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:想定外は続くー3:
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「陛下、どういうおつもりですか!」
「姫! 俺は何も聞いてない」
「な、なに! マティスにも無断の発表であったと!」
「宰相も俺も知らないことを勝手に発言したのか、姫は……」
爆弾発言ののち、ローテローゼは宰相とマティスによって王の私室へ押し込まれ、二人に交互に叱られていた。
「だって……わたしがヴァーン皇子に犯されかけたことが世界中に知られるのは嫌だったし、ローテローゼ王女への縁談お断りっていうのも公式に知らせたかったし……わたしはマティスと結婚したいし――だから、一発逆転何かないかと思ってたら、ぴかーん、と閃いちゃったの、ごめんなさい」
椅子に座り、しょぼんとローテローゼが俯く。そういう仕草は年相応の女の子といった感じだが、彼女が投げた爆弾は、相当大きい。今頃、どこもかしこも大騒ぎだろう。
まったくもう、と、宰相は大きなため息を吐きながらソファーに座り込んでしまったし、マティスも頭を抱えて窓際で黄昏ている。
「ごめんなさい、マティス。勝手に話を進めちゃって……」
「ええ、そうですよ……わたしは、ローテローゼさまの恋人をすっ飛ばして結婚相手になってしまったわけですね……」
「そう、ね……」
「しかも、ご両親の許可もベルナールさまの許可も取らずに周辺諸国に向けて唐突に発表するなんて前代未聞です。ああもう、さすがベルナールさまと双子、相談することなくさまざまな無茶をするところまでよく似ていらっしゃる」
うあああ、と、マティスが頭をかきむしった。ととと、と、ローテローゼがマティスに駆け寄る。
「マティス、ごめんね! 嫌なら破棄してくれていいのよ?」
違うんです、と言いながら、マティスがローテローゼを抱きしめた。
「ローテローゼさまと結婚するのが嫌なわけないでしょう! 最愛の女性ですから。嬉しいに決まっています」
「ほ、ほんとに? よかったぁ……」
マティスが腕を伸ばしてローテローゼを抱き寄せた。安心したように微笑むローテローゼの額にマティスがキスを落とす。
「ただ……いろいろ手順と言うか、順序と言うか……その……宰相……」
うむ、と、宰相が頷く。王族の結婚というのは、然るべき手順や儀式が山のようにあるのだ。だから、何年もかけて用意するのが通常だ。
「宰相……あの、俺、特に気になることが……」
「マティス、どうした?」
「王女、それも、王位継承権を持った王女と結婚する人物が、ただの騎士でいいのだろうか……と、思って……」
「マティス? どういうこと?」
一人でぶつぶつと考え込んでしまったマティスの腕の中で、ローテローゼが不安そうにマティスと宰相を見る。
「なるほどな……。調べておかねばなるまい。しかし人生、何が起こるかわからないものであるな、マティス」
「……はい。せめて、プロポーズは俺がしたかったなぁ……」
マティスが、ローテローゼの左手をそっと取った。どきん、と、ローテローゼの心臓が跳ねた。
「ローテローゼさま、せめて婚約、いや、結婚指輪はわたしにプレゼントさせてください」
「も、もちろんよ!」
「城下町の北のはずれに、趣味と腕のいい貴金属職人がいるんです。そこで、作ってもらいましょう」
嬉しい、と、繰り返したローテローゼが、マティスに再びぎゅっと抱き着いた。あーあ、と天井を仰ぎながらも、マティスはその華奢な体を抱きあげる。
「マティス、マティス、末永くよろしくね」
「……こちらこそよろしくお願いします」
「姫! 俺は何も聞いてない」
「な、なに! マティスにも無断の発表であったと!」
「宰相も俺も知らないことを勝手に発言したのか、姫は……」
爆弾発言ののち、ローテローゼは宰相とマティスによって王の私室へ押し込まれ、二人に交互に叱られていた。
「だって……わたしがヴァーン皇子に犯されかけたことが世界中に知られるのは嫌だったし、ローテローゼ王女への縁談お断りっていうのも公式に知らせたかったし……わたしはマティスと結婚したいし――だから、一発逆転何かないかと思ってたら、ぴかーん、と閃いちゃったの、ごめんなさい」
椅子に座り、しょぼんとローテローゼが俯く。そういう仕草は年相応の女の子といった感じだが、彼女が投げた爆弾は、相当大きい。今頃、どこもかしこも大騒ぎだろう。
まったくもう、と、宰相は大きなため息を吐きながらソファーに座り込んでしまったし、マティスも頭を抱えて窓際で黄昏ている。
「ごめんなさい、マティス。勝手に話を進めちゃって……」
「ええ、そうですよ……わたしは、ローテローゼさまの恋人をすっ飛ばして結婚相手になってしまったわけですね……」
「そう、ね……」
「しかも、ご両親の許可もベルナールさまの許可も取らずに周辺諸国に向けて唐突に発表するなんて前代未聞です。ああもう、さすがベルナールさまと双子、相談することなくさまざまな無茶をするところまでよく似ていらっしゃる」
うあああ、と、マティスが頭をかきむしった。ととと、と、ローテローゼがマティスに駆け寄る。
「マティス、ごめんね! 嫌なら破棄してくれていいのよ?」
違うんです、と言いながら、マティスがローテローゼを抱きしめた。
「ローテローゼさまと結婚するのが嫌なわけないでしょう! 最愛の女性ですから。嬉しいに決まっています」
「ほ、ほんとに? よかったぁ……」
マティスが腕を伸ばしてローテローゼを抱き寄せた。安心したように微笑むローテローゼの額にマティスがキスを落とす。
「ただ……いろいろ手順と言うか、順序と言うか……その……宰相……」
うむ、と、宰相が頷く。王族の結婚というのは、然るべき手順や儀式が山のようにあるのだ。だから、何年もかけて用意するのが通常だ。
「宰相……あの、俺、特に気になることが……」
「マティス、どうした?」
「王女、それも、王位継承権を持った王女と結婚する人物が、ただの騎士でいいのだろうか……と、思って……」
「マティス? どういうこと?」
一人でぶつぶつと考え込んでしまったマティスの腕の中で、ローテローゼが不安そうにマティスと宰相を見る。
「なるほどな……。調べておかねばなるまい。しかし人生、何が起こるかわからないものであるな、マティス」
「……はい。せめて、プロポーズは俺がしたかったなぁ……」
マティスが、ローテローゼの左手をそっと取った。どきん、と、ローテローゼの心臓が跳ねた。
「ローテローゼさま、せめて婚約、いや、結婚指輪はわたしにプレゼントさせてください」
「も、もちろんよ!」
「城下町の北のはずれに、趣味と腕のいい貴金属職人がいるんです。そこで、作ってもらいましょう」
嬉しい、と、繰り返したローテローゼが、マティスに再びぎゅっと抱き着いた。あーあ、と天井を仰ぎながらも、マティスはその華奢な体を抱きあげる。
「マティス、マティス、末永くよろしくね」
「……こちらこそよろしくお願いします」
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