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:身代わりの復活ー4:
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しかし、改めて考えるまでもなくそれらの問題は何一つ解決していないのだ。
「お父さまの、お異母兄さまが本当にいらっしゃるのだったら……わたしたちは偽の王族と言うことになるわね……」
書類上はそうですな、と、宰相が言う。
「どういう経緯でお父さまが兄を差し置いて戴冠したのか、調べないと……」
「秘密裏に行いましょうかな」
「お願いね」
嫌な役割よね、と、ローテローゼは胸の内でつぶやく。
「それにしても……なかなか事件って進展しないのね」
「そうですな。しかし、急いで解決していいものではないでしょうから、じっくりと参りましょう……」
「宰相、マティス、よろしくね」
はい、と二人は頷く。
さらに、ローテローゼの個人的なことを言えば、マティスとローテローゼの仲は、進んだような足踏みをしているような、微妙な間柄のままである。
「あ、の!」
マティスとローテローゼ二人の声が重なった。
「あ、ローテローゼさま、どうぞ」
「え。えええ、っと……そうね、一連の騒動が終わったら、マティスとゆっくり話し合いたいことがあるの」
「そ、そうですか……いえ、そうですよね……」
心なしかマティスがしょんぼりしたように見えた。そのうえ、宰相が今にも吹き出しそうな顔をしている。
「マティスは、何を言おうとしたの?」
「はぁ、我々の仲についてと言いますかお答えと言いますか、ですが、騒動が片付いてからで結構です」
「……え? 何かマティスからの質問があったかしら?」
よそよそしくぎこちない二人を見ていた宰相が、深々とため息をついた。
この二人、まとめるべきか引き離すべきか。悩ましい。
ローテローゼが、大人びているかと思えば妙に幼い。だからこそ、親しい者が支えなければいけないのだが――いまのマティスはどうも、頼りない。
武力、騎士という点では問題ないのだが恋愛となると、頼りない。
「とにかく。ローテローゼさまには今しばらく、身代わりの国王を続けていただかねばなりません」
静かに頷いたローテローゼがすっと背筋を伸ばした。それを見てマティスも表情を引き締める。
「ヴァーン皇子がベルナール陛下と親密そうに談笑していた――これは、目撃者が複数おりました。そのため、周辺諸国、国内の人々は、ヴァーン皇子と陛下が友人であり両国は友好国であると認識されております。ですので、陛下が皇子のお見舞いに行くのではないかと憶測や期待の声が上がっております。これを無視するわけにはいかず……お願いできますか?」
「晩餐会での姿を見られていたのね……。そうね、やるしかないわね……。ついでにその場で、ローテローゼへの縁談をきっぱり断ってくるわ」
よし、と拳を握って小さく頷いたローテローゼは、ソファーから立ち上がった。
「……男装、してくるわね」
「ありがとうございます、ローテローゼさま」
待つこと、しばらく。
姿を現したローテローゼは、きちんと男装していた。だが、その体が小さく震えている。マティスはたまらず、ローテローゼを抱きしめた。
ローテローゼも素直に、マティスの胸に体を預ける。二人の体温が、心地よい。
「怖いの……。ヴァーン皇子に会うのが、怖い」
「大丈夫です、わたしが傍におりますから。何があっても、お守りします」
「マティス」
「は、はい!」
「今まで以上、わたしを守りなさい」
「承知しております」
「わたしから、離れてはいけません。勅命よ」
「はっ」
マティスは、騎士の礼で、身代わりの国王の前に跪いた。
「こんな形でしか、あなたを縛れないの――ごめんなさい」
「ローテローゼさま?」
普通の女の子だったなら、もっと素直に「助けて」と言えたのだろう。
でも自分は、ただの女の子ではない。
「さあ、ヴァーン皇子へのお見舞い――の、日程調整に行きましょう。乳母の方はどちらに?」
「お父さまの、お異母兄さまが本当にいらっしゃるのだったら……わたしたちは偽の王族と言うことになるわね……」
書類上はそうですな、と、宰相が言う。
「どういう経緯でお父さまが兄を差し置いて戴冠したのか、調べないと……」
「秘密裏に行いましょうかな」
「お願いね」
嫌な役割よね、と、ローテローゼは胸の内でつぶやく。
「それにしても……なかなか事件って進展しないのね」
「そうですな。しかし、急いで解決していいものではないでしょうから、じっくりと参りましょう……」
「宰相、マティス、よろしくね」
はい、と二人は頷く。
さらに、ローテローゼの個人的なことを言えば、マティスとローテローゼの仲は、進んだような足踏みをしているような、微妙な間柄のままである。
「あ、の!」
マティスとローテローゼ二人の声が重なった。
「あ、ローテローゼさま、どうぞ」
「え。えええ、っと……そうね、一連の騒動が終わったら、マティスとゆっくり話し合いたいことがあるの」
「そ、そうですか……いえ、そうですよね……」
心なしかマティスがしょんぼりしたように見えた。そのうえ、宰相が今にも吹き出しそうな顔をしている。
「マティスは、何を言おうとしたの?」
「はぁ、我々の仲についてと言いますかお答えと言いますか、ですが、騒動が片付いてからで結構です」
「……え? 何かマティスからの質問があったかしら?」
よそよそしくぎこちない二人を見ていた宰相が、深々とため息をついた。
この二人、まとめるべきか引き離すべきか。悩ましい。
ローテローゼが、大人びているかと思えば妙に幼い。だからこそ、親しい者が支えなければいけないのだが――いまのマティスはどうも、頼りない。
武力、騎士という点では問題ないのだが恋愛となると、頼りない。
「とにかく。ローテローゼさまには今しばらく、身代わりの国王を続けていただかねばなりません」
静かに頷いたローテローゼがすっと背筋を伸ばした。それを見てマティスも表情を引き締める。
「ヴァーン皇子がベルナール陛下と親密そうに談笑していた――これは、目撃者が複数おりました。そのため、周辺諸国、国内の人々は、ヴァーン皇子と陛下が友人であり両国は友好国であると認識されております。ですので、陛下が皇子のお見舞いに行くのではないかと憶測や期待の声が上がっております。これを無視するわけにはいかず……お願いできますか?」
「晩餐会での姿を見られていたのね……。そうね、やるしかないわね……。ついでにその場で、ローテローゼへの縁談をきっぱり断ってくるわ」
よし、と拳を握って小さく頷いたローテローゼは、ソファーから立ち上がった。
「……男装、してくるわね」
「ありがとうございます、ローテローゼさま」
待つこと、しばらく。
姿を現したローテローゼは、きちんと男装していた。だが、その体が小さく震えている。マティスはたまらず、ローテローゼを抱きしめた。
ローテローゼも素直に、マティスの胸に体を預ける。二人の体温が、心地よい。
「怖いの……。ヴァーン皇子に会うのが、怖い」
「大丈夫です、わたしが傍におりますから。何があっても、お守りします」
「マティス」
「は、はい!」
「今まで以上、わたしを守りなさい」
「承知しております」
「わたしから、離れてはいけません。勅命よ」
「はっ」
マティスは、騎士の礼で、身代わりの国王の前に跪いた。
「こんな形でしか、あなたを縛れないの――ごめんなさい」
「ローテローゼさま?」
普通の女の子だったなら、もっと素直に「助けて」と言えたのだろう。
でも自分は、ただの女の子ではない。
「さあ、ヴァーン皇子へのお見舞い――の、日程調整に行きましょう。乳母の方はどちらに?」
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