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本編

第6話_兄貴分たちからの激励-1

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蒼矢ソウヤとカレンが会った同日の昼頃、くすのき神社にはジョギングがてら遊びに来たアキラと、実家の酒屋を休業しているレツが訪れていた。

陽はそのままTVのある部屋へ篭ってゲーム機を借り、奇声や雄叫び をあげながらFPSに興じる。
そして烈は、襖の向こうから漏れて届くそれらを耳の端で聞きながら、居間のテーブルへぐてっと上半身を預けていた。
テーブルの上に投げ出された左手の指先には、包帯がぐるぐると厚く巻かれていた。

「お待ちどうさま」

そこへ家主の葉月ハヅキが、午前中に入っていた神事を終え、居間へ姿を見せる。
手にのせていた盆から湯呑みと茶菓子をテーブルに置き、烈へ差し出した。

「お昼も今用意するからね。お腹すいてるでしょ」
「あぁ…すんません、おかまいなく…」
「大丈夫なの? その指は。商品に挟んだって話だけど…」
「うん? …まぁ、たいしたことないっす」

緩慢な受け答えをする彼の手をとり、葉月は無造作に巻かれた包帯をといて患部を見る。

「…だいぶ腫れちゃってるじゃない。病院には行ったの?」
「いや…夕方遅かったし。これくらい、自然治癒でなんとでもなりますって」
「…」

覇気がなく、どこか投げやりな風も感じられる彼に、葉月は困ったように眉尻を下げる。
そしてひとつ息をつくと、茶箪笥から救急箱を取り出した。


母・珠代タマヨの都合で元々土日は休業する話になっていたのだが、それと合わせて予定立てた蒼矢とふたりでの一泊旅行が白紙になり何もすることがなくなった烈は、母の制止を押しきってひとりで店を開け、昨日は普段通り酒屋の仕事に明け暮れた。

しかし、なんとなく調子が乗らず集中力も欠き、注意力が散漫になっていた結果、運んでいた酒瓶のケースを手から滑らせ、指先に落としたうえに中身も概ね割りこぼしてしまった。
自分で適当に冷やしたり包帯を巻いたりしたものの痛みはひかず、さすがに翌日の業務に支障が出そうだと思い、旅先の母へ相談したところこっぴどく叱られ、自分が帰るまで店を閉めて家でおとなしくしているよう厳命された。


そんなわけで今日は朝から時間を持てあまし、負傷のため暇つぶしに筋トレも満足にできないということで、結局じっとしていられず楠瀬クスノセ邸へ遊びにきた、といういきさつだ。
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