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本編
第8話_地中からの怪異-3
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「平気? 怪我はない?」
「え、ええ…!」
そう声がけし、カレンの無事を確認すると、蒼矢は周囲を注視しながら考えを巡らせる。
…間違いなく、[異界のもの]だ。
…こんなに広範囲に現れるとは…
そしてコートの下のタートルネックの襟ぐりを引っ張り、目線だけを落とす。
首からさがる『起動装置』――アズライト鉱石は、胸元で静かに眠っていた。
…鉱石が反応してない。体に感じた震えも微量…まだこの場には[異形]しか出てきてない。
…これほどの規模で狩場がつくられ始めてるのに、[侵略者]がまだ姿を現していないのか…それとも、出現場所がここから更に遠いのか…?
…[侵略者]のいる方向を見定めなければ…でも、混乱を極めてるこの場で、短時間で当たりをつけられるか…?
「…ウヤ、…ソウヤ…!!」
考えにふけっていると、コートの袖が引かれ、はたと気付いてふり向くと、カレンが泣きそうな顔で蒼矢を見つめていた。
「どうしたのっ…? こんなところでたち止まってては駄目よ…早く逃げないと…!!」
「…!」
彼女の表情と震え声に、蒼矢は我に返る。
……なにしてるんだ、俺は…!
…今はひとりじゃないんだ。なによりもまず先に、カレンを逃がさなきゃ…!!
「……ごめん、そうだね。こっちの方は比較的静かみたいだ。倉庫群の裏手から出る道を探そう」
ふたりは立ちあがり、あたりへ注意を払いながら、建物の側面づたいに急ぎ足で移動する。
周囲にはまばらに人がいて、悲鳴をあげながら逃げまどう様が、ふたりの視界へ時折よぎる。
倉庫の裏には、敷地を覆う格子状の柵越しに駐車場が見えた。
蒼矢はふり返りながら、後ろへ続くカレンへ声がけする。
「あそこの駐車場を抜けよう、幹線道路につながってるはずだ。もう少し走れる?」
「…ええ…!」
「道路に出てしまえば、タクシーを捕まえられるから――」
「! ソウヤ、前!」
前方を見ていたカレンが叫ぶと同時に前方でまたしても爆発音がし、はっとした蒼矢が前方を向いた時には地面のコンクリートがめくれ、破片が四方へ散る。
「くっ…!」
舞い上がる土埃を防ぎながらたち止まり、蒼矢はカレンの手を引いて別方向へ走り、隠れられる倉庫の死角を目指す。
が、きびすを返した方向とその斜め脇でたて続けに地面が吹き飛び、行く手を阻まれる。
「…っ」
建物の外壁を背にしたふたりは、[地面から飛び出たなにか]に三方向から囲まれていた。
逃げ道を失い、身動きがとれなくなった蒼矢はカレンを背に庇い、前方に広がる視界を鋭く睨む。
「え、ええ…!」
そう声がけし、カレンの無事を確認すると、蒼矢は周囲を注視しながら考えを巡らせる。
…間違いなく、[異界のもの]だ。
…こんなに広範囲に現れるとは…
そしてコートの下のタートルネックの襟ぐりを引っ張り、目線だけを落とす。
首からさがる『起動装置』――アズライト鉱石は、胸元で静かに眠っていた。
…鉱石が反応してない。体に感じた震えも微量…まだこの場には[異形]しか出てきてない。
…これほどの規模で狩場がつくられ始めてるのに、[侵略者]がまだ姿を現していないのか…それとも、出現場所がここから更に遠いのか…?
…[侵略者]のいる方向を見定めなければ…でも、混乱を極めてるこの場で、短時間で当たりをつけられるか…?
「…ウヤ、…ソウヤ…!!」
考えにふけっていると、コートの袖が引かれ、はたと気付いてふり向くと、カレンが泣きそうな顔で蒼矢を見つめていた。
「どうしたのっ…? こんなところでたち止まってては駄目よ…早く逃げないと…!!」
「…!」
彼女の表情と震え声に、蒼矢は我に返る。
……なにしてるんだ、俺は…!
…今はひとりじゃないんだ。なによりもまず先に、カレンを逃がさなきゃ…!!
「……ごめん、そうだね。こっちの方は比較的静かみたいだ。倉庫群の裏手から出る道を探そう」
ふたりは立ちあがり、あたりへ注意を払いながら、建物の側面づたいに急ぎ足で移動する。
周囲にはまばらに人がいて、悲鳴をあげながら逃げまどう様が、ふたりの視界へ時折よぎる。
倉庫の裏には、敷地を覆う格子状の柵越しに駐車場が見えた。
蒼矢はふり返りながら、後ろへ続くカレンへ声がけする。
「あそこの駐車場を抜けよう、幹線道路につながってるはずだ。もう少し走れる?」
「…ええ…!」
「道路に出てしまえば、タクシーを捕まえられるから――」
「! ソウヤ、前!」
前方を見ていたカレンが叫ぶと同時に前方でまたしても爆発音がし、はっとした蒼矢が前方を向いた時には地面のコンクリートがめくれ、破片が四方へ散る。
「くっ…!」
舞い上がる土埃を防ぎながらたち止まり、蒼矢はカレンの手を引いて別方向へ走り、隠れられる倉庫の死角を目指す。
が、きびすを返した方向とその斜め脇でたて続けに地面が吹き飛び、行く手を阻まれる。
「…っ」
建物の外壁を背にしたふたりは、[地面から飛び出たなにか]に三方向から囲まれていた。
逃げ道を失い、身動きがとれなくなった蒼矢はカレンを背に庇い、前方に広がる視界を鋭く睨む。
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