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:外道は許しませんー1:
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マティスが、ローテローゼの左手薬指に指輪を嵌めてから数日は、ノワゼット城はいつになく緊張した空気だった。
まず、ノワゼット王国に滞在していた各国の王族や大使たちが、少しずつ帰国の途に就いた。その見送りにローテローゼはすべて立ち合った。
「しかし……なかなか帰ろうとしない国がありますね。何か理由でもあるのかな……」
「そう、ね……。憐れな新王を笑ってるのかしら?」
「いや、まさかそのようなことは……」
その合間を縫って、ローテローゼを仮王にすることが最優先となり、誰もが書類や文献に囲まれることになった。
デートは当然お預け、キスすらできないほどとにかくローテローゼたちは、大忙しだった。
というのも、なんと、ヴァーン皇子に襲われたという被害者が続々と名乗り出てきたのだ。
当初は、他国の内政に干渉しないという姿勢だったため、個室でゆっくり話を聞く程度にとどめていた。
だがその量があまりにも多く、すぐに国王執務室に『訴状』が届けられるようになった。となれば、彼女らの訴えを無視するわけにもいかない。
「ヴァーン皇子の謝罪や、皇子に慰謝料を請求するために、みんな残ってるのね」
書状の山を見てローテローゼは苦笑いを浮かべてしまった。
緊急会議の結果、
「大国の皇子とはいえ、ノワゼット王国内で犯した罪は罪、きちんとノワゼット王国の法に基づいて裁かれて罰されなければならない」
と、結論が出たため、被害者たちの訴えを聞いて裁判を開くことが出来る。
ただし、ノワゼット国はあくまでも『中立でありたいため、裁判の場と適用されるであろう法律を用意するだけ』ということで各国に了解を求めた。
その結果、ローテローゼは中立国の国王として訴状を持ってヴァーン皇子の元へ行き、事実確認をし、その被害事実が認められれば皇子に対して罪名と罰条を提示する――ということをやることになった。
裁判所での裁判は、被害者にとってあまりに酷であるからだ。
「マティス……あんまり気が進まないわ……」
公務と公務の間、ほんの束の間の休息、ローテローゼは訴状の束を手にしてソファーに横になっていた。
訴状には、赤裸々に皇子の悪行が書いてある。それを読み上げるということは、ローテローゼは自分の心の傷を自分で広げることになる。ローテローゼの心がじわじわと悲鳴をあげる。倒れてしまう前に、マティスや宰相が積極的に休みを取らせているのだ。
「ローテローゼさま……」
「マティス……一人では怖いわ」
ローテローゼが腕を伸ばす。その手を取れば、華奢な体が勢いよく抱き着いてきた。
「おっと、危ない」
両腕でしっかり抱きとめて、ぷっくりとした唇にキスをする。ローテローゼが微かに唇を開くので、下唇を吸い上げながら、舌を差し込む。
ん、と、甘い吐息が漏れ、小さな舌がマティスの舌に絡んでくる。添い寝をした時以来、ローテローゼは自分から仕掛けることを覚えたらしく、自ら角度を変える。口腔内を貪り、歯列をなぞり、頬の内側を舌先でなぞる。ひく、と、ローテローゼの喉が引きつった。
「姫。ずいぶんと、キスが上手になったな」
とろんとした表情のローテローゼの首筋に吸い付き、そのまま鎖骨まで降りる。
シャツの襟元を押し開き、両胸を潰している布すれすれを強く吸い上げて赤いしるしをつける。
「や、な、なに……」
「はい、お守りです、姫。あなたは、俺のものだから……」
ローテローゼは中途半端に宿った熱に、困惑していた。
下腹部が、熱く疼く。もっとマティスが欲しい、触って欲しい、本能がそう告げている。
「あの、マティス、今夜は一緒にお風呂に入らない?」
「え?」
誘ってしまってから、ローテローゼの顔が真っ赤になった。
