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本編

第16話_罠返し-2

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「それが間違ってるってわけじゃないんです。誰だって、他人や親兄弟にだって明かせない本心がある。…蒼矢あいつはそれを解ってて、ずっと待っててくれた。でも、俺は…ずっと逃げてた。自分がそうだったからって、俺にはわかるわけねぇって決めつけてた。解りたくて、話してくれるのを待ってたわけじゃない。…ただ、背を向けてただけだったんです」
「…」
「そう理解出来た時…俺は、自分にとっては今の関係じゃ足りないんだって思った。あいつと同じだけ思いを返すためには、もっとあいつの懐に踏み込んでいかなきゃって。笑えるだけじゃなく、泣いたり喚いたり、こいつの前でならどんな感情でもどんだけぶつけてもいいって思ってくれるような奴にならなきゃ…って」
「…それが、自分が望む形があってのものじゃなくても構わないって、君は思ってるんだね?」

葉月ハヅキの問いかけに、レツは前を向いたまま頷き返した。

「――そっすね。…あいつが俺と同じように思ってるとは限らない。俺が望む、幼馴染でも親友でもない、それ以上の関係を、望んでるかはわからない。…そもそも、同性だし」
「…」
「俺は、この先のあいつの人生の障害にだけは絶対なりたくないんです。そうなるくらいなら、想いなんて通わなくたっていい。別の誰かに託せばいい。ただ見守るだけの存在でいい。…今の自分の気持ちに気付いた時に、それだけは心に決めたんです。…覚悟してます」

そう言い切ると、烈は長く息を吐いた。

「…合ってますかね? 俺、あんま深く考えるの苦手だし、暴走しやすいって自分でもわかってるつもりなんで…自信無くて」
「君の判断が合ってるかどうかは、君自身が決めることだよ。同時に、合ってる方向へ切り拓いていくことも、君にしか出来ない」
「…手厳しいなー」
「――でも」

半笑いを浮かべる烈へ、葉月は静かに続けた。

「君が思い悩んで出した結論なら、君にとってきっと良い方向に拓けていくと思う。…心から応援するよ」
「…葉月さん…」
「ありがとう、話してくれて。聞いてたら、なんだか心が随分落ち着いてきたよ」
「!? ちょっ…そんな理由で聞いてきたんすか!?」

若干感傷に浸り始めたところで葉月がちょけてみせ、思わず烈は声高に突っ込んだ。

「ごめんごめん、それだけじゃないよ。ちょびっとだけ、ね」
「ったく…」

ふてくされるように息をつくと、ぼそりと漏らす。

「…葉月さん、わかってたんすね…」
「わかるよー。君ら判りやすいもの」
「そっすかー…確かに、影斗エイトにもバレてたみたいだしなぁ…」

やや頬を赤らめながらそらをみた烈は、ふと気付いたように目をぱちくりとさせた。

……ん? 俺? …って?
…俺と影斗のことか?
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