52 / 62
本編
第15話_凍てつく刃-6
しおりを挟む
「っ!!」
豪速でぶつかってきた氷柱の切っ先を鉤爪を交差させて防いだものの、速度と装具の重量に圧し負け、影斗の身体が大きく弾かれる。
あえなく無防備になる彼へ、追撃の氷の刃が大量に浴びせかけられた。
「ぐぁっ…!!」
全身を貫かれ、短く声をあげた後、オニキスは自由落下していく。
蒼矢はその墜落地点へ向けて飛んだが、前方から光が照射され、視界を奪われてその挙動を止める。
咄嗟に目眩まし攻撃を見舞った陽が、二人の間に入るように『閃光』を構えて立った。
受け身無しで文字通り地に堕ちたオニキスが、面を歪め、腕を震わせながら上体を起こす。
「…っ…、…ナイスタイミングだ。ちったぁ使えるじゃねぇか」
「軽口叩いてる場合かよぉっ…!! やばいよ、毒霧効かねぇじゃんか!!」
「みてぇだなぁ。…あの野郎、正気に戻ったら次戦はぜってぇ前線やらすぞ」
アズライトの秘めたる地力を見せつけられ、オニキスは息を弾ませながらも悪態を吐いた。
…他4人より選出条件が鬼厳しいことを考えりゃ、ポテンシャル高いのも当然っちゃ当然だったよな…
…とはいえ、馬鹿みてぇに攻撃力高ぇだけかと思ったら、セルフ防御まで出来るなんざ想定外だったぞ…?
オニキスの全身に、比喩ではない冷や汗が流れる。
「――どけ。お前じゃ勝負にならねぇ」
ふらつきながら立ちあがり、オニキスは装具を呼び戻す。
「!? でもっ…!!」
「うるせぇ、離れてろ。…次が来るぞ」
サルファーの光線が空間に溶け、目が慣れたアズライトは、氷のように冷たい視線でオニキスを見下ろしていた。
再び攻撃姿勢をつくり、氷柱をオニキスへ向けて構える。
やっとの思いで地に立つオニキスは、自らに用意された絶望的な状況をすべからく受け止める。
…お前にゃほんと、いいようにあしらわれまくってんな…俺。出会ってからずっと、身も心も振り回されっぱなしだ。
…振られた上にこてんぱんにされて、どんだけ俺を凹ませりゃ気が済むんだよ…
オニキスは、全身から大量の毒を噴出する。
黒い毒霧は彼を中心に渦巻くように流れていき、広範囲に層厚く覆う。
「…!!」
その尋常ではない光景に、サルファーはすぐさまその場を離れ、はるか後方から息を飲む。
霧の隙間から見える冷酷にして秀麗な面差しを、オニキスは紫黒の眼で睨み返した。
「来いよ。刺し違えてでもお前を止めてやる」
…お前に引導渡されるなら、本望だ。
豪速でぶつかってきた氷柱の切っ先を鉤爪を交差させて防いだものの、速度と装具の重量に圧し負け、影斗の身体が大きく弾かれる。
あえなく無防備になる彼へ、追撃の氷の刃が大量に浴びせかけられた。
「ぐぁっ…!!」
全身を貫かれ、短く声をあげた後、オニキスは自由落下していく。
蒼矢はその墜落地点へ向けて飛んだが、前方から光が照射され、視界を奪われてその挙動を止める。
咄嗟に目眩まし攻撃を見舞った陽が、二人の間に入るように『閃光』を構えて立った。
受け身無しで文字通り地に堕ちたオニキスが、面を歪め、腕を震わせながら上体を起こす。
「…っ…、…ナイスタイミングだ。ちったぁ使えるじゃねぇか」
「軽口叩いてる場合かよぉっ…!! やばいよ、毒霧効かねぇじゃんか!!」
「みてぇだなぁ。…あの野郎、正気に戻ったら次戦はぜってぇ前線やらすぞ」
アズライトの秘めたる地力を見せつけられ、オニキスは息を弾ませながらも悪態を吐いた。
…他4人より選出条件が鬼厳しいことを考えりゃ、ポテンシャル高いのも当然っちゃ当然だったよな…
…とはいえ、馬鹿みてぇに攻撃力高ぇだけかと思ったら、セルフ防御まで出来るなんざ想定外だったぞ…?
オニキスの全身に、比喩ではない冷や汗が流れる。
「――どけ。お前じゃ勝負にならねぇ」
ふらつきながら立ちあがり、オニキスは装具を呼び戻す。
「!? でもっ…!!」
「うるせぇ、離れてろ。…次が来るぞ」
サルファーの光線が空間に溶け、目が慣れたアズライトは、氷のように冷たい視線でオニキスを見下ろしていた。
再び攻撃姿勢をつくり、氷柱をオニキスへ向けて構える。
やっとの思いで地に立つオニキスは、自らに用意された絶望的な状況をすべからく受け止める。
…お前にゃほんと、いいようにあしらわれまくってんな…俺。出会ってからずっと、身も心も振り回されっぱなしだ。
…振られた上にこてんぱんにされて、どんだけ俺を凹ませりゃ気が済むんだよ…
オニキスは、全身から大量の毒を噴出する。
黒い毒霧は彼を中心に渦巻くように流れていき、広範囲に層厚く覆う。
「…!!」
その尋常ではない光景に、サルファーはすぐさまその場を離れ、はるか後方から息を飲む。
霧の隙間から見える冷酷にして秀麗な面差しを、オニキスは紫黒の眼で睨み返した。
「来いよ。刺し違えてでもお前を止めてやる」
…お前に引導渡されるなら、本望だ。
0
お気に入りに追加
9
あなたにおすすめの小説
俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない
亮亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。
不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。
そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。
帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。
そして邂逅する謎の組織。
萌の物語が始まる。
社畜だけど異世界では推し騎士の伴侶になってます⁈
めがねあざらし
BL
気がつくと、そこはゲーム『クレセント・ナイツ』の世界だった。
しかも俺は、推しキャラ・レイ=エヴァンスの“伴侶”になっていて……⁈
記憶喪失の俺に課されたのは、彼と共に“世界を救う鍵”として戦う使命。
しかし、レイとの誓いに隠された真実や、迫りくる敵の陰謀が俺たちを追い詰める――。
異世界で見つけた愛〜推し騎士との奇跡の絆!
推しとの距離が近すぎる、命懸けの異世界ラブファンタジー、ここに開幕!
産卵おじさんと大食いおじさんのなんでもない日常
丸井まー(旧:まー)
BL
余剰な魔力を卵として毎朝産むおじさんと大食らいのおじさんの二人のなんでもない日常。
飄々とした魔導具技師✕厳つい警邏学校の教官。
※ムーンライトノベルズさんでも公開しております。全15話。
年上の恋人は優しい上司
木野葉ゆる
BL
小さな賃貸専門の不動産屋さんに勤める俺の恋人は、年上で優しい上司。
仕事のこととか、日常のこととか、デートのこととか、日記代わりに綴るSS連作。
基本は受け視点(一人称)です。
一日一花BL企画 参加作品も含まれています。
表紙は松下リサ様(@risa_m1012)に描いて頂きました!!ありがとうございます!!!!
完結済みにいたしました。
6月13日、同人誌を発売しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる