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本編
第3話_誘われる気配-3
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地を氷が張ったような薄青、空間一帯を淀んだ煤色がはるか彼方まで広がる中、装具を手に三人はあてもないまま歩き始める。
「逃げちゃった、とかはねぇかな?」
「確かに[異界のもの]は、ここから出るのは自由だけど…それなら空間が閉まってるはずだよ」
「そっかー。どこかに隠れてやがんのかな…」
「…! 待って下さい」
陽と葉月が言葉を交わす中、ふいに蒼矢の目が見開かれる。
「一瞬ですが、気配が感じられました」
「! 追えそう?」
「なんとか。…集中します」
歩を進めながら水面を胸の前で握り、意識を研ぎ澄ませるアズライトを、サルファーとエピドートは無言で見守った。
蒼矢が変身する『アズライト』は、固有能力として『索敵』を持ち、[異界のもの]の体躯の弱点部位などを判別し、それによりセイバーたちの敵討伐行動の大幅な時間短縮が望めるという、戦闘の要となるセイバーである。
また[異界のもの]に対する感受性が群を抜いて高く、『転異空間』内では隠れていたりして姿が見えない敵の居場所を特定することも出来る。
『現実世界』にいる段階から近場の[異界のもの]の気配を感じ取ることも出来、転送前楠瀬邸内で震えを感じたのも、[異界のもの]の出現場所を公民館と特定できたのもそのせいで、他のセイバーには無い感覚である。
現実世界の時と同様、アズライトを先頭に[目的]を探る中、ふと彼の足が早まる。
「!」
「…これは…」
やがて立ち止まったアズライトの背後からエピドートとサルファーが前方を覗き、彼の両隣に立つ。
横並びになった三人の足元に現れたのは、まるで凍った湖面の氷が丸く割れて出来たような大きな水たまりだった。
どこか神秘的にも見える薄青の地に対して、溜まっている水は食紅を垂らしたように濃い青みを帯びている。
「…池だね」
「…なんだか不自然なくらい青いなー…飲んだら体に悪そう」
ぽつぽつと感想が漏れる中、アズライトは無言で水を見つめている。
「…蒼兄…この中、なのか?」
「ああ」
「…だよな」
途切れとぎれの問いに間髪入れずに答えられ、サルファーはやや顔を強張らせながら唾を飲み込んだ。
「…行くしかない。ふたりは――」
「……ごめん。僕は…ちょっと無理…かも……」
アズライトが振り向くと、緊張の面持ちで見返してくるサルファーに対して、エピドートは表情筋が強張って引きつるような笑みを浮かべ、明らかに平静を装っている風にうかがえた。
「逃げちゃった、とかはねぇかな?」
「確かに[異界のもの]は、ここから出るのは自由だけど…それなら空間が閉まってるはずだよ」
「そっかー。どこかに隠れてやがんのかな…」
「…! 待って下さい」
陽と葉月が言葉を交わす中、ふいに蒼矢の目が見開かれる。
「一瞬ですが、気配が感じられました」
「! 追えそう?」
「なんとか。…集中します」
歩を進めながら水面を胸の前で握り、意識を研ぎ澄ませるアズライトを、サルファーとエピドートは無言で見守った。
蒼矢が変身する『アズライト』は、固有能力として『索敵』を持ち、[異界のもの]の体躯の弱点部位などを判別し、それによりセイバーたちの敵討伐行動の大幅な時間短縮が望めるという、戦闘の要となるセイバーである。
また[異界のもの]に対する感受性が群を抜いて高く、『転異空間』内では隠れていたりして姿が見えない敵の居場所を特定することも出来る。
『現実世界』にいる段階から近場の[異界のもの]の気配を感じ取ることも出来、転送前楠瀬邸内で震えを感じたのも、[異界のもの]の出現場所を公民館と特定できたのもそのせいで、他のセイバーには無い感覚である。
現実世界の時と同様、アズライトを先頭に[目的]を探る中、ふと彼の足が早まる。
「!」
「…これは…」
やがて立ち止まったアズライトの背後からエピドートとサルファーが前方を覗き、彼の両隣に立つ。
横並びになった三人の足元に現れたのは、まるで凍った湖面の氷が丸く割れて出来たような大きな水たまりだった。
どこか神秘的にも見える薄青の地に対して、溜まっている水は食紅を垂らしたように濃い青みを帯びている。
「…池だね」
「…なんだか不自然なくらい青いなー…飲んだら体に悪そう」
ぽつぽつと感想が漏れる中、アズライトは無言で水を見つめている。
「…蒼兄…この中、なのか?」
「ああ」
「…だよな」
途切れとぎれの問いに間髪入れずに答えられ、サルファーはやや顔を強張らせながら唾を飲み込んだ。
「…行くしかない。ふたりは――」
「……ごめん。僕は…ちょっと無理…かも……」
アズライトが振り向くと、緊張の面持ちで見返してくるサルファーに対して、エピドートは表情筋が強張って引きつるような笑みを浮かべ、明らかに平静を装っている風にうかがえた。
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