「ごめんなさい、はしたないわね。忘れて、マティス……」
「忘れるだなんて。……姫、喜んで。一緒に入りましょう」
まず、ノワゼット王国に滞在していた各国の王族や大使たちが、少しずつ帰国の途に就いた。その見送りにローテローゼはすべて立ち合った。
「しかし……なかなか帰ろうとしない国がありますね。何か理由でもあるのかな……」
「そう、ね……。憐れな新王を笑ってるのかしら?」
「いや、まさかそのようなことは……」
その合間を縫って、ローテローゼを仮王にすることが最優先となり、誰もが書類や文献に囲まれることになった。
デートは当然お預け、キスすらできないほどとにかくローテローゼたちは、大忙しだった。
というのも、なんと、ヴァーン皇子に襲われたという被害者が続々と名乗り出てきたのだ。
当初は、他国の内政に干渉しないという姿勢だったため、個室でゆっくり話を聞く程度にとどめていた。
だがその量があまりにも多く、すぐに国王執務室に『訴状』が届けられるようになった。となれば、彼女らの訴えを無視するわけにもいかない。
「ヴァーン皇子の謝罪や、皇子に慰謝料を請求するために、みんな残ってるのね」
書状の山を見てローテローゼは苦笑いを浮かべてしまった。
緊急会議の結果、
「大国の皇子とはいえ、ノワゼット王国内で犯した罪は罪、きちんとノワゼット王国の法に基づいて裁かれて罰されなければならない」
と、結論が出たため、被害者たちの訴えを聞いて裁判を開くことが出来る。
ただし、ノワゼット国はあくまでも『中立でありたいため、裁判の場と適用されるであろう法律を用意するだけ』ということで各国に了解を求めた。
その結果、ローテローゼは中立国の国王として訴状を持ってヴァーン皇子の元へ行き、事実確認をし、その被害事実が認められれば皇子に対して罪名と罰条を提示する――ということをやることになった。
裁判所での裁判は、被害者にとってあまりに酷であるからだ。
「マティス……あんまり気が進まないわ……」
公務と公務の間、ほんの束の間の休息、ローテローゼは訴状の束を手にしてソファーに横になっていた。
訴状には、赤裸々に皇子の悪行が書いてある。それを読み上げるということは、ローテローゼは自分の心の傷を自分で広げることになる。ローテローゼの心がじわじわと悲鳴をあげる。倒れてしまう前に、マティスや宰相が積極的に休みを取らせているのだ。
「ローテローゼさま……」
「マティス……一人では怖いわ」
ローテローゼが腕を伸ばす。その手を取れば、華奢な体が勢いよく抱き着いてきた。
「おっと、危ない」
両腕でしっかり抱きとめて、ぷっくりとした唇にキスをする。ローテローゼが微かに唇を開くので、下唇を吸い上げながら、舌を差し込む。
ん、と、甘い吐息が漏れ、小さな舌がマティスの舌に絡んでくる。添い寝をした時以来、ローテローゼは自分から仕掛けることを覚えたらしく、自ら角度を変える。口腔内を貪り、歯列をなぞり、頬の内側を舌先でなぞる。ひく、と、ローテローゼの喉が引きつった。
「姫。ずいぶんと、キスが上手になったな」
とろんとした表情のローテローゼの首筋に吸い付き、そのまま鎖骨まで降りる。
シャツの襟元を押し開き、両胸を潰している布すれすれを強く吸い上げて赤いしるしをつける。
「や、な、なに……」
「はい、お守りです、姫。あなたは、俺のものだから……」
ローテローゼは中途半端に宿った熱に、困惑していた。
下腹部が、熱く疼く。もっとマティスが欲しい、触って欲しい、本能がそう告げている。
「あの、マティス、今夜は一緒にお風呂に入らない?」
「え?」
誘ってしまってから、ローテローゼの顔が真っ赤になった。
「ごめんなさい、はしたないわね。忘れて、マティス……」
「忘れるだなんて。……姫、喜んで。一緒に入りましょう」
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