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本編
第12話_不義理への贖罪-2
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蒼矢がこの場へ戻ってきたことは、蒼矢がカレンへ送ったメッセージどおりの行動をしていなかったことを意味していた。
今ここでカレンに対面したことで、自分が不可解な行動をとっていた、ひいては彼女に嘘をついていたことが知れたことになる。
それでも自分を問い質そうとしないカレンに、蒼矢は自分がとった行動にはなにか事情があるのだと彼女が察していることを悟る。
でも、そういうカレンの優しさに気付けても、蒼矢は彼女に真実を明かすことは出来ない。
「…ごめん」
そう短く伝えるだけの蒼矢を、カレンは穏やかな面差しで見つめ返していた。
「いいのよ、謝らないで。…さ、病院へ行きましょう。ちゃんと治療受けなきゃだめよ」
「……うん」
カレンは蒼矢の腰に手を回しながら寄り添い、駐車場へ滑り込んできたタクシーまでゆっくり歩いていき、ふたりで乗り込んだ。
同じく帰還したセイバーたちは、蒼矢の後を歩いて追い、距離をとってふたりの姿を遠くから眺めていた。
「――なー、あのひとってまさか蒼兄の彼女だったりする?」
今まで蒼矢の周囲にとんと気配が感じられなかったところで、突然現れた若い女性の存在に、陽は純粋な疑問を誰宛となく問いかけた。
「…うーん、聞いたことないからわからないなぁ。大学で知り合った友達じゃないかな?」
「月兄も知らなかったんだ。でも蒼兄の大学の学部って、男しかいなくなかったっけ?」
「他学部の子なんじゃないかな? 長く通ってれば交際関係も広がってくだろうし、ひょっとしたら他大学の子かもしれないよ」
「あぁ、そっかぁー…」
葉月の自然なごまかしに陽が納得する隣で、影斗は彼らに届かない程度の小声で烈へささやく。
「…心配すんな。信じてやれよ、あいつを」
「…なにも疑っちゃいねぇよ」
かつての恋敵からの声がけへ静かにそう返し、烈は落ち着いた面差しでタクシーのテールランプへ視線を送っていた。
4人はしばらく無言のままその場に立ち、遠ざかっていくタクシーを見送った。
今ここでカレンに対面したことで、自分が不可解な行動をとっていた、ひいては彼女に嘘をついていたことが知れたことになる。
それでも自分を問い質そうとしないカレンに、蒼矢は自分がとった行動にはなにか事情があるのだと彼女が察していることを悟る。
でも、そういうカレンの優しさに気付けても、蒼矢は彼女に真実を明かすことは出来ない。
「…ごめん」
そう短く伝えるだけの蒼矢を、カレンは穏やかな面差しで見つめ返していた。
「いいのよ、謝らないで。…さ、病院へ行きましょう。ちゃんと治療受けなきゃだめよ」
「……うん」
カレンは蒼矢の腰に手を回しながら寄り添い、駐車場へ滑り込んできたタクシーまでゆっくり歩いていき、ふたりで乗り込んだ。
同じく帰還したセイバーたちは、蒼矢の後を歩いて追い、距離をとってふたりの姿を遠くから眺めていた。
「――なー、あのひとってまさか蒼兄の彼女だったりする?」
今まで蒼矢の周囲にとんと気配が感じられなかったところで、突然現れた若い女性の存在に、陽は純粋な疑問を誰宛となく問いかけた。
「…うーん、聞いたことないからわからないなぁ。大学で知り合った友達じゃないかな?」
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「他学部の子なんじゃないかな? 長く通ってれば交際関係も広がってくだろうし、ひょっとしたら他大学の子かもしれないよ」
「あぁ、そっかぁー…」
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「…心配すんな。信じてやれよ、あいつを」
「…なにも疑っちゃいねぇよ」
かつての恋敵からの声がけへ静かにそう返し、烈は落ち着いた面差しでタクシーのテールランプへ視線を送っていた。
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