と、ナイフが的確に皇子を狙う。
「うおっと……あぶねぇな。妙な度胸と知恵がつきやがって……」
しかし、皇子にあっさりナイフを取り上げられて押さえつけられてしまう。
何か身を守るものはないか、と探すローテローゼの首筋がべろりと舐められ、全身が震えた。
「や、やめて!」
「うるせぇよ。拒否権はないんだ」
逃げようとすれば全身で押さえつけられる。さらに顎をぐっと掴まれて、噛み付くようにキスをされる。
ぬらり、と押し込まれた錠剤。飲み込むまいと抵抗するが、どこをどうされたものか飲み込んでしまった。
「言うまでもないが、媚薬だ。二度目だから、すぐに効く」
皇子が、びりびりとローテローゼのシャツを破る。胸を押さえつけている布を外そうとして、そこにつけられたシルシに皇子の手がとまる。
「あの騎士……俺のオモチャに手を出しやがって……許さん」
皇子の目に怒りが灯った。ナイフでローテローゼが身に着けているものすべてを切り刻む。
恐怖でローテローゼが震える。
こわい、こわい、助けてマティス、と。声にならないが必死でつぶやく。
一人でこの部屋に来たのは失敗だった。宰相かマティスの体が空くのを待てばよかった。
自分の責任だ、と、ローテローゼは激しく自分を責めながら、心を閉じた。
脚の付け根を、皇子が執拗に弄る。二本の指を飲み込まされたそこは、蜜がたっぷりと垂れて卑猥な音を立てている。
「お前のいいところは、ここだろう?」
こり、と、強めに中を擦られる。びく、と、ローテローゼの体が波打つ。虚ろな眼差しは皇子を見るが、すぐに逸らされる。
「きゅうきゅうと俺の指を締め付けてるぜ。いやらしい体だ……」
強くこすられ、ローテローゼの背中を快楽の波が走り抜けた。
「や、ああ、だ、だ、だめ、そこぉ……ひゃあ、あ……」
「淫乱だなぁ……面白いくらいにイく」
何度達したか、もうわからない。だが、絶頂を味わっても気持ちよくはない。
「で、俺の女になるんだな?」
ローテローゼの返事はない。
「ちっ……こいつの側近が、そろそろやってくる頃か」
ヴァーン皇子は、固く張り詰めた己自身を取り出し、挿入しようとした。が、ローテローゼが激しく抵抗する。已む無く白濁をローテローゼの顔に向けて吐き出し、満足そうに笑う。
「う……」
「訴状とやらの続きはまた明日だ、じゃあな……」
「さあ、頑張りましょう……! この先、何が起こるかわからないけれど」
「はい。いつもお側におります」
身代わり国王であると公表するタイミングを逃してしまったので、ローテローゼは男装のままである。しかしすっかり男装も板について、凛々しさすら漂う。
「えっと、今回の訴状は……。この二通はどちらも島国かしら? あらまあ、東の大国をも怒らせたのね、あの皇子は。これは修羅場かしらね……」
大国は、被害者本人の他に数名の付添人をつけて皇子に直談判する国も少なくない。
大国の使者団に迫られると、さすがにヴァーン皇子も大人しく罪を認めた。
が――。
相手が小国だと見て取ると、途端に態度が豹変する。誰が加害者で誰が被害者なのかわからなくなる。さすが外道、と、ローテローゼが変な感心をしたほどである。
「さて、本日の裁判を始めます」
立会人の一人である宰相の言葉が終わらないうちに、臨時裁判所と化している部屋の扉が勢いよく開いた。
「いよう。呼び出しに応じてやったぞ」
尊大な態度の男が入室し、椅子に座っていた姫をぎろりと見て、顎に手をかけ顔を近づけた。
「ふん、お前か」
ぱしっと姫がその手をはたき落とす。
「この男――! わたくしを、傷物にしたのはこの男。間違いありませんわっ……」
黒髪に黒い瞳の小国の姫君が、深紅のドレスを握りしめながら叫んだ。
このウーリ姫の場合、己を辱めた相手の名前を記憶していなかったため、ヴァーン皇子が確かに犯人であると、確信が欲しかったらしい。訴状を握りしめてヴァーン皇子のもとへ乗り込んできたのだ。
「この声……この顔……間違い無いわ」
「ふん?」
「外道……地獄へ堕ちなさい」
「何を言ってるんだか……俺はお前を快楽で天国に導いてやった恩人だ。どうせ落ちるなら、地獄はごめんだが快楽に堕ちるのは大歓迎だ。ウーリと言ったか、お前もまた俺と楽しみたいだろう?」
ウーリ姫のドレスの襟元から手を突っ込んだのは、さすがにノワゼット王国側が静止する。
わなわなと震えるウーリ姫の傍で、彼女のメイドもまた、青ざめていた。なんとそのメイドも、ヴァーン皇子の毒牙にかかっていたことが判明した。
「なんて男なの! 許さない!」
ウーリ姫はついに叫びながらスカートの下に隠し持っていたナイフを振り回し、ヴァーン皇子も応戦する始末だ。それをマティスが取り押さえ、姫君主従とヴァーン皇子をとりあえず部屋に帰してから、ローテローゼたちは皇子に再度事情聴取をするために、皇子の部屋へ取って返した。
しかしその途中で宰相は副官に呼ばれて離脱し、マティスは騎士団の団員に呼ばれ、ローテローゼは一人になってしまった。
「皇子」
「来たか。――お、一人か。いいぜ。どうだ、俺の女になる気になったか?」
言いながら、咄嗟に逃げ出したローテローゼを肩に担ぎあげ、乱暴にソファーに投げ飛ばした。
「きゃあ!」
それでも逃げようともがくうちに、皇子の腰にあるナイフにローテローゼの指が触れた。それを思い切って抜く。
「何度もあなたに穢されるわけにはいかない!」
「勇ましくなったなぁ……。俺を刺すか?」
「我が身を守るためなら……なんだってやるわ」
ぶん、ぶん、と、ナイフが的確に皇子を狙う。
「うおっと……あぶねぇな。妙な度胸と知恵がつきやがって……」
