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本編

第15話_凍てつく刃-5

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陣形が組み直され、防御壁を施されたロードナイト葉月エピドートが、[霆蛇テイダ]の消えた水溜りの縁へと向かう。
意を決し、速やかに入水していく彼らを背に、影斗オニキスサルファーは空中で大剣を構える蒼矢アズライトを見上げた。

「いいか? 倒すな、倒されるな。あと俺の足を引っ張るな。それ以外は好きにしていいぞ」
「おう!」

サルファーを後衛に配し、オニキスは真正面からアズライトへ接近していく。そしてやや手前で止まり、両手甲の装具『暗虚あんきょ』から紫黒の靄を滲ませ始めた。

オニキスの挙動を受け、装具『氷柱つらら』を手に距離を詰めてきたアズライトはやはり衝突直前で動きを止め、周囲に漂う闇色の霧を大剣で払う。

「やっぱり加減が難しいな…なんせ、セイバー仲間相手にゃ使ったことねぇからな」

闇属性のオニキスが使う毒攻撃は、同じセイバー相手へは基本的に危害の無い属性能力の中で、唯一敵味方どちらにも効果を及ぼすもので、この状況下でなくても普段と変わりない仕様ではあるのだが、これまでは敵以外への影響を避けて限定的に使うに留まり、明確に仲間相手へ能力を振るったことは無かった。
身体の麻痺や痛み、倦怠感、酩酊などを引き起こす効果を持つが、[異界のもの]相手には効きや持続性に個体差がある。
それがセイバーを相手とした場合にどの程度なのか、また戦闘スーツでいくらか防げているものなのか、あまり把握出来ていない。
少なくとも…伊豆での一戦の時、決死の覚悟で毒霧に飛び込んで全身に浴びたロードナイトは、回復までにかなりの時間がかかっていたが…

…間合いを取れるだけでもだいぶ楽だな…とりあえず時間稼げりゃ、そのうち戦局は変わるだろ…

オニキスは毒霧を一定量噴出し続け、近付けずにいるアズライトの遠隔攻撃に対し、放たれる氷の刃を暗虚の鉤爪でガードしつつ立ち回る。

サルファーが身構えつつも後方から二人の攻防を見守る中、しばらく拮抗した戦闘が続いていたが、アズライトの動きがふと止まった。

「…!」

氷柱を片手に持ち、身体の正面で真横に掲げると、多量の氷気を大剣から生み出す。アズライトの身体が高濃度の氷の微粒子で霞み、その全身が青白く染まる。
ふたりが目を見張る中、氷の霧を纏ったアズライトは、毒霧に覆われたオニキスへと間合いを越えて接近する。

「…! マジかよっ…!!」

毒の壁をものともせずに突っ込んできたアズライトの攻撃を受け流し、間髪入れずに二撃目を振るってきたところへ合わせ、地面へ向けて体当たりで押し返す。
先ほどより『凍氷』の威力が増しているのか、装具のみならず肘下まで一瞬にして凍りつき、戦闘スーツに貼りついた氷塊をすぐさま払う。

地へ落とされたアズライトは空中で回転しながら着地し、即座にオニキスへ向けて高速で上昇し、大剣の先を向けた。
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