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本編
第10話_妖しの訪ね人-4
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「――烈、…烈!!」
耳元で呼び掛けられる声と、両肩にかかる重みに、烈の意識は呼び戻される。
ぱかりと目を開くと、真正面にぼんやりと見える輪郭の中に、灰茶色の長髪と眉を吊り上げたタレ目を認めた。
「…ぁ月……さ…」
「烈…! 無事か!?」
首を絞められ、仰向けのまま失神していた烈は、直後に到着した葉月により息を吹き返した。
気がついた烈の瞳が動いたのを見、葉月は深く息を吐き出し、脱力した。
「…良かった…、玄関のベル鳴らしても出なくて、戸が開いてるみたいだったから気になって。悪いなと思ったけど…入って来て正解だった…」
「…俺……」
「何があった…? 気を失ってたようだけど」
問いかけながら、葉月は烈の身体を起こし、そばにあった座布団を何枚か背当てにしてやる。
烈は徐々にクリアになっていく頭を巡らせ、首に手を触れる。
「…蒼矢、が…」
「!? 蒼矢がここに来てたのか!?」
「…会わなかった、すか…?」
「会ってない。玄関ですれ違っても無いよ。…いつ居たの?」
「……ん…」
どれだけの時間、自分が気を失っていたのか見当がつかず、烈は眉を寄せる。
いまだ混濁する意識の中で辿れた記憶に呼び鈴の音が残っていて、あれが葉月が鳴らしたものだとすると、ほんの数十秒しか経っていないようにも感じられた。
…蒼矢は…どこへ行ったんだ…?
うつろ気な面持ちでしきりに首元を触る仕草を目で追い、葉月ははたと気づいて烈の首へ注視する。
浅黒い肌と顎の影で判りにくかったが、帯状の赤い痣がうっすらと残っていた。
「!! まさかそれ、蒼矢に…!?」
「…あぁ。葉月さんが来る…多分少し前に来て、…ちょっとあって。結局こうなりました」
「他に、何かされたことは?」
「…ほか…」
葉月に問われ、思考を続けようとした烈の脳裏に、先程の蒼矢の面差しと肢体が浮かび上がってきた。
するとすぐに自分の中心が反応したが、今はそんな場合じゃないと理性をフル回転させて、なんとか押し留める。
「……や、なんも…されてないっす。少なくとも、何か傷つけられたとかは無いです。…首だけ」
「…そうか…」
「葉月さん…、蒼矢が…あいつの様子が、…おかしかったです」
そう呟くように漏らす烈へ、葉月は緊迫した面持ちのまま頷いた。
耳元で呼び掛けられる声と、両肩にかかる重みに、烈の意識は呼び戻される。
ぱかりと目を開くと、真正面にぼんやりと見える輪郭の中に、灰茶色の長髪と眉を吊り上げたタレ目を認めた。
「…ぁ月……さ…」
「烈…! 無事か!?」
首を絞められ、仰向けのまま失神していた烈は、直後に到着した葉月により息を吹き返した。
気がついた烈の瞳が動いたのを見、葉月は深く息を吐き出し、脱力した。
「…良かった…、玄関のベル鳴らしても出なくて、戸が開いてるみたいだったから気になって。悪いなと思ったけど…入って来て正解だった…」
「…俺……」
「何があった…? 気を失ってたようだけど」
問いかけながら、葉月は烈の身体を起こし、そばにあった座布団を何枚か背当てにしてやる。
烈は徐々にクリアになっていく頭を巡らせ、首に手を触れる。
「…蒼矢、が…」
「!? 蒼矢がここに来てたのか!?」
「…会わなかった、すか…?」
「会ってない。玄関ですれ違っても無いよ。…いつ居たの?」
「……ん…」
どれだけの時間、自分が気を失っていたのか見当がつかず、烈は眉を寄せる。
いまだ混濁する意識の中で辿れた記憶に呼び鈴の音が残っていて、あれが葉月が鳴らしたものだとすると、ほんの数十秒しか経っていないようにも感じられた。
…蒼矢は…どこへ行ったんだ…?
うつろ気な面持ちでしきりに首元を触る仕草を目で追い、葉月ははたと気づいて烈の首へ注視する。
浅黒い肌と顎の影で判りにくかったが、帯状の赤い痣がうっすらと残っていた。
「!! まさかそれ、蒼矢に…!?」
「…あぁ。葉月さんが来る…多分少し前に来て、…ちょっとあって。結局こうなりました」
「他に、何かされたことは?」
「…ほか…」
葉月に問われ、思考を続けようとした烈の脳裏に、先程の蒼矢の面差しと肢体が浮かび上がってきた。
するとすぐに自分の中心が反応したが、今はそんな場合じゃないと理性をフル回転させて、なんとか押し留める。
「……や、なんも…されてないっす。少なくとも、何か傷つけられたとかは無いです。…首だけ」
「…そうか…」
「葉月さん…、蒼矢が…あいつの様子が、…おかしかったです」
そう呟くように漏らす烈へ、葉月は緊迫した面持ちのまま頷いた。
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