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本編
第9話_選ばれた者が在るべき場所-1
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陽が選んだ行楽地候補がみなとみらいに絞られた結果、偶然にも蒼矢らと同時刻に同イベント会場を訪れていたセイバー4人は、数分前に突如起こった異変――[異界のもの]による[狩場]造成に気付き、二手にわかれて異変の発端となる[侵略者]の出没地点を探し回っていた。
まもなく葉月と陽が探索していた方で、『起動装置』の発光――つまり[侵略者]の強い気配と接触し、変身および『転異空間』が造られたことで[異界のもの]はセイバーとともに転送され、一旦『現実世界』から脅威は消えさる。
転送が始まったことを察知した残りのセイバー・影斗と烈は、脅威にさらされた人々へ避難場所へ行くよう呼びかけながら[侵略者]出没地点へたどり着き、先に行ったふたりのあとを追って転送する。
造られた『転異空間』は一面灰色の景色で塗りつぶされ、硬い地と無数の亀裂の入った宙とで覆われ、霧のような粉塵が空間を満たしていた。
『転異空間』へいち早く入った葉月と陽は既に戦闘を始めていて、霞む視界の中、地中からわき出る[蠕虫]の異形へ次々に接近し、攻撃する猶予も与えず切り刻み粉砕していた。
影斗と烈が合流すると、先んじていたふたりは攻撃の手を止め、[蠕虫]をよけて一旦集合する。
「イベント会場に、蒼矢いたぜ」
「「えっ」」
「[異形]にやられてまぁまぁ重い怪我してたから、『現実世界』で待機しとくよう言っといた」
「「ええぇっ!?」」
開口一番、オニキスからさらりと伝えられた報告に、エピドートとサルファーは素っ頓狂な声をあげながら目を丸くした。
「蒼兄が怪我したって…、"気配"わかってただろうに、回避できなかったってのか!?」
「君たちと遭遇した時も、まだ転送前だった…そもそも同じ敷地内にいたなら、蒼矢は僕たちより先に[侵略者]に接触してるはずだ。どういうことなんだ…?」
『アズライト』の特性を知る彼らがそう疑問を投げると、少し間をおいてオニキスが返す。
「…"連れ"がいたみたいでな…シンプルに初動が遅れたんだろ。奴のことだから、[侵略者]の出現地点を把握するのと連れ逃がすのと、ふたつ目的ができちまって頭が混乱してたのかもしれねぇな」
「連れ? 友達かなんかか?」
「さぁ? 日本語は随分流暢だったけど、純日本人じゃなかったな」
他人事のようにサルファーへ答えるオニキスの様子とその返答内容に、エピドートはなにか勘付いたように目を見張り、そのままロードナイトへと視線を移した。
沈黙していたロードナイトは視線を交わさず、感情の見えない面差しのまま太刀の装具『紅蓮』を呼び出し、周りを囲う[蠕虫]へ向けて構えた。
「――『今の俺ら』と無関係なことくっちゃべってても身にならねぇ。戦闘に集中しようぜ」
「了ー解」
オニキスは軽い調子で応じると、同じように鉤爪手甲の装具『暗虚』を呼び出す。
「[侵略者]はまだ隠れたままっすか?」
「…そうみたい。なにしろこの[蠕虫の異形]が無尽蔵にわき出てくるだけだね」
「消耗戦になりそうな予感がするな。弱点もわからねぇのは結構痛いが、ボディは脆いみたいだから手数でプレッシャー与えるしかねぇか」
「なんとか今戦であぶり出したいところだね…」
「いやもうほんとにこのビジュアル無理!! 再戦は絶対やだ!!」
『索敵』のできる蒼矢が不在の中、セイバーたちは無数の[蠕虫]がうごめく灰色の地へと散開していった。
まもなく葉月と陽が探索していた方で、『起動装置』の発光――つまり[侵略者]の強い気配と接触し、変身および『転異空間』が造られたことで[異界のもの]はセイバーとともに転送され、一旦『現実世界』から脅威は消えさる。
転送が始まったことを察知した残りのセイバー・影斗と烈は、脅威にさらされた人々へ避難場所へ行くよう呼びかけながら[侵略者]出没地点へたどり着き、先に行ったふたりのあとを追って転送する。
造られた『転異空間』は一面灰色の景色で塗りつぶされ、硬い地と無数の亀裂の入った宙とで覆われ、霧のような粉塵が空間を満たしていた。
『転異空間』へいち早く入った葉月と陽は既に戦闘を始めていて、霞む視界の中、地中からわき出る[蠕虫]の異形へ次々に接近し、攻撃する猶予も与えず切り刻み粉砕していた。
影斗と烈が合流すると、先んじていたふたりは攻撃の手を止め、[蠕虫]をよけて一旦集合する。
「イベント会場に、蒼矢いたぜ」
「「えっ」」
「[異形]にやられてまぁまぁ重い怪我してたから、『現実世界』で待機しとくよう言っといた」
「「ええぇっ!?」」
開口一番、オニキスからさらりと伝えられた報告に、エピドートとサルファーは素っ頓狂な声をあげながら目を丸くした。
「蒼兄が怪我したって…、"気配"わかってただろうに、回避できなかったってのか!?」
「君たちと遭遇した時も、まだ転送前だった…そもそも同じ敷地内にいたなら、蒼矢は僕たちより先に[侵略者]に接触してるはずだ。どういうことなんだ…?」
『アズライト』の特性を知る彼らがそう疑問を投げると、少し間をおいてオニキスが返す。
「…"連れ"がいたみたいでな…シンプルに初動が遅れたんだろ。奴のことだから、[侵略者]の出現地点を把握するのと連れ逃がすのと、ふたつ目的ができちまって頭が混乱してたのかもしれねぇな」
「連れ? 友達かなんかか?」
「さぁ? 日本語は随分流暢だったけど、純日本人じゃなかったな」
他人事のようにサルファーへ答えるオニキスの様子とその返答内容に、エピドートはなにか勘付いたように目を見張り、そのままロードナイトへと視線を移した。
沈黙していたロードナイトは視線を交わさず、感情の見えない面差しのまま太刀の装具『紅蓮』を呼び出し、周りを囲う[蠕虫]へ向けて構えた。
「――『今の俺ら』と無関係なことくっちゃべってても身にならねぇ。戦闘に集中しようぜ」
「了ー解」
オニキスは軽い調子で応じると、同じように鉤爪手甲の装具『暗虚』を呼び出す。
「[侵略者]はまだ隠れたままっすか?」
「…そうみたい。なにしろこの[蠕虫の異形]が無尽蔵にわき出てくるだけだね」
「消耗戦になりそうな予感がするな。弱点もわからねぇのは結構痛いが、ボディは脆いみたいだから手数でプレッシャー与えるしかねぇか」
「なんとか今戦であぶり出したいところだね…」
「いやもうほんとにこのビジュアル無理!! 再戦は絶対やだ!!」
『索敵』のできる蒼矢が不在の中、セイバーたちは無数の[蠕虫]がうごめく灰色の地へと散開していった。
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