しかし、皇子にあっさりナイフを取り上げられて押さえつけられてしまう。
何か身を守るものはないか、と探すローテローゼの首筋がべろりと舐められ、全身が震えた。
「や、やめて!」
「うるせぇよ。拒否権はないんだ」
逃げようとすれば全身で押さえつけられる。さらに顎をぐっと掴まれて、噛み付くようにキスをされる。
ぬらり、と押し込まれた錠剤。飲み込むまいと抵抗するが、どこをどうされたものか飲み込んでしまった。
「言うまでもないが、媚薬だ。二度目だから、すぐに効く」
皇子が、びりびりとローテローゼのシャツを破る。胸を押さえつけている布を外そうとして、そこにつけられたシルシに皇子の手がとまる。
「あの騎士……俺のオモチャに手を出しやがって……許さん」
皇子の目に怒りが灯った。ナイフでローテローゼが身に着けているものすべてを切り刻む。
恐怖でローテローゼが震える。
こわい、こわい、助けてマティス、と。声にならないが必死でつぶやく。
一人でこの部屋に来たのは失敗だった。宰相かマティスの体が空くのを待てばよかった。
自分の責任だ、と、ローテローゼは激しく自分を責めながら、心を閉じた。
脚の付け根を、皇子が執拗に弄る。二本の指を飲み込まされたそこは、蜜がたっぷりと垂れて卑猥な音を立てている。
「お前のいいところは、ここだろう?」
こり、と、強めに中を擦られる。びく、と、ローテローゼの体が波打つ。虚ろな眼差しは皇子を見るが、すぐに逸らされる。
「きゅうきゅうと俺の指を締め付けてるぜ。いやらしい体だ……」
強くこすられ、ローテローゼの背中を快楽の波が走り抜けた。
「や、ああ、だ、だ、だめ、そこぉ……ひゃあ、あ……」
「淫乱だなぁ……面白いくらいにイく」
何度達したか、もうわからない。だが、絶頂を味わっても気持ちよくはない。
「で、俺の女になるんだな?」
ローテローゼの返事はない。
「ちっ……こいつの側近が、そろそろやってくる頃か」
ヴァーン皇子は、固く張り詰めた己自身を取り出し、挿入しようとした。が、ローテローゼが激しく抵抗する。已む無く白濁をローテローゼの顔に向けて吐き出し、満足そうに笑う。
「う……」
「訴状とやらの続きはまた明日だ、じゃあな……」
0
お気に入りに追加
103
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?
すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。
「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」
家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。
「私は母親じゃない・・・!」
そう言って家を飛び出した。
夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。
「何があった?送ってく。」
それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。
「俺と・・・結婚してほしい。」
「!?」
突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。
かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。
そんな彼に、私は想いを返したい。
「俺に・・・全てを見せて。」
苦手意識の強かった『営み』。
彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。
「いあぁぁぁっ・・!!」
「感じやすいんだな・・・。」
※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。
※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
それではお楽しみください。すずなり。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。

今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を
澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。
そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。
だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。
そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される
奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。
けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。
そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。
2人の出会いを描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630
2人の誓約の儀を描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる