50 / 70
本編
第10話_希薄な脅威に隠されたロジック-1
しおりを挟む
見守っていた葉月と陽もひと息ついて安堵し、改めてセイバー5人フルメンバーで戦闘に臨む。
「…実際、君がきてくれて助かった。[侵略者]はまだ姿を現してないし、[異形]の弱点属性や急所も全然あたりがついてないんだよ」
エピドートがそう声をかけると、蒼矢は彼をじっと見つめ、首を横に振った。
「――いえ、[侵略者]はもうこの場にいます」
「えっ?」
「は!?」
サルファーも一緒になって驚きの声をあげると、アズライトは周りをとり囲う[蠕虫]へ視線を投げた。
「『現実世界』でも、あれだけの[異形]が出現していながら[侵略者]の気配はごくわずかでした。起動装置も最後まで反応しなかった…転送できたから出没地点は確かにあったと思いますが、場所を固定していて広範囲を遠隔操作していたんだと思います」
アズライトの考察に、セイバーたちは一様に眉を寄せる。
「…? そんなことが可能なのか…? いままでの戦歴からして[侵略者]複数体か、複数体分の強大な支配能力を持つ個体でもなければ到底無理だ」
専用能力の『回想』を持つエピドートがそう意見すると、アズライトはふり向いて小さく頷いた。
「今回の個体は特殊ではありますが、仕組みはおおよそ推測できています。[侵略者]はおそらく、自分の体躯の一部を切り離して[異形]へ埋め込み、操ってます…そうすることで、こちらが『転異空間』を開けるか否か瀬戸際のラインに気配をとどめ、自分へよほど接近しないと察知できないようにしていたんです」
「…!!」
「また、[異形]はただの駒で急所や弱点属性はないと推察してます。代わりに、埋め込まれた[侵略者]の欠片が事実上の急所と言えますが…[異形]ごとに埋め込まれた部位はまちまちです。だから急所を部位として特定できず、体躯が維持できないほど破壊しないと確実に倒せない」
『現実世界』での状況の段階から少しずつ考察を重ねていただろうアズライトの口上を、4人は面持ちを固めたまま聞き続けていた。
アズライトは再び無数の[蠕虫]たちを見渡した。
「…これも推測ですが、『現実世界』から引き続いてこれだけの数を使役するには、相当数の欠片が必要…[侵略者]のもとの体躯のほどが知れませんが、切り離せる欠片には限りがある。…[奴]にとっても消耗戦になっているはずです」
「…まぁその線が濃いんだろうが、[侵略者]にしても、消耗しきった先に勝機があると考えてないんじゃねぇか? [奴]にとっちゃ『転異空間』にいても不毛なだけなんだし、消耗しきる前に逃げられちまうかもしれねぇぜ」
再戦への危惧をほのめかす影斗の言に、アズライトは静かに首を横に振った。
「いえ、[侵略者]はここから離脱することはないでしょう。さっきまでは離脱も視野に入れてたかもしれませんが、今は策を切り替えてるはずです」
「…は? 根拠は何だ?」
そう促されるものの、アズライトはオニキスとは視線を介さず遠くを見つめ、ふいに装具『水面』を呼びだした。
「[奴]の狙いも…そして、奴をおびき出す方法も、もう想定がついてます」
「…実際、君がきてくれて助かった。[侵略者]はまだ姿を現してないし、[異形]の弱点属性や急所も全然あたりがついてないんだよ」
エピドートがそう声をかけると、蒼矢は彼をじっと見つめ、首を横に振った。
「――いえ、[侵略者]はもうこの場にいます」
「えっ?」
「は!?」
サルファーも一緒になって驚きの声をあげると、アズライトは周りをとり囲う[蠕虫]へ視線を投げた。
「『現実世界』でも、あれだけの[異形]が出現していながら[侵略者]の気配はごくわずかでした。起動装置も最後まで反応しなかった…転送できたから出没地点は確かにあったと思いますが、場所を固定していて広範囲を遠隔操作していたんだと思います」
アズライトの考察に、セイバーたちは一様に眉を寄せる。
「…? そんなことが可能なのか…? いままでの戦歴からして[侵略者]複数体か、複数体分の強大な支配能力を持つ個体でもなければ到底無理だ」
専用能力の『回想』を持つエピドートがそう意見すると、アズライトはふり向いて小さく頷いた。
「今回の個体は特殊ではありますが、仕組みはおおよそ推測できています。[侵略者]はおそらく、自分の体躯の一部を切り離して[異形]へ埋め込み、操ってます…そうすることで、こちらが『転異空間』を開けるか否か瀬戸際のラインに気配をとどめ、自分へよほど接近しないと察知できないようにしていたんです」
「…!!」
「また、[異形]はただの駒で急所や弱点属性はないと推察してます。代わりに、埋め込まれた[侵略者]の欠片が事実上の急所と言えますが…[異形]ごとに埋め込まれた部位はまちまちです。だから急所を部位として特定できず、体躯が維持できないほど破壊しないと確実に倒せない」
『現実世界』での状況の段階から少しずつ考察を重ねていただろうアズライトの口上を、4人は面持ちを固めたまま聞き続けていた。
アズライトは再び無数の[蠕虫]たちを見渡した。
「…これも推測ですが、『現実世界』から引き続いてこれだけの数を使役するには、相当数の欠片が必要…[侵略者]のもとの体躯のほどが知れませんが、切り離せる欠片には限りがある。…[奴]にとっても消耗戦になっているはずです」
「…まぁその線が濃いんだろうが、[侵略者]にしても、消耗しきった先に勝機があると考えてないんじゃねぇか? [奴]にとっちゃ『転異空間』にいても不毛なだけなんだし、消耗しきる前に逃げられちまうかもしれねぇぜ」
再戦への危惧をほのめかす影斗の言に、アズライトは静かに首を横に振った。
「いえ、[侵略者]はここから離脱することはないでしょう。さっきまでは離脱も視野に入れてたかもしれませんが、今は策を切り替えてるはずです」
「…は? 根拠は何だ?」
そう促されるものの、アズライトはオニキスとは視線を介さず遠くを見つめ、ふいに装具『水面』を呼びだした。
「[奴]の狙いも…そして、奴をおびき出す方法も、もう想定がついてます」
0
お気に入りに追加
8
あなたにおすすめの小説
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
太陽を追いかける月のように
あらんすみし
BL
僕は、ある匿名SNSでフォロワーのFの死を知る。
僕がそのSNSを始めたとき、Fは職場の後輩との恋について幸せな投稿を綴っていて、僕はそれを楽しみに、羨ましく思っていた。
だが、そんな2人にも別れが訪れて、次第にFの投稿はたまに辛い心情を綴ったものばかりになる。
そして、その年の春の訪れと共にFの投稿は途絶えた。
日々の忙しなさに忙殺されていた僕が、Fの死を知ったのは夏も終わりに近づいたある日の別のフォロワーの投稿だった。
Fと親しくしていたそのフォロワーの報告で、Fのあとを追うように後輩君も亡くなったという。
2人に何が起きたのか、僕はその軌跡を辿ってみることにする。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる