上 下
31 / 62
本編

第10話_妖しの訪ね人-3(R18)

しおりを挟む
★年齢制限表現(微)有

レツの健康的に割れた腹が露出し、白く華奢な手がその浅黒い肌の上を滑り、鍛えられた胸筋へと辿っていく。
やがて手のひらは彼の右胸上に浮かぶ、炎を模した紅い紋様を撫でた。

「っ…!」

肌の上を這う彼の手の感覚に、身体がぴくりと反応してしまう。
蒼矢ソウヤの股間に当てられた手は、彼の手により前後に動かされ始める。手のひらに、ズボンの中で柔らかく動く温かな局部の感触が伝わってくる。

見下ろす蒼矢の頬が更に紅く色付き、息を乱す。

「素直になれよ、烈。お前は俺のここ・・をお前のものにしたい。…自分で動かしてみろ」
「……!」

美麗な彼の、妖しい光を灯す瞳と艶やかな唇が、烈に近付いていく。
さらりと垂れる焦茶の髪が、頬をくすぐる。

「…っ……!!」

ぎゅっと目をつぶり、再び目を開けると、烈は面差しに平静さを戻し、蒼矢を見つめ返した。

「やめてくれ、蒼矢。俺は、お前にこんなことをしたいわけじゃない。…して欲しくもない」

動きを止める彼へ、烈はまっすぐな眼差しを送る。
みずからの言葉に冷やされていくように、硬さを帯びていた中心は落ち着きを取り戻していく。

「確かに…俺の体は正直だ。お前の身体が欲しい。抱きたいとも思う。…でも、心では"お前"っていう人間を理解ってるつもりだ。…だから、手は出したくない。少なくとも、まだその時じゃない…と思ってる」
「……」
「…どうしちまったんだよ、蒼矢…お前は潔癖な奴だ。こんなこと、お前は一番したくないはずだ。お前は俺に、こんなこと求めてないはずだ。…そうだろ?」

烈は真っ直ぐな眼差しを送りながら、自分へ被さる幼馴染へ問いかける。
しかし蒼矢は、その内の思いが込められた視線を無感動な面差しで見返すだけだった。上気していた頬は一気に血の気が失せ、誘い文句を口ずさんでいた唇は、感情を殺したように真一文字に結ばれる。

ふたりの間に、長い沈黙が流れた。

「――残念だ、ロードナイト・・・・・・

やがて蒼矢の口から、ぼそりと声が漏れる。
その"違和感"に烈が目を見開いた瞬間、首に空気を閉ざす圧がかかる。

「…っく…!」
「…俺の気持ちを解ってくれてるなら、俺のために大人しく死んでくれるか?」

蒼矢の両手が、烈の太い首を上から圧迫するように絞めつけていく。

「……そ…、や…っ…!」
の意に沿わないのなら、お前は必要無い。…消えろ」

烈の白んでいく頭の中に、モザイクのように声色を変える蒼矢の台詞が木霊し、薄くなっていく。

「……っ!」

…消えてたまるか…っ!!

気を失う寸前、烈は渾身の力を振り絞って蒼矢の胸部まで脚をあげ、彼の身体を引き剥がした。蹴り飛ばすことはせず、足の裏で一旦彼の上体を持ち上げ、手が離れたところで横へ振り落とす。

床へ落とされ、尻もちをついた蒼矢がやはり無表情で自分を見下ろしてくる気配を感じたが、烈は身体に力を入れられず、畳の上で仰向けになったまま息を弾ませていた。

「…っ…、……」

咳き込み、荒く呼吸を繰り返す彼の耳に、玄関の呼び鈴が鳴り響く音が届く。

「……」

繰り返される呼び鈴を頭の隅に聞きながら、少しずつ呼吸はか細くなり、意識が遠のいていった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

赤ずきんちゃんと狼獣人の甘々な初夜

真木
ファンタジー
純真な赤ずきんちゃんが狼獣人にみつかって、ぱくっと食べられちゃう、そんな甘々な初夜の物語。

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

産卵おじさんと大食いおじさんのなんでもない日常

丸井まー(旧:まー)
BL
余剰な魔力を卵として毎朝産むおじさんと大食らいのおじさんの二人のなんでもない日常。 飄々とした魔導具技師✕厳つい警邏学校の教官。 ※ムーンライトノベルズさんでも公開しております。全15話。

完成した犬は新たな地獄が待つ飼育部屋へと連れ戻される

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

社畜だけど異世界では推し騎士の伴侶になってます⁈

めがねあざらし
BL
気がつくと、そこはゲーム『クレセント・ナイツ』の世界だった。 しかも俺は、推しキャラ・レイ=エヴァンスの“伴侶”になっていて……⁈ 記憶喪失の俺に課されたのは、彼と共に“世界を救う鍵”として戦う使命。 しかし、レイとの誓いに隠された真実や、迫りくる敵の陰謀が俺たちを追い詰める――。 異世界で見つけた愛〜推し騎士との奇跡の絆! 推しとの距離が近すぎる、命懸けの異世界ラブファンタジー、ここに開幕!

愛する者の腕に抱かれ、獣は甘い声を上げる

すいかちゃん
BL
獣の血を受け継ぐ一族。人間のままでいるためには・・・。 第一章 「優しい兄達の腕に抱かれ、弟は初めての発情期を迎える」 一族の中でも獣の血が濃く残ってしまった颯真。一族から疎まれる存在でしかなかった弟を、兄の亜蘭と玖蘭は密かに連れ出し育てる。3人だけで暮らすなか、颯真は初めての発情期を迎える。亜蘭と玖蘭は、颯真が獣にならないようにその身体を抱き締め支配する。 2人のイケメン兄達が、とにかく弟を可愛がるという話です。 第二章「孤独に育った獣は、愛する男の腕に抱かれ甘く啼く」 獣の血が濃い護は、幼い頃から家族から離されて暮らしていた。世話係りをしていた柳沢が引退する事となり、代わりに彼の孫である誠司がやってくる。真面目で優しい誠司に、護は次第に心を開いていく。やがて、2人は恋人同士となったが・・・。 第三章「獣と化した幼馴染みに、青年は変わらぬ愛を注ぎ続ける」 幼馴染み同士の凛と夏陽。成長しても、ずっと一緒だった。凛に片思いしている事に気が付き、夏陽は思い切って告白。凛も同じ気持ちだと言ってくれた。 だが、成人式の数日前。夏陽は、凛から別れを告げられる。そして、凛の兄である靖から彼の中に獣の血が流れている事を知らされる。発情期を迎えた凛の元に向かえば、靖がいきなり夏陽を羽交い締めにする。 獣が攻めとなる話です。また、時代もかなり現代に近くなっています。

牛獣人はお世話係にモウモウ夢中!俺の極上ミルクは美味しいでしょ?

ミクリ21 (新)
BL
貴族に飼われている牛獣人アルベドは、良質な極上ミルクを出すためにお世話係は厳選されている。 アルベドのお世話係になったラーミアは、牛のお世話はしたことあっても牛獣人のお世話は初めてだった。 「僕は可愛い牛のお世話がしたかったのに、色気の溢れるイケメン牛獣人なんて求めてません!」 「まぁそう言わずに、一杯俺のミルク飲んでみなよ」 「な…なんて美味しいミルクなんだ!?」

生意気な少年は男の遊び道具にされる

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

処理中です...