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本編
第3話_初めてのふたり旅行計画-2
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苡月と分かれ、烈と蒼矢は日暮れた家路をふたりで歩く。
ほどなくして烈の自宅である酒屋へ着くと、蒼矢も一緒に勝手口から中へ入っていく。
「ただいまー」
「お邪魔します」
「ふたりとも、お帰り」
家にあがると台所から烈母・珠代が顔を出し、その明るい呼びかけと温かな湯気に乗って届く醤油の甘辛い匂いに、ふたりの顔から自然と笑みがこぼれる。
手分けしてあっというまに茶の間の丸テーブルに夕食が並べられ、3人で囲んだ。
自宅での食事はひとりきりがほとんどな蒼矢は、たまにこうして花房家に誘ってもらい、珠代の手料理のご相伴に預かっている。
烈と蒼矢は家が近所で、幼稚園時代から続く幼馴染だ。
同じ学校に通っていたのは小学校までだったが、幼少期から今日までずっと、お互いを一番近しい友人とし、交友を重ねてきている。
いつのまにやら二十歳を迎える年齢になり、烈は社会人、蒼矢は大学生と、それぞれ別の将来・進路へ進んでますます顔を合わせる機会が減ってきているものの、つかず離れずの丁度いい距離感は変わらず、空気のような存在と認め合っている。
実家が自営業の烈に対し、蒼矢は両親ともに勤め人なサラリーマン家庭に育った。
とはいえ、その実態は一般的な共働き家庭からは逸脱していて、父は中央省庁官僚で長時間残業しがちなうえ、地方への出張で連泊も多く、何日も家を留守にすることがたび重なるような多忙を極める人物だった。
母にいたっては海外企業勤務で、もちろん海外を拠点としているため、年に数回帰国する機会にしか自宅にいなかった。
学校から帰宅しても家には基本誰もおらず、蒼矢にとっての自宅とは、朝から晩まで独りで過ごすことが当たり前の空間だった。
小学生の時分からすでにそのような家庭環境に見舞われていた蒼矢は、両親からの依頼もあって、家族ぐるみで交流を持っていた花房家の庇護下におかれ、半分息子のような扱いを受けながら育った。
幼い頃から自立心が高かった蒼矢は、花房家からのサポートにべったりになることはなかったものの、ひとり暮らしだと偏りがちになる食事面は特に珠代から気遣われ、夕食などは今日のようにお世話になることが多かった。
ほどなくして烈の自宅である酒屋へ着くと、蒼矢も一緒に勝手口から中へ入っていく。
「ただいまー」
「お邪魔します」
「ふたりとも、お帰り」
家にあがると台所から烈母・珠代が顔を出し、その明るい呼びかけと温かな湯気に乗って届く醤油の甘辛い匂いに、ふたりの顔から自然と笑みがこぼれる。
手分けしてあっというまに茶の間の丸テーブルに夕食が並べられ、3人で囲んだ。
自宅での食事はひとりきりがほとんどな蒼矢は、たまにこうして花房家に誘ってもらい、珠代の手料理のご相伴に預かっている。
烈と蒼矢は家が近所で、幼稚園時代から続く幼馴染だ。
同じ学校に通っていたのは小学校までだったが、幼少期から今日までずっと、お互いを一番近しい友人とし、交友を重ねてきている。
いつのまにやら二十歳を迎える年齢になり、烈は社会人、蒼矢は大学生と、それぞれ別の将来・進路へ進んでますます顔を合わせる機会が減ってきているものの、つかず離れずの丁度いい距離感は変わらず、空気のような存在と認め合っている。
実家が自営業の烈に対し、蒼矢は両親ともに勤め人なサラリーマン家庭に育った。
とはいえ、その実態は一般的な共働き家庭からは逸脱していて、父は中央省庁官僚で長時間残業しがちなうえ、地方への出張で連泊も多く、何日も家を留守にすることがたび重なるような多忙を極める人物だった。
母にいたっては海外企業勤務で、もちろん海外を拠点としているため、年に数回帰国する機会にしか自宅にいなかった。
学校から帰宅しても家には基本誰もおらず、蒼矢にとっての自宅とは、朝から晩まで独りで過ごすことが当たり前の空間だった。
小学生の時分からすでにそのような家庭環境に見舞われていた蒼矢は、両親からの依頼もあって、家族ぐるみで交流を持っていた花房家の庇護下におかれ、半分息子のような扱いを受けながら育った。
幼い頃から自立心が高かった蒼矢は、花房家からのサポートにべったりになることはなかったものの、ひとり暮らしだと偏りがちになる食事面は特に珠代から気遣われ、夕食などは今日のようにお世話になることが多かった。
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