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:変な皇子は勘がいいー6:

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 皇子がにやにやと笑う。
「何を考えている?」
「わたしは……国王として……どうしたらいいだろうか……」
 ベッドに沈められて、ローテローゼの視線が泳ぐ。ヴァーン皇子が乗ってきた重みでベッドが軋み、ぎくりと身が震えた。
「――おいおい。つまらん女だなぁ……こんな時も仕事のことか。もう少し、こっちに集中しろよ。このデカい胸、あの男にも散々吸わせたんだろう?」
「ふざけるな。彼……マティスとは、そんな関係ではない」
「……は?」
 ヴァーン皇子が心底不思議そうな顔でローテローゼを見つめた。
「な、なにか?」
「あの男、こんな美味そうな体が目の前にぶら下がってるのに、食ってねぇのか?」
 じろじろと眺められて、ローテローゼは羞恥に身を捩った。
「お前も酷なことをするなぁ。とっとと食わせてやれよ。それだけであの騎士は死ぬ気でお前を守るぜ」
「マティスと、貴様を一緒にするな」
「お前だって惚れた男のものを咥えこみたいだろう? 欲しいと思って濡らすんだろう?」
 ここを、と、ヴァーン皇子がローテローゼの足の付け根をなぞった。瞬間、ローテローゼの体が可笑しいほどにはねた。
「そんなことっ……マティスは……」
 ふいに、ヴァーン皇子が笑い始めた。
「お前、バカだろう。男なんざ女を前にして考えることはひとつ、ヤれるかヤれないか、それだけだろ」
 そんな下種はこの皇子くらいのものだと思うが――よくこれで皇子の座についていられるものである。
「はぁん、それにしても、美貌の身代わり王さまの処女を頂けるのか。こりゃ最高のごちそう、辺鄙な国にまではるばる来た甲斐があったぜ――」
 ヴァーン皇子が、愛撫とも呼べないようなものを再開しはじめた。
 が、ローテローゼは、カタカタと震えた。気持ちよさなど全く感じられない。
「い、いや……」
「言ったろ? 拒否権はない、誠意を見せろ、ってね」
 乱暴に唇にキスをされ、ローテローゼの目が見ひらかれた。何度も口づけが繰り返されるうちに、何か、錠剤を押し込まれた。
「飲み込め」
「んーっ!」
 いやだと抵抗するローテローゼを押さえつけ、ベッドサイドにおいてある水差しの水を一気に飲ませる。
 大量の水と錠剤が一気に流れていき、ごほごほ、とローテローゼが噎せる。
「飲んだな? 安心しろ、単なる媚薬だ」
「び、やく?」
「そう、女が淫らに乱れ善がる薬――」
 ヴァーン皇子の目が、欲に染まっている。
「そんな、ばかな……」
 吐き出そうとするが押さえつけられキスで唇を塞がれる。
 恐怖がローテローゼを包む。逃げたいのに手足に、思うように力が入らない。大声を出すことも、できない。
 自分の体の上に遠慮もためらいもなく厚かましく圧し掛かってきている無礼な男を振り落として無礼討ちにしなければならないのに、頭が働かない。
「カタリナ……」
 ん? と、皇子が顔をあげた。
「我が国の少女――カタリナを……こんな目にあわせたのか」
 誰だそれ、と、皇子が言う。
「年若い、侍女見習いの子だ……可哀そうに。謝って……」
 だがヴァーン皇子は「忘れた、知らん」と吐き捨てる。
「そんな! あんな酷いことをしておいてっ」
「未遂だ、数の内に入らない」
 カッとローテローゼの頭に血が上った。外道、と、吐き捨てて叩こうとした手を掴まれた。
「可愛い顔して気が強い。俺好みの雌豚に調教してやろう」
「断る。わたしは――王だ。誰かに跪くことはない」
「王なんぞのために男を知らぬ体を差し出すとは、そんなに王が大切か」
「当たり前だ……」
「まぁ……誠意としては十分だ。お前が身代わりであることは、他国に黙っておいてやる――お前が大人しく俺に抱かれているうちは……」
 男の舌が、べろりとローテローゼの細い首筋を舐めた。
 全身を寒気が走り、吐き気がする。
「いやだ!」
「諦めろ、俺の女になれ」
 さらに逃げようともがく体を、ヴァーン王子が強引にベッドに連れ戻す。
「逃げられると思うなよ……どこまでも追いかけて自分のものにする」
「くっ……」
 逃げるチャンスをうかがっているうちに、媚薬とやらが効いてきたのだろうか。頭がぼんやりとしてきた。
「いい子だ。お前がおとなしくしていれば、秘密は全部守られる。国は安泰だ」

 ローテローゼは、そっと目を閉じた。

――マティス、ごめんなさい……
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