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本編
第3話_初めてのふたり旅行計画-4
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先述通り、烈と蒼矢は幼い頃出会ってからずっと"幼馴染"という関係だったが、最近になってお互いに友情以上の親愛を向け、それを相互に認め合う"恋人"関係へと変化していた。
思春期以降、他者へ明確な恋愛感情を抱いたことがなかった烈は、自分が蒼矢に抱く気持ちを表す言葉に"固い友情"以外思いあたることができないでいた。
しかし、外部から刺激を受けたことでみずからの感情へ真剣に向き合う時間を作り、彼を単なる友人という枠を越えて親愛する人として見ていて、誰よりも彼の近くにありたい、彼を守りたいと一途に想っていることを自覚した。
周囲から背中を押され、また自覚した上で改めて蒼矢と相対する決意を固め、拒絶される覚悟で想いを伝えたところ、蒼矢も同じように想っていた、更に言えば、烈が彼への感情の整理をつけるずっと前から想いを向けていたことを知った。
なにも知らなかった烈の立場からすれば、禁断の領域に触れるような恐怖の中打ち明けたのだが、蓋を開ければすんなり想いは通じ、晴れて両想いという関係に進展したのだった。
しかしながら、それから今日まで、"両想い"を裏付けるような特別ななにかがあったわけではない。
もともと想われている立場だった烈から見た蒼矢は、想いを通わせ合えたあとも態度に変わりはなく、連絡をとる頻度も、会えば挨拶を交わす程度の親密度も変わることなく、それぞれ家業と学業をこなす今まで通りの日常が続いている。
そんな平坦な日々を過ごす中で、烈は少しだけ、蒼矢の思慕に不安を感じ始めていた。
想いを認め合った時に抱擁と唇を交わした事実、そしてその時感じた舞い上がるような高揚感と幸せは、もしかしたらすべてが夢やまぼろしだったのではないか、という懐疑心すら芽生えてきていた。
そういう妄想からくる不安を埋めるには、烈は圧倒的に経験値不足だった。
そしてその経験値不足という点は、"蒼矢へ触れる"という単純な行為へさえも、烈を足踏みさせていた。
好きだからこそ、できれば気持ちだけではなくもっと直接的な意味で、蒼矢と一緒にいる時間を増やしたいと思っている。
しかし"友人"から"恋人"になったとたん、自分に比べとても華奢な彼を、どう扱えばいいかわからなくなってしまった。
もちろん、友人としての蒼矢へは、深く考えずに感情の向くまま抱きついたり肩を引き寄せたり軽く体を叩いたりなどを、幼い頃から何度も積み重ねてきている。
しかし恋人となった今は、なにも考えないというわけにはいかない。
脳筋であまり加減を知らない自分のボディタッチが、実は今までずっと寡黙な彼に赦されていたのかもしれないと思うと、"大切に扱いたい"という気持ちから迂闊に手が出せなくなってしまっていた。
そういう感じで、烈の初心な脳内は完全に煮詰まっていた。
…俺、ちゃんと蒼矢に想われてるんだよな…?
…はっきり聞いて確かめたい気持ちはあるけど、間違いなかった時にあいつに失礼だし、めちゃくちゃはずい…
…キスは大丈夫だったし、体に触っても嫌がられることはない、はず。
…でも、テンション上がった時に力の加減ができるか自信無ぇ…
…自分ばっかり盛り上がって、力入れ過ぎて痛くして、蒼矢に引かれたり拒まれたりするのは嫌だ…それだけは避けたい。
……いろいろ気にし過ぎなのかなぁ、俺。
…自分ひとりじゃ答え出ないことを色々考えてても仕方ねぇな、なりゆきに任せるしかねぇんだ。
……一旦自分を浄化しよ。
烈はそう切り替え、もと来た道をそれて遠回りするコースを選び、気分転換にジョギングしながら自宅へ戻っていった。
思春期以降、他者へ明確な恋愛感情を抱いたことがなかった烈は、自分が蒼矢に抱く気持ちを表す言葉に"固い友情"以外思いあたることができないでいた。
しかし、外部から刺激を受けたことでみずからの感情へ真剣に向き合う時間を作り、彼を単なる友人という枠を越えて親愛する人として見ていて、誰よりも彼の近くにありたい、彼を守りたいと一途に想っていることを自覚した。
周囲から背中を押され、また自覚した上で改めて蒼矢と相対する決意を固め、拒絶される覚悟で想いを伝えたところ、蒼矢も同じように想っていた、更に言えば、烈が彼への感情の整理をつけるずっと前から想いを向けていたことを知った。
なにも知らなかった烈の立場からすれば、禁断の領域に触れるような恐怖の中打ち明けたのだが、蓋を開ければすんなり想いは通じ、晴れて両想いという関係に進展したのだった。
しかしながら、それから今日まで、"両想い"を裏付けるような特別ななにかがあったわけではない。
もともと想われている立場だった烈から見た蒼矢は、想いを通わせ合えたあとも態度に変わりはなく、連絡をとる頻度も、会えば挨拶を交わす程度の親密度も変わることなく、それぞれ家業と学業をこなす今まで通りの日常が続いている。
そんな平坦な日々を過ごす中で、烈は少しだけ、蒼矢の思慕に不安を感じ始めていた。
想いを認め合った時に抱擁と唇を交わした事実、そしてその時感じた舞い上がるような高揚感と幸せは、もしかしたらすべてが夢やまぼろしだったのではないか、という懐疑心すら芽生えてきていた。
そういう妄想からくる不安を埋めるには、烈は圧倒的に経験値不足だった。
そしてその経験値不足という点は、"蒼矢へ触れる"という単純な行為へさえも、烈を足踏みさせていた。
好きだからこそ、できれば気持ちだけではなくもっと直接的な意味で、蒼矢と一緒にいる時間を増やしたいと思っている。
しかし"友人"から"恋人"になったとたん、自分に比べとても華奢な彼を、どう扱えばいいかわからなくなってしまった。
もちろん、友人としての蒼矢へは、深く考えずに感情の向くまま抱きついたり肩を引き寄せたり軽く体を叩いたりなどを、幼い頃から何度も積み重ねてきている。
しかし恋人となった今は、なにも考えないというわけにはいかない。
脳筋であまり加減を知らない自分のボディタッチが、実は今までずっと寡黙な彼に赦されていたのかもしれないと思うと、"大切に扱いたい"という気持ちから迂闊に手が出せなくなってしまっていた。
そういう感じで、烈の初心な脳内は完全に煮詰まっていた。
…俺、ちゃんと蒼矢に想われてるんだよな…?
…はっきり聞いて確かめたい気持ちはあるけど、間違いなかった時にあいつに失礼だし、めちゃくちゃはずい…
…キスは大丈夫だったし、体に触っても嫌がられることはない、はず。
…でも、テンション上がった時に力の加減ができるか自信無ぇ…
…自分ばっかり盛り上がって、力入れ過ぎて痛くして、蒼矢に引かれたり拒まれたりするのは嫌だ…それだけは避けたい。
……いろいろ気にし過ぎなのかなぁ、俺。
…自分ひとりじゃ答え出ないことを色々考えてても仕方ねぇな、なりゆきに任せるしかねぇんだ。
……一旦自分を浄化しよ。
烈はそう切り替え、もと来た道をそれて遠回りするコースを選び、気分転換にジョギングしながら自宅へ戻っていった。